欧州の固形バイオマスの現状

情 報 報 告
ウィーン
欧州の固形バイオマスの現状
欧州の再生可能エネルギーの様々な部門の発展の監視を行うコンソーシアムである
EurObserv’ER が発行した固形バイオマスに関するレポート『solid biomass barometer –
EUROBSERV’ER – january 2015』を以下に報告する。
固形バイオマスの現状
~EurObserv'ER バローメータ~
EurObserv'ER(フランス)
1.はじめに
2013年のEUにおける固形バイオマス由来の一次エネルギー消費量は、1年間に290万
toe(石油換算トン)増加し、9,150万toeであった。しかし、固形バイオマスエネルギーに対す
る需要の上昇として正直な傾向ではない。とくに、フランスと英国の急上昇、それには及
ばないものの(それらに次いで)スペインとイタリアなど、それとは反対に、スウェーデンや
ポーランドのような主に木質系エネルギーの消費国のいくつかでは需要が減少した。
2013年のEUにおける固形バイオマスに関する主要な数値は以下のとおり。
・固形バイオマス由来の一次エネルギー生産量は2012年比で6.1%の成長
・固形バイオマス由来の電力は81.7テラワット時(TWh:100万メガワット時)
・固形バイオマス由来の熱消費量:7,240万toe
一次エネルギー生産量
総電力生産量
総熱消費量
※フランスの海外県は含まず
出典:solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
図 1-1
EU の固形バイオマス由来の一次エネルギー生産量、総電力生産量、熱消費量
― 33 ―
情報報告 ウィーン
2.固形バイオマス
バロメーター:木質チップの輸送
固形バイオマスには熱や電力を生産する燃料として使用すべき全ての固形有機成分が含
まれる(木材、木質廃棄物、ペレット、黒液、バガス(サトウキビやモロコシなどの茎から汁
をしぼりとった後のかす)、動物性廃棄物、その他の植物や残さ、など)。
毎年、EUでは電力および熱を生産するために固形バイオマスの消費量が増加している。
EurObserv’ERによって集められたデータによると、2013年のEUの一次エネルギー消費量
は約9,150万toeとなり、2012年から3.3%増加している(表1-2参照)。この成長は2000年
(5,310万toe)以降からほとんど途切れたことがないが、2011年はEU全体で例外的に穏やか
な冬の結果として大きく減少した(図1-2参照)。消費された固形バイオマスの大半は、欧州
で生産されたものである。EUの一次エネルギー生産量は8,810万toeであり、2.4%増加して
いる(表1-1参照)。実際の輸入量がここ数年間で上昇傾向にあり、その結果、アメリカやカ
ナダからの木質ペレットの輸入量が増加している(補足1 参照)。
固形バイオマスの消費傾向は、EU加盟国全体でかなりバラツキがある。2013年、林業の
動きが低調であったのでスウェーデンでは減少した。また、ポーランドとオランダでは、
バイオマス由来の電力生産の減少により消費量も減少した。一方で、フランスのような木
質系燃料による暖房を推進する国やバイオマスから電力を回収することを奨励する英国で
は消費量が急激に増加している。英国はイタリアとならんでEUにおけるバイオマス由来電
力の生産拡大のトップであり、スウェーデン、ポーランド、オランダの減少量を補った。
2013年の終わりに、EUのバイオマス由来電力の生産量は1.8%増加の81.7TWhまたは2012
年から1.5TWhの増加であった(表1-3参照)。固形バイオマスによる熱の増加はEUでわずか
に増加(2012年から2.7%増加)し、2012年より190万toe多い7,240万toeに到達した。熱供給
ネットワークへの固形バイオマス販売量は2.5%増加した(表1-4参照)。
生産量(×100 万 toe)
消費量(×100 万 toe)
年
出典:solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
図1-2
2000年以降のEUにおける固形バイオマスの1次エネルギー生産量と消費量の推移
― 34 ―
情報報告 ウィーン
【補足1】EUは1,830万トンの木質ペレットを使用
EUの木質ペレット市場は世界最大である。2014年のレポート(『European Bioenergy Outlook』)で欧
州バイオマス協会(AEBIOM)から発行されたデータによると、EUの木質ペレットの消費量は、世界中の消
費量が2,320万トンに対して1,830万トンまで上昇する。2013年のEU加盟国による木質ペレットの生産量
は1,220万トンであり、EUは消費量の約3分の1を輸入した。Global Trade Information Services(GTIS)社
のデータでは、2012年以降、アメリカがEUへの最大の輸出国になっている。2013年、アメリカはEUに276
万6,000トン(2012は176万4,000トン)を販売し、192万1,000トン(2012は134万6,000トン)を輸出したカナ
ダを上回った。その他のEUへのサプライヤーとしては、ロシア(70万2,000トン)、ウクライナ(16万5,000
トン)、ベラルーシ(11万6,000トン)がいる。
木質ペレットの使用拡大は各国によって異なる。英国、オランダ、ベルギーの市場において木質ペレッ
トは、石炭火力発電所をバイオマスとの混焼またはバイオマスの専焼用に設計された新しい発電所に改造
するかどうかに関係なく、主に大容量の発電所の燃料として使用されている。スウェーデンやデンマーク
のような北欧諸国では、木質ペレットがボイラーやストーブのような暖房器具および大規模な熱電併給(以
下、CHP)施設の両方で使用されている。ドイツ、イタリア、オーストリア、そして、フランスにおいて、
