集落法人のモデル事例 - 広島県

これまでに設立された集落法人のリーダーにお集まりいただき,これから集落法人
の設立を検討している集落の皆さんが悩んでいることに対し,どのように対応してき
たのか伺いました。
お集まりいただいた集落法人のリーダーは次のとおりです。
集落法人名
設立年 市町村名
(農)うづつき
H7 芸北町
(農)いかだづ
H13 大朝町
(農)ファーム・ウチ H9 東広島市
(農)アイ・おだけ
H14 東広島市
(農)あぞうばら
H14 久井町
(農)さわやか田打
H11 世羅町
(農)重兼農場
H1 東広島市
役職名
代表理事
代表理事
代表理事
代表理事
代表理事
代表理事
代表理事
名前
小川 和夫さん
黒田 重三さん
藤川 頼信さん
榊原 二郎さん
行迫 政明さん
福庭 盛人さん
本山 博文さん
経営の特徴
オペレータ中心型
町内法人連携
法人間連携
全戸参加型
農産物加工
協議会会長
※これは,平成 16 年 2 月 20 日「集落法人のリーダーによる座談会」の内容です。
集落法人のモデル事例
なぜ,
なぜ,集落法人を
集落法人を設立したのですか
設立したのですか
1
■ 小川さん:(農)うづつき
私の集落が法人化しようとした時には,県内に
は重兼農場など数法人しかなく,農業生産法人と
いう言葉も理解できなかった。しかも,重兼農場
の場合,兼業農家がほとんどで,別に生活の糧を
持っており,我が集落の社会環境とは全く違って
いた。
しかし,集落が大変危険な状態であったので,
何とかしなければならないということで,みんな
小川さん:(農)うづつき
で考えてできた形がたまたま集落法人であった。
■ 藤川さん:(農)ファーム・ウチ
悪い地形を克服しようとほ場整備に取り組んだが,完成が近づくにつれ,今後とも,
農業を継続していくことを不安に思う農家が多く現れてきた。
みんなで今後の営農を考えている時,重兼農場の本山さんの「個々の経営では,汗
水流しても機械の購入や修繕で 10a当たり年間 8~10 万円の赤字を出している」とい
う話を聞いて,たいへん衝撃を受けた。そして,青年団が中心となり,困る人だけで
も集まろうということになり,法人化した。
■ 福庭さん:(農)さわやか田打
担い手育成型のほ場整備事業の要件をクリアーするためにはどうするかということ
もあったが,やはり,高齢化などの中でほ場整備はしたものの,耕作ができない農家
が増え,その後の集落をどうするかが大きな課題となり,若い世代を中心に集落法人
化に取り組んだ。
しかし,みんなに集落法人というもの理解してもらうこと,そして,土地への執着
よりも自ら栽培することへの執着が強く,その執着を捨ててもらうことに苦労した。
■ 黒田さん:(農)いかだづ
ほ場整備事業を実施した後,大型稲作農家からの「機械の償却で儲けがなくなるの
だから,今後は機械の更新はせずに共同でやろう」という提案から,集落で機械利用
組合を設立した。
その後,機械利用組合の機械の更新時期を迎えた時,県から集落法人化の提案を受
け,大きな反対もなく法人化に向けて準備することとなった。
ただ,1地区だけでは 12ha しかなかったので,筏津の3地区をまとめようと話を持
ちかけ,そのうち1地区から合意が得られ,20ha 以上となったので法人化した。
■ 榊原さん:(農)アイ・おだけ
4集落のうち2つ営農集団を設立していたが,担い手が高齢化し,機械投資が大き
く大豆の集団転作等も行き詰まっていた。また,中山間地域等直接支払制度の適用も
あり,,法人化を目指す動機となった。
設立の過程では,これまで作業を受託していた農家らから反対の声もあったが,最
終的には理解が得られ,全戸参加となった。実は,その農家にとって,それが幸いす
ることもあった。
■ 行迫さん:(農)あぞうばら
他の集落の大型稲作農家の方々が自分の集落でも農地を借りて生産をされていたが,
集落での池の管理や水路の掃除など,大型稲作農家の方は一緒に作業をしてくれなか
った。このままでは,集落の営農のルールが崩れてくるのではないかと不安になり,
