1 周波ファームウェア RTK 受信機の性能評価 Evaluate

1 周波ファームウェア RTK 受信機の性能評価
Evaluate Performance of Single Frequency RTK Receiver
長瀬清
Kiyoshi Nagase
飛田悠樹
塙和広
岡本修
Yuki Tobita
Kazuhiro Hanawa
Osamu Okamoto
茨城工業高等専門学校
National Institute of Technology, Ibaraki College
1.はじめに
RTK 測位を低コストで行うために 1 周波受信機が使用さ
れるようになってきた.現在,1周波受信機を使用して RTK
測位を行うには,GNSS 用プログラムパッケージ RTKLIB
を利用することが広まりつつある.それに対し先日,内蔵
するファームウェアで RTK 測位が可能なローコスト 1 周
波 GNSS 受信機が発売された.本稿では,その受信機の性
能を,RTKLIB による 1 周波受信機と比較して性能を評価
する.
2.概要
評価対象となる受信機は NVS 社の NV08C-RTK である.
この受信機は,受信機に内蔵される 1 チップマイコン上の
ファームウェアで RTK 測位計算が可能である.NV08C-RTK
の測位性能を評価する初期実験を行い,この受信機の性能
について,その傾向を明らかにする.比較対象には同じ 1
周波 GPS/GLONASS 受信機である NovAtel 社の OEM615 を
使用した.OEM615 は 1 周波受信機の中でハイグレードに
属する受信機である.この OEM615 と RTKLIB を用いるこ
とで RTK 測位を行うことができる.これらの受信機につい
て,1)実習工場(平屋)の構造物周囲での Fix 維持,再初
期化測位,2)木周辺に設置したスライドレールにおける測
位精度 1)の 2 つの評価実験を実施した.それぞれの実験か
ら,障害物が多く測位困難な環境下における NV08C-RTK
の性能を明らかにする.
3.実験
設定として SNR マスクを 42[dB-Hz]に設定した.比較対
象である OEM615 の測位計算は,GNSS 測位計算プログラ
ムパッケージ RTKLIB2 ) を使用する.SNR マスクを同じ
42[dB-Hz]とし,仰角マスクを 10 度に設定した.アンビギ
ュイティの決定の設定は,Fix and Hold を使用した.本稿で
は評価実験のうち,スライドレール実験について説明する.
図 1 にスライドレール実験の実験環境を示す.この実験は,
距離 3m の直線軌道上を台車が往復する装置を用いて実施
する.装置端部の一方を木が覆い被さるように,もう一方
を木から離して設置することで両端での測位結果のばらつ
きの違いから,マルチパスが多い環境下における測位精度
を確認する.さらに移動中のブレ幅を見ることで,マルチ
パスが変化する環境での測位結果への影響を確認する.実
験は,アンテナを固定した台車がスライドレールの一端を
OEM615→
出発し,10 秒かけて反対の端まで移動する.端で 10 秒停
止した後,元の場所に向けて移動し,10 秒かけて出発点ま
で戻る.この行程を 20 回繰り返す.スライドレール実験の
結果を図 2 に示す.実験は同一の場所で,ほぼ同時刻に実
施した.結果についてまとめる.図 2 の全体図から OEM615
の直線軌道部のブレ幅は最大 1.5cm であるのに対し,
NV08C-RTK では幅が 2.5cm となった.図 2 の,北端と南端
を拡大したものから,NV08C-RTK は OEM615 に対し,木
から離れた位置にある北端では東西方向にばらつきが大き
くなり,木の真下に入る南端では南北方向のばらつきが大
きくなっていることがわかる.OEM615 の北端では東西に
1.5cm,南北に 1.8cm,南端では東西に 1cm,南北に 4cm ほ
どであった.NV08C-RTK では北端で東西に 4.5cm,南北に
2.5cm であった.南端では東西に 2cm,南北に 5cm であっ
た.NV08C-RTK のばらつきが大きくなった要因として,
SNR マスクの設定がある.この値の最適値を求め,その値
を用いることで改善される可能性がある.
4.まとめ
1 周波 GPS/GLONASS 受信機として,ハイグレードな
OEM615 をベンチマークとして,NV08C-RTK の性能を評価
する初期実験を実施した.その結果から,NV08C-RTK の測
位結果のばらつきが,OEM615 の測位結果のばらつきより
大きいことがわかった。このことから NV08C-RTK は,Fix
解において数 mm 単位の精度を追求しない場合では十分に
使えることが,現状では言える.今後は Float 解から Fix 解
に戻る再初期化時間について調べる予定である.また,こ
の結果は初期実験のものであり,受信機の設定値が環境に
対する最適値になっていない.実験方法に幾つかの問題が
ある可能性もあるので,厳密な比較実験を実施する予定で
ある.
参考文献
1)和賀祥吾,塙和広,岡本修,”ハイエンド 1 周波 GNSS 受信機に
おける RTK 測位の評価”,平成 26 年度測位航法学会全国大会,
2014
2)高須知二,久保信明,安田明生,” RTK-GPS 用プログラムライブ
ラリ RTK-LIB の開発・評価および応用”,GPS/GNSS Symposium
2007 text,pp.213-218,2007.11
1cm
20cm
1cm
20cm
5mm
NV08C-RTK→
5mm
拡大図
(木の下側)
図 1 スライドレール実験環境
図 2 スライドレール実験結果
拡大図
(オープンスカイ側)