研究発表予稿集 - 測位航法学会

測位航法学会
平成 27 年度全国大会
研究発表予稿集
測位航法学会
測位航法学会全国大会研究発表会2015年4月24日(金)
第一会場
No.
101
氏名
所属
題目
A Study of City Building Model Based Positioning Method using
許 立達
東京大学
高橋冨士信
横浜国立大学
103
浪江 宏宗
防衛大学校
林間測位における準天頂衛星“みちびき“の効果に関する小考察
104
橋本 英樹 S
芝浦工業大学
GPS タイムパルス信号の音源到来方向推定への利用の検討
105
吉田 将司
サレジオ工業高等専門学校
GPS ロボットカーコンテストの参加における課題とみちびき利用の効果
106
入江博樹
熊本高等専門学校
GPS・QZSS ロボットカーコンテスト 2014 の総括と 2015 について
107
飛田悠樹 S
茨城工業高等専門学校
基線解析における初期化性能の改善
108
長瀬 清 S
茨城工業高等専門学校
1 周波ファームウェア RTK 受信機の性能評価
109
齊藤 詠子 S
東京海洋大学
海上における高精度単独測位の精度評価
110
中根 勝見
アイサンテクノロジー株式会社
センチメートル級測位精度を実現するセミ・ダイナミック リダクション
111
岩本 貴司
三菱電機株式会社
未知分布に従う雑音の招く衛星測位誤差と受信機時計を用いる抑制
112
武輪 知明
三菱電機株式会社
列車制御に向けた実環境下での GPS 測位誤差上限不等式評価
113
樋口 志樹 S
東京海洋大学
実環境の列車における GNSS 疑似距離誤差発生状況に関する調査
114
山本 春生
(公財)鉄道総合技術研究所
停車中の鉄道車両におけるキネマティック測位性能
102
Multi-GNSS
横浜国大における自立GNSS/RNSS およびA-GNSS 受信連続モニタリングの測
定
午前 1
午前 2
午後 1
115
午後 2
農研機構中央農業総合研究センタ
ー
MADOCA-PPP を利用したロボット田植機の制御
渡邊 泰夫
NTTDATA カスタマサービス(株)
牧野 秀夫
新潟大学
118
勝賀野 史佳
長田電機株式会社
920MHz 特定小電力無線伝送の1周波 RTK-GPS 航法センサーへの利用
119
最上谷 真仁
株式会社コア
ソフトウェア GNSS の開発(仮題)
120
海老沼 拓史
中部大学
ソフトウェア無線による GNSS 信号シミュレータの開発
121
小司 禎教
気象研究所
MADOCA を用いたリアルタイム水蒸気解析実験
122
衣笠 菜月 S
横浜国立大学
1 周波受信機による単独測位におけるリアルタイム電離圏遅延推定
116
117
午後 3
長坂 善禎
大規模農業における位置情報活用「精度」の実証について
豪雪・地震災害等での QZSS 活用に関する基礎研究
-新潟県妙高及び小千谷地区における計測事例紹介-
第二会場
No.
