円安でも日本の自動車の輸出が回復しにくいのは

リサーチ
リ
T
TODAY
2015 年 2 月 19 日
円安で
でも日本
本の自
自動車の
の輸出
出が回復
復しにく
くいのは
はなぜ
ぜ
常務執行
行役員 チーフエコ
チ
コノミスト 高田 創
足元の日
日本は円安の
の環境下、漸
漸く輸出が上 向きつつある
るが、自動車
車の輸出は低
低調な推移が
が続いている
る。
過去の円安
安局面と比べ
べると、景気が
が悪化するロ
ロシア向けと、メキシコへ
への生産移転
転が進んだ米
米国向けが、
大幅な減少
少になったこと
とが原因だ。みずほ総合
合研究所は、日本の自動車輸出が円 安でも進まな
ないことに関
関
外生産シフト
するリポート
トを発表している1。自動車
車産業の海外
トは、「地産地
地消」の流れ
れのなか、①為替変動へ
へ
の対応、②
②日本国内の
の人手不足に
による人件費
費の上昇懸念
念、③海外生
生産コスト面で
でのメリットの
の持続などを
を
背景に、今後も続く可能
能性が強い。下記の図表
表は、日本の
の自動車産業
業の海外生産
産比率の推移
移を示す。過
過
去の円安局
局面とは異なり、今回は海
海外生産比率
率の上昇に歯
歯止めがかか
かっていない
い。
■図表:自動車の海外生産比率
率の推移
(注)2014 年
年の海外生産は
は未発表のため、2014 年 1
1~9 月累計の前年同期比で年換算した。
(資料)日本
本自動車工業会
会「自動車統計
計月報」「海外生
生産統計」よりみずほ総合研究所作成
今回の環
環境下でも現
現地生産が続
続く背景には
は、基本的に需要のあると
ところで生産
産する「地産地
地消」の動き
き
が進んでい
いることが挙げ
げられる。加え
えて、自動車
車産業では、①輸出の外
外貨建て比率
率が他業種に
に比べて高く
為替変動リ スクにさらされやすいこと、②国内の
の生産年齢人
人口の減少に
に伴い将来、
、人手確保が
が困難となり
上昇が見込ま
まれること、③
③海外生産拠
拠点がアジア
ア・中南米へとシフトしてお
おり、円安下
下でも国内生
生
人件費の上
産と比べた
た海外生産の
のコストメリット
トが維持され ている可能性
性があることが挙げられる
る。次ページ
ジの図表は、
海外生産の
の相対コストを
を試算したも
ものである。22014年時点でも自動車の相対コスト
トは100を下回
回っており、
1
リサーチTODAY
2015 年 2 月 19 日
国内よりは海外でコスト面でのメリットが大きい状態が続いている。
■図表:海外生産の相対コスト試算
(日本の一人当たりGDP=100)
115
110
一般機械
電気機械
輸送機械
105
100
95
90
85
80
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
(年)
(注)1.相対コスト=Σ(日本の対外直接投資残高の地域別ウェイト×各国一人当たり GDP)/日本の一人当たり
GDP。2005 年為替レートで固定。
2.2014 年は 1~9 月ネットフローを 2013 年残高に加算して作成。
(資料)IMF、日本銀行資料よりみずほ総合研究所作成
日本の自動車産業では、円安でも契約通貨ベースの輸出価格を引き下げてシェアを拡大する戦略を止
め、収益を重視する戦略に転換してきた可能性がある。それは、輸出が伸びないというマイナスの側面から
評価されやすいが、一方で為替変動に左右されにくい体制に移行してきたと解釈することもできる。そこで
安定的に収益を確保できれば、雇用拡大やベースアップなど持続的な賃金引き上げにもつながる。また、
海外生産の拡大に伴い、産業財産権等使用料の海外からの受取額(大半が自動車関連)は2014年に3.7
兆円(1~11月累計の年換算値)程度と、2007年に比べ1.2兆円程度増加している。2007年から2014年にか
けての米国向け自動車輸出減少の3/4が産業財産権等使用料の受取によって補われており、自動車産業
は新たな外貨獲得の姿を示しているとも考えられる。円安でも輸出が増えないことについては、単に日本の
競争力が低下したと決めつけるだけでなく、多面的な評価も必要ではないか。
1
大和香織「自動車輸出は回復するか」(みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2015 年 2 月 2 日)
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき
作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
2