日中企業の共生の道へ

経営者の役割と人材育成
ーー農民集団を近代的な組織への改造の実践ーー
(華南の外資系企業の事例研究)
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
研究対象のSolidについて
原田総経理の就任とSolidの再生
新しい経営システムと企業文化の形成
経営者の役割と人材育成の特徴と意義
報告者 明治大学経営学部 郝燕書
問題意識
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
「世界の工場」・華南珠江デルタ地域におけ
る企業の運営実態を調べる
外資系企業の経営システム、組織文化の生成
と進化の過程を追跡
経営システム・組織文化の移転、人材育成の
過程における経営者の役割を検討
農民集団を意欲的労働者への転換の実践の特
徴・意義を考える
Ⅰ


研究対象のSolidについて
経済特区のビジネスチャンスと外資企業の進出
・改革・開放政策と経済特区の設立
・外資導入政策と外国企業の進出
・経済特区→珠江デルタ地域へシフト
・産業集積地の形成、「世界の工場」
日本のA・B社→委託生産→Solid社
・経済特区の隣に立地
・華僑の独資企業
・日本企業の委託工場
・投資額約50億円
・97年設立
会社概況
新利実業(深圳)有限公司(Solid)

設立:1997年12月

投資形態:独資経営

投資額:35,474千米ドル


住所:深圳市龍岡区布吉鎮
布龍公路 333

事業:日本のA社,B社の音響機器・
TVの委託生産・成形加工

生産量:207万台(2003年実績)



売上高:128,270千米ドル
従業員数: 2,180名
SOLID
ばらばらの五大勢力
オーナー林氏・フィリピン華僑
(資本)
香港人S一族
中国国営企業の定年
者X氏
(財務・総務・製造・
購買)
(労務管理)
湖南省からの出稼ぎ労働者
(現場作業)
日本人A社技術者
(生産・技術・品質)
Solidの資本(華僑林氏)
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
経済特区のビジネスチャンスをつかむ
83年深圳で最初の会社を設立、Solidは5社目
華僑の冒険と投資と優遇措置の利用
世界市場の拡大・中国国内もの不足の好機
経済特区の発展とともに事業の拡大
日本企業との長期的な関係
独資企業・委託生産型企業
Solidの技術(日本A社)
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
華南での事業展開と委託生産
珠江デルタ地域で5つの委託加工工場
Solid社がその1つの委託先
A社の技術者による技術・品質管理の指導
人的資源管理に無力感
意欲のない労働者に失望感
Solidを切捨てる計画
香港人による経営と管理

社長のS女史及びその一族10人
オーナー林氏の同郷・「親戚」
前近代的な経営方式
一族支配、権限集中
情報独占、神秘主義
制度・ルールがない
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労務管理部長と関係が悪い
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労務管理部長X氏
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オーナー林氏の妹婿
元国有企業の幹部
S一族と仲が良くない
縄張り意識
募集先を故郷湖南省に集中
個人王国づくり
出稼ぎの農民集団
(現場管理者と作業者)
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目標がない。希望が見えない。
やりがいがない、意欲がない
責任感がない
能力未開発、ただの出稼ぎ労働者
経営者・管理者に対するつよい不信
瀕死のSolid
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
設立以来、赤字続く
A社からの切り捨てる計画
オーナーが工場を売却する検討
あらゆる経営資源を有するSolid:
優れた立地・立派な建物・新鋭の設備
華僑資本・日本の技術と品質管理と販売先・香港
人の経営管理・地元に詳しい国営企業労務管理
者・安い出稼ぎ労働者
なぜうまくいかなかったのか?
Ⅱ
原田総経理(社長)の就任Solid社の再生
A社の華南工場の視察
・国際競争にさらされA社の華南5つの委託
工場を整理・生産体制の再編成
・2001年3~5月、A社の会長、社長を含め
た視察団が三回華南の委託工場を視察
・5つの委託工場の中、四つ工場切る
・Solidは切捨てる対象

