帝国主義・戦争と地理学: 地政学という負の遺産

場所1
空間分析批判と場所の概念化
政治地理学の理論と方法論 第4週
地理学における空間分析の展開
地誌学の伝統
地域の個性を記述(所変われば品変わる)。
「科学」への指向性(1950年代~70年代)
客観性・法則性・予測可能性を求める。
数理的モデルの構築(計量革命)。
↓
自然や社会に存在する空間秩序の発見。
中心地論(クリスタラー)
都市の立地を都市が提供する商品・サービスの種
類とその到達範囲との関係から理論化
社会事象(都市の立地)を特定の空間的変数(商
品の移動コスト)に置き換えてモデル化
空間分析(新しい地理学)の隆盛(→GIS研
究)
中心地理論
大都市と小都市の空間的配置に規則性
計量化への流れ
幾何学的世界
有機的世界
空間分析への批判
人間中心・社会変革の視覚(1970年代頃
~英米で)
公民権・反戦・学生運動などを経て社会矛
盾への学問的接近
空間分析での人間不在。人間から分離さ
れて存在する空間(空間分離主義)。
四つの潮流
知覚・行動の地理学
現実的な人間の認知や行動を科学的(心理学
的)に分析
メンタル・マップ(認知地図)研究
↓
人間が認知する空間は均質ではなく、いちじる
しい歪みをもっている。
メンタル・マップの例
人文主義地理学
特定の場所に対する個人の(主観的・情緒的
な)愛着を重視。
人間によって「経験される空間」
空間に対する「場所」
マルクス主義地理学
空間および自然と人間の間の関係(環境)とい
う地理学的テーマについて(経済的)法則性・理
論を究明。
 空間や環境における社会矛盾を明らかにする。
↓
資本主義の止揚
地理学の「左傾化」
社会矛盾と反体制派
幾何学的世界と体制派
ポストモダン地理学
地理学での人間回復を指向する三つの流れを
包含する。1990年代から。
ポストモダニズム=世界に通底する普遍的原
理を否定。多様性を尊重。近代社会のあり方
(モダニズム)を批判。
↓
近代社会の規範から疎外された人々(女性、少
数民族、同性愛者、子ども、老人、 障碍者etc.)
とそういう人々に関わる場所を対象。
空間から場所へ
空間(space)
抽象的、一般的、客観的
場所(place)
具体的、個別的、主観的
平均(均質)化されない固有のもの
政治地理学における場所論の展開
構造化理論
構造(structure)と行為主体(agent) (Giddensら)
構造主義的マルクス主義(functionalism)批判
極端な人間の主意主義(voluntarism)に立たない
人間(集団)による行為論の接合
構造は人間の行為により再生産・改変される
構造化の生起する場=時空間的に固有
新しい地誌学(地域地理学)
構造化理論の知見を地誌学(地域地理学)の再編
成に接合
地域や場所に展開する構造(一般的プロセス:資
本主義)と行為主体(固有のプロセス:労働者階
級)の相互関係
地域や場所の固有性は一般性から理解される
ポストモダン地理学への展開
人間の行為を決定するもの
階級、教育、所得、ジェンダー、エスニシティといっ
た構成的(compositional)要素→社会学などに支
配的
日常生活の場(地域や場所)や時間といった文脈
的(contextual)要素→(時間)地理学の発想
政治地理学への展開
選挙地理学での論争
近隣効果(neighborhood effect)の析出
知人サークルや政党の地方組織の活動(cf.血縁、
地縁、地盤)
計量政治(社会)学からの否定的評価
集計データの問題点(生態学的誤謬)
地理的文脈(コンテクスト)の存在論的意味
人間の政治的行動は「地理的」に形成されうるか?
他の政治的行動の理解へ
「場所の政治」の課題
 ロカリティに着目するが単なる政治地誌ではない
 ローカルな政治的行動を惹起する一般的プロセスと
は何か
 その政治的行動とは文脈的(地理的)条件をどう反
映しているのか
 そうした条件の実証は当該政治行動の理解に対し
有効な知見を提供するか
 新しい文化・社会地理学はそうした地理学の存在論
的問題を吟味しようとしているか