主な成長方向は住居用熱供給システムでの木質ペレットの消費であり、これらの国は熱生産のための産業
用ボイラーでも使用している。
3.EUにおける固形バイオマスの消費量
(1)
英国は石炭火力発電所の改造を優先
英国のエネルギー・気候変動省(DECC)によれば、2013年に英国の再生可能エネルギー由
来の熱の消費量増加に最も貢献したのは木であった。政府が提示した理由では、長い冬と
2013年に新しい熱電併給(以下、CHP)施設の試運転、“非住宅向け”再生可能熱インセン
ティブ制度(以下、RHI)の強化によって生じた暖房の必要性がわずかに増加したために、一
般家庭の消費量が増加したとのことであった。再生可能エネルギー協会は、この制度がす
でに4,926台の木材燃焼ボイラーに資金提供し、1ギガワット(GW)を超える容量(2014年8月
に超過)をもたらしたと主張している。
2013年の間に、固形バイオマス由来の全熱消費量は20.8%増加し、2012年の90万toeから
110万toeとなった。2013年に、固形バイオマス由来の電力は、6月にNorth Yorkshireにあ
る英国最大のDrax石炭火力発電所をバイオマス用に改造し起動したことで2012年より増
加した。2基目となる630メガワット(MW)のバイオマス火力発電所は2014年5月に稼働し、
この年のバイオマス由来の電力生産量を再び大きく押し上げた。当分の間、英国の政策は
既存の石炭火力発電所の改造にあり、CHP施設として運転されるので、新しいバイオマス
施設の建設は400MWeに制限される。
― 35 ―
情報報告 ウィーン
表1-1
EU各国における固形バイオマスによる1次エネルギー生産量
国
名
Germany
2012年
(×100万toe)
2013年
(×100万toe)
10.931
10.902
9.779
10.842
Sweden
9.563
9.211
Finland
7.937
8.117
Italy
7.249
7.452
Poland
6.988
6.497
Spain
4.964
5.443
Austria
4.806
4.749
Romania
3.795
4.233
Portugal
2.342
2.347
Czech Republic
2.153
2.293
United Kingdom
1.849
2.153
Latvia
1.870
1.750
Denmark
1.489
1.518
Hungary
1.385
1.454
Belgium
1.413
1.408
Bulgaria
1.109
1.300
Netherlands
1.112
1.118
Estonia
1.012
1.067
Lithuania
0.992
1.041
Greece
1.000
0.847
Slovakia
0.801
0.818
Croatia
0.694
0.700
Slovenia
0.560
0.583
Ireland
0.196
0.195
Luxembourg
0.047
0.055
Cyprus
0.005
0.005
Malta
0.001
0.001
European Union
86.043
88.100
France
(海外県は含まず)
出典:solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
― 36 ―
情報報告 ウィーン
表1-2
国
EU各国における固形バイオマスの総消費量
名
Germany
2012年
(×100万toe)
2013年
(×100万toe)
10.931
10.902
9.779
10.842
Sweden
9.563
9.211
Italy
8.383
8.837
Finland
7.963
8.146
Poland
6.988
6.497
Spain
4.964
5.443
Austria
5.021
4,971
Romania
3.655
4.233
United Kingdom
2.512
3.319
Denmark
2.473
2.523
Portugal
2.342
2.347
Czech Republic
2.057
2.173
Belgium
1.993
2,036
Hungary
1.330
1.407
Bulgaria
1.019
1.334
Latvia
1.255
1.270
Netherlands
1.350
1.125
Lithuania
1.003
1.026
Greece
1.136
0.928
Slovakia
0.786
0.813
Estonia
0.814
0.793
Slovenia
0.560
0.583
Croatia
0.497
0.500
Ireland
0.213
0.230
Luxembourg
0.043
0.049
Cyprus
0.009
0.009
Malta
0.001
0.001
European Union
88.639
91.459
France
(海外県は含まず)
出典:solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
― 37 ―
情報報告 ウィーン
表1-3
国
名
EU各国の固形バイオマス由来の電力の総生産量
2012年 (TWh)
2013年 (TWh)
発電施設
CHP施設
総発電量
発電施設
CHP施設
総発電量
Germany
5.288
6.803
12.091
5.199
6.444
11.643
Finland
1.220
9.485
10.706
1.490
9.968
11.457
United Kingdom
7.008
0.000
7.008
10.577
0.000
10.577
Sweden
0.000
10.507
10.507
0.000
9.609
9.609
Poland
0.000
9.529
9.529
0.000
8.024