201
氏名
所属
題目
IMES の搬送波・ノイズ比を用いた電波伝搬モデルによる人やロボットのための屋内
金子 雄人 S
早稲田大学
202
加川 敏規
情報通信研究機構
ショッピングモール内における UWB 測位技術の実証評価
203
中嶋 信生
電気通信大学
超音波歩幅検出を用いた高精度歩行者自律測位
204
村田 翔太郎 S
神奈川工科大学大学院
非可聴音を用いた高精度屋内測位システムにおける多ユーザ識別に関する基本検討
205
山本達也 S
芝浦工業大学
砂防点検業務におけるモバイル端末を用いたナビゲーションの高度化
206
田中至道 S
芝浦工業大学
全方向パノラマ画像上におけるジオタグ画像の空間的整理手法
高精度測位
第二会場
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横浜国大における自立 GNSS/RNSS および
A-GNSS 受信連続モニタリング測定
The Monitoring System to observe Stand-alone and Assisted GNSS/RNSS of YNU
高橋冨士信 衣笠菜月 足立武彦
Fujinobu Takahashi Natsuki Kinugasa Takehiko Adachi
横浜国立大学
Yokohama National University
1.まえがき
爆発的な普及をみせているスマートフォンやタブレッ
トは高感度・高精度の A-GNSS 測位受信機を内蔵してい
る。これらを利用したナビ機能は歩行・ランニング・カ
ーナビなど多彩な活用がなされている。このスマートフ
ォンやタブレットは 2014 年後半から CPU チップセット
が 32bit 系から 64bit 系へと性能向上のための移行を開
始していている。2G バイト以上の大容量のメモリ空間
が急速に必須事項となってきたためである。特にアンド
ロ イ ド 系 で は 代 表 的 32bitCPU チ ッ プ セ ッ ト で あ る
Qualcomm 社の SnapDragon 系から 64bit 系のチップセッ
トである NVIDEA の Tegra K1 などの CPU 系への移行が進
展するなかで、レガシーな GPS や Glonass そして新興の
Beidou が受信可能となる中で、わが国の準天頂衛星 QZS
は A-GNSS リストからはずれていることが、横浜国大で
の自立 GNSS/RNSS と A-GNSS 連続モニタリング測定から
判明してきている。64bit 型 iPhone 系については内部情
報が完全にクローズドであるため、現在 A-GNSS 関係に
ついて解明を試みている。
図 自立型受信
2.GNSS/RNSS 実時間モニタリングシステム
横浜国立大学の常盤台キャンパス-YRP ベンチャー棟
-三井ビル15階の三者間を結合する高速ネットワーク
を利用してポスト GPS 時代の GNSS/RNSS モニタリング
を 24 時間連続・実時間で実施している。
図
図2は u-blox M8 型受信機を U-center で表示したも
ので横浜上空での GPS, Beidou, QZS の飛翔状況である。
受信機側の制限で同時に Glonass を受信出ていないが条
件を変更すれば受信できていることは確認できている。
しかし図3のような A-GNSS 型においてわが国の QZS
受信は 32bit 機でも 2015 年以降では確認できていない。
講演では測定システムおよび各 GNSS 群の受信状況と
今後の技術的課題について報告する。
図1
常盤台 YRP 三井ビル間結合の高速ネットワーク
センチメートル級測位精度を実現するセミ・ダイナミック リダクション
Semi-Dynamic Reduction for Accurate Positioning
中根勝見
Katsumi Nakane
柳澤哲二
細井幹広
Tetsuji Yanagisawa Mikihiro Hosoi
横井貴史
Takafumi Yokoi
アイサンテクノロジー株式会社
Aisantechnology Co.,Ltd.
キーワ-ド:センチメートル級測位,セミ・ダイナミックリ
ダクション,F3 解,セミ・ダイナミック補正,地殻変動補正パラ
メータ
セミ・ダイナミック補正
セミ・ダイナミック補正は,国土地理院の規定により基準点
測量のスタティック測位に適用するもので,精密単独測位
(PPP)への地殻変動補正を行うものではない.図が示すよ
はじめに
正確で手軽な衛星測位が活躍するにつれ,三角測量によっ
うに周囲の電子基準点の地殻変動量が等しければ,セミ・ダイ
ナミック補正は零である.
て作成された従来の地図のずれが目立つようになった.衛星
測位結果と従来作成した地図の位置にずれがあることは,日
本だけの問題でなく,世界の問題でもある.国土地理院によれ
ば,“国連総会は,人々の生活や経済活動において正確な緯
度・経度を測ることの重要性を認めて,地球上の位置の基準を
世界各国で連携して維持することを 2015 年 2 月 26 日に決議
した.
”
“測量の分野での国連総会決議は初めてのこと”と述
べている.
日本の場合,2002 年度から世界測地系が導入され 100m単
セミ・ダイナミック補正に使う「今期座標」は,利用する年
位の座標誤差は解消されたが,年間数cmに及ぶ定常的地殻
度の1月1日の F3 解が使われる.図が示すように,年度末の
変動の影響は大きい.
「cm級」の測位精度を確保するため,
今期座標は 15 ヶ月前の座標値で「年度末誤差」を生じる.
「セミ・ダイナミック リダクション(プログラム名:
SemiDynaRDC)
」を開発した.
日本列島の定常的地殻変動
図は,国土地理院公開のセミ・ダイナミック補正に使う
SemiDyna2015.par を利用して当社が作成した元期から今期
(2015.0)までの日本列島の地殻変動である.全体的にdm
単位の変動であるが,沖縄では1mを超える.