若い世代から我々で守っていかなければという声があがってきた。苦労はあったが,
意外とすんなり法人化できた。
集落法人のモデル事例
個々の農業機械はどのように
農業機械はどのように処分
はどのように処分したのですか
処分したのですか
2
■ 小川さん:(農)うづつき
集落の7割の人が何らかの作業を委託し,大型機械を所有している人がほとんどい
なかったので,ほとんど問題はなかった。
■ 藤川さん:(農)ファーム・ウチ
機械は個々の農家に処分してもらった。機械の所
有状況を調査し,査定してもらったところ,集落全
体で3億円あまりの機械があり,とても,法人とし
て処分できる金額ではなかった。
■ 福庭さん:(農)さわやか田打
藤川さん:(農)ファーム・ウチ
当初,新しい機械を所有している人には,その
個人の機械をリースによって利用することも認め
たが,粘土質地帯であり,また,大区画ほ場整備をしたので,法人が所有するような
大型機械でないと間に合わず,自然と利用しなくなった。
■ 榊原さん:(農)アイ・おだけ
設立した時(H14)には,地域外の多くの人も集落法人という言葉を知っていたので,
親戚や友人などが「法人にするのならば機械はいらないだろう」と買いに来て,何の
苦労もなく,個々が処分することができた。
■ 行迫さん:(農)あぞうばら
地区内で作業受託している農家や営農組合に作業が集積されてきていたため,個人
的にあまり機械を持っていなかったので,機械の処分については大きな問題とならな
かった。
集落法人のモデル事例
3
法人化以前に
法人化以前に野菜生産などを
野菜生産などを行
などを行っていた人
っていた人はどうしているので
すか
■ 福庭さん:(農)さわやか田打
施設までは導入していなかったが野菜などを生産していた農家はいた。法人として
はそういうやる気のある担い手を育てていきたいので,法人に集積した農地の一番条
件のよいところで野菜を生産してもらっている。
■ 黒田さん:(農)いかだづ
地区内には,花の生産者が1軒いた。その畑は継続して利用してもらっているが,
田については法人に集積している。また,法人の育苗ハウスを利用した花壇苗の生産
を,その人の指導の下,女性や高齢者を中心に行ってもらっている。
■ 榊原さん:(農)アイ・おだけ
アスパラガスの生産していた農家がいたが,アスパラガスを植栽している農地を含
め全ての農地を法人に集積した。したがって,法人がアスパラガスの販売代金を受け
取り,利益分相当を法人から地代と労賃によって支払っている。しかしながら,個々
の農家によって販売先が違っていたことなどから経理事務がたいへん負担となってい
る。
■ 行迫さん:(農)あぞうばら
ハウスわけぎの生産している農家がいるが,とても法人にはその栽培まで管理する
能力は持ち合わせていないので,ハウスが建っている田だけは法人に集積せず,独立
した経営によって個々で努力してもらっている。
集落法人のモデル事例
資本金はどれくらいが
資本金はどれくらいが妥当
はどれくらいが妥当だと
妥当だと考
だと考えますか
4
■ 福庭さん:(農)さわやか田打
1戸1万円の 51 万円でスタートしたが,補助金が
あったので問題はなかった。その後,法人住民税の
均等割の金額が高くなる資本金額1千万円を少し下
回る 950 万円まで増資した。
■ 本山さん:(農)重兼農場
機械投資を借入金にした場合はその償還金と運
福庭さん:(農)さわやか田打
転資金を資本金として用意しなければならない。中山間地域等直接支払制度の補助金
なども含め,特に運転資金をどれだけ必要なのか,よく考えなければならない。
■ 藤川さん:(農)ファーム・ウチ
機械導入にあらゆる補助金を利用したため,運転資金は 10a当たり1万円の 300 万
円の資本金のみでスタートしたが,すぐに底をついた。そこで,理事が集まり,判を
押して 500 万円借りるなど大変苦労した。後で考えると 10a当たり3万円程度必要だ
った。法人設立に当たりなるべく多くの人に参加をしてもらおうと,10a当たり1万