8.024
Spain
1.587
1.809
3.396
1.703
2.086
3.789
Austria
1.365
2.400
3.765
1.124
2.635
3.759
Italy
1.545
1.024
2.569
2.132
1.532
3.664
Belgium
2.609
1.076
3.684
2.218
1.136
3.354
Denmark
0.000
3.175
3.175
0.000
3.025
3.025
Netherlands
2.383
1.577
3.960
1.699
1.230
2.929
Portugal
0.786
1.710
2.496
0.736
1.780
2.516
Czech Republic
0.468
1.348
1.816
0.015
1.668
1.683
France
0.039
1.586
1.625
0.069
1.529
1.599
Hungary
1.218
0.115
1.333
1.377
0.093
1.470
Slovakia
0.008
0.716
0.724
0.000
0.722
0.722
Estonia
0.374
0.611
0.985
0.030
0.615
0.645
Lithuania
0.000
0.176
0.176
0.000
0.279
0.279
Romania
0.053
0.140
0.193
0.000
0.263
0.263
Ireland
0.164
0.020
0.184
0.215
0.014
0.229
Latvia
0.006
0.059
0.065
0.007
0.208
0.215
Slovenia
0.000
0.114
0.114
0.000
0.119
0.119
Bulgaria
0.000
0.065
0.065
0.000
0.065
0.065
Croatia
0.000
0.037
0.037
0.000
0.048
0.048
Luxembourg
0.000
0.000
0.000
0.000
0.002
0.002
European Union
26.122
54.082
80.204
28.591
53.093
81.684
(海外県は含まず)
出典:solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
― 38 ―
情報報告 ウィーン
図1-4
国
名
EU各国の地域熱供給部門における固形バイオマス由来の熱生産量
2012年 (×100万toe)
2013年 (×100万toe)
熱生産施設
CHP施設
全熱生産量
熱生産施設
CHP施設
全熱生産量
Sweden
0.802
1.628
2.430
0.745
1.608
2.353
Finland
0.476
1.143
1.619
0.503
1.184
1.688
Denmark
0.391
0.552
0.943
0.398
0.561
0.959
Austria
0.413
0.401
0.814
0.454
0.380
0.834
Germany
0.251
0.304
0.555
0.184
0.350
0.534
0.159
0.275
0.434
0.213
0.318
0.530
Poland
0.034
0.428
0.462
0.025
0.320
0.345
Italy
0.074
0.272
0.345
0.073
0.268
0.341
Lithuania
0.180
0.060
0.240
0.181
0.087
0.268
Estonia
0.071
0.108
0.179
0.074
0.117
0.191
Slovakia
0.050
0.122
0.173
0.052
0.122
0.174
Latvia
0.090
0.019
0.110
0.093
0.061
0.154
Czech Republic
0.022
0.048
0.070
0.024
0.095
0.119
Romania
0.032
0.015
0.047
0.044
0.073
0.117
Hungary
0.017
0.042
0.059
0.021
0.051
0.072
Netherlands
0.000
0.043
0.043
0.000
0.040
0.040
Bulgaria
0.002
0.003
0.005
0.000
0.030
0.030
Belgium
0.000
0.008
0.008
0.000
0.024
0.024
Slovenia
0.008
0.012
0.020
0.008
0.012
0.020
United Kingdom
0.033
0.000
0.033
0.009
0.000
0.009
Croatia
0.000
0.002
0.002
0.000
0.003
0.003
Luxembourg
0.002
0.000
0.002
0.002
0.001
0.003
European Union
3.106
5.485
8.591
3.103
5.705
8.809
France
(海外県は含まず)
出典:solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
(2)
フランスは2013年により多くの木の暖房を使用(表1-5参照)
固形バイオマスの生産量のほぼ全部が木材・エネルギー部門で占められ(全体の97%)、
2013年には10.9%増加した。この理由は暖房の需要の高まりによるものである。フランス
の監査統計サービス委員会(SOeS)は、バイオマスによる暖房の需要は例年よりも寒い冬と
税制措置により支援された木材燃焼暖房器具の継続的な増加の2つの影響によって上昇し
たと説明する。2013年には52万4,000台のストーブが販売された(2011年は46万7,000台、
2012年は48万9,000台)。また、木質系エネルギーの消費量は、環境・エネルギー管理庁
