論文審査の結果の要旨

(様式4)
別
紙
(A4判)
2
論文審査の結果の要旨
学位申請者
居城
俊和
本論文は、「表面微細構造を用いた遠方‐近接場ふく射制御に関する研究」と題し、6 章
より構成されている。
第 1 章「緒論」では、Planck 則に従う通常のふく射成分である遠方場ふく射とは異なる
近接場ふく射の特性について概説している。さらに微細構造を用いて高度に制御された遠
方-近接場ふく射エネルギー利用の必要性を示すとともに本研究の目的を述べている。
第 2 章「ふく射機能性構造の自動最適化手法の確立およびその高速化」では、進化的ア
ルゴリズム(EA)と電磁波解析手法である FDTD 法を組み合わせた EA-FDTD 法による微
細構造の自動最適化設計手法について述べている。本手法をバイナリ型マイクロレンズの
形状設計に適用し、既往研究において十分に検証されていない突然変異率や交叉率等のパ
ラメータの組み合わせ設定が収束性(進化速度)に及ぼす影響を調査した結果から、短時
間で最適設計を行うための手法を明らかにしている。
第 3 章「モスアイ構造による太陽電池の高効率化」では、微細構造を用いた遠方場ふく
射制御の具体例として極低反射性能を発現するモスアイ(ガの目)構造に着目し、結晶シ
リコン太陽電池モジュールに適用した際の換効率向上効果を屋内外の実証試験により検証
した結果について述べている。8 日間の屋外試験を通じてモスアイ構造の極低反射性能によ
り変換効率が最大で約 7%、平均で約 5%向上することを明らかにしている。
第 4 章「近接場ふく射の理論的背景および数値解析手法」では、光学理論を用いて近接
場ふく射の発生メカニズムについて概説し、実験検証に求められる実験系への要件につい
て述べている。また、近接場ふく射の数値解析手法を概説し、近接-遠方場ふく射特性の
厳密解と数値解析結果を比較し、本手法の有効性について述べている。
第 5 章「近接場熱ふく射輸送量の実験的評価 -表面微細構造の影響-」では、分光干渉
計を用いて平板間の真空ギャップを正確・精密に測定することで平板間の近接-遠方場ふ
く射熱流束を正確・精密に定量評価した結果について述べている。石英平板表面に寸法 5
×5×5 μm の矩形空洞構造を多数形成した場合、矩形空洞構造が真空/平板界面近傍の近接
場成分を散乱することで遠方場の熱流束向上に寄与する一方、近接場効果は構造の無い平
板同士の場合よりも相対的に低下することを明らかにしている。さらに上記矩形空洞構造
に金をスパッタリングした金空洞構造では、空洞同士の共鳴効果が発現し、表面プラズモ
ン効果により熱輸送が促進されることで真空ギャップ 5 μm 以下においてふく射熱流束が 1
0 倍上に向上することを明らかにしている。
第 6 章では,本研究で得られた知見を総括している。
よって本論文は工学上および工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文
として十分な価値を有するものと認める。
審査委員主査
山田
昇
印