セミ・ダイナミック リダクション
国土地理院が提供する日々の座標値である「F3 解」を利用
して観測時の地殻変動に基づいて元期の座標に化成する方法
が「セミ・ダイナミック リダクション」である.
F3 解 の品質評価
F3解はITRF2005に基づくIGS05から得られた座標値で,
現在使われているITRF94 及びITRF2008 と異なったフレー
ムである.これらのフレームの違いによる測位結果の座標へ
の影響は,高さ方向に大きい.従って,高さ成分のcm級精度は,
保障されないと推定できる.
列車制御に向けた実環境下でのGPS測位誤差上限不等式評価
Evaluation of the upper bound of GPS positioning error for train control system in real environment
武輪知明
Tomoaki Takewa
辻田亘
Wataru Tsujita
岩本貴司
Takashi Iwamoto
三菱電機株式会社 先端技術総合技術研究所
Advanced Technology R&D center, Mitsubishi Electric Corporation
1. まえがき
3. まとめ
近年鉄道では中長距離閑散区間を中心に,列車位置検知に測
位衛星を使用した低コスト列車制御システムが注目されている((1)).
列車を安全に運行するためには,測位誤差と安全余裕距離の大
小を確実に判定する必要がある.既往研究では,列車に衛星測
位受信機を搭載して測位値標本を蓄積し統計的に誤差上限値を
求める試みがなされている.しかしこの方式は必要標本数が膨大
になる課題がある.我々は測位値の蓄積に依らない方式確立を
目指し,これまでに精密な受信機時計によって測位誤差の上限
を逐次的に規定する誤差上限不等式を理論的に示した(2).
本稿では精密受信機時計としてRb発振器を用い,実環境下で
誤差上限不等式の成立を確認した結果を報告する
誤差上限不等式の成立を確認した結果を報告する.
UTCに同期させたRb発振器を用いて,実環境下で我々が示し
た誤差上限不等式が成立することを確認した.事前予測が不可
た誤差上限不等式が成立することを確認した
事前予測が不可
能な,NLOS信号混入時に発生する局所的な測位誤差増大時に
おける成立も示しており,衛星測位の列車制御適応へ活路を開く
ものと考える.今後は2次元測位への拡張と共にアルゴリズムの実
機組み込み化を進めリアルタイム評価を行う予定である.
太陽電池パネル
電波遮蔽板
受信アンテナ
2. 実環境下での誤差上限不等式評価試験
2-1 実験方法
実環境として,測位誤差の増大が予測される見通し外(NLOS)
信号受信状態と,鉄道走行環境下の状態を選定した.測位誤差
評価のため,アンテナは予め位置を測量した箇所に設置した.
UTCに同期させたRb発振器(PRS10)のクロックで動作するRFレ
コーダーを用いてGPS信号を標本化し,解析は後処理で行った.
(b)鉄道走行環境
図1:アンテナ設置箇所
720
信号到来時刻遅延(m)
700
680
660
NLOS信号受信衛星
640
直達波受信衛星
620
600
0
50
100
時間(秒)
150
200
図2:NLOS信号受信衛星と直達波受信衛星の信号到来時刻遅延量
(縦軸は時間に光速を乗じて距離に換算)
140
140
120
120
測位誤差と誤差上限値 (m)
測位誤差と誤差上限値 (m)
2-2 NLOS信号受信環境下での評価試験
図1(a)に示すように,太陽電池パネルと電波遮蔽板に挟まれ
た位置に受信アンテナを設置することで,直接波が遮断された
NLOS信号受信環境を構築した.この条件下で仮想的な線路軌
道を想定し,NLOS信号受信衛星を含む2衛星による一次元測位
を行うと測位結果は大きな誤差を有した(別稿(3)にて報告).
