Kobe University Repository : Kernel

 Kobe
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Title
居場所感に関連する大学生の生活の一側面
Author(s)
石本, 雄真
Citation
神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要, 2(1): 16
Issue date
2008-09
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81000802
Create Date: 2014-10-30
(1)
神戸大学大学院人間発達環境学研究科
研究紀要第 2 巻第1号 2008
研究論文
居場所感に関連する大学生の生活の一側面
Some Aspects of the Daily Life of University Students Related to Sense of Ibasho.
石 本 雄 真*
Yuma ISHIMOTO *
要約:本研究は,大学生の生活におけるいくつかの側面が,大学生にとって重要であると考えられる家族,友人,恋人関係におけ
る居場所感に与える影響について検討したものである。大学生に対する質問紙調査の結果,部活動・サークルへの参加の有無,ボ
ランティア活動への参加の有無,インターネット上でのみ交流のある友人の有無,不登校経験のそれぞれが居場所感に影響を与え
ていた。インターネット上でのみ交流のある友人がいる人の方がいない人よりも,家族関係における居場所感や恋人関係における
居場所感が感じられていないこと,不登校経験のある人の方がない人よりも,家族関係における居場所感や友人関係における自己
有用感が感じられていないことが明らかになった。
問題と目的
れられることであると定義するものが多く,例えば廣井(2000)は,
「居場所がある」ということは,自分自身でいることが受け入れら
近年,青年期のメンタルヘルスに関して心の居場所が取り上げ
れていると感じられることであるとしており,中原(2002)は,居
られることが多い(秦,2000;田中・田嶌,2004 など)。「居場所」
場所は,自分がそこにいてもいい場であり,自分らしくいられる場
という言葉は,本来物理的な場所を指す言葉であるが,現在ではそ
であり,自分がありのままにそこにいてもいいと認知し得る感覚で
の「居場所」という言葉が心理的な意味を持ち,「心の居場所」の
あるとしている。また,心の居場所に関する論議の発端となった不
ように使われるようになった。
登校問題の現場においても,居場所として,子どもをありのまま受
ここ数年,心理学の分野でも居場所に対する言及や居場所を扱っ
け入れることが大切であるという指摘がたびたびされている(朝日
た調査研究が急激に増えた。居場所という言葉が用いられ始めた
新聞社,2000;2003a;2003b;2004;2005 など)。最近では,臨床
90 年代では不登校に関連して居場所を扱ったものが多く(梶原,
教育学の分野でも,居場所は,自分の気持ちを素直に表現してもそ
1993;難波,1993;山本,1996;中野,1997;米田,1998),対象
れが否定されないところ,自分の役割が実感できるために自己肯定
も小中学生を想定したものが多かったが,2000 年以降その対象は
感が取り戻せるところ(廣木,2005)とされている。このように,
拡大し,現在では乳幼児を対象としたものや(柴崎,2003),青年
教育や臨床心理学など現場に関わる分野では,居場所はありのまま
期を対象としたもの(村瀬・重松・平田・高堂・青山・小林・伊藤,
で受け入れられるところという,居場所の心理的側面に注目した一
2000;小畑・伊藤,2001;山岡,2002;堤,2002;白石,2003 など),
定の共通理解が得られつつあるといえ,これらの考えは徐々に研究
成人期を対象としたもの(中西,2000),中高年を対象としたもの(中
の分野においても共通の認識になりつつある。
原,1998;2002)までみられる。対象の拡大とともに居場所という
このように,心理学における居場所は「ありのままでいられると
言葉のさす意味も,当初の意味からは大きく拡大し,概して安心で
いうこと」として扱われつつあるが,そのような居場所については,
きるところ,ほっとできるところ,くつろげるところといった曖昧
どのような理由で居場所を感じられたり,感じられなかったりする
な意味で用いられていることが多い。居場所に関する心理学研究は
のかについて明らかになっているとはいえない。数少ない研究の中
増加したものの,居場所の定義は研究者によって様々であり(小畑・
で,石本・齊藤(2007)は中学生の生活に深く結びついている部活
伊藤,2001),十分なコンセンサスは得られていない(山岡,2002)
動や習い事,現代に特徴的なインターネット上での友人関係,さら
といえる。
に学校のある地域の雰囲気と心の居場所の関連について検討し,習
一方,臨床心理学においては,居場所とは,ありのままで受け入
い事やインターネット上での友人関係,学校のある地域の雰囲気が,
*神戸大学大学院人間発達環境学研究科/伊丹市立総合教育センター適応教室やまびこ館
--
2008年4月1日 受付
2008年9月1日 受理
