自動車構造材にA1合 金の應用(飜譯)

662 資
料 第2卷
自動 車構 造材 にA1合 金 の應 用(飜 譯)
[W. Hartl,
Aluminium,
20 (1938), 320]
橋
本
一
郎*譯
技術の進歩 とは機械基本品の製造能率の向上並 にその
の 利點 は更 に この材 料 が 良 き熱 傳導 率 を持つ て居 るこ と
製作経濟の改良 を理想 として思惟 され て居 る。例へば船
で ある。 之 は發 動機 の熱 的 効 率 を高 め,燃 料 の能 率 向上
舶 デ イー ゼル の發 達 に對 して は,よ り 合 理 的 な重 油 を燃
及 び 使 用量 の輕 減 を齎 らす.發 動 機 の氣 筒 頭 がA1合 金
料 と して 使 用 して 經 費 の低 下 の 目的 が達 せ られ る と云 ふ
製 で あれ ば,利 釜 は 一暦 明 らか に現 はれ て くる.
事 實 は決 定 的 で あつ た.デ イ ー ゼル發 動 機 が 同 力の ガ ソ
リ ン發 動 機 よ り購 入費 が 高 い(800∼1000RM)と
云ふ こ
とは,デ イ ー ゼル 發動 機 の利 用 され ない 理 由 と は な ら な
燃料 費節 約 に 關 して車 の 重量 輕 減 に 依 る経 費 低減 は次
の 三 種 類 に分 類 され る 。
1.平
地 進 行 の場 合.
こ とは即
2.坂
道 進 行 の場 合 。
ち或 る一 定 時 間運 轉 した後 に機械 購 入 費 を補 ひ,然 る 後
3.加
速 して 居 る場 合.
い,適 當 な燃 料 を利 用 して經 濟 的 で あ る と恥
重 要 な經 營 費 の節 約 とを る こ とで あ る。經 濟 的 に は それ
フ ラ ンスの 研 究(Buro International des Application
程 大 き 汝制釜 は な く.と も 理 合 金 を更 に多 く、
自動 車 の構
造 材 に使 用 す る ご とに よつ て車體 の 重量 を輕 減 し,從 つ
de 1'Aluminium,Paris)結
て經 費 の輕 減 を可能 な ら しめ るの で あ る.
響(こ の 三 種 の運 轉状 態 に於 てL/100kmの
A1合 金 を 多 く 利 用 して製 造 した 自動 車 は その 購 入價
額 は高 い が 結 局 は維 濟 的 とな り,經 營 費 が その超 過 額 だ
け減 少 す る こ とを意味 す る ので あ る。
自動 車 の重 量 を輕減 す る こ とに依 つ て生 れ る利益 は次
の如 くで ある。 發 動 機 の 使 用 燃 料 の 平 均量 は減 少 し,交
通 頻 繁度 の増 す際 特 に重要 な弾 性及び 自動 車 の加 速 能が
よ くな る.開 閉(Schaltung)の
數 が 減 り,加速 週 期 は 短 く
な り,從 つ て 平均 使 用 燃 料 に好影 響 を齎 らす の で あ る.
結 局車 體 の 重 量輕 減 に よ り制 動 距離 が 短縮 され 交 通 安 全
率 の 改善 を意 味 す る こ とに な る.
今 日既 に一 般 に 利 用せ られ て居 るAl合 金(ピ ス トン 用)
*東 北 帝 國大 學 金屬 材 料 研究 所 。
の重 量 を200kg輕
果 に よれ ば 中型 の族 客 自動 車
減 し て,そ れ が 燃 料 使 用 量 に及 ぼ す影
單位 を用ふ)
第10號 自 動 車 構 造 材 にA1合
金 の 應 用(飜 譯) 第3圖6ケ
の シ リソ ダ ー
ブ ロ ック ケ ー ス(旅
車)材
は 次記 の 如 くで あ る.