(ADEME)の“熱ファンド”(地域支援メカニズムとバイオマス由来の熱業界の農業と第三次
産業(以下、BCIAT)プロジェクトへの要請)のような支援制度からの恩恵を受けた。
2014年9月、ADEMEは“熱ファンド”制度に関する最新情報を発表した。2009年から2013
年に提出されたBCIATプロジェクトに対する5回の要請の中から、129のプロジェクトが目
― 39 ―
情報報告 ウィーン
的を達成、39のプロジェクトが正常に稼働、71のプロジェクトが進行中、そして、19のプ
ロジェクトが放棄された。完了したプロジェクトと進行中のプロジェクトを合計した熱出
力は、1,152MWthの容量に相当する58万6,700toeとなる。2013年9月に公表されたBCIAT
プロジェクトの第6回目の要請では、年間目標は125ktoeに設定されている。このファンド
とは異なる制度である地域支援は、同期間に539のプロジェクトに資金提供(投資額は10億
2,300万ユーロ相当)し、木材の消費量は426,000toeにのぼる。
表1-5
国 名
EUにおける固形バイオマス由来の熱消費量
2012年 (×100万toe)
2013年 (×100万toe)
熱消費量
地域熱供給量
熱消費量
地域熱供給量
9.087
0.434
10.186
0.530
Germany
7.862
0.555
8.022
0.534
Sweden
7.921
2.430
7.626
2.353
Italy
7.198
0.345
7.198
0.341
Finland
6.347
1.619
6.412
1.688
Poland
4.913
0.462
4.484
0.345
Austria
4.003
0.814
4.139
0.834
Spain
3.850
0.000
4.054
0.000
Romania
3.658
0.047
3.874
0.117
Denmark
2.030
0.943
2.079
0.959
Portugal
1.802
0.000
1.829
0.000
Czech Republic
1.642
0.070
1.794
0.119
Bulgaria
1.003
0.005
1.342
0.030
Belgium
1.183
0.008
1.311
0.024
Latvia
1.166
0.110
1.141
0.154
United Kingdom
0.923
0.033
1.115
0.009
Hungary
0.977
0.059
1.015
0.072
Lithuania
0.918
0.240
0.958
0.268
Greece
1.133
0.000
0.922
0.000
Estonia
0.657
0.179
0.663
0.191
Slovenia
0.537
0.020
0.556
0.020
Slovakia
0.493
0.173
0.496
0.174
Croatia
0.466
0.002
0.473
0.003
Netherlands
0.459
0.043
0.460
0.040
Ireland
0.175
0.000
0.181
0.000
Luxembourg
0.042
0.002
0.048
0.003
Cyprus
0.007
0.000
0.007
0.000
Malta
0.001
0.000
0.001
0.000
European Union
70.451
8.591
72.378
8.809
France
(海外県は含まず)
出典:solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
― 40 ―
情報報告 ウィーン
(3)
イタリアの固形バイオマス消費は多くない
2014年12月15日にイタリア国立統計研究所(ISTAT)の新しい調査結果が公表され、家庭
での木質系エネルギーの消費量が大きく過少評価されていることが明確に示された。これ
らの知見に基づき、イタリア経済開発省は2012年の360万toeの予想とは対照的に、現在、
2012年から2013年に暖房用に木材、木質ペレット、炭の家庭での消費量が660万toeである
としている。固形バイオマスの他の利用(発電量の42.6%の増加)を考慮すると、2013年のイ
タリアの固形バイオマスの消費量は880万toeとなり、5.4%の増加を意味する。この上方修
正の理由として、イタリアの非常に高いガスと灯油の価格の影響から近年の暖房器具にお
ける木質ペレットと木質系燃料の消費量が急激に増加したこともあるが、全体的に木質ペ
レットとバイオマスの使用を拡大するための強力な政策的決定の影響が大きい。
イタリア・アグロフォレストリー・エネルギー協会(AIEL)によれば、2013年9月時点の全
ての税を含む木質ペレットのコストは、配送を含むバルクペレットの1MWhあたり69ユー
ロから袋で購入するペレットの同72ユーロまでの幅がある。これらの価格を天然ガスの同
86ユーロや灯油の145ユーロと比較する必要がある。さらに、木材チップは1MWhあたり33
ユーロ、未利用木材(ログ)は同54ユーロとかなり安くなる。木質ペレットの使用は規制当局
によって奨励されている。競争力のある価格設定に加えて、減税が木材燃焼暖房システム
の購入と設置のために負担する経費の最大50%まで10年間に渡り適用されるかまたは、生
産した熱に対する固定価格での支払いを受ける。EUの「再生可能エネルギー指令」の国内
法への転換を遵守した「Conto termico (再生可能エネルギー熱法)」と呼ばれる制度が2013
年1月3日に施行され、灯油、石炭または従来のバイオマスで運転する暖房システムを新し
く効率的なバイオマスシステム(木質ペレット、木材チップ、認定された未利用材で運転)
に交換する資金を提供するために使用されている。固定価格買取り制度(以下、FIT)は、定
