場面緘黙の子どもへの支援のヒント

て大変な状況と行動をリストアップして、比
場面緘黙児の支援
較的耐えられる状況で、大人と活動する→子
どもと活動する→少し表現する→少し喋る
2年生の女児ですが、学校でほとんど喋
りません。一人の友人にだけ、小声で返事
→・・・・といった具合に、じょじょに慣ら
していく方法です。
をします。授業中はうなずくことはありま
学校の協力があれば可能な方法です。
すが、声を直接聞いたことがありません。
ただ、翻訳のため、学校の状況が異なる
しかし、家では普通に喋っているそうで
ので、その点のアレンジが大切になります。
す。場面緘黙という診断を受けています
が、発達障害でしょうか。 (小学校担
任)
前回につづいて、場面緘黙について書か
せて頂きます。
場面緘黙児の指導 2教育的方法
行動療法ではありませんが、群馬県で、
4年生の児童に対して実践された例をご紹介
します。(プライバシーのため、細部は変え
ています。)
場面緘黙?(前回)の要約
場面緘黙児は、わざと喋らないのではな
くて喋られないのです。大人になれば治ると
場面緘黙児をAさん、担任をB先生、親
しい友人を「友人Cさん」とします。
Aさんは、幼稚園のころから緘黙でした
誤解されていますが、成人でひきこもりやう
が、学校ではそれほど問題にされてきません
つ病になっている人もいて、早期の対応が求
でした。授業を邪魔するわけではないし、お
められています。
勉強も普通にできていたので、大きな問題に
今回は、その対応に成功した実践、それ
も群馬県での実践を紹介します。
場面緘黙児の指導 1行動療法
場面緘黙児への支援を考えるシンポジウ
ムが特殊教育学会で続けられています。そこ
での支援方法の中心は行動療法です。この方
法は、前回紹介しました「場面緘黙児への支
援 -学校で話せない子を助けるために-」
という本に詳しく書かれています。この本
は、場面緘黙児をどう理解するかを知る上で
ならなかったようです。
4年生のときは、次の様な状態でした。
・自宅では話をするが、学校では、ほとんど
友だちと会話する様子は見られない。話すと
しても、ごく限られた親しい友人と小声で話
すのみである。
・教師とのやりとりも頷く程度でほとんど会
話は成立しない。
・学習面、運動面等、人前での発表や活動を
披露する場面では、黙り込んだり、ただ立ち
すくんだりしている。
も役に立ちますので、一読をお勧めします。
行動療法と言うと難しそうなイメージか
指導方針
もしれませんが、要はどう学習させるかとい
1.Aさんの課題やニーズを踏まえた教材づ
うことですので、それ程難しくはありませ
くり、教室及び人的な環境づくりなどを行
ん。簡単に紹介しますと、場面緘黙児にとっ
い、学習理解等を深め、生き生きとした活動
が行われるように支援したい。
支援の実際と経過
まず、体育的な活動など、段階的事前学習
2.学習課題としては、Aさんの実態から、
を多く採り入れ、さらに場面も、友人Cさん
できる課題から試みることで、円滑な活動へ
→小集団→学級と展開していきました。何か
の広がりを進める共に、課題等を達成したと
の発表では、まず発表原稿を友人Cさんと作
きの成就感や自信を高めていきたい。
って、二人で発表の練習をし、それを4・5
3.Aさんは、表現の面では、文章に自分の
人の小集団で読み上げ、さらに学級で読み上
思いなどを書けるので、年間の行事等を絡め
げるなど、人的・環境的な工夫をB先生は進
ながら、お礼状や感想文を作成し、人前で発
めました。
表する場面を設定することで、円滑な表現活
少しずつ、短い発語が現れるなど話す面で
動への一助としていきたい。
改善してきました。放課後も学校に残ること
4.人前での発表や活動に、緊張・不安が高
があるようになったり、友人Cさん以外の後
いAさんの気持ちを推し量り、ごく親しい友
輩と遊ぶなど、活動を共有したり、話したり
人Cさんとの活動を基本に置く。また、あま
する相手が広がりました。また、学業の伸び
り不安や負担の少ない小グループの下、協力
もありました。
し合う学習活動を通じて互いのよさや個性を
認め、結びつき・信頼関係を深めさせたい。
要点
5.校内の研修で、「話せるのに話さない。
場面緘黙児は、誘って欲しい、語りかけて
何か機嫌が悪くて、目を合わせない。わがま
欲しいと思っているのですが、話しかけても
ま。」といった場面緘黙児への職員の誤解を
反応が無いと、積極的に関わる人が自信を失
改め、特別支援教育の理解を深める。
うことが多いのです。
この事例では、何より、通常の教育活動
実践計画
で、予期不安の高いAさんに対して、きめ細
担任のB先生は、Aさんへの指導を進めて
かな事前指導を行って、コトバだけでなく行
いくにあたり、それと並行して、クラス全体
動しやすくしています。この学習活動が非常
への適切かつ効果的な指導を十分進めていく
に効果をあげています。
ことが重要と考えました。また、学校では、
また、当事者に過度の圧力を掛けないよ
学習活動や学校行事など、多くの活動内容が
うにするために、友人Cさんを参加させるこ
事前に計画・立案されています。見通しをも
とが役に立っています。
った支援を行う観点から、事前に計画・立案
この際、B先生の企画した活動にAさん
されている学習・活動内容に着目して、Aさ
だけでなく友人Cさんも参画しているという
ん及びクラス全体への支援が、適切に、かつ
位置づけで、B先生はCさんに「世話役」な
意図的・計画的・効果的に行えるよう、学年
どを押しつけてはいません。責任者はあくま
当初に実践計画を作成しました。
でB先生であった事も大変重要です。