円にしたのが失敗だった。
潤沢には必要ないが,かなり精密な計算が必要である。
■ 黒田さん:(農)いかだづ
法人設立時に隣の地域にも声をかけ,その地域の人たちの参加をみやすくするため,
最初は 10a当たり1万円でスタートしたが,2万円になるまで増資してもらうことに
している。
■ 本山さん:(農)重兼農場
なるべく多くの参加をしてもらうために,10a当たり1万円にしたとしても,個々
の農家は,集落法人化することによって儲かるのだから,毎年1万円ずつ天引きして
増資に当てるようにすればよい。今は金利が安いので,借入金は大きな負担にはなら
ない。増資したお金で償還していけばよい。
集落法人のモデル事例
どの程度
どの程度の
程度の資本装備が
資本装備が必要だと
必要だと思
だと思いますか
5
■ 本山さん:(農)重兼農場
適期の違う品種の組み合わせによって,かなりの投資額を減らすことができる。格
納庫も簡易なものでよく,北部地域では難しいが,パイプハウスにビニールシートを
かぶせたようなもので充分である。
■ 小川さん:(農)うづつき
栽培面積,気候からみた機械の稼働率を計算すれば,必要な機械の台数が算出でき
るが,それ以上に利用できる方法を工夫することが経営上,重要である。
■ 福庭さん:(農)さわやか田打
自らが資本装備するだけでなく,リースを利用する,法人間で連携するなどいろい
ろな方法があり,工夫をしていく必要がある。
集落法人のモデル事例
法人設立時に
法人設立時に,それ以前
それ以前の
以前の出入作はどう
出入作はどう対応
はどう対応したのですか
対応したのですか
6
■ 榊原さん:(農)アイ・おだけ
法人設立と同時に,農業委員会を通じて解消した。
■ 黒田さん:(農)いかだづ
地区内の大型稲作農家が受託している農地をどうするかということが問題となった
が,地区内の農地は全て法人に集積してもらい,地区外の農地については,大型稲作
農家が営農を継続した。法人としては,その大型稲
作農家の所得を十分ではないが保障する仕組みを構
築した。
また,大朝町では出入作が多いので,集落全体が
まとまりにくい。そこで,5~6戸の農家だけで農
地をまとめ,預かって欲しいという要望もある。
■ 行迫さん:(農)あぞうばら
大型稲作農家に預けている農地の契約期間にば
黒田さん:(農)いかだづ
らつきがあり,大型稲作農家にも生活があるので,
契約期間中は継続しているが,契約期間終了後は,法人に農地を集積することとなっ
ている。
なお,大型稲作農家も集落法人のように十分な管理ができないため,継続を希望す
ることはなく,契約期間中に別の預かる田を探してもらうようにしている。
集落法人のモデル事例
法人の
法人の途中加入は
途中加入は認めていますか
7
■ 藤川さん:(農)ファーム・ウチ
構成員にはなれないが,地代はただで,農地は預
かっている。
■ 本山さん:(農)重兼農場
あえて構成員として加入される必要はない。法人
としては,農地を集積し,効率的な農業ができれば
よいのではないか。
行迫さん:(農)あぞうばら
■ 行迫さん:(農)あぞうばら
大型稲作農家に預けた農地の契約期間が違うので,契約期間終了後加入してもらう
道を残している。
■ 本山さん:(農)重兼農場
どうしても集落法人化に反対する人たちはいる。当初は,集落法人を理解できなく
て,反対した人たちが,理解して加入を求めてきたときには,門戸を開けるべきでは
ないだろうか。ケース・バイ・ケースで解決の方法を考えていくべきではないだろう
か。
集落法人のモデル事例
法人の
法人の役員などにはどれくらいの
役員などにはどれくらいの報酬
などにはどれくらいの報酬を
報酬を支払うべきですか
支払うべきですか
8
■ 本山さん:(農)重兼農場
私だけ月額 18 万円にしているが,私の場合は,オペレーターとして出ても,事務に
出ても,時間を計算するのが面倒なので,これまでの実績から定額とした。
■ 行迫さん:(農)あぞうばら