より詳細に現象を分析するため,アンテナ設置座標値を利用し
て,受信機時計で計測される信号到来時刻の理論値に対する遅
延量を算出した.図2にNLOS信号受信衛星の遅延量と, 直達
波を受信した2衛星の遅延量を,信号送信時刻に対して200秒間
描画したものを示す.遅延量は衛星クロック誤差,電離圏・対流
圏遅延,回路遅延,反射による光路長増加等の成分を含む.各
衛星間の遅延量の差は,全衛星に共通である回路遅延量を除
いた成分の影響を反映している.図より直達波の遅延は時間的
な変動が緩やかであり,かつ2衛星間の差が10 m程度である.こ
れは遅延量に混入する各種誤差の性質と矛盾しない.一方
延
す 各種誤差 性質
盾
NLOS信号は,直達波と比較して70 mを超える大きな遅延を示し
ている.これは反射による光路長増加を200秒間に渡り安定して
捉えた結果とみられる.このNLOS信号受信衛星を測位に使用す
ると,誤差の増大は避けられない.この時,受信機時計バイアス
から算出した誤差上限値と実際の測位誤差を描画した結果を図
3(a)に示す.図より,誤差上限値は実際の測位誤差より大きく,
NLOS信号受信環境下での誤差上限不等式の成立を表している.
受信アンテナ
(a)NLOS信号受信環境
100
測位誤差
誤差上限値
80
60
40
20
0
0
測位誤差
誤差上限値
100
80
60
40
20
50
100
時間 (秒)
150
200
(a)NLOS信号受信環境下での結果
0
0
50
100
時間 (秒)
150
200
(b)鉄道走行環境下での結果
図3:測位誤差と誤差上限値
謝辞
本実験を実施するに当たりご協力いただいた鉄道総合技術研
究所山本春生氏に感謝の意を表す.
2-3 鉄道走行環境下
鉄道走行環境下での評価試験
評価試験
参考文献
鉄道走行環境下として,図1(b)に示す鉄道総合技術研究所構
内の試験線路付近に受信アンテナを設置し,同様の評価実験を
実施した.算出した誤差上限値と実際の測位誤差を描画した結
果を図3(b)に示す.ここでも誤差上限値は実際の測位誤差より大
きく,鉄道走行環境下での誤差上限不等式の成立を表している.
(1) P. Mertens, JP.Franckart, A.Starck, “A low cost train location and
signaling system for the low density lines,” WCCR 2003.
(2) T.Iwamoto, T.Takewa, and W.Tsujita, “Receiver Clock-based
Integrity Monitoring for GNSS Positioning,” ION ITM, 2015.
(3) 岩本,武輪,辻田, “未知分布に従う雑音の招く衛星測位誤差と受信
機時計を用いる抑制,” 測位航法学会, 2015. submitted.
920MHz 特定小電力無線伝送の1周波 RTK-GPS 航法センサーへの利用
Feasibility Study of Specified Low Power Radio for RTK-GPS L1 Navigation Sensor
○勝賀野 史佳
井上 優一
木原 正裕
稲岡 孝
山口 典生
徳永 幸次
岸本 章志
平松 裕次
Fumiyoshi Shogano Masakazu Inoue Masahiro Kihara Takashi Inaoka Norio Yamaguchi Koji Tokunaga Shoji Kishimoto Yuji Hiramatsu
長田電機 株式会社
NAGATA Electric Co.,Ltd.
1.まえがき
3.実験結果
農業の効率化・省人化・ロボット化技術の開発が急が
れており,トラクタなど農機の運転アシストや自動走行
に必要な,高精度で安価な航法センサーが要望されてい
る.[1]
本稿では弊社で開発中の1周波RTK方式の航法センサー
に特定小電力無線を利用した例を報告する.
2015 年 4 月に兵庫県内の圃場にて測位実験を行った.
受信信号強度 対 局間距離 測定結果を図 3 に示す.
受信信号強度 vs 局間距離
-20
無線帯域幅 1ch使用
-30
-40
図 1 にハードウェアブロック図を示す.設定により基準
局・移動局いずれにも使用可能になっている.無線通信
部は当初は 2.4GHz 帯のモジュールを搭載し実験を行った
が,通信距離 1km 以上を安定して達成できなかったことか
ら,現在は 920MHz 帯のものを採用している.
無線帯域幅 2ch使用
-50
受信信号強度[dBm]
2.ハードウェア構成及び外観
シミュレーション
-60
-70
最低受信感度
-80
-90
-100
-110
-120
0
200
400
600
800
1000 1200 1400
局間距離[m]
1600
1800
2000
2200
図 3 受信信号強度 対 局間距離 測定結果
基準局の高さは 4.8m で移動局の高さは 3.3m にした.本
機は GPS のみをサポートしているが,実験に使用した圃場
が直線見通しで 3km 以上確保でき,且つ周囲にマルチパス
の発生原因となる建築物や山林が無かった為,衛星仰角
マスクを 15deg としても捕捉衛星数は 7~9 個あり,FIX
状態を概ね継続できた.他方,GLONASS もサポートした場
合に向けて,通信速度を倍にできる無線通信 2ch 同時使用
の場合でも同様の結果を得られた.
