沿岸生態系

沿岸生態系
海での物質循環・流動生態系モデル
酒井哲郎:海岸工学入門,森北出版
第10章(pp.119-127)
海岸法の一部改正(平成11年)の背景
災害からの防護
海岸浸食の進行
海岸環境意識の高まり
海岸レクリェーションの需要の増加
地方分権化の推進
防護,環境,利用
被害からの海岸防護,海岸環境の整備と保全,
公衆の海岸の適正利用
海岸防災
沿岸環境
の保全と
創造
沿岸域
の開発・
利用
海辺の生
態系・景
観の保全
海岸環境の保全の目的
海岸防災
・台風による高潮災害
・波浪,高波による越波災害
・地震による津波災害
・海岸浸食による汀線の後退
・漂砂による河口閉塞,港湾埋没
沿岸域の開発・利用
・交通輸送(港湾,漁港,空港,アクセス道路・鉄道 等)
・産業活動(漁場,養殖場,工業・商業・住宅用地 等)
・資源エネルギー(石油備蓄基地,発電所 等)
・レクリェーション(砂浜,公園,観光施設,マリンレジャー 等)
横浜港 みなとみらい21地区
博多港 博多埠頭地区
水辺空間(ウォーターフロント)の開発
海辺の生態系・景観の保全
・生態系(陸棲動植物,水棲動植物,海岸線,干潟,藻場,
珊瑚礁 等)の保全
・景観(自然景観と人工景観)
沿岸域の多様な生息空間
干潟,浅場,藻場,砂浜,磯などは,小魚や貝類の生
息地であるとともに,それらを餌とする野鳥の生息地
にもなっている.
波や潮汐は複雑な力学的・物理的環境を与えている.
これが多様な種を育む1つの要素となっている.
干潟(tidal flat)
潮汐により露出したり冠水したりする領域
1)生物生息機能
貝類をはじめとし底生生物(ベントス)の生息場
2)生物生産機能
生物の産卵,生育
3)水質浄化機能
底泥や海水の有機物や栄養塩(窒素やリン)が干潟の
生物によって除去,固定される.
藻場(submerged vegetation)
本来、漁師が、内湾でアマモ類の繁茂する場所を指してよ
んだ用語であるといわれているが,現在では,一般に水底
で大型水生植物が群落状に生育する場所を総称して、藻場
とよんでいる.
1)産卵場・幼稚仔育
成機能
2)飼料供給機能
3)水質浄化機能
4)底質安定化機能
アマモ場
現在,水質の悪化,干潟や藻場の消失が問題となっている.
1960年代の高度経済成長を契機として,大都市に人口が集
中した結果,大都市を背後に持つ内湾では大量の生活排水
や産業排水が発生し,海域に排出され水質が悪化した.
下水処理では有機物は除去されても栄養塩は除去できず(栄
養塩を処理するには高次処理が必要)に海域へ排出され,赤
潮や青潮の原因となる.
河川からの土砂供給の減少(海岸浸食の増加),臨海部の埋
立造成により干潟や藻場が消失していった.
東京湾では明治後期に約2万haあった干潟がその後の100
年間で90%以上消失したと言われている.
ミティゲーション(mitigation):
干潟・沼地の埋め立て・改変などの開発行為が、生態系
や自然環境に影響を及ぼすと考えられるとき、開発によ
る悪影響を軽減するために取る補償措置や代替措置の
こと。わが国では開発の対象となる生態系の持つ機能を
他の場所で代償する行為を指すことが多いが、特に湿
地(wetland)を守るためにミティゲーションが盛んに利用
されているアメリカでは、事業自体の見直しや規模の縮
小も含まれる。
ある失われた環境(例えば干潟)を別の場所で再生す
ることは,本質的な環境の修復ではない.
ミティゲーション技術(環境修復技術)
失われた自然環境を修復・補償・強化する技術
環境の質
良い
望ましい
①:ミチゲーション技術を伴わない開発
②:悪い環境状態で始めるミチゲーション
(回復プロジェクト)
③:良い環境状態で始めるミチゲーション
(保持プロジェクト)
③
②
①
悪い
時間
窒素とリンの海域での循環
有機体窒素(Org-N)
全窒素(T-N)
無機体窒素(Inorg-N)
アンモニア態窒素(NH4-N)
亜硝酸態窒素(NO2-N)
硝酸態窒素(NO3-N)
水中の窒素の構成
無機溶存態リン(DIP)
溶存態リン
リン酸態リン(PO4-P)
凝集態リン
全リン
有機体リン
懸濁態リン
無機体リン
凝集体リン
有機体リン
水中のリンの構成
負荷流入
(有機物)
リン酸態リン
懸濁態有機物
無機溶存態窒素(DIN)
無機化
沈降
負荷流入
DIP
DIN
日射
枯死
呼吸
分解
細胞外 植物プランクトン
分泌
溶存態有機物 無機化
排泄
呼吸
排糞・死亡
光合成
摂食
沈降
動物プランクトン
底質
好気条件下の水域での炭素,窒素,リンの循環
溶出
DIP
DIN
植物プランクトン(phy)
phy

t
光合成による増殖-細胞外分泌-呼吸-動物プランクトンによる摂食
-枯死-沈降
動物プランクトン(zoo)
zoo

t
植物プランクトンによる摂食-排糞-排泄-自然死亡
懸濁態有機物(デトリタス:POM)
POM

t
植物プランクトンの枯死+動物プランクトンの排糞+動物プランクト
ンの自然死亡-細菌による分解-分解余剰物生成-沈降+海域
外からの流入
溶存態有機物(DOM)
DOM

t
植物プランクトンの細胞外分泌+POM余剰物生成-無機化
+海域外からの流入
無機溶存態窒素(DIN:NH4+NO2+NO3)
DIN

t
植物プランクトンの呼吸-植物プランクトンによる摂食+動物プラ
ンクトンの排泄+懸濁態有機物の無機化+溶存態有機物の無機
化+底質からの溶出+海域外からの流入
リン酸態リン(DIP)
DIP

t
植物プランクトンの呼吸-植物プランクトンによる摂食+動物プラ
ンクトンの排泄+懸濁態有機物の無機化+溶存態有機物の無機
化+底質からの溶出+海域外からの流入
溶存酸素(DO)
DO

t
光合成による供給-植物プランクトンの呼吸-動物プランクトンの
呼吸-懸濁態有機物の分解に伴う消費-溶存態有機物の無機化
に伴う消費-底質による消費+大気中からの供給(再曝気)
生態系モデル
水質モデル
流動モデル
貧酸素水塊の挙動,赤潮の発生などを
コンピュータを用いて予測する.
海岸・港湾施設の意義の理解
海岸・沿岸で発生する現象の理解。
海岸工学・港湾に関する専門用語の理解。
波の基礎理論の理解と基礎的な問題が解けること。
海岸・沿岸環境の保全に関する知識の取得。
宿題や講義中に説明した問題は確実に理解しておくこと.
http://www.suiri.civil.yamaguchi-u.ac.jp/
期末試験
7月27日(火)19:20-20:50 D12
電卓,学生証持参
携帯電話はテスト中は電源を切ること.
(時計として使用してはいけない)
試験監督者の指示に従わない場合は不正行為と見なされる