(2)
心の居場所が感じられるかどうかと関連していることを明らかにし
た。それによると,習い事をしている中学生はしていない中学生よ
(男性 50 名,女性 138 名)。平均年齢は 21.29(SD=1.60)歳。なお,
30 歳未満の者を分析対象とした。
りも友人関係での居場所感やクラスでの居場所感が高いこと,イン
ターネット上にのみつながりのある友人を持つ中学生は,持たない
2.調査時期・調査方法
中学生よりもクラスでの居場所感が低いこと,比較的落ち着いた地
調査時期は 2005 年 11 ~ 12 月。授業時間に一斉に実施したほか,
域の学校に通う中学生の方が友人関係での居場所感やクラスでの居
直接,または知人を通してアンケートを配布・回収した。
場所感が高いことが明らかになった。このように中学生においては
生活に深く結びついている事柄が居場所感に影響を与えていること
3.調査内容
が明らかになったが,居場所がどのような理由で感じられたり感じ
【居場所感尺度】
られなかったりするのかを明らかにすることは,中学生だけでなく
石本(2006)が作成した居場所感尺度を用いた。この居場所感尺
その他の年代においても必要である。
度は,居場所があるかどうかを測定するものではなく,関係性ごと
本研究では大学生の生活からいくつかの活動を取り上げ,それら
にどの程度その関係性を居場所と感じられているかについて測定す
の活動と居場所感との関連について検討する。その際,大学生の生
るものである。ありのままでいられることを表す「本来感因子」と
活について,部活動・サークル活動,ボランティアへの参加,イン
必要とされている感覚を表す「自己有用感因子」の 2 因子から構成
ターネット上での友人の有無を取り上げて検討する。
される(Table1)。これらの因子構成に関しては,心の居場所に関
部活動への参加に関して,中学生に対する調査(石本・齊藤,
する先行研究から「ありのままでいられる場所」と「必要とされて
2007)では居場所感との関連を持たなかったが,大半の中学生が部
いると感じられる場所」が想定されたものであり,因子分析の結果,
活動への参加をしており,部活動に参加している者の中にも部活動
実際にその 2 因子に分かれるということが確認されたものである。
が嫌いな者から好きな者まで多様な意識での参加が含まれていたと
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が居場所感との関連を持つことが予想される。実際,小畑・伊藤
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(2001)の大学生に対する調査では,友人や家族,物理的な居場所
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の大学生に対する調査においても「学生会館」や「サークル BOX」
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といった部活動やサークル活動に関連する物理的場所が居場所とし
て挙げられている。これらの研究では,部活動・サークル活動への
参加の有無と居場所感に何らかの関連があることが示唆されてお
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り,実際に部活動・サークル活動への参加の有無と居場所感との関
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連を検討することが必要であると考えられる。
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近年,ボランティア活動への参加は一般的なものとなり,なかで
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も時間の自由が多い大学生はボランティア活動への参加が多く,大
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学生活における部活動やサークル活動,アルバイトに並ぶ課外活動
の一つとなっているといえる。水野(2001)はそのようなボランティ
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ア活動について,若者の居場所として機能していることを指摘して
おり,ボランティア活動への参加が居場所感と何らかの関連を持っ
ていることが予想される。
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現代青年においては,SNS や電子掲示板の普及に伴って,実際
には顔を合わせたことのない友人を持つことは珍しいことではなく
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なった。前述したように中学生に対する調査(石本・齊藤,2007)
においてはインターネット上の友人の有無と居場所感に関連が示さ
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れており,よりインターネットとの接触が多い大学生についても検
