電中研報告 電 力 輸 送 02-026 回転対称な垂直接地電極に関するインピー ダンスの解析手法 背 景 電力設備接地系の接地抵抗特性は耐雷設計上の重要な要因であるため,その簡便な 推定ができ,これを電力系統の汎用過渡現象解析ソフト EMTP 注1に組み込むことが できれば実用的な意味は大きい。 回路理論から発展した EMTP は,避雷器,ケーブル,地面に平行な線路などの解析 には威力を発揮してきた注2。しかし地面に垂直な接地電極などの垂直導体系では,ケ ーブルや地面に平行な線路の場合とは電磁波の伝搬形態が異なる状況において,無限 遠点に対する特性や平面波近似ができない早い時間領域での特性が要求されるため, そのモデル化が困難であった。 目 的 配電用接地棒に代表される地表面に垂直で回転対称な接地電極について,地表面か ら見たインピーダンス(軸方向インピーダンス)を導出し,EMTP など回路解析用の ソフトウェアーに組み込むことのできる RLC 等価回路を求める手法を開発する。 主な成果 (1)FDTD 過渡応答解析手法による軸方向インピーダンスの定義・解析手法なら びに等価回路の導出方法 (ⅰ)地表面に垂直で回転対称な接地電極が,地盤(z≦0)に埋設されている系 を考える(図 1 参照)。このような系において,z 軸の上方から電流が伝搬(非平 面波)して来る場合には,接地電極と交差する水平面内の電界積分として接地電 極の電位を一義的に決定できる。したがって接地電極の上端における電位と接地 電極に流れ込む電流の比としてインピーダンスを定義でき,ここでは軸方向イン ピーダンスと称する。 (ⅱ)図 1 のモデルを,時間領域の FDTD 過渡応答解析手法注3で模擬し,接地電 極の電位と接地電極に流れ込む電流を解析する。次に,これら時間領域データをフ ーリエ変換により周波数領域で表現した後,それらの比をとることにより軸方向イ ンピーダンスを求める。 (ⅲ)さらに,得られた軸方向インピーダンスについて,RLC 等価回路を同定す る手法注4を適用してその等価回路を求める。 (2)配電用接地棒に関する等価回路の計算例 図 2 は,当所赤城試験センターの地盤に埋設した配電用接地棒に関する軸方向イ ンピーダンスの解析例である。軸方向インピーダンスの周波数零における抵抗(実 部)83Ωに対して,導電率より計算した定常接地抵抗は 92Ωであり,両者はほぼ 一致する。周波数が高くなるにしたがって,実部も虚部も大きく変化する。この変 化の様子は,ダイポールアンテナの入力インピーダンスの変化に類似している。 また図 3 は,軸方向インピーダンスの等価回路である。等価回路は,RLC の集 中定数を直並列に組み合わせた簡単なものであり,EMTP に容易に組み込むことが できる。 注1)Electromagnetic Transient Program の略. 注2)EMTP では波長に比べて解析対象物の寸法が無視で きる場合や平面波が伝搬すると仮定してよい状態を解析対象とし,それらを集中定数や分布定数線路により容易 にモデル化できたことによる. 注3)電中研報告 T99043. 注4)野田,高崎,「電力系統の瞬時解析のため の部分系統縮約手法−高調波不安定現象解析および開閉サージ計算への適用−」電中研研究報告(作成中). z 電流 i(t) 40m 300 原点 Real and imaginary part of Zaxi [ohm] 101Δx×2001Δy×161Δz Δx= Δy= 0.02, Δz= 0.25m Δt: 0.470972e-10s, Maximum of 262144 Time step y x 導体 30m 空気 100 0 電界の積分路 0 5 10 15 Frequency [MHz] 20 接地棒(10mmφ, 3m) 10m 地盤(εr=50 σ=4.088 mS/m) -100 -6.2mS 0.10nF 1.9μH 0.046nF -12Ω 1.3mS 1.8μH 11Ω 2mS 1.5nF 21mS 1.6μH 14Ω 1.7nF 36Ω 0.19μH 軸方向インピーダンス Zaxi を導出 する際の座標 図3 z 波源,内部抵抗50Ω 200 図1 制動抵抗10kΩ y 接地極 (z軸について回転対称) x 断面 x=1m(50Δx) Real Imaginary 図2 配電用接地棒に関する軸方向インピーダンス Zaxi の解析結果 同定した RLC 等価回路 研究報告 T02049 関連研究報告書 キーワード:接地,過渡応答,電磁界,サージ,地盤 「FD-TD 法に基づく電力設備の過渡接地抵抗解析手法の開発」T98067 (1999.6) 「電磁界解析に基づく新しい過渡接地抵抗解析手法の実証」T99043 (2000.5) 担当者 連 絡 先 [非売品・不許複製] 田辺 一夫 (狛江研究所・電気絶縁部) (財)電力中央研究所 狛江研究所 事務部 研究管理担当 Tel. 03-3480-2111(代) E-mail : [email protected] c 財団法人電力中央研究所
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