原田社長の提言と就任
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
日本A社の親会社、日本B社の中国現地
会社、恵州工場(B社の華南の100%の独資企
業)の総経理(社長)
三回目の視察団活動に参加
「Solid社は確かに管理が弱く、問題が
多い。改善は難しいが、改革するには
最適な会社である」 と力説
再建の大任を原田社長に委任
原田社長について
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
オーナー林氏と、2年総経理契約・就任
人格、能力、魅力
趣味:会社の再生、人材育成
会社の再生の名人
日系海外企業6社再生の成功の実績
↓
Solid再生の適任者
原田社長によるSolidの問題の診断
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「魂」がない(企業文化がない)
会社に「癌」の存在
大集団のバラバラの状態
→ 組織が成り立たない
組織の三要素 共通目的・貢献意欲・コミュニケーション
企業文化 企業に参加する人々に共有されている価値観・
共通の考え方、意思決定の仕方・ 共通の行動パターン
の総合
Ⅲ 新しい経営システムと企業文化の形成
「ショック療法」と「癌」の取り除く
――旧環境・旧組織を徹底的に取り壊す――
 生産ラインストップ
 環境を一新する
小部屋の壁を取り壊す
整理・整頓・清掃、壁・床の塗り替え
 香港人経営・管理者の退任
 中国人の整理、自主退社
 「やる気のある人、ついていく決心する人だけ残
る」 2100名 → 900名
原田式マネジメントと「魂」を植え付け
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新しい組織の誕生
会社理念の提起
原田式中国マネジメント 14ヶ条
管理者向けの一般講義
原田式の特別講義
新利实业 (深圳)
管理者国籍对比
有限公司
2003.09.16
总经理室
外籍
董事会
本地
董事长: 林国良
总 经 理
副董事长: 林齐顺
原田 则夫
董事: 苏宝桑
秘书:胡蓉
林礼密
余文燕
副总经理
陆曙明
秘书:喻莎(兼)
物
流
部
部长
立
生
管
课
课长
刘
少
卢
报
关
课
田
物
流
课
课长 课长
汪 陈
建
翔
凌
叶启东 部长
部长
秘书:陈鄂萍
C
K
D
课
设
备
工
装
课
成
形
课
课长 课长 课长
喻 彭
詹
长 赞
美
久 成
霞
郑钦湖
部长
秘书:明礼
秘书:徐伟平
品
管
部
制
造
部
资
材
部
塑
胶
部
胡冬勇
二
次
加
工
课
塑
胶
技
术
课
资
材
课
课长
危
金
亮
课长
谢
安
全
课长 课长 课长 课长 课长
石
胡 朱
李 徐
金
少 光
朝 朝
硕
东 美
阳 阳
量
产
采
购
课
试
产
采
购
课
部长
音
箱
组
装
课
组
装
课
关则堂
部长
盛
秘书:周宇群
秘书:贺成香
E
M
C
音
箱
技
术
课
制
造
技
术
课
课长 课长 课长 课长 课长 课长 课长
朱 邱
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学
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学
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部
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部
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件
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基
板
课
部长
国斌
刘华
生
产
技
术
部
品
技
术
课
课
课长 课长
廖
徐
临
忠
坤
学
罗
部长
秘书:喻莎 琼
资
讯
部
人
事
部
总
务
部
陈 部长
秘书:蔡畅
张永钦
部长
赵振
国
秘书:彭丹
经
管
课
财
务
课
总
务
课
改
善
课
人
事
课
课长
郭
永
福
课长
莫
赛
丰
课长
巫
英
莲
课长
邓
江
南
课长
鲍
一
梅
秘书:刘芳
I
T
课
课长
王
宏
伟
経営理念
素質の高い人を集め、仕事を通じて人を育て、
高効率・高品質・高報酬を目標に、明るく自由
闊達な環境下でお互いが感謝心を持ち、夢と
自主性に満ちた理想の中国工場を構築する。
原田式中国マネージメント14条(心構え編)
自分は偉くなったのではない、リーダーとしての職
責を得ただけだ!。
権力で人を動かすな、人の心を掴み、人を使い、人
を動かせ!。
部下は見えても部下には見えない、自分の喜怒哀楽
を明確に示せ。
いざという時に行動し信頼されろ、又困難な時こそ
ネアカであれ!。
共に働き、言行一致、率先模範で約束を守れ、部下
は自分の鏡である。
原田式中国マネージメント14条(手法編)
育てる気持ちと許す気持ちがマネージの基本。
自立心と参画意識と問題意識を育てろ!。
経験的手法を使わず、独自性を使え!。
目的目標を明確に!。
愛社精神は二の次、社員の自己成長を願え!。
言わせて、やらせて、任せて、Followしろ!。
リーダーを学歴で求めるな!。
マネージメント結果は感謝心と信頼関係に比例。
規定を明確にしてから、叱れ!。
SOLID 3年的改革设想
2001年