理論 的 に 得 た この數 値 は長 時 闇 の實 際 的 の 研 究 か ら導
663
第4圖6ケ
客 自動
の シ リン ダ ー
ブ ロ ッ ク ケ ー ス(デ
イゼー
ル モ ー タ ー)材 料 シ ル ミ ソ γ
料 シル ミソ
友 銑60kg.
シ ル ミ ン21kg
友 銑210kg
シ ル ミ ン γ105kg
き出 され た結 果 で あつ て,燃 料 節 約 は平 均 し て100kgの
重 量輕 減 に 對 し,100kmの
行 程 に對 し0.8∼1.21と 見積
る ことが 出來 る.
加 速期 間及 び制 動 期 間 に於 け る技 術 的 長所 を觀 察 して
見 ると,次 の如 くで あ る.
200kgだ けの 重 量輕 減 は10∼15%の
急 加 速 を意味 す
る,ブ レー キ週 期 に 對 して は制 動 開 始 時 に100km/hの
第5圖
速 さを もつ て 居 る場 合 次 の 様 な制動 距 離 及 び 時 間 の 短縮
貨物 自動車 の車輪の重量 對比
とな る.
タイヤの經 費 に關 して は次 の 結 果 を得 る.タ イヤの 大
さを同 じに すれ ば 輕 自動 車 に 對 し て は タ イ ヤの 壽 命 を
長 くす る こ とが 出
來 る.そ れ は 重 量
輕 減 の程 度 に從 つ
て15∼20%に
され る.タ
壽命 は4000∼5000kmの
評價
イヤの
走 破 距 離 延長 の 利 益 と 同等 で
あ る.
第6圖Al合
金製 バズ車體構造
Al氣 筒 頭 を應 用 す る と一 層經 濟 的 で あ る こ とは第1圖
第7圖
車 體 前 部 と框
鑄 造 シル ミン
か ら判 る.効 果 向上 と燃 料使 用 の輕 減 とは 附加 的 重量 輕
減 と慣 性(ピ ス トンの)の 低減 と云 ふ利 益 以外 の利 釜 で あ
る.
Al合 金 を使 用 す るこ とに よつ て如 何 に 自動 車 の各 部
分 及 び全 體 の 重 量 を輕 減 し得 るかは 次 表 に示 した實 例 に
第1圖A1製
氣筒頭使用 に依 る燃料節約及び出力 増加
よつ てわ か る。
(a)(b)の 重 量 値 は各 種 商標 の 自動車 につ いて の 平 均値
で あ る.前 述 の 比較 か ら得 られ る様 に21級
車 に對 し て は200kg重
量 節 約 を意 味 し,又100km行
に 付 き約21の 燃 料 費 低減 を意 味 す る.多
謝 して20,000km.行
第2圖A1合
金鑄 造材 製車 體
の 旅 客 自動
程
くの 自動車に
程 の 年 効果 を的確 に見 積 つ てみ る と
燃 料節 約 量 は年 約4001で あ る.こ の 燃 料 量 は400×3.9
RM=156RMの
利 得或 は2800km行
程 に要 す る燃 料 費
664 資
料 300RM即
(a)旅 客 自動 車(乗 用 車)
第2卷
ち100km當
り300/20O=1.50RMと
旅客 自動 車 に於 て は200kg重
轉 費節 約 は總 計155RM(燃
依 る利 得)+60RM(タ
な る。
量 を 輕 減 す る と年 に運
料 費)+30RM(熱
量 經濟 に
イ ヤの 節 約)=245RMに
達 す る。
重 い金 屬 の代 りにA1合 金 を構 造材 に 用 ひ て200kg輕
減 す るに要 す る質 用 は約440RMで
あ る。 この總 額 は連
續 製造 法 で鑄 物 部 分 品 を製 造 す る費 用 を廉 價 に す る爲 に
型鑄 物 及 び金 型 鑄 物 を用 ひ る なち ば總 額 は充 分 に償却 さ
れ る.A1合
金 は 一般 的 應 用の可 能 な る こ と,機械 的性 質
の 良好 な る こ と,鑄 造性 の卓 越 せ る こ と,耐 蝕性 の比較 的
に 大 な る ことの故 に,最 も多 く使 用 され て 居 る輕 金 屬材
料 中 の頭 目で あ り,實際 又 廉 價 だ と も見 做 され てゐ る.
