平成28年度 活科学習指導案

平成28年度
⽣活科学習指導案
⼀
研究テーマと研究の概要
授業⽉⽇
授業学級
指導者
授業者
平成28年11⽉10⽇(⽊)
上⽥市⽴清明⼩学校2年2組(28名)
中信教育事務所指導主事 中島 健先⽣
若林 史也教諭
2年2組では、1年⽣の5⽉から蚕を育て始めた。その中で⼦どもたちは、蚕を⼿や顔にのせてかかわ
ったり、休み時間には、
「桑の葉を採りに⾏かなきゃ。」と桑の葉を採りに⾏ったり、蚕とかかわりながら
観察したりしてきた。もっと蚕の気持ちに寄り添いながら、蚕にかかわって欲しいと願った教師は、
「ク
ラスの蚕」から「⾃分の蚕(マイ蚕)」として蚕とかかわった⽅が、より⼀⼈ひとりが対象である蚕のこ
とを思い接することができるのではないかと考え、
「あなたが蚕のお⽗さん、お⺟さんだよ。」と伝えて、
⼀⼈10頭の「⾃分の蚕(マイ蚕)」を育てさせた。それによって、⾃分の気持ちがすむまでゆっくりじ
っくり⾒ていることができ、家に持ち帰ってお世話するなど⻑い時間かかわることができ、蚕への思い
も深まっていった。
このように、⼀⼈ひとりの対象への思いや願いを育み、深め、対象に浸りこむことが⼤切である。⼦ど
もたち、⼀⼈ひとりの思いや願いを⼤切に育むことが、主体的な活動となり、⾃⼰決定を促し、⾃⼰肯定
感へとつながり、そして、⽣活科の⽬標である⾃⽴へとつながるのではないかと考える。そのための⽀援
のあり⽅を本テーマとして研究を進めている。
⼆
研究内容
1
授業における⼦どもの深まりの姿
昨年度1年⽣で実践した「おかいこさんをそだてよう」では、以下のような⼦どもの姿が⾒られた。
(1)⼦どもが気づきの質を⾼めていく姿
本校では、「気づきの質の⾼まり」を「⾃分と対象との対話(関係性)の深まり」ととらえている。
① 「私が対象を⾒る」段階
「桑の葉を⾷べました。」
「5れいになって、次に繭になった。」
② 「私が対象に思いを寄せ働きかける」段階
「おいしい桑の葉をどうぞ。」 「お部屋の掃除をしてあげるね。」 「早く蛾になれると良いね。」
③ 「対象から私に応えが返ってくる」段階
「おなかすいているかな?」と桑の葉をあげたら、「おいしい!」ってお蚕さんが⾔いました。
よごれた部屋を掃除しました。すると、「いつも掃除してくれて、ありがとう。」と⾔いました。
④ 「私と対象との対話をさらに集団に広げていく(願いを持ち、共有する)」段階
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c
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T
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先⽣、この写真好きなんだよ。
けごが写っているから?
⼩さくて、ビックリしたのかな。
けごちゃん何て⾔っているかね。
たまごから⽣まれた。
良かった。
忘れちゃった。
忘れちゃうことも⼤事だよね。
早く⼤きくなりたい。
みんなけごちゃんの⾔葉だよね。
⽣まれてよかったなあっていってる。
たくさん友だちができて良かった。
授業記録の中から、具体的に⾒ていこう。
◇絵本作りに関わって、蚕との関わりを記録した写真を⾒
せ、振り返らせる場⾯での発⾔である。
⼦ども達はそれぞれにつぶやいているのだが、写真の中か
ら発⾒しようとし、教師が着⽬しているものを予想しよう
とし、写真に⾃分なりの意味づけをしようとし、友だちの
思いに⾃分の思いをつなげようとしている。下線部のよう
な教師の発⾔に⾒られるように、共感的な空間の中で⼦ど
も達は⾃分の気づきを次々に⼝にし、それは多様であると
ともに重なり合っている。蚕が⽣まれてきたこと、成⻑す
ることを喜ぶ⾔葉は、そのまま、⾃分が「⽣まれてきたこ
と」「早く⼤きくなりたいこと」「たくさん友だちができて良かったこと」を喜びあう姿である。
(2)対象との距離を縮め、対象に⾃分の願いを託し、実現していこうとする姿
T じゃん。(繭の写真を⽰す。)
c おお。
T この繭の中に、、、
c さなぎ。
c 蚕になる準備をしている。
T 何て⾔っているかな。
c 早く出たい。