4.まとめ
図 1 航法センサー ハードウェアブロック図
構造は,複数の農機に着脱させて使用すること念頭に,
GNSS アンテナ・本体測位演算部・無線通信部を一体化さ
せた.図 2 に外観図を示す.
図 2 航法センサー 外観図(レドーム径 142Φ)
1周波RTK方式の航法センサーに安価な組込型920MHz帯
無線を採用しても,最大2km迄使用できる可能性があるこ
とがわかった. 今後はGLONASS対応とIMU統合機能の実装
を経て製品化する予定である.
参考文献
[1] 北海道庁 農政部 生産振興局技術普及課 ロボット
農作業機等実用化普及推進事業 農業のICT・ロボット技
術の普及促進
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/gjf/jisedai2.htm
ソフトウェア無線による GNSS 信号シミュレータの開発
GNSS Signal Simulation using Software Defined Radio Platform
海老沼 拓史
Takuji Ebinuma
中部大学 電子情報工学科
Electronics and Information Engineering, Chubu University
1.はじめに
近年,GNSS 受信機は,オープンスカイだけではなく,
マルチパスの多い市街地など,さまざまな信号環境で利用
されている.このような信号環境における受信信号を模擬
するツールとして,GNSS 信号シミュレータがある.
しかし,このようなシミュレータは,一般に受信機メー
カ向けの試験機器として製造販売されており,大学などに
おける研究開発のためのツールとしては高価である.
一方,スマートフォンを始めとする移動体無線通信機器
の急速な普及により,ベースバンド信号の処理をすべてソ
フトウェアで実行するソフトウェア無線(SDR: Software
Defined Radio)の開発プラットフォームが安価に入手でき
るようになった.
本研究では,このような SDR プラットフォームを活用
し,安価で自由度の高い GNSS 信号シミュレータの開発を
試みた.
ンテナポートに同軸ケーブルで接続し,受信実験を行った.
動作確認用の GNSS 受信機としては,ublox 社の LEA-6T
を使用している.
実験のセットアップを図 1 に,受信結果を図 2 に示す.
各衛星の擬似距離に応じた伝搬損失による信号の減衰を考
慮していないために,すべての受信信号が同じ信号強度を
示しているが,航法メッセージも問題なく復調され,3D
測位が実施されることが確認された.
2.ベースバンド信号の生成
SDR プラットフォームの送信機部は,デジタル化された
zero-IF の Quadrature 信号をベースバンド信号として PC か
ら受け取り,それを所望の中心周波数にアップコンバート
し,RF 信号として送信する.
ある GNSS 衛星から受信したベースバンド信号は,一般
に次式で記述することができる.
図 1: bladeRF による GNSS 信号シミュレーション
= √2 − − exp
2஽ + ここで,は拡散コード,は航法メッセージである.は
擬似距離に相当する時間遅延であり,஽ はレンジレートに
相当する中心周波数からの周波数オフセットである.
今回の試作では,サンプリング時刻ごとに,すべての可
視衛星の擬似距離およびレンジレートを求め,上式より
個々のベースバンド信号の値を算出している.その後,こ
れらのベースバンド信号を足し合わせることで,その時刻
における受信信号を模擬している.
3.GNSS 信号の生成と受信
数値的に生成されたベースバンド信号は,USB 3.0 や
Gigabit Ethernet などの高速シリアルインターフェイスを経
由して PC から SDR プラットフォームに転送される.今回
の実験では,SDR プラットフォームとして nuand 社の
bladeRF を用いた.bladeRF は 28MHz の帯域を持つ full
duplex の SDR プラットフォームであり, 300MHz から
3.8GHz の周波数帯をカバーしている.
