株式会社優然

経営革新
名古屋市新事業支援センター((財)名古屋都市産業振興公社)
偶然から生まれた技術で画期的製品を開発
評価した技術
を除去する方法は無いだろうか」という相談を持
ちかけ、その時に教えられたのが、X線による除
㈱優然の製品「快適空気システム『憩』」は微
電方法であった。帯電物にX線を照射するとあっ
弱なX線を利用した空気浄化装置である。このX
という間に除電されることに驚き、これを商品化
線などが照射された空間は電離され、これを弱
することを考えた。最初に導入したのは当時、静
プラズマ環境と称し、他に身近なものとしては炎
電気が大きな問題となっていたパチンコ屋さんで
等が挙げられる。
「面白いから買って試してやろう」ということで、2
当社ではX線の照射によって作られた弱プラズ
台納入した。後日そのパチンコ屋さんから「あの
マ環境下にマイナスに荷電させた電極を置き、X
機械は空気を綺麗にしている」ということを聞か
線によって電離された範囲の全てをマイナスに
され、社長は、最初、何かの偶然だろうと考えた
偏らせる、という技術を開発した。一般的なマイ
のだが、パチンコ台のガラスやモニターテレビの
ナスイオン発生方法として知られているのは、コ
汚れが明らかに少なくなっていた。当初はマイナ
ロナ放電という方法であるが、窒素酸化物やオ
スイオンにそういった力があるのかと思い、ある
ゾン等を必ず生成するという弊害を併せ持つ。ま
特別養護老人ホームに持ち込んで試したが、一
た、水が硬いものに衝突するときにマイナスイオ
向に効果は現れない。いろいろと試行錯誤を重
ンを生成するというレナード効果という方法もあ
ねた上で出した結論は、マイナスイオンだけでは
るが、ミストが蒸発した段階で湿度を高めるとい
集塵効果は無く、電気集塵機があることによって
う弊害を持っている。
始めてその効果が現れることが解かってきた。こ
以上のようなことから、当センター事業可能性
うして現在の「快適空気システム『憩』」の原型が
評価委員会では、当社のマイナスイオン発生
形成され、パチンコホールのタバコの煙にとどま
は、よりクリーンな発生方法であると評価した。
らず高齢者施設などのような、ほこりはあまり無
製品開発に至った過程
佐久間社長の話では、「快適空気シ ステム
『憩』」は、最初から空気浄化装置という機能を
評した商品ではなかったとのことである。
佐久間社長は知り合いの高校教員に「静電気
いが臭いで困っている所にも導入されるようにな
った。
公的資金の活用
十分な資金を持っていない当社では、なかな
か自力での開発はままならず、公的資金を活用
した。開発期間中に中小企業創造活動促進法
の愛知県知事の認定を受け、ここでは基礎的な
株式会社
研究を行った。また、科学技術振興事業団の独
業種
優
然
:空気浄化装置製造
創的研究成果育成事業のモデル化企業として、
販売
具体的なガス体の吸着や若干ではあるが空中
本社所在地:名古屋市天白区
浮遊菌の研究を行った。それぞれ補助金あるい
資本金
:2,200万円
は委託事業費を受給して理論的研究を進め、ア
創業
:平成7年5月17日
メリカと日本での特許を取得するに至った。
売上高
:1億8千万円
これ以外にも公的な開発支援体制は種々ある
が、結果的には資金的に安定している中企業が
対象であるという観が強く、当社のような財政基
盤の貧弱な企業は研究内容の前段階である財
務評価で落とされてしまうことが多く、本質的な
ベンチャー企業が利用することは大変困難であ
ることが多い。こうした制度が本質的な意味での
ベンチャー企業が活用できるために、制度の抜
本的な改革が望まれるところである。
経営課題及び支援内容
従業員数 :13名
代表取締役
佐久間盛敏
私達はサラリーマンや教員などが集まって作った会社です。
当然のごとく資本などは十分にあるはずも無く、公的な借り入れ
も行なってきましたが、担保がないとテーブルにも載せていただ
けない金融機関ばかりでしたので、友人知人などから私的に借り
入れを行ない開発を行なってきました。そういった中で支援セン
ターからA評価を戴き、新たな借り入れを行なうことができ、九
死に一生を得たようなありがたい支援をして頂きました。また、
私達は経営ということに関しては皆素人で、そういう点において
も支援センターのマネージャーの皆様にはたくさんのことを教
えていただき、あるいは親身になって相談に乗っていただき、ず
いぶんお世話になりました。
バイスで、産学交流テクノフロンティアなどへの
試行錯誤を繰り返しながら、当社の「快適空気
出展、当センター主催のプレゼンテーション研修
システム『憩』」の完成度も次第に高くなり、それ
の受講など、PR活動を積極的に行なようになっ
に比例して納入実績も次第にあがっていった。
た。これまでに当センターでの相談回数は20回
経営的にはまだまだ未熟であり、なかなか損益
を超えるなど、経営者が気軽に相談できる支援
分岐点を越えることは出来ないが、有限会社か
機関として、事業展開の節目節目に積極的に利
ら株式会社に組織変更し、これまでの製品開
用されている。
発、技術開発を優先せざるを得ない体制から脱
創業以来、地道に努力を重ね、独自の技術に
皮し、技術開発と売上、利益のバランスも考えた
基づき開発してきた製品と、支援センターのアド
経営姿勢に移行する時期が訪れてきた。
バイスによる積極的な企業並びに製品のPRが
このような時期に、ちょうど平成13年4月にス
功を奏し、平成15年には全国的な営業網を有
タートしたばかりの名古屋市新事業支援センタ
する大阪二部上場企業との提携にも成功し、今
ーを来訪された。当センターは、知名度・信頼度
後の一層の発展、飛躍を目指しているところで
のアップのために、当センター事業可能性評価
ある。
委員会によるビジネスプランの評価を受けること
をアドバイスし、まず事業可能性評価委員会に
よる事業評価を受けられた。そこで、製品として
の将来性及びその独創的な技術力により、A評
価と認定した。この高い評価に基づき、名古屋
市の制度融資である「新製品・新技術開発導入
支援資金融資」を利用して、融資を受けることも
出来た。更に、平成14年度には、主に販売提携
先などを獲得するためのアドバイスを行い、当セ
ンター主催のビジネスプラン発表会で事業計画
を発表し、また、プロジェクトマネージャーのアド