急性単純性腎盂腎炎 - sasapynote

急性単純性腎盂腎炎 - sasapynote
略語
略語
⼀般名
ABPC/SBT
アンピシリン・スルバクタム
製品名例
ユナシンS®
AMPC/CVA アモキシシリン・クラブラン酸 オーグメンチン®
CAZ
セフタジジム
モダシン®
CEX
セファレキシン
ケフレックス®
CPFX
シプロフロキサシン
シプロキサン®
CTRX
セフトリアキソン
ロセフィン®
CTX
セフォタキシム
セフォタックス®
GM
ゲンタマイシン
ゲンタシン®
LVFX
レボフロキサシン
クラビット®
SMX/TMP
ST合剤
バクタ®
TOB
トブラマイシン
トブラシン®
サマリー
起因菌はほとんどがE. coli,S. saprophyticus,Proteus mirabilisなどのProteus属である。
[1]
[2]
尿検査(定性,沈渣),尿培養検査,感受性試験は全例で施⾏する。腹部超⾳波検査も可能であれば全例で。
経験的初期治療はCPFX 200-300mgを1⽇2回(1⽇投与量400-600mg) を7⽇間,またはLVFX を1⽇1回500mg
を5⽇間(感受性が判明していればST合剤14⽇間も可)で施⾏する。
[3]
その地域の耐性率に応じて,CTRXなどの⻑時間作⽤型静注抗菌薬の初回単回投与も考慮する。
[3]
起因菌の感受性が判明していない時点で,経⼝β-ラクタム系抗菌薬の単剤投与(つまり経験的治療としての経⼝βラクタム系抗菌薬の単剤投与)は控えた⽅が良い。
[3]
AMPCやAMPC/CVAは,本剤に感受性のあるグラム陽性球菌,つまり本菌に感受性のあるS. saprophyticus
やEnterococcus属と判明してから使⽤するのが良い。
[2]
セフェム系についても感受性が判明してから⽤いるべきである。
起因菌
Escherichia coli(最多,80%以上)
Staphylococcus saprophyticus(10-20%, 16-35歳では40%以上にも昇る)
Proteus mirabilisなどのProteus属
逆にKlebsiella属, S. aureus, Enterococcus属が検出された場合,複雑性尿路感染症を強く⽰唆する。
病歴
18-40歳の健康な,解剖上の尿路異常のない⼥性が好発。
これ以外の⼈が腎盂腎炎を起こした場合,複雑性を疑う。
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[1]
リスクは性活動の活発性,避妊具の使⽤,殺精⼦剤⼊りコンドーム,⽔泳,精⾁業
温帯地⽅の晩夏から初秋がピーク
臨床症状
発熱
悪寒
側腹部痛
嘔気・嘔吐
⽚側性または両側性の肋骨脊柱角叩打痛
⾎尿
非典型的な症状として,腹痛,呼吸器症状,下腹部痛など。
⼊院を考慮
嘔吐を伴ったり脱⽔がある場合
全⾝性炎症反応症候群 (SIRS)の基準を満たし敗⾎症を伴う所⾒がある場合
急性単純性尿路感染症では敗⾎症を伴うことは稀である。
[1]
合併症
腎膿瘍
局所性細菌性腎炎
検査
⾎液培養検査
20-30%で陽性となる
⾎液培養検査の結果が治療や転帰に及ぼす影響に関するエビデンスに乏しい。
[1]
すなわち⾎液培養検査をと
る意義については諸説ある。
尿検査
尿検査(WBC, RBC, 亜硝酸塩)はルーチンに測定するべきである。
[2]
尿培養検査
[3]
本症を疑った場合,常に尿培養検査と感受性試験を施⾏するべきである。
検査の信頼性確保のため,採尿後1時間以内に提出するか,保管する場合4℃で18時間以内が望ましい。
4
5
10 CFU /ml以上(男性は10 CFU/ml以上) は尿路感染症を考慮する。
3
10 CFU/ml未満はコンタミネーションの可能性が⾼い。
腹部超⾳波検査
尿路閉塞,尿路結⽯の除外目的で施⾏するべきである。
CT
治療開始後72時間以降も発熱が持続していれば考慮する。
鑑別疾患
骨盤内炎症性疾患
急性⾍垂炎
尿路結⽯症
胆道系疾患
急性膵炎
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[2]
治療
経⼝抗菌薬による外来での経験的治療
シプロフロキサシン
経⼝CPFX500mgを1⽇2回・7⽇間,ただしキノロン系への感受性が10%未満の地域で。
市中キノロン耐性株が10%を超える地域では,⻑期間作⽤型のCTRXやアミノグリコシド系の単回投与も考慮
するべきである。
CPFXとST合剤ではCPFXの⽅が良好な治療成績を得たため1st choiceとなっている。
[4]
CPFX 7⽇間と14⽇間の投与で効果に有意差がなかったため,7⽇間投与となっている。
[5]
各⽂献に徐放剤の記載があるが,本邦では未承認。
⽇本の添付⽂書上は1⽇100-200mgを1⽇2-3回投与であり,保険適⽤は最⼤600mg/dayと思われる。
レボフロキサシン
経⼝LVFX 750mgを5⽇間,ただしキノロン系への感受性が10%未満の地域で。