最終的に RF 信号として送信される GNSS 信号の動作を
確認するために,市販の GNSS 受信機を bladeRF の送信ア
図 2: LEA-6T による受信結果
4.まとめ
SDR による GNSS 信号のシミュレーションは,数値的に
ベースバンド信号を生成するために,数式モデルさえ構築
できれば,どのような受信信号であっても模擬できる自由
度がある.しかし,サンプリング時刻ごとの擬似距離の算
出など,計算負荷が非常に高いことが問題となる.マルチ
スレッドや GPGPU などの並列化による高速化およびリア
ルタイム処理が,今後の課題である.
ショッピングモール内における UWB 測位技術の実証評価
Evaluation of Positioning Method Using UWB in Shopping Mall
加川敏規 李還幇 Toshinori Kagawa Huan-Bang Li
三浦龍
Ryu Miura
国立研究開発法人 情報通信研究機構
National Institute of Information and Communications Technology
1.はじめに
代 表 的 な 屋 内 測 位 技 術 に は Wi-Fi 測 位 , IMES や
iBeacon などが考案されているが,測位精度は数メートル
〜数十メートルオーダーであり,高い精度が求められる無
人ロボット制御や視覚障害者ナビゲーションへの応用は困
難である.IR-UWB(Impulse Radio Ultra-Wide Band, 以
下、UWB という)を用いた屋内測位システムは数十センチ
メートルオーダーの精度での測位が可能[1]なため,ヒュー
マンナビゲーションや無人ロボット制御分野などにおいて
注目されている.本稿では UWB 屋内測位システムをショ
ッピングモール内に設置し,実験により得られた測位精度
および誤差分散について述べる.
2.基本構成
図 1(a)に UWB を用いた屋内測位システムの基本構成を
示す.天井に設置された固定局(Base Station)と移動局
(Mobile Station)間の距離を,UWB 信号パルスの伝播時間
を計測することで算出し,3 つ以上の固定局から得られた
距離情報を元にして三点測位により位置を推定する.本シ
ステムでは最小二乗法により解を得ている.
た結果を示す.約 100m×約 20m のショッピングモールフ
ロア内通路を測位範囲とし,29 箇所で定点測定を行った.
通路は吹き抜けを囲むような形になっており,通路の脇に
は専門店が並んでいる.黒い丸点は固定局座標,赤い丸点
は移動局を置いた座標(真値),青いドットは測位結果,
青い丸点とエラーバーは測位結果の平均値と標準偏差をそ
れぞれ示している.真値の上の数値は真値と測位結果平均
値の距離を示している.多くの点で X 軸よりも Y 軸に平
行な向きのばらつきが小さくなっているが,これは通路外
は禁止領域に設定されており,通路幅を外れた測位結果が
通路端の座標まで補正されていることによる.
5.おわりに
今後,測距精度が測位精度に与える影響および周囲環境
の変化による精度の変動を評価する.また,より少ない固
定局数で安定した測位が可能になるよう固定局の配置を最
適化するための検討を行う.
参考文献
[1]
水垣健一, “UWB-IR 無線方式による屋内位置検知,”
信学会誌, Vol. 92, no. 4, pp.256-261, Apr. 2009.
3.ナビゲーション応用
図 1(b,c)に UWB 測位による屋内ナビゲーションシステ
ムの実機を示す.固定局を天井等の高い位置に設置(図
1(b))し,移動機は利用者が使いやすいようタブレット端
末と一体化している(図 1(c)).ナビゲーション画面には
部屋やフロアのマップが表示され,利用者の現在位置およ
び向いている方向がその中にポイントされる.位置情報は
UWB 測位によって取得し,向いている方向はタブレット
端末内蔵の電子コンパスによって取得している.
Base%Sta(on
Base*station
ceiling
Base%
Sta(on
ceiling
Distance%surveying%
Distance*surveying*
by*UWB
by%UWB
(b) Base station
Mobile%
Sta(on
User*with*mobile*station
User%with%mobile%sta(on
Posi(oning%server
Position*calculate*server
(a) Configuration of UWB positioning system
4.測位精度評価
図 2 にショッピングモール内の通路で測位精度を評価し
図 2. 測位実験結果
図 1. 基本構成
“Your%are%
here.”