440RMと
RMの
以 ふ 多額 の費 用 は約13/4年
後 に は年 に245
節約 に依 つ て補 償.され る.自 動 車 の壽 命 を6年 と
すれ ば 更 に41/4年
所 の1040RMの
延 び,原 價 の20∼25%に
相當 する
剰 餘 を生む.
貨 物 自動 車 に於 て は割 合 は 一 暦 良好 で あ る.節 約 し得
ち れ る重量 は 一層大 で あっ て,そ の 大 部分 が よ り強 い發
動 機 を使 用 しな い で有 効 積 載 量 を増 す爲 に 利 用 され得 る
こ とに依 つ て利 釜 を齎 らす の で あ る.輕 合金 を多 く使 用
(b)貨 物 自動 車
して製 作 した 自動 車 に對 す る費 用 償 却 は次 の計 算 で示 す
様 に重 い 貨 物 自動 車 に 於 て は1∼11/4年,小
於 て は11/4∼11/2年
型 自動車 に
で確 か に達 成 出 来 る。
5tの 貨 物 自動車 を750kg輕
く すれ ば それ だ け有効 積
載 量 は増 加 され る.こ れ に依 つ てt/km當
運 送 收 入額 は6∼7Rpf,と
りに得 られ る
假 定 すれ ば,月 に4000km行
程 の時 經 費 を増 加 せ ず して次 の剰 餘 を生む 。
1km當
りの 有 効 積載 量0.75七 の 自動 車 は一 月に4000
×0.75=3000t/kmの
運 搬 能 率 を以 て運 搬 され,t/km當
りの運 搬 利 得 を0.065RMと
0.065=195RMと
RMと
假 定 す れ ば 收 入 は3000×
な る,輕 自 動 車 の 購 入 費 は 約2000
評價 され 得 るだ ら うが,そ うす る と2000/145≒
11ケ 月經 て ぼ償 却 され る。 この 期 間 後 は常 に 月當 り195
RMの
剰 餘 を生ず る,そ の 剰餘 を以 て 例 へ ば運 轉 手の 報
酬 或 は 約3400km行
程 に 對 す るデ イー ゼ ル油 の 費 用が
支辨 され る.
獨 逸 の 自動車 製 造者 は 自動 車 の 認容 費 用 と それ に制 限
され て ゐ る販 賣 價格 が 許 され る限 りに於 て 假 令實 際 可能
な る範 圍 に まで に は 及 んで は ゐな ぐと も,A1合 金 を使 用
を意 味 す る.
この費 用の 一暦 の低 減 はAl合 金 製 の ピ ス トン,氣 筒 頭
に依 る熱 機 械 的利 得 を利 用 し盤 す こ とに依 つ て速 行 され
る.約30RMの
節 約 に應 じて20%の
儲 け とな る.
タ イヤ費 の 節 約 は同 大 の タイ ヤ を 用ひ る時,重 い 自動
車 の場 合 よ りも15∼14%(4000∼5000km)三
走 破 距離
して 重量 を輕 減 す る利 得 を 多 少 と も既 に利 用 してゐ る.
41ヶ の 自動 車 のpowerfactorを
16ケ は25kg/Ps(馬
力),19ケ
比 較 し た 所 その 中,
は26∼35kg/Ps,6ケ
35kg/lps以 上 の 値 を持 つ て ゐた 。25kg/Ps以
對 して は50Ps以
は
下 の ものに
上 の發 動 機 が 使 用 され る,それ以 下 の も
の 長 くな るに從 つ て 年 に約60∼75RMの
利 益 を齎 らす.