格出力、計画使用期間(事前に定義された気候帯による)、排出ガスレベルや補助金係数など
のいくつかの項目から認められている。FITは、35kW以下のストーブに対して2年間、
1,000kW以下のボイラーに対しては5年間に渡り支払われる。実例として10kWの木質ペレ
ットのストーブに対して、イタリア北部のTurinでは2年間の補助金が524ユーロ、Romaで
は431ユーロ、イタリア南部のBariでは339ユーロとなる。
(4)
ドイツの新しいEEGではバイオマス由来の電力への恩恵はほとんどなし
バイオマス施設からの電力生産はもはや「ドイツ再生可能エネルギー法(以下、EEG)」の
中心ではなく、バイオガス施設を含む全てのバイオマス分野に対する年間目標は100MWに
制限されている。この年間目標は生産コストの安さから、陸上風力発電に対する目標
(2,400MWから2,600MW)や太陽光(PV)発電に対する目標(2,400MWから2,600MW)よりも
かなり低い。EEGはいくつかの新しい方式がある。
・2014年8月1日から
設備容量が500kW以下の小さな施設がFITの対象
・2016年1月1日から
100kW未満の施設がFITの対象
インセンティブは依然として20年に渡り保証されるが、2016年以降から、買い取り価格
は毎年0.5%ずつ削減する。さらに、100kW未満の施設運転業者は、2016年1月1日以降から
自身の電力を直接販売 (ダイレクトマーケティング) する義務がある。つまり、新しい施設
― 41 ―
情報報告 ウィーン
の再生可能エネルギーの生産者は自身の電力を販売する責任を負い、市場価格の影響を受
けることになる。生産者らは事前に1日の予想生産量を連絡し、電力市場での供給と需要の
調整コストについて関与する必要がある。そうすることで、ドイツ政府は最も効率的な生
産の統合を実現し、需要に適応する生産の予測の精度と柔軟性を高めることを期待してい
る。ダイレクトマーケティングでは、電力の生産者は収入の損失を相殺するために、市場
プレミアムが与えられる。EEGによって定義された基準値が、FITに沿ってこのプレミアム
を計算するために設定されている。これには、ダイレクトマーケティングで負担するリス
クやコストを部分的に補うマネジメントプレミアムが含まれている(バイオマスの場合、
1kWhあたり0.02ユーロ)。プレミアムの総額は、電力取引所(EPEX)のスポット市場におけ
る電力価格に合わせて変動する毎月の基準値から算出される。
そして、再生可能エネルギーの電力生産者はその価格に沿って電力を販売することになる。
このプレミアムのための要件には、電力が再生可能エネルギー由来の電力を受入れるバ
ランスゾーンの一部である遠隔操作が可能な施設で生産されている必要がある。2016年1
月1日以降、EPEXのスポット市場価格が最低6時間連続でマイナスである場合、このプレミ
アムは支払われなくなる。
(5)
ポーランドでは熱よりも電力を優先
2013年に固形バイオマス由来の電力生産量が急激に低下しているが、ポーランドはEUの
バイオマスからの電力を生産する主要国の1つである。再生可能エネルギー研究所(EC
BREC IEO)によれば、この電力量の大半が石炭とバイオマスの混焼火力発電所で生産され
ている。混焼として稼働している石炭火力発電所は、2012年にPolaniec石炭火力発電所の1
基を100%バイオマス火力発電所(205MW)に転換したような数件の例を除いて、バイオマス
由来のエネルギー回収の面で極めて低効率かつ古い(平均して35年を経過)。
ポーランドでは新しい再生可能エネルギーに関して4年間にわたり議論されており、再生
可能エネルギー指令の変更を意図している。2014年4月にポーランド政府は同国の主要な電
力ユーティリティに優先権を再び与える法案をまとめた。それは、再生可能エネルギー施
設の開発事業者や所有者が、市場価格に関係なく15年間保証された指定価格のために自身
のエネルギーをオークションにかけることを規定している。また、提案では補助金の上限
も設定されている。すでに事業を行っている再生可能エネルギーの生産者には、現在の補
助金を維持するかまたはオークションシステムに参加することが認められている。
0
4.大容量の産業が活路を開く
数年にわたる固形バイオマスの消費の大幅な増加は、大規模なCHP施設や他の施設の普
及に大きく影響を受けている。北欧の主要な森林国(フィンランドとスウェーデン)では、過
去に大容量の施設を選んでいる。林業によって供給される CHP施設として運転する
100MWeを超える容量の施設を建設することが最優先された(表1-6参照)。数年間、大容量
のバイオマス施設の建設は、主に「大型燃焼施設指令(2001/80/EC)」の国内法への転換を
通じて、火力発電所からの排出ガスの汚染に関するより厳しい法律の施行によって刺激さ
れてきた。この厳格な規制が火力発電所からの汚染物質(二酸化硫黄、窒素酸化物、ダスト)
の排出制限を強化した。事業者は、これらの基準の遵守がかなりの費用負担になるとして
― 42 ―
情報報告 ウィーン
も、基準を満たすかまたは新しい施設を建設するために投資する義務がある。一部の国で
は欧州の再生可能エネルギーの公約を達成するために、自国の石炭火力発電所の改造によ
って提供される機会を生かそうとしてきた。つまり、それらの国は石炭火力発電所の事業
者が古い施設の一部をバイオマスの専焼または混焼施設に改造することを生産支援によっ
て奨励してきた。現在までに、この改造の動きは一握りの国(主に、英国、ドイツ、デンマ
ーク、ベルギー、オランダ、ポーランド)で開始されたに過ぎず、全ての計画が順調に進ん
ではいない。
例えば、2014年4月にDrax発電所の事業者は、2016年に改造予定の3番目の施設には付与
されたものの、バイオマス専焼に改造される施設の2回目のトランシェ(融資)のための“差