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討する必要があるといえる。
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これらに加えて,本研究では探索的に不登校経験と居場所感の関
居場所感は特性のように時間を超えて安定性を持つものではな
連についても検討する。
く,関係性ごとに,ここでは居場所を感じられるが,ここでは居場
方 法
所が感じられないというようなものである。よって,今回は大学生
にとって重要であると考えられる,家族,友人,恋人関係における
1.調査対象者
居場所感をそれぞれ測定した。友人関係は学内に限らず,最も仲の
近畿圏内の国立3校,私立1校の4つの大学に通う大学生 188 名
良い友人を想定してもらった。
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(3)
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それぞれ「家族と一緒にいるときの自分を思い浮かべてくださ
p < .01)があり,男性より女性のほうが恋人関係において本来感,
い。」,「最も仲のよい友だちと一緒にいるときの自分を思い浮かべ
居場所感を感じていることが分かった。
てください。」,「恋人と一緒にいるときの自分を思い浮かべてくだ
恋人関係における居場所感の得点に関して,女性の得点が高いこ
さい。」という文章を提示し,それらの人間関係にいる自分を想起
とと男性の本来感が低いことが注目すべき点として挙げられる。恋
するよう促したあと,「以下の文が,##にいるときのあなたにど
人関係は関係性の性質上,家族関係や友人関係よりも居場所得点が
の程度あてはまるかを『1:あてはまらない』~『5:あてはまる』
高いことが想定され,女性の得点の高さはこのようなことを反映し
までの5段階で,(例)のように○をつけて答えてください。」と
たものであると考えられる。また,恋愛関係における性差について
し,回答を求めた。##内は「家族と一緒」,「最も仲のよい友だち
はこれまでもいくつか指摘されてきており(例えば,松井,1998,
と一緒」,「恋人と一緒」という語句が入る。また,項目についても
豊田・岸田,2006),松井(1998)によると恋愛の初期や中期にお
それぞれの関係性ごとに対応するように,一部の語句を変えてある
いては,女性よりも男性のほうがコミット(関与)が大きいとい
(Table2)。「あてはまらない」から「あてはまる」の 5 件法である。
う。コミットは感情の高まりやのめり込んだ状態を指すという。こ
【大学生の生活状況および不登校経験】
のことからは男性のほうが感情の高まりが強い分,ありのままの状
部活動・サークル参加の有無,ボランティア活動への参加の有無,
態で恋人に対して接することができていないということが考えられ
インターネットやメール上のみでの友人がいるかどうか,不登校経
るが,今回の調査では恋人がいる調査対象者が少なく,十分な人数
験の有無を 2 件法でたずねた。
での検定が行えなかったので,今後感情や行動面も含めての調査が
必要とされるであろう。
結果・考察
3.部活動・サークル参加による居場所感の比較
1.尺度の検討
部活動・サークル参加者と部活動・サークル非参加者の,家族,
居場所感尺度は,今回はあらためて因子分析を行うことはせず,
友人,恋人関係における居場所感の平均値の差を検定した結果を
作成されたときのままの因子構成で分析を行った。
Table4 に示す。家族自己有用感において得点に有意な差(p < .05)
自己有用感因子のα係数は,家族関係で .89,友人関係で .88,恋
があり,部活動・サークルに入っていない人の方が入っている人よ
人関係で .88 であった。因子の合計点を項目数で割ったものを,自
りも家族関係における自己有用感が高いことが分かった。
己有用感得点としたところ,家族関係では平均値 3.67,標準偏差 .80,
このことの理由について詳細な検討は今回の調査内容からは困難で
友人関係では平均値 3.62,標準偏差 .67,恋人関係では平均値 4.17,
あるが,現実的に家族から必要とされているということで,時間的
標準偏差 .65 となった(Table3)。本来感因子のα係数は,家族関
な問題や金銭的な問題で部活動やサークルへの参加が困難になって
係で .88,友人関係で .89,恋人関係で .86 であった。因子の合計点
いるということも考えられる。また,その他の関係について有意な
を項目数で割ったものを,本来感得点としたところ,家族関係では
差がみられなかったことについては,部活動やサークルに対する関
平均値 3.68,標準偏差 .84,友人関係では平均値 3.80,標準偏差 .71,
与の度合いによるものとも考えることができ,今後活動内容や関与
恋人関係では平均値 3.99,標準偏差 .67 となった(Table3)。
の度合いも考慮した検討が必要とされる。
2.性別による居場所感の比較
4.ボランティア活動への参加による居場所感の比較
家族,友人,恋人関係における男性と女性の居場所感の平均値の
ボランティア活動参加者とボランティア活動非参加者の,家族,
差を検定した結果を Table3 に示す。恋人居場所感,恋人本来感に
友人,恋人関係における居場所感の平均値の差を検定した結果を