私の場合,年間 10 万円。オペレーターに出ればもっとあるが,組合長に仕事が集中
してはいけないと思っている。
■ 藤川さん:(農)ファーム・ウチ
労務費は総額 600 万円しか支払っておらず一人分しかない。しかし,一人では運営
できない。これをみんなで分配し,みんなに仕事を押し付けているから運営できてい
る。今後,不在地主が増えていくと共同でやっていくことが難しくなってくると思う。
■ 榊原さん:(農)アイ・おだけ
オペレーターの中で一番多く働いた人に時給1,200円で年間120万円程度支払った。
また,経理を担当する事務の人が欲しいが,年間,雇用することができず難しい。
■ 藤川さん:(農)ファーム・ウチ
作業管理計画をJAの営農指導員にお願いしているが,経理についてもJAの援助
してもらう方法もあるのではないか。
■ 小川さん:(農)うづつき
役員報酬をもらうと責任が生じる。後継者に自覚を負わそうと思うとそれなりの報
酬を出しておかなければならない。
専業で雇用をしていくと,雇用した人間の生活を守っていかなければならない。費
用のうち労賃の占める割合が多くなる。雇用した人が1日働いて,どれだけ法人に収
益を与えてくれるのか計算して経営していかなければならない。
集落法人のモデル事例
水田の
水田の良否によって
良否によって地代等
によって地代等は
地代等は違うのですか
9
■ 藤川さん:(農)ファーム・ウチ
どの田もその家にとっては大事な田なので,日照等によって地代を変えることはで
きない。しかし,水路もない表土も薄い田に対して同額の地代を支払っていることを
総会で質問され,回答に窮した。
■ 榊原さん:(農)アイ・おだけ
小作料の上田,中田,下田のような地代を設定
すると,農地を集積することができなくなる。た
だ,畦畔を含めて地代を払うのか,含めずに地代
を払うのかによって大きく変わる。
■ 行迫さん:(農)あぞうばら
ほ場整備が未整備のため,稲を作らない田も預
かっているが,地代は普通の田の半分にしている。
榊原さん:(農)アイ・おだけ
また,水管理料については我田引水のようなこ
とがあってはいけないので,個々の農家に委託して支払うのではなく,水系によって
1ha を一括して管理を委託している。
■ 黒田さん:(農)いかだづ
私達の法人でも,水管理については水系によって一括して管理を委託する方法に変
えた。個々に水管理を委託すると,防除作業など水があってはならない時に水があっ
て,作業に影響を与える可能性がある。
また,地代については,ほ場整備田と未整備田では6倍に価格差を設けている。
■ 小川さん:(農)うづつき
組合員は一定だが,7集落にわたって組合員以外から受けている農地については,
その条件によって全くバラバラである。
■ 本山さん:(農)重兼農場
地代は一律にしているが,畦畔の管理を義務付けているので差ができている。つま
り,条件の悪い田も同じ地代の中で畦畔を管理しなければならないので,結果として
地代が安くなるということになる。これによって,公平感を保っている。
集落法人のモデル事例
集落の中での法人経営
での法人経営についてどのように
法人経営についてどのように考
についてどのように考えていますか
10 集落の
■ 福庭さん:(農)さわやか田打
中山間地域の集落法人は,集落自治との関連が大変深く,経営だけでは語れない部
分があると思う。鳥獣害対策の問題や市町村合併に伴う自治機能など現場には様々な
問題が絡み合っている。集落本来の姿を守ろうとすると,経営の効率化と相反する部
分がある。
■ 小川さん:(農)うづつき
農業以外にも年配の人ができる仕事を受けている。将来的には福祉事業まで手を広
げないと集落は維持できないのではないかと思う。年配の人の家に訪問し声をかける,
朝,昼,晩の食事を配るなど,行政として行うことも,集落法人が受けて行ってもよ
いのではないかと思う。
■ 高木さん:(農)ファーム・ウチ
仕方がない部分もあるが,本来ならば,集落法人が自治機能を担うべきではない。
全く同じ構成員でよいので別の組織を立ち上げるべきである。そうでないと,集落法