对课长以上管理者的基础教育

根据OJT改善的实施

通过会议体制建立统一意识与组织之间交流

本地化干部的经营参与策划

各种PJ的经营
2002年

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自立心的培养期
环境/品质/技术/购买/生产性/劳务
P/L会议、事业计划、重点施策发表会
食堂改善/在库改善/3CD导入/现场改善
自主经营的START期
2003年
提高计划精度 生产性/原价管理/在库

推进外注化

加强 R&D

推进自动化

高附加价格机种的变革期

先行国内销售
新机种的自主导入
建立P/0发行~出货为止的自主管理体制
强化技术力 制造技术/生产技术/部品技术
确立人才开发体制
人才开发
自主经营的建立期
自主经营
SCM/R&D START
SOLID
公司意思传达图
经营会 每 天 8:00~9:30
部长会 星期二 1:30~3:00
课长会 星期三 1:30~3:00
SKR
部长
课长
系长会 每天1:00~2:00
班长会 星期四1:30~3:00
系长
每日早会 7:30~7:50
班长
一般社员
原田社長の管理者学
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第1講 管理者とは
第2講 管理者と担当者の問題解決方法における差異
第3講 業務改善 *改善からもたらすN現象
第4講 責任と権限
第5講 製造部朝礼の意味 *見える管理
第6講 経営管理
第7講 経営分析
第8講 指導能力 *部下の能力を育成する
第9講 思考方法と観察方法
*学習法則
第10講 工場環境の活性化
第11講 モチベーション理論の歴史 *叱る方法
第12講 生産効率の測定法 *工程編成効率の測定法
第13講 標準時間の測定法
第14講 我々は専門の管理者(仕事のプロ)
講義例
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管理と管理者
管理とは
有限な資源(ヒト、モノ、カネ、情報、
時間、空間、技術、信用)を最大限に
活かし、それらを活用するための手段
の選択である
管理者とは
部下の努力を通じて成果を上げるヒト
である
講義例
管理者が必要とする能力
戦
対
専門
能 力
人
略
能 力
上級管理者・総経理
中級管理者・部長
能
力
初級管理者・課長
原田社長の管理者学の特別講義
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期間 2年連続(01.7~03.7)
時間 毎日8:00~9:30
対象 部長クラス
内容 現地・現物・現場で発見した問題点を
整理、管理理論による分析
特徴 難しい問題を分かりやすく解説
講義例 お芋と在庫、朝礼
目的
問題発見・分析・解決能力の育成
原田社長の特別講義 事例1
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2002年11月11日
参加者:部長以上13名
講義要点
①朝礼で作業者が手をポケットに入れて参加(15分)
②ロッカーのゴミ箱(15分)
③工程不良率がなぜ改善されない(20分)
④社内秘・省略(20分)
⑤社内秘・省略(20分)
③工程不良率がなぜ改善されないのか
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一年前まで10%台にあった工程不良率が、修理技術員と班長クラスの意識
UPとコミュニケーションUPで、現在は4%台まで改善されて来た。
工程不良率を10%台から4%台に下げるのは、努力すれば素人・農民にも出
来るが4%から会社目標とする1%台に下げるのは素人・農民にはできない。
以前10%台の工程不良が下がらなかったのは、対処能力のない現場の素
人・農民の班長に任せたままだったからだ、当時の班長に現場で何故不良