おいて男性と女性の得点に有意な差(居場所感;p < .05,本来感;
Table5 に示す。恋人居場所感と恋人自己有用感において,得点に
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(4)
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有意な差(p < .01)があり,ボランティア活動に参加していない
クラス関係や大学生における家族関係,恋人関係といった友人関係
人の方が参加している人よりも恋人関係において居場所感や自己有
以外で居場所感を感じられないことを補完しているといえよう。こ
用感を感じているということが分かった。
のことはインターネットやメールへのめり込んでいくことや,イン
今回の調査からは,ボランティア参加の有無と恋人関係における
ターネットでの人間関係に依存した「ひきこもり」の問題を考える
居場所感との関連について,どのような理由によるものかは考察す
上で重要な視点となり得る。インターネットやメールでの人間関係
ることができないが,ボランティア活動の有無と居場所感について,
に依存し,現実社会での不適応感を高める人に対しては家族関係を
ボランティア先での居場所感も含めて,今後も知見を積み重ねる必
も含めた多種の関係性の中での適応感を高めていくことが必要であ
要があろう。
ると考えられる。
5.インターネット上での友人がいるかどうかによる居場所
6.不登校経験による居場所感の比較
感の比較
不登校経験の有無による家族,友人,恋人関係における居場所感
実際に会ったことのない,インターネット上やメール上の友人(以
の平均値の差を検定した結果を Table7 に示す。家族居場所感,家
下,インターネット上の友人とのみ表記)がいるかどうかが現実世
族本来感,友人自己有用感において有意な差(p < .05)があり,
界のリアルな人間関係である家族,友人,恋人関係の居場所感にど
不登校経験がない人よりも不登校経験がある人の方がそれらの得点
のような影響を与えるのかを検討するため,インターネット上の友
が低いことが分かった。不登校問題が,居場所が注目される端緒と
人の有無で居場所感の平均値の差を検定した結果を Table6 に示す。
なったことから,不登校生の居場所感についての研究は非常に重要
家族居場所感,家族本来感,恋人居場所感,恋人自己有用感,恋人
なものであるといえるが,不登校生に対する調査は困難であり,実
本来感において得点に有意な差(恋人本来感;p < .05,その他;p
際不登校生を対象とした居場所に関する研究は見られないのが現状
< .01)があり,インターネット上の友人がいる人の方が,いない
である。本研究においても,不登校生を対象に調査を行うことはで
人よりも,それらの得点が低いことが示された。
きなかったが,不登校経験と居場所感の関連が認められたことで,
中学生を対象とした調査(石本・齊藤,2007)では,インターネッ
不登校問題が居場所感と関連するということが再確認された。今回
ト上の友人の有無はクラスにおける居場所感と関連していたが,大
の調査では不登校経験がいつの時期のものであるかは尋ねていない
学生においては家族関係や恋人関係における居場所感がインター
が,不登校問題の中心が中学生であることを考えると,大学生にな
ネット上の友人の有無と関連していた。インターネット上の“友人”
るまでに少なくとも 3 年以上の期間が過ぎているにもかかわらず,
の有無が現実世界での“友人関係”における居場所感と関連しない
不登校経験がある人の方がない人よりも,家族関係における居場所
ことは興味深いが,このことは前述した中学生を対象とした調査に
感や友人関係における自己有用感が低いことが示され,不登校経験
おいても同様の結果が見られており,インターネット上の友人関係
がその時点での問題にとどまらず,その後も影響を持ち続けるとい
は現実社会での友人関係を補完するものではなく,中学生における
うことが明らかになった。不登校経験者が成人になった後も心理的
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--
(5)
に不安定であることは桑代・郷間・森下(2002)のバウムテストを
廣木克行 2005 臨床教育(Clinical Education)―子どもの居場
用いた調査でも示されているが,居場所感という観点からも,不登
所をつくる 神戸大学発達科学部編集委員会 ( 編 ) キーワー
校経験者に対してそのとき限りではない長いサポートが必要である
ド人間と発達 大学教育出版 Pp.106-107
ことが示されたといえる。不登校生に対する調査が困難であること
石本雄真 2006 対人関係からとらえる青年期の心の居場所~中学
と同様に,不登校経験者に対する調査も人数を集めることの困難が
生と大学生に対する調査を通して~ 神戸大学大学院総合人間
常にあり,今回の調査でもその問題点を克服することができていな
科学研究科人間発達科学専攻 平成 17 年度 修士論文(未公
い。今後は調査方法や調査対象者を工夫することにより,不登校生
刊)
や不登校対象者に対する調査を充実させていくことが望まれる。
石本雄真・齊藤誠一 2007 中学生の生活が居場所感にあたえる影