額決済契約(以下、CfD)”のインセンティブ制度の付与を英国政府が拒否したとして、政府
に対し訴訟を起こした。2014年4月時点の再生可能エネルギー義務履行証書(以下、ROC)
制度では、バイオマス由来の電力1MWhあたり0.9ROCであり、1ROCは約41.5ポンドの価
値があったので財源不足はかなりのものである。これは、石炭火力からバイオマスへの改
造のために1MWhあたり105ポンドのCfDに対する行使価格とは全く異なるものである。
2014年5月に操業を始めた2番目の施設は、供給の問題のためにバイオマスとの混焼(85%ペ
レット)で運転を開始し、バイオマス専焼に完全に改造されたのは10月であった。
Drax発電所に加えて、2014年4月に英国政府はさらに2つのCfDから利益が得られるバイ
オマスプロジェクトを公表している。
・RWE社が運転するLynemouth石炭火力発電所(420MW)の改造
Drax発電所の第3番目と同じ行使価格で資金を得る予定
・MGT Power社のTeesside再生可能エネルギー施設の建設(改造とは異なる)
バイオマスCHP施設でこの行使価格は1MWhあたり125ポンド
後者の299MWの施設は年間に約2.4TWhのエネルギーを生産し、60万世帯に電力を供給
することができる。 木材チップの消費量は1年間に約250万トンに達し、2016年中の操業開
始が予定されている。最後に、2014年7月にDrax発電所の事業者は、4基目のバイオマス専
焼への改造を検討していることを明らかにした。これは、Draxグループがアメリカのペレ
ット生産工場への投資後、発電施設への供給が確保できるかどうかにかかっている。
2014年の初めに、ベルギー最大の電力会社であるElectrabel社が、Rodenhuize にある32
万世帯の電力を賄うことができる同国最大のバイオマス施設(215MW)のMax Green発電所
の閉鎖を公表した。この事例では、木材や紙の分野におけるベルギー産業連盟の事前宣誓
の動きが上手くいかなかったので、Electrabel社は2014年から2016年の間のグリーン証書
を取得することができなかった。最終的に、利害関係者とフランダース政府との間の合意
に続いて、施設は2014年8月28日に再開された。地元の反対は、許認可に関係なく不確実性
の源である。
フランスでは、2015年に予定されていたGardanne石炭火力発電所の部分的改造が、CHP
施設の運転ができるように設計されていなかったとして、エネルギー効率についての論争
にまで発展した。このような問題にもかかわらず、大規模なバイオマスの専焼および混焼
施設の開発が、新しいプロジェクトの定期的な公表で判断しながら今後数年間にわたって
続けられる。そのようなプロジェクトの1つとして、ベルギーのBelgia Eco Energy(以下、
― 43 ―
情報報告 ウィーン
Bee)社が、2014年11月はじめに公表したベルギーGhentへの215MWの発電と100MWの熱
出力を持つ世界最大級のバイオマスCHP施設の建設である。主な原料は木材チップや農
業・食品産業の残さである。スペインの再生可能エネルギー大手Abengoa社がこの施設の設
計と建設のために選ばれ、2017年末の操業を予定されている。
表1-6 欧州で最大規模のバイオマス施設(2013年から2014年)
施設名称
国 名
Ironbridge
UK
Drax
UK
発電容量
(MW)
状況/運転開始
740
2013
Drax Group plc
630 x 2
2013-2014
構成/燃料
運転事業者
Pellet
(two units converted)
Pellet
(two unit converted)
E.ON
Alholmens
Finland
Coal and biomass/CHP
Metso
265
1996
Polaniec
Poland
Wood chips,
agricultural waste
GDF Suez
205
2013
Rodenhuize
Belgium
Wood chips
Electrabel
/GDF Suez
180
2011
Kymijarvi II
Finland
Wood,solid recovered
fuel,paper cardboard
Lahti Energy
160
2012
Wisapower
Finland
Black liquor
Pohjolan Voima Oy
2004
140
Vaasa
Finland
Bio gasification
Pohjolan Voima Oy
140
2012
Kaukaan
Voima
Finland
Wood, peat/CHP
Kaukaan Voima Oy
125
2010
Seinajoki
Finland
Wood chips, peat
Pohjolan Voima Oy
125
1990
Arneburg
Germany
Wood waste,
Black liquor
Zellstoff Stendal
100
2004
出典:solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
表1-7 欧州の主要なバイオマス施設運転事業者(2013年から2014年)
バイオマス施設
の運転事業者
国 名
発電容量
(MW、CHP含む)
使用バイオマス
UK
1260
Pellet
Finland
955
Wood, black liquor, peat
Germany
783
Pellet, wood chips
Fortum
Finland
610
Solid biomass, bio wastes, bio oil
Vattenfall
Sweden
444
Solid biomass, waste
Metso
Finland
265
Biomass co- firing