人の経営が立ち行かなくなる恐れがある。
集落法人のモデル事例
後継者の
後継者の育成をどのように
育成をどのように考
をどのように考えていますか
11
■ 藤川さん:(農)ファーム・ウチ
基本的には,オペレーターは理事が対応することとしているが,後継者確保のため,
理事ではないが,これぞという若い人にもオペレーターを担ってもらっている。若い
人が出られる時は,その人たちに任せ,若い人が「自らが作業をしなくては法人が困
る」という意識を持ってもらえるようにしている。
■ 黒田さん:(農)いかだづ
50 歳代の大型稲作農家が法人の水稲栽培の中心を担っているが,その息子さんも帰
ってくることになっている。
■ 榊原さん:(農)アイ・おだけ
年配の人を中心に法人を立ち上げたので,後継者のことは大きな課題である。若い
人の土日の作業も,会社や学校の行事と重なり,日程調整が大変である。
これまで農作業の中心を担ってきた女性の方々も「農作業が楽になって,ええ按配
じゃ」とゆっくりしているが,今年は新たな活動を期待している。
集落法人のモデル事例
今後の
今後の法人経営についてどう
法人経営についてどう考
についてどう考えていますか
12
■ 藤川さん:(農)ファーム・ウチ
地代 18,000 円,畦畔管理料 17,000 円,水管理料 2,000 円の 37,000 円でスタートし,
今年度,多少の利益も出たが,今後の米価の下落を思うと,大幅に地代を下げるしか
ないと考えた。また,多くの農家がほ場整備の償還金を一括返還し,負担も軽減され
た。そこで,地代を 3,000 円下げた。また,オペレーターの時給も 1,500 円から 1,300
円に下げた。
■ 榊原さん:(農)アイ・おだけ
米価が下がると,地代を1万円ぐらいまでは下げていかなければならないと思って
いる。その上で,大豆など転作作物をどこまで収益性の高いものにしていくか,また,
いかに安く米をつくっていくのか考えていかなければならない。
■ 小川さん:(農)うづつき
我々が作った米の販売収入と消費者の購入金額では大きな差がある。この差額が生
産者に入ってくる仕組みを構築していかなければならない。玄米で販売するより精米
で,精米で販売するよりご飯で販売したほうが何倍も高い。
集落法人のモデル事例
これから法人化
これから法人化を
法人化を考えている集落
えている集落への
集落へのワンポイントアドバイス
へのワンポイントアドバイス
13
広島県集落法人連絡協議会 会長 本山 博文
今,全国的に集落営農の法人化がブームとな
っております。その背景の一つには,過疎化,
高齢化,兼業の進展等による労働力の枯渇から
の集落崩壊の危機。二つには,新たな米政策や
担い手型基盤整備等に見られる様な「担い手」
に焦点を絞った政策支援の方向にあり,集落型
経営体も担い手に位置付け,支援の対象にする
こととなったことによるものです。
国は,これまで認定農業者を中心に担い手の
本山さん:(農)重兼農場
育成を進められましたが,このたび集落型経営
体を担い手に位置付けた背景には,WTO・FTA等の避けて通れない自由貿易化の
流れに対処して「効率的かつ安定的な経営体」の育成が緊急の課題であり,立ち遅れ
ている農地利用集積の一層の促進を図る必要から,とりわけ「面的団地的集積」に効
果的な集落機能に期待をかけているものです。
広島県では,国の方針に先駆けて平成 12 年度から県の最重点施策として,集落農場
型農業生産法人の育成を進められ,これまでに 57 法人(平成 16 年 2 月末時点)が設
立,「効率的かつ安定的な経営」を実証されており,本県のこうした取り組みが国の政
策にも大きく影響しているものと考えます。
県内では,特に担い手減少への対応策として集落営農の法人化を検討されていると
ころがが多いものと思われます。国の支援も必要ではありますが,支援を目的とした
法人化になりますと,その場限りで法人化のメリットを引き出すこともできません。