響について 神戸大学発達科学部研究紀要,14(2),1-6
まとめ
梶原康史 1993 「心の居場所」論が登校拒否を減らせるか 児童
心理,47(8),830-834
本研究では,大学生の生活に関連するいくつかの側面を捉え,家
小畑豊美・伊藤義美 2001 青年期の心の居場所の研究―自由記述
族,友人,恋人関係における居場所感への影響を検討した。その結
果,部活動・サークルへの参加,ボランティア活動への参加,イン
に表れた心の居場所の分類― 情報文化研究,14,59-73
桑代智子・郷間英世・森下一 2002 不登校を経験した成人の対人
ターネット上の友人の有無,不登校経験のそれぞれが大学生の様々
関係について―バウムテストによる検討― 教育心理学研究,
な関係性における居場所感へ影響を与えていることが示された。
50(3),345-354
中でも家族関係や恋人関係において居場所がないと感じていると,
松井豊 1998 恋愛における性差 現代のエスプリ,368,113-121
インターネット上の友人関係へと居場所を求める可能性が示された
水野篤夫 2001 居場所づくりの指導者論 田中治彦 子ども・若
こと,不登校経験がある者は大学生になってからも家族関係におけ
者の居場所の構想 学陽書房 Pp.205-225
る居場所感や本来感,友人関係における自己有用感を抱けないとい
村瀬嘉代子・重松正典・平田昌子・高堂なおみ・青山直英・小林敦
う困難を抱いていることが示されたことは大学生に対するサポート
子・伊藤直文 2000 居場所を見失った思春期・青年期の人び
を考える上においても重要な知見となるであろう。
とへの統合的アプローチ 通所中間施設のもつ治療・成長促進
恋人がいるということは一般的にはメンタルヘルスを向上させる
的要因 心理臨床学研究,18,221-232
イメージがあるが,恋人がいて居場所が感じられない場合はイン
中原睦美 1998 中高年脳卒中患者の障害受容と援助―リハビリ
ターネット上の友人を求めることで,現実世界との断絶を生む可能
意欲と居場所との関係に着目して― 心理臨床学研究,15,
性もあり,慎重な検討が必要であろう。
635-645
不登校経験については先行研究同様,不適応傾向が継続すること
中原睦美 2002 受診が著しい遅延した重症局所進行乳癌患者の心
を示しており,家族関係や友人関係において,居場所があると感じ
理社会的背景の検討―依存のあり方と居場所感をめぐって― られるようにサポートしていくことが必要であるといえよう。
心理臨床学研究,20,52-63
大学生の生活と居場所感の関連について示した研究は少ない。居
中西友美 2000 若い世代の母親の居場所感についての基礎研究 場所の持つメンタルヘルス向上の効果を考える際にも,大学生のど
のような活動,どのような経験が居場所感と関連しているのかにつ
臨床教育心理学研究,26,87-96
中野和巳 1997 学校をもっと居心地のよい空間にしよう―「居場
いて,本研究で取り上げたもの以外の要因に関しても資料を積み重
ねていくといった知見の集積が必要であろう。
所」づくりとしての施設改革― 公評,34(6),112-119
難波一夫 1993 「登校拒否」の子どものための居場所づくり―い
ま,子どもたちが問いかけているもの― 教育,43(4),49-60
引用文献
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か 発達,24,2-4
朝日新聞社 2000 不登校の子どもたちが集うサークル「ラフ」
(リ
白石大介 2003 大学生の居場所に関する調査研究 学生相談セン
ター紀要,13,1-13
ポート山梨) 11 月 5 日朝刊
朝日新聞社 2003a 不登校:3 居心地のよい場所必要(ゆらぐ教
田中麻貴・田嶌誠一 2004 中学校における居場所に関する研究 九州大学心理学研究,5,219-228
育) 10 月 18 日朝刊
朝日新聞社 2003b 居場所 「ありのまま」受け入れて(コドモ
豊田弘司・岸田麻里 2006 教育用簡易版恋愛感情尺度の作成 奈
たちはどこにいる?) 7 月 23 日朝刊
良教育大学 教育実践総合センター 研究紀要,15,1-6
朝日新聞社 2004 自分嫌い 劣等感,居場所がない(10 代の入
堤雅雄 2002 「居場所」感覚と青年期の同一性の混乱 島根大学
教育学部紀要(人文・社会科学),36,1-7
り口で:中) 7 月 16 日朝刊
朝日新聞社 2005 6 時間 傷とともに進もう 2 月 27 日朝刊
若山隆 2001 こころとからだの在るところ―私たちの居場所の問
秦彩子 2000 「心の居場所」と不登校の関連について 臨床教育
心理学研究,26,97-106
題― 現代と文化,105,67-82
山本順彦 1996 「こころの居場所」創造のための実践的教育学序
廣井いずみ 2000 「居場所」という視点からの非行事例理解 心
理臨床学研究,18,129-138
説―デューイの「経験と教育」の理論からその指針を学ぶにあ
たって― 児童教育学研究,15,52-70
--
(6)
山岡俊英 2002 大学生の居場所とセルフエスティームに関する一
研究 佛教大学教育学部学会紀要,1,137-167
米田薫 1998 「心の居場所」としての適応指導教室に関する研究
日本教育社会学会大会発表論文集,50,226-227
--