生命工学・生命倫理と法政策

医事法
東京大学法学部 22番教室
[email protected] 樋口範雄・児玉安司
第7回2008年11月12日(水)15:00ー16:40
第7章 医業独占 医師法17条
1)医行為(医療行為)とは何か。医業とは何か。
2)医業独占あるいは医療業務の縦割りにどのよう
な問題があるか。
参照→http://ocw.u-tokyo.ac.jp/
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先回の補足
対面診療の壁
遠隔医療
在宅医療
各種相談サービス
access, quality, cost の側面からの再検討
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今日的課題の一例
特別養護老人ホームにおける医療ニーズの高い高齢者の受入れへの取り組み
と課題http://www.ryokufuu.com/backnumber/tokuiryo.htm
特養における医療ニーズの高い利用者への対応を考えるとき、そこでどのような
看護の体制があるかが重要になってくるからであり、さらにその問題の本質部分
に「医療行為」を行えるのは医師の指示の元に看護職のみに認められ、介護職
には許されていないという要因を無視しては考えられないという問題もあるからで
ある。当施設は100人定員で介護職員は38名であるが、看護師は基準どおりの3
名であった。つまり3名の看護師で100名の利用者の医療行為を担っていたわけ
であるが、それは夜勤はおろか日中でさえも看護師が配置できない日ができると
いうことであり、その際は緊急呼び出しや当番制による常態化した休日勤務とい
う対応をせざるを得ない状況にあった。しかし医療ニーズの高い利用者の増加は
こうした体制での対応に限界を生じさせ、様々な困難ケースを生み出した。この
ため看護師が日中は常に配置できる体制を造るため看護師を5名に増員し、土
日祝祭日に関係なく最低1名は看護師が日中配置される体制に改善を行い、必
要最低限ではあるが看護処置の提供体制を整えた。これによって少なくとも日勤
時間帯は必ず看護師がいることとなり看護処置がその時間帯においては常時提
供できるのに加え、祝祭日の緊急時も看護師が常時いることで医療対応につい
ての専門的判断と適切な医師への連絡ができ、看護師が不在で介護職員から看
護師そして医師へという連絡体制で生じたタイムラグが解消された。さらに日中
は看護師が常駐するという体制は、他の職種のみならず、利用者本人や家族の
安心感にも繋がるという心理的効果も生み出している。
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医師法17条
「医師でなければ、医業をなしてはならな
い」
31条「三年以下の懲役もしくは百万円以
下の罰金に処し、又はこれを併科する」
4つの疑問点
①
②
③
④
4
医業
「当該行為を行うにあたり、医師の医学的判断
および技術をもってするのでなければ人体に
危害を及ぼし、または危害を及ぼすおそれの
ある行為(医行為)を、反復継続する意思を
もって行うこと」
○医学的判断+医学的技術
危険性 = 抽象的危険性
○業 反復継続の意思だけで十分
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医業・医行為概念
広い解釈への批判
医療技術の進歩 素人でも・・・
在宅医療と医療的ケア
家族についての違法性阻却
他の素人は? 友人・教師・ヘルパー
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4つの理由
① 医療技術の進歩 医学知識の普及
② 医療の複雑化 医行為の独占の無理
業務分担 逆にオーバーラップも
③ 在宅医療の推進 素人への教育研修
④ 自己決定権 反面としての自己責任
パターナリズムがむしろ患者の利益にな
らない場合あり
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医療従事者間の業務分担
① 医師 対 看護師
② 助産師 対 看護師
ただし、内診問題はこの構図とはいえない
③ 医師 対 救急救命士
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救急隊
○現在、いくつかの消防本部において、救命率の向上等を図るためPA連携。
○ポンプ車に乗車している救急科講習修了者等が行う応急処置について
は現行の消防法の規定においては、救急業務として位置付けられてい
ない。
○救命率の向上を図るためファーストレスポンダーによる応急処置につい
ても消防法上の救急業務として明確に位置付けるべきではないか。
参考:消防法第2条第9項
救急業務とは、(中略)医療機関その他の場所へ緊急に搬送する必要が
あるものを、救急隊によって、医療機関その他の場所に搬送すること(傷
病者が医師の管理下に置かれるまでの間において、緊急やむを得ない
ものとして、応急の手当を行うことを含む。)をいう。
消防法施行令「救急隊は、救急自動車1台及び救急隊員3人以上をもって
編成しなければならない。」(第44条第1項)、「前項の救急自動車には、
傷病者を搬送するに適した設備をするとともに、救急業務を実施するた
めに必要な器具及び材料を備えつけなければならない。」(同条第2項)
内閣法制局の常識→「非常識だがしかたがない」ものこそ「法」
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