(c) Mobile station
大規模農業における位置情報活用「精度」の実証について
渡邊泰夫
Yasuo Watanabe
NTTデータカスタマサービス
株式会社
NTT DATA CUSTOMER SERVICE Corporation
1、前書き
全国各地における農業人口は急速に高齢化し減
少している。農業経営体当たりの耕作面積は増加
の一途を辿り、既に北海道では欧州並みの 40ha に
到り 100ha 大規模農地が散見される。大規模農地
に対する効率化・省力化の要請は年々強く、単位
面積当たり収量低下回避も要求される一方、熟練
農機操作者は逼迫し、高精度位置情報を活用した
自動操舵ガイダンス装置の導入が開始されている。し
かし、農業の現場では位置情報精度の実態に関す
る情報は少なく導入に踏み切れない農業経営者も
少なくない。今回、農林水産省実証研究事業にお
いて生物系特定産業技術研究支援センタ-の委託を受
け、大規模農地における高精度位置情報活用「精
度」を実証した。本実証研究報告が高精度位置情
報を農業に適用拡大する一助になれば幸いです。
2.前提
(1)高精度位置情報の方式として RTK リアル基
地局精度を実証する。
(2)測定環境として NTT データ仕様の RTK 位置
情報インタ-ネット配信システムを用いる。
(GPS+GLONASS、相互補完複数基地局による
JA 等地域全域カバー、配信フォ-マット RTCM)
(3)北緯 43 度北海道十勝エリアにおいて、南北
7km、東西 20km の 3 リアル基地局配置による
JA エリアカバー、大規模農場環境で実証する。
3.農業において要求される「精度」を
明確化する
(1)農業規模は畝の長さ 500m、幅 500m、耕作面
積 25ha の耕作地も通例となりつつある。日々
の農耕開始時点で各畝の中央に対し農機を素
早く正確に対向させる必要がある。→FIX 必要
時間と精度の安定状況を実証する。
(2)畝に添って走行する直線方向 500m に対し左
右 10cm 幅以内、除草等の管理作業では 5cm 幅
以内の精度を大型農機走行中に継続して維持
する必要がある。→農機長距離連続耕作走行の
動的状態における精度を実証する。
(3)春の播種ルートに添い、夏・秋に除草・収穫
する。播種の走行ルート記録を正確に復元出来
ると非熟練者にも大規模農機を効率的に運行
できる。→走行ルートの復元精度を実証する。
4.農業におけるリアルRTK基地局精
度の特性を明らかにする
(1)-1 前述システム環境で FIX に必要な時間と
して1分余を得た。RTK リアル基地局方式は
素早く日々の農業に適用が可能と考えられる。
(1)-2 安定精度については FIX 後約1分で落ち
着き真位置相当からの差分:バイアスは基線長
10km+α範囲では 5cm、偏差 2σ:2cm を得た。
日々の農業に即座に精度面からも適用可能と
考えられる。
(1)-3 真位置相当からの差分:バイアスは基線
長 10km 超で 10cm 以上に拡大する。未熟練者
の場合使いこなしが課題である。しかし線型に
増加せず基線長 40km で 10cm+α、偏差 2σは
2 時間経過しても 5cm を得た。つまり、バイア
ス分を最初に補正すると農耕中の 2 時間は偏
差 95%値 2σ:5cm の精度を得ると考えられる。
(2)動的精度は、基地局基線 2.2~20.0km を切り替
えσ0.3~1.8cm を得た。走行方向直線 380m に
対する蛇行左右偏差は熟練者平均 14.5cm に対
し自動操舵 3.8cm を得た。位置情報活用により
未熟練者の高精度走行が可能と考えられる。
(3)復元精度については、基線長 2.6~18.3km を切
り替え、元の 500m 走行直線に対する復元精度
を蛇行左右偏差σ0.7~2.5cm を得た。今後の例
として春の熟練者による走行ル-ト記録を
夏・秋に未熟練者が活用することが期待できる。
5、あとがき
リアル RTK 基地局を JA 等毎にエリア内全農
地がカバーできる 10~15km 間隔で建設すること
により、農耕開始時にバイアス相当を補正する
と偏差は 2 時間経過しても 5cm 以内であり、若
年未熟練農機操作者にとっても大規模農耕に十
分活用できると考える。尚、基地局の偶発的故
障発生時に長基線長の基地局を用いる場合があ
り得る。今後、基線長距離によるバイアス値変
動に対する高精度化に取り組み、更に位置情報
活用による農業への貢献目指したい。ご指導頂
きました東京海洋大学久保先生に感謝申し上げ
ます。