応用生命科学部 環境安全科学研究室 猪狩友梨 田村崇晃 鈴木和将 川田邦明 新潟市秋葉区に自墳する油中の 炭化水素類の特徴と河川底質への影響 背景・目的 ① ② ③ ⑤ 新津川は新潟県新潟市を流域とする中小河川で あり、新津川が流れる秋葉区は、石油を含む金津層が広く分布している。 そのため、このような地層の上を流れる河川において、底質から滲みだし た油により河川が汚染されることが懸念される。すでに新津川の18地点で 採取した底質におけるn-アルカン類(C12~C32)及び多環芳香族炭化水素 類(PAHs)の分布について報告し、これらの炭化水素類の主な発生源の1つ として、底質から滲み出た石油を指摘した1)。 本研究では新津川の底質におけるn-アルカン類が自噴した石油に由来し たものであるかを検討するために、新津川流域で採取した油に含まれるnアルカン類を測定し、底質の測定結果と比較した。 下流 ④ ⑩ ⑧ ⑥⑦ ⑫ ⑬ ⑮ ⑰ ⑨ ⑪ ⑭ ⑯ ⑱ 上流 図1 新津川のサンプリング地点 実験方法 油試料は新潟市秋葉区に自噴している油 を2地点で採取した。底質試料は新津川流域の18地点で2008年10 月及び11月に表層底質を採取した【図1】 。油試料及び底質試料 の前処理及びGC/MS条件を【図2】に示す。 底質試料 油試料 ×3 acetone(10ml) 希釈 DCM 超音波抽出 還元銅 カラ ムクロマトグラフ 抽出液 DCM(10ml) ×2 水 DCM:acetone(9:1 ) (50ml) 組成比(%) 油(C-1とC-2)及びC-1とC-2が混入する地点 で採取した底質(site4とsite5)中のn-アルカン類の組成比を【図3】に 示す。C-1及びC-2におけるn-アルカン類の組成は、C18が最大とな るパターンを示した。C-1及びC-2のCPI値は、それぞれ1.34及び 1.07であった。各n-アルカンに対する相対比を求め、底質のC18が 全て自墳する石油由来であると仮定し、底質中のn-アルカン類につ いて石油由来とそれ以外によるアルカン類とに区分した 。結果を 【図4】に示す。なお、site4についてはC-1を、site5にC-2の相対比を それぞれ対応させた。石油以外の由来と推定される両地点のn-ア ルカン類の相対比については、r =0.908 ( p<0.01 ) と有意な相関が 認められたことから、ほぼ同じ起源に由来する 25 25 と考えられた。 20 20 C-1 15 15 これらのn-アルカ 10 10 ンについてCPI値 5 5 0 を算出したところ 0 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 12 14 16 18 20 22 24 Site4では0.32 、 15 15 またSite5では0.34 10 site4 10 であったことから 5 5 燃焼由来等の可能 0 0 性が考えられた。 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 12 14 16 18 20 22 24 n-アルカン類の炭素数 図3 n-アルカン類の組成比 参考文献 1)田村ほか, 第18回環境化学討論会講演要旨集, 374-375(2009) 濃縮 濃縮 Fr1 Fr2 上層 下層 Na2SO4(無水) ろ過 還元銅 GC/MS 濃縮 GC/MS測定条件 装置:サーモエレクトロン製POLARIS-Q カラム:J&W製DB-5MS(30m×0.25mm×0.25μm) 注入口温度:250℃ イオン化法:EI法 イオン源温度:230℃ インターフェイス温度:280℃ 濃縮 スキャン範囲:m/z 50-500 キャリアーガス:He Fr1 カラム温度 50℃(2min保持) 250℃ 5℃/min 280℃(30min保持) 10℃/min カラ ムクロマトグラフ DCM(10ml) DCM:acetone(9:1 ) (50ml) 濃縮 Fr2 GC/MS *DCM:ジ ク ロロメタン 図2 前処理方法及びGC/MS測定条件 1.5 Site4 1 C-2 0.5 26 28 30 32 site5 26 28 30 32 C18に対する相対比 結果・考察 0 -0.5 2.5 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 2 Site5 1.5 1 0.5 0 -0.5 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 n-アルカン類の炭素数 図4 n-アルカン類の起源
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