c 早くさなぎになりたい。
c 早く先⽣と遊びたい。だって先⽣の蚕だもの。先⽣と結婚
したい。
c 先⽣の蚕の繭だから、ぼくはメスだよって思っているかも
知れない。もう⽣まれてメスだったら、早くたまごを産んで、
⾚ちゃんを産みたい。
◇これは上の授業記録の直前の場⾯で
ある。
教師の⾔葉に促されて、蚕の⾔葉を想像
している。蚕の親となった⼦ども達は、
すでに先を⾒越して世話をするように
なっている。だから先⽣の蚕であっても、
⼈ごとではない。責任感を持って、先⽣
との結婚まで考える。
(1)で⾒たように、
対象との距離を縮め⼦ども達が気づい
てくることは、⾃⾝の願いを託し、実現
していこうとすることと重なり合うの
である。
(3)⾃⼰との対話を深めていく姿
◇右の写真は、⼀⼈の⼦が⾃分の⼿のひらの上で成⻑していく蚕の様⼦を描
こうとしているところである。
この⼦は、これまでも蚕と関わり出すと、⼈⼀倍時間をかけて、じっくり
と蚕を⾒つめていた。対象と深く関わることは、対象と⾃⼰との対話を深め
ることであり、共感的に対象と関わることは、⾃⼰との対話を深めていく姿であると考える。この⼦は、
学校⽣活においても、友だちのことになると「どうしたの?」
「うん、それはかわいそうだよ。」と気にか
け、やさしさを表現している。蚕や友だちのことを放っておけない、つまり⾃分のことなのである。
(4)友との関わりを紡ぎ出す姿
◇これは、授業の中でも⾒られるが、単元の中で⼤きな変化として⾒えてくることでもある。蚕と関わり
たくないと思っていた⼦が、友とのかかわりの中で変わっていく姿があった。
・蚕の繭をトイレットペーパーの芯から出すとき、「先⽣、どうすれば良い?」と聞
いてきたAさん。担任は、
「誰か頼れる⼈はいない?」と聞き返すと、
「Bちゃん」と
囁くように教えてくれた。担任が「Bさん!Aさんから⼤切なお話があるってよ」と
伝え、⼆⼈きりにさせると、教室の隅に⾏き、相談していた。
・Bさんが⼿伝ってくれることになった直後、今度はBさんの飼育ケースのふたが開
かない騒ぎになり、Aさんは「私が開けてあげる」と⼒強く⾔い、Bさんを助けた。
・Bさんとのやりとりが終わると、Aさんは仲良しのCさんが声を上げて泣いている
ことに気づいた。Aさんは「Cちゃんのお蚕さん死んじゃったの?」と担任に聞き、
そうだと分かると、泣いているCさんの所へ⾏き、肩を擦っていた。
これまでのAさん
は、友だちのために
⾃分の時間を割い
て何かをするとい
う姿が⼀度も⾒ら
れなかった。しかし、
まわりからのサポ
ートに良い刺激を
受け、変わりだした。
友との関わりが蚕との関わりも変えていく。どんよりとした眼差しでとらえる蚕ではなく、⽣き⽣きと
した眼差しでとらえる蚕へと変わりつつある。
2
⼦ども達の深まりを引き出す教師の対応
1の事例につながった教師の対応として、次の点を⼤切に考えている。
① ⼦どもの気づきを⾔葉にさせていくこと。
② ねらいからはずれることでも、⼦どもから⽣まれた思いに共感すること。
③ ⼦どもの経験してきたことをつなぐための働きかけをすること。
④ 友だちとの関わりを深めさせること。共有させること。
3
場の設定の⼯夫
2とも重なるが、以下のような環境設定を⾏った。
① ⼦どもに発⾒させ、⼦どもに物語らせ、語り合う、共感の場
教室に「蚕コーナー」を設けて、その時々の蚕の写真を掲⽰したり、繭や桑の葉、絹でできた⼿ぬぐい
などを置いたりして、振り返ること、蚕との⽣活が思い浮かべることができる場を設定した。
② 学習カードによる振り返り
⼀⼈ひとりが蚕を観察し、記録を積み重ねてきたことで、⾃分の記録からも蚕を振り返ることができ、
その時の⾃分の気持ちも⼀緒に振り返ることができた。
4
機器の扱い⽅の⼯夫
これまでデジタルカメラは、⼦ども達が活動を振り返るための写真として、教師がその⼦の成⻑の跡
を記録する写真として、利⽤してきた。2年⽣になった⼦ども達には、⾃ら記録していくための道具とし
て、
「かんさつにっき」とともに活⽤させている。また、動画としての活⽤も考えている。⼦ども達が蚕
に関わる活動を振り返るときに、⼼情的な理解や共感が持てるように⽀援する道具として活⽤していき
たい。