Electrabel/GDF Suez
Belgium
260
Wood chips
UK
250
Biomass co-firing
France
223
Biomass co-firing
Denmark
220
Finland
125
Drax Group plc
UPM/Pohjolan Voima Oy*
E.ON
Veolia (Dalkia)
GDF Suez/Cofely
Dong Energy
Kaukaan Voima Oy
CHP
(wood chips, wood pellets, straw)
Biomass CHP (wood, bark, stumps,
forest residues, peat)
出典:solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
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情報報告 ウィーン
5.2030年に向けた目標
最近発行されたEUにおける電力および冷暖房に使用される固形およびガス状のバイオ
マスの持続可能性の現状についての作業用文書は、“国家再生可能エネルギー行動計画(以
下、NREAP)”に設定された欧州の目標(2020年時に再生可能エネルギーの比率を20%に引
き上げ)を思い出させるものであった。NREAPの試算によると、バイオマスの供給量は2020
年までに約37%増加の1億3,200万toeに達することが予測されている。28ヵ国の計画の概要
は、その期限までに、EU加盟国が2006年比でさらに9,500万立方メートル(m3)の木質系エ
ネルギーの流通を高めるつもりであったことを示している。この数値は、木材(ログ:未利
用材)によって直接供給される83m3と木材産業からの残さによる12m3に分けられる。この
規模は、フィンランドとスウェーデンで2010年にエネルギー利用のために流通した全木材
に相当する量である。つまり、木質系エネルギーの消費量が、2006年の3億3,600万m3から
2020年には4億3,100万m3に増加するということである。作業用文書では、多くの国にとっ
て、バイオマスの消費は国内資源に基本的に依存し続けるが、第三国からの輸入がこの10
年の終わりまでに必ず増加すると指摘している。NREAPおよびEurostatによれば、目下の
ところ、電力および冷暖房部門でのバイオマス由来の一次エネルギー消費量は、2020年に1
億4,000万toeにまで増加し、その内の1億1,860万Toeは欧州の原料供給によると試算されて
いる。2,140万Toeの不足分は、主に木材チップやペレットの形状で、第三国からの輸入に
よっておのずと補わなければならない。また、同文書は、EUへのペレットの輸入が2010年
時の270万トンから2013年の430万トンにすでに増加しており、2020年までに1,500万から
3,000万トン(すなわち、600万toeから1,200万toe)に増加する可能性があることも指摘して
いる。
このデータは理論的なので、EUがこの目標を達成できるかどうかを話すことは難しい。
NREAPの2020年目標を達成する電力生産量(155TWh)、に関して、現在の良くない経済
やバイオマス由来の電力に対するエネルギー事情から、達成の見込みはますます疑わしく
なりつつある(図1-4参照)。主な障害の1つが、アメリカにおける大量のシェールガスと石油
の消費に起因する世界市場での石炭価格の競争力の高さである。もう1つの障害は、EUの
二酸化炭素(CO2)排出量取引き制度(EU-ETS)が、排出権価格の異常な低さによって、もは
や機能していないことである。排出権の割り当てに対する企業の需要を減少させる欧州の
弱い経済成長が、この価格の下落にさらに影響している。また、バイオマス発電施設は他
の再生可能エネルギー由来の電力生産と激しい競争をしており、過去数年間にバイオマス
由来の電力が成し遂げた競争力の向上を大きく上回っている。
熱生産に関して、木材、木材チップ、ログやペレットの全てが灯油、天然ガスや電力と
比べて非常に競争力のある価格を持っているので、状況ははるかに有利である(図1-5参照)。
この状況ではバイオマスによる暖房に移行する世帯数を増やすことが奨励されるべきであ
る。また、熱の消費では熱供給ネットワークの開発を促進するためのいくつかの国の明確
な政策的公約からの恩恵が受けられる必要がある。
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情報報告 ウィーン
出典:solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
図1-3
EUの人口1人あたりの石油換算トンによる固形バイオマスエネルギーの総消費量
電力の生産量 (TWh)
最新の傾向※
NREAP ロードマップ
(補足)
これらのデータには廃棄物焼却施設からの再生可能電力の予測量を含む
出典:solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
図1-4 固形バイオマス由来の電力生産のNREAPロードマップと最新の傾向の比較
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情報報告 ウィーン
熱の消費量 (Mtoe)
最新の傾向※
NREAP ロードマップ
(補足)
これらのデータには都市ごみ焼却施設からの再生可能な熱の予測量を含む
出典:solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
図1-5 固形バイオマス由来の熱生産のNREAPロードマップと最新の傾向の比較
2020年の後、合理的な価格の持続可能なバイオマスの可能性と有効性の問題がより大き