地域の実態はそれぞれ異なります。「なぜ法人化するのか」しっかりとした理念を持
ち,それぞれの地域内で将来を見通し,よく話し合って決めることが重要です。
広島県集落法人連絡協議会では,これから法人を考えている集落の支援のほか,協
議会の仲間が連携協力していくことを申し合わせております。
下記は,法人の先輩としての「法人を設立する場合のワンポイントアドバイス」で
す。参考にしてください。
「△△さんも後何年もできないだろう。○○さんは既に耕作放棄している。」「××
さんのところは5年したら息子が定年で帰ってくる。」「10 年後にはこの集落はどう
なるのだろう。」というところから話題を始めて,「それでは,どうしよう……」と地
域の農業の将来について話し合うことからスタートすることが必要である。
■ 最初のきっかけづくり
新たな米政策や担い手型基盤整備などにより,担い手に焦点を絞った政策支援が展
開されるが,「支援が目的」の法人化であってはならない。「支援が目的」であると,
その場限りの対策になり定着しない。制度が変われば終わりになる。
■ 支援策が目的の法人であってはならない
法人化すれば目的が達成できるというものではない。ここからが始まりである。ど
のように運営していくのかという夢のあるビジョンが大切である。
■ 法人化は経営手法,それがスタート
合意が得やすいように出資金を低く抑える向きがある。1年間運営していくために
は,資材費,賃金,会議費などの運転資金も相当額が必要である。借入金に頼ってい
ると借入金償還のために償却積立金を食いつぶすということになりかねない。数年か
けて増資しても良いから借入金はできる限り低く抑えたい。
■ 出資金は多く,借入は少なく
補助金があるので,この際「あれもこれも」と言った導入はしないことである。導
入にあたっては,実際に使用している法人の意見を参考にすると良い。特に,建物に
費用がかかりすぎている例が多く見かけられるが,プレハブを利用して費用を抑えて
いる例もある。積雪の少ないところの格納庫は,パイプハウスで十分である。
■ 施設・設備投資は慎重に
新しい便利な機械が開発されて,必ず,設備が増えて格納庫の増設が必要となって
くるため,敷地は後からでも十分に確保できる場所を選定することが望ましい。
■ 敷地は広めに確保しておくことが必要
集落維持が目的の法人も多いが,次の世代に継いでいくことを考えれば,経営にウ
ェートを置いた運営を行うことが望ましい。
■ 集落維持か,経営か
何事も必ず反対する人はいる。「10 人いれば,賛成は6人,2人は反対,2人は様
子伺い」,「反対があって当然」という気構えで望めば気も楽になる。反対者の条件を
安易にのめば,後々支障を来たすことになるので注意が必要である。
まとまりがつかない場合は,「中途加入はできない」とか「加入が遅れるごとに加入
金を加算する」とか,条件を付けてけじめをつけることも必要である。
■ 反対はあっても当たり前
提案したら,あまり間を置かないことが重要である。間を置くと,何度も同じこと
を説明したり,堂々巡りになりかねない。反対者も悪いうわさばかり聞いてくる。関
心の高い間に一気に事を進める方が良い。
■ 時間をかけ過ぎるのも問題
大規模稲作で生計を立てている農家の生活を脅かすことになってはならない。その
農家はプロであり,貴重な存在である。参加してもらい中心になって経営をするのが
理想的である。
■ 大規模稲作で生計を立てている農家を大切に
集落では,信望のある長者の意見は反対する人が少ない。「あの人が言っているのだ
から」と付いてくる人が多い。
■ 信望のある長者を
先進地視察をすると,法人化したら「どのようなメリットがあるのか,問題点は何
か」ということが早く理解される。また,代表者だけでなく,個々の農家から直接,
話が聞かれればホンネが聞くことができる。
また,親戚や知人の集落で法人化しているところがあれば,個別に聞いて来てもら
い「飾らない実態」をみんなに聞いてもらうことも効果がある。
■ 農家に理解してもらうには先進事例の視察が手っ取り早い