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平成27年 5月14日
東京都立産業技術高等専門学校長 殿
平成26度特定課題研究費実績報告書
研究代表者
研究分担者
所属
電子情報工学コース
職
准教授
氏名
黒木 啓之
所属
電子情報工学コース
職
教授
氏名
柴崎 年彦
所属
職
氏名
所属
職
氏名
(和文)電磁波の散乱問題に関する研究
研究課題名
(英文) Studies on Scattering Problem of Electromagnetic Waves
研究種目
重点課題研究
研究実績の概要
本年度は,波源を主に水平微小ダイポールとして,特にこれまで検討をしてこなかった散乱界計
算を行うことを目的として研究を行った.
研究経過としては,まずこの精密計算の過程において重要な級数展開式の特性を調査し,精度が
必要となる原因を特定することができた(文献[8]).さらに,これら式の特性から得られた知見を
利用し,垂直微小ダイポールの級数展開式の特性も調査し,それら特性の原因についても様々な知
見を得ることができた(文献[3]および[7]).
この特性の調査を踏まえて,散乱界計算を行った.特にここでは,波源をx-z平面に限定して簡単
化し解析を行った.その結果,これまで可能でなかった散乱界を得ることできた(文献[1]).また
結果の妥当性を証明するために,物理光学近似での結果と比較した.その結果,両者の傾向が一致
していることから,今回の結果の妥当性を得ることができた.さらにこの結果が評価され,今後東
京工業大学の安藤真先生およびその研究室の学生さんと共同研究を行う予定となっている.
また本年度,波源を平面波とした時の,円板の半径に対する計算精度の必要bit数の調査を行っ
た.その結果,非常に直線的な数式を得ることができた(文献[2]).このことにより,円板の半径
に対して必要な変数のデータ長(bit数)を1[bit]単位で的確に決定できるようになった.さらに,
同様の結果を多倍長精度数値計算を用いた精密計算ではなく,差分法であるFDTD法を使った計算を
行い,今回は複素電流を用いることによって精度を向上させることができた(文献[4],[6],[9]).
重ねて,これらで使ったシステムを用いて,周期構造導波路の数値解析も行った(文献[5]).
研究費の使用目的としては,計算のためのパーソナルコンピュータを購入したほか,以下の研究
発表の旅費として利用した.
研究発表(論文、著書、講演等)
[1]黒木啓之,柴崎年彦,木下照弘,水平微小ダイポールによる完全導体円板の散乱界に対する数値計算,2015
年電子情報通信学会総合大会,pp.S-11-12,2015.3.
[2]福永圭脩,黒木啓之,柴崎年彦,木下照弘,多倍長精度数値計算を用いた導体円板に対する電流分布の数値計
算,p.194,信学会東京支部発表会,2015,2.
[3] 木下照弘,黒木啓之,柴崎年彦,導体円板近傍に置かれた電気的微小ダイポール波源による放射電磁界の展
開係数,第43回電磁界理論シンポジウム,EMT-14-129,pp.31-34,2014.11.
[4] 武藤拓人,黒木啓之,柴崎年彦,木下照弘,FDTD法を用いた導体円板上の複素電流分布の計算,第43回電磁界
理論シンポジウム,EMT-14-130,pp.35-40,2014.11.
[5] 柴崎年彦,黒木啓之,木下照弘,厚い容量性不連続による周期構造導波路の数値解析,2014年電子情報通信
学会ソサイエティ大会予稿集,CS-1-1,2014.9.
[6] 武藤拓人,黒木啓之,柴崎年彦,木下照弘,FDTD法を用いた導体円板上の複素電流計算,第33回数理科学講演
会予稿集,C201,2014.8.
[7] 木下照弘,黒木啓之,柴崎年彦,導体円板近傍の垂直方向を向いた電気的微小ダイポール波源による放射電
磁界の数値計算法,2014年7月電磁界理論研究会(光・電波ワークショップ),EMT-14-114, pp143-147,2014.7.
[8] 黒木啓之,柴崎年彦,木下照弘,水平ダイポール波源による導体円板の精密計算における級数展開式の特
性,2014年5月電磁界理論研究会,EMT-14-084,pp.91-96,2014.5.
[9] 武藤拓人,黒木啓之,柴崎年彦,木下照弘,FDTD 法を用いた導体円板上の電流分布の計算,2014年5月電磁界
理論研究会,EMT-14-083,pp.85-90,2014.5.
その他(教育活動・OPCへの貢献,特許等)
本研究では多倍長精度数値計算を利用しているが,これは電波の散乱などの研究だけではなく,一
般に大きな桁数を扱う計算,および高い精度が要求される計算に適用できるが,あまり他の分野で
は利用されていないため,他分野への適用を模索及びアプローチをしていく予定である.またこの
多倍長精度数値計算の技術は,自身が学生に教授しているプログラミング関連の授業に大いに活か
すことができる.また平成24昨年度からこれら計算手法をさらに高速化する研究を卒業研究とし
て行うなど,本研究における学生への波及効果は年々高くなっている.一昨年度からはさらに計算
を高速化する手法として,GPGPUを用いた並列処理を採用している.今後,このGPGPUを用いた計算
を卒業研究や専攻科の特別研究などで行うことができると同時に,近年の高速化技術を学生に実践
的に教えることができると考えている.