くなる。欧州委員会の作業用文書である『2030年に向けた気候変動・エネルギー政策の影
響評価』によれば、バイオマスの需要は主に輸入を通じて、2020年以降の電力と熱への要
求のために増加し続ける。どの程度の貢献が将来のバイオマスに求められるのかについて、
我々は、2014年10月に欧州理事会が再生可能エネルギーの最終エネルギーに対する比率を
2030年までに27%(欧州全体)に引き上げることに合意したことに留意する必要がある。燃
料供給の確保に触れる最後の点は、大量のバイオマスを必要とする大規模な施設の事業者
にとって極めて重要である。RISI社(林業製品を専門とするコンサルタント)による調査では、
国際的な木材取引所の大部分を占める木質ペレットに対する世界的需要が2020年までに
5,000万トンに上昇することを示唆している。欧州はこの増加の主な理由となるが、世界中
の木質ペレット市場は日本や韓国のような新しい国に開放されてきている。アメリカ(北米)
は自国の温室効果ガス(以下、GHG)排出量を削減する約束を達成するために、木質ペレッ
トの輸出を制限することもできる。2014年11月12日のアメリカと中国の間で交わされた
GHG削減に向けた合意において、アメリカは2005年比で2025年までに26%から28%の削
減を約束し、中国は2030年頃をピークに排出量を減少に転じさせると同時に非化石燃料の
発電比率を高める目標を設定した。長期的に、この合意が欧州市場のペレットを奪い、世
界市場で商品価格を引き上げる可能性がある。その結果として、バイオマス施設の事業者
は自分たちの投資の持続可能性を保証するために、自ら所有する土地で生産組織やバイオ
燃料の供給分野に投資するよう欧州諸国に圧力をかけている。
【補足2】2020年の前に固形バイオマスの持続可能性基準に関するEU法は無い
固形バイオマス燃料の将来の成長は持続可能性基準の導入と非常に関連がある。経済問題の観点から、
この問題は非常に激しい交渉の核心である。2014年7月28日、欧州委員会によって『電力と冷暖房に使用
される固形およびガス状バイオマスの持続可能性の現状』と題した新しいレポートが出された。この作業
用文書は2つのレポートから構成されており、1つは共同研究センター(以下、JRC)から、もう1つはForestry
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情報報告 ウィーン
Commission Research Agencyによるレポートである。 これら全ての文書で、固形バイオマスから生産さ
れた固体およびガス状燃料に対する持続可能性基準を導入する点に触れている同様の基準が2009年以降か
ら液体バイオマス(バイオ燃料)に対して導入されている。しかし、欧州委員会は、この基準に関する欧州全
体で調和された法律が2020年より前に予定されていないことをすでに警告している。欧州委員会は、その
適用範囲が国家または欧州であるかに関係なく、持続可能な運転基準を提供するのに十分な拘束力がある
と 考 え て い る 。 そ れ に も か か わ ら ず 、 数 年前から、こ の部門の専門 家である欧州 電気事業者連 盟
(EURELECTRIC)と欧州バイオマス協会(AEBIOM)は持続可能性基準に関して規制するための欧州の枠組
みの導入を強く求めてきた。投資家らは2020年以降の規制の展開に関する明確な見通しを必要としている
ので、彼らはこの問題を制止する欧州の法律が欠けていることに気付いている。
暫定的に、最大の固形バイオマスの輸入者(施設運転事業者や主な輸入国)は独自の検証と認証システムを
開発しており、輸入された木質ペレットは燃焼系統にふさわしい。家庭内で使用する木質ペレットの場合、
欧州ペレット協議会(以下、EPC)やAEBIOMが熱供給部門における欧州の需要の半分以上をすでに占める
“EN Plus規格”を課すことに努めている。産業界で使用されるペレットやその他のバイオマスの場合、
持続可能なバイオマスパートナーシップ(以下、SBP)が既存の持続可能な森林管理プログラム(例、PEFC)
ならびに英国、デンマーク、オランダやベルギーのような輸入大国における現在の法律の両方を基にした
認証システムを開発しようとしている。
当分の間、英国は2010年2月の欧州委員会の勧告に基づいて独自の持続可能性基準の導入を決定した唯一
の国である。再生可能エネルギー義務履行証書(ROC)制度の下、ユーティリティは年次レポート(年間持続
可能性レポート)の発行義務に関係がある使用燃料の持続可能性に関する情報を収集することがすでに義
務付けられている。また、ユーティリティはバイオマスの起源の追跡とGHG排出量の計算をすることがで
きなければならない。この目的のため、英国政府は欧州の「再生可能エネルギー指令」の計算方法に基づ
いたCO2や他のGHG排出量を計算するために、英国の電力・ガス規制機関であるOfgemのサイト上に独自
のツールを提供してきた。2015年4月1日から、再生可能エネルギー由来の電力生産者のデータ収集義務は、
ROC制度の恩恵を継続するためのこれら基準を支持する義務の形が取られる。オランダ、デンマーク、ベ
ルギーもバイオマスの原料供給の持続可能性を確実にする独自の法律を開発しようとしている。
(参考資料)
・solid biomass barometer – EUROBSERV’ER – january 2015、EurObserv'ER
・大規模燃焼施設指令(LCPD)、DIRECTIVE 2001/80/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT
AND OF THE COUNCIL of 23 October 2001
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