が少なくならないのかと聞いても「作業者のレベルが低い」「何度言っても効
果がない」という作業者への責任転嫁の答えしか出て来なかった。それを先
に述べたように修理技術員と班長クラスへ問題解決方法の教育と意識UPを
図り、現場管理者によるディスカスとFeedbackが実践され、現場から次第
に不良要因が消えていった。
世の中は、知識・経験のある人が知らない人に教えて良くなるもの。今この会社
が良くなったのも元と言えば、経験と知識のある私が現場を毎日3~4回歩き、問
題発見と対処に努めてきたからだ。4%台の工程不良が下がらないのは単純な作
業不良だけではなく技術的な不良が含まれているからだ。設備やSET技術・部品
技術の判る間接技術員が現場を歩き、現場の管理者とコミュニケーションする事
が、工程不良を1%台に達成させる糸口である。
又、プロとして成功する秘訣は、勉学に励み、現場で現物・現状をよく見聞する人
である、個人的成長の為にも是非時間を見つけて現場を歩く事を薦めたい。
原田社長の特別講義 事例2
2002年11月12日
参加者:部長以上12名
〔講話要点〕
①生管部長が会社を休んだ件。
②製造のラインの補修計画。
③在庫管理の話。
④アモイソリッドの新設。
③ 在庫管理の話
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現場を歩いたら、目に付くのはスピーカの在庫が多いこと。ソ
リッドもやはりまだ農民集団の集まりで、目の前の利益しか見
えなく、トップの意思がちっとも伝わっていない。
在庫は確かに安心になるけど、資金と場所が要される悪い面が
ある。在庫を持つことはまさしく農民の習慣生活である。山に
穴を掘って、芋を埋めることが都会人はしない。前のソリッド
は平気で45日の在庫を持っていて,原材料費が高く、資金繰り
はたいへんだった。今現在は13日の分しかない、経営の余裕が
出てきた。
今は生産の余裕があるとき,在庫ゼロにする習慣をつけ、“作
り溜めをしてはいけない”と部下に無理矢理に命令する。わた
しは6個の会社を再生してきたけれど、1時的によくなる工場も
ある。われわれの管理者は確かにほかの会社よりレベルが上だ
が、ある程度ができたら、机の前に安心することができるか。
2002年も後4ヶ月半しか残っていない、各部署の管理精度を上
げてほしい。
新しい経営方式と企業文化
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新しい制度とルールの確立
・38の法典の制定
・採用制度
・賃金体系
・昇進基準
・「人民裁判制度」
規律が正しく、明るい。生き生きする
楽しい、やりがいがある。
毎日収穫がある。能力アップできる。希望がある
高い給料の誘惑を無視、給料の安いSolidを選ぶ
平等・透明・公正の体制の確立
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透明な賃金システム
・個人の賃金がすべて公開
原田総経理の人材観と「金魚鉢理論」
・配置転換とその意義
・内部昇進と人民裁判制度
権能の委譲(エンパワーメント)
・徹底的な現地化
・改善PJの実施
・全員参加
・情報公開とPCの活用
Ⅳ 経営者の役割と人材育成の
特徴と意義(海外経営の場合)
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経営者の役割
・経営システム移転
・組織文化の確立
・人材の育成
トップマネジメントの能力と資質
・以上の役割を果たすために必要な資質と
能力を求められる
最重要な能力

暗黙知を形式知へ転換する能力
・海外経営の場合、特に重要
・日本企業に軽視された能力
・人材育成のキーポイント
・知識や情報を共有させる基本能力
ご清聴ありがとうございました
Thank you very much
多謝!
[email protected]