⽇本の添付⽂書上は1⽇500mgを1⽇1回・適宜減量となっており,保険適応は最⼤500mg/dayと思われ
る。
ST合剤
TMP 160mg, SMX 800mgの合剤を1⽇2回7-14⽇間。感受性が判明している場合に限る。
感受性が判明していない場合,判明するまでCTRXやアミノグリコシド系の静注薬と併⽤投与する。
[1]
経⼝セフェム系
経験的初期治療としては効果が劣る。
[3]
静注・筋注抗菌薬による外来での経験的治療
キノロン耐性株が10%を超えている場合に考慮する。
セフトリアキソン 1gを筋注(本邦では静注 or 点滴静注)
ゲンタマイシン
シプロフロキサシン 400mgを静注(本邦では1回300mgを1時間かけて点滴静注)
⼊院での経験的治療
シプロフロキサシン
400mgを1⽇2回静注
本邦では添付⽂書上,1回300mgを1⽇2回,1時間かけて投与することになっている。
レボフロキサシン
500mgを1⽇1回静注
アミノグリコシド±アンピシリン
ゲンタマイシン 5-7mg/kg
広域セフェムや広域ペニシリン系
CTX 1-2gを8時間毎
CTRX 1gを1⽇1回
CAZ 1-2gを8-12時間毎
カルバペネム系
市中キノロン耐性株・ESBL株が10%を超える場合の重症例に考慮する。
[2]
治療開始後48-72時間が経過して解熱が得られている場合,7⽇間の経⼝投与(キノロン系かST合剤)に切り替えることが
[1]
可能である。β-ラクタム系を⽤いる場合,10-14⽇間の投与が基本的である。 Enterococcus属が起因菌の場
合,ABPC/SBT 1-2gを6時間毎に投与し,経⼝に切り替える場合はAMPCを10-14⽇間継続しても良い。 重症例ではフル
オロキノロン系か第三世代セフェム系の点滴静注を考慮する。(市中キノロン耐性株・ESBL株が10%を超えている場合は
[2]
アミノグリコシド系かカルバペネム系の使⽤を考慮する。 )
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フォローアップ
治療後のルーチンの尿検査・尿培養検査は不要である。
[2]
治療開始後3⽇以内に症状が改善しない場合,治癒後2週間以内の再発では,尿培養検査と感受性再検を施⾏し,腹
部超⾳波検査やCT検査の施⾏を考慮する。
[2]
参考⽂献
1. Noreen A. Hynes, M.D., M.P.H., D.T.M.&H: Pyelonephritis, Acute, Uncomplicated. Johns Hopkins ABx Guides, 2011, Nov
2. M. Grabe et al: Guidelines on Urological Infections. European Association of Urology, 2012
3. Kalpana Gupta et al: International Clinical Practice Guidelines for the Treatment of Acute Uncomplicated Cystitis and Pyelonephritis
in Women. Infectious Disease Society of America and European Society for Microbiology and Infectious Diseases, 2011
4. David A. Talan, MD; Walter E. Stamm, MD; Thomas M. Hooton, MD; Gregory J. Moran, MD; Thomas Burke, MD; Abdollah Iravani,
MD; Jonathan Reuning-Scherer, PhD; Deborah A. Church, MD: Comparison of Ciprofloxacin (7 Days) and TrimethoprimSulfamethoxazole (14 Days) for Acute Uncomplicated Pyelonephritis in Women A Randomized Trial. JAMA,
2000;283(12):1583-1590
5. Sandberg T, Skoog G, Hermansson AB, Kahlmeter G, Kuylenstierna N, Lannergård A, Otto G, Settergren B, Ekman GS: Ciprofloxacin
for 7 days versus 14 days in women with acute pyelonephritis: a randomised, open-label and double-blind, placebo-controlled,
non-inferiority trial. Lancet. 2012;380(9840):484-90
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