の は 一層 強 い發 動 機 に依 つて達 成 せ られ た,之は 又前述 の
この計 算 に於 て は タ イヤ 費 は2000km走
破 距 離 に付 き
意 味 に於 て經 費 増 加 の 事 項 の 下 に 觀 察 した もの で あ る。
第10號 自 動 車 構 造 材 にAl合
26∼35kg/Ps及
び そ れ 以 上 の もの ゝ場合 に は。50馬
金 の 應 用(飜 譯) 665
合 金 が使 用 され て ゐ る物 はpowerfactorが6∼8kg/Ps
力以 下の 發 動 機 を具 へ た旅 客 自動 車 が 例 外 と して問 題 に
丈 け低 い。 輕 構 造 の 考 へ を履 行 した結 果 一般 に95∼100
なつ て居 る.power
kg/Psに
factorを 減 少 し よ うとす る こ と,そ
して減 少 す る こと に依 つ て經 費 を低 下 せ ん とす る こ とは
達 し,從 つ て 自動車 の經 濟 を更 に よ くす る こ と
は 可 能 に 相違 ない の で あ る.
この 自動 車 に對 して特 殊 の 意 味 が あ る。 この種 の 自動 車
Al合 金 の 使 用 及 び輕 構 造 觀 念 の 應 用擴 張 の 國 民經 濟
の購買 者 層 に對 して 關 係 事項 を説 明 す る時 經 費 の低 下 と
的 意義 は年 經 費 の 節 約が 運 轉 自動 車數 に 關係 付 け られ た
云 ふ こ と は特 に興 味 を惹 くもの で あ る.
45の 貨 物 自動 車 のpowerfactorの
研 究 を次 に 示 さ う
其 の 時 に特 に現 はれ て 来 る の で あ る,
4ケ70∼90kg/Psのpower
l2
91∼100〃〃
16
100∼ll0〃〃
9
111∼120〃〃
4
121∼135〃
111∼135kg/Psの13ケ
factor
に7ケ
を平 均 約125RMと
す る と 運 轉 營 業 中 の1,100,000ケ
の乗 用車 で は その 國 民 經濟 的 利 益 は1,100,000×125=
137.5Mi11.RMと
な る.
貨 物 自動 車 の 年 平均 の經 費剰 餘 を750RMと
〃
の 自 動 車 中6ケ
は よ り一 層 重 くて,長
し,運 轉
營 業 中の其 の數 を280,000と すれ ば,そ の利 益 は280,000
は バ ス車 體 を
備 へ 付 け て あ り,そ の 結 果 部 分 的 にpowerfactorが
して 居 る,更
小 型 の乗 用車 に 就 て の理 解 を得 る爲 め に經 費 の年 節 約
増
い 室 を備 へ 付
×750=210MIl1.RM.と
な る.
高 價 な輕 自動 車 に對 す る費 用 を償 却 す る時 期 か ら見積
つ て,國 民 經 濟 の總 利 益 は 年 當 り347Mi11.RMに
達す
け て 居 り,輕 金 屬 を更 に 多 く使 用 し て 室 の 重 量 を 低 下 す
る.こ の數 字 は,獨 逸 の 自動 車 製 作者 が正 當 に製 作 し,A1
る 事 を考 の 中 に 入 れ る 事 の 如 何 に 大 切 で あ る か の 見 本 と
合 金 を構 造 材 として 廣 く採 用 し,そ れ 故 購 買 者 の手 に最
な つ た.
も經 濟 的 な 自動 車 を渡 して居 る事 の最 も良 い證 據 を充 分
種 々 の 自 動 車 の 夫 々 の 重 量 を比 較 す る と,一 部 分 にA1
提 供 して居 る 筈 で あ る。