スポーツと食育 成長期のからだづくりと運動時の食事 茨城キリスト教大学 生活科学部 食物健康科学科 教授 井川聡子 栄養と運動のかかわり 糖質 エネルギーの供給 脂質 エネルギー生産反応の 円滑化 筋肉の肥大、骨格の強化 身体機能の調節 たんぱく質 ビタミン 特にV.B群 とV.C ミネラル 特に鉄と カ ルシウム 水 食物繊維 運動の系統別栄養の特性 重要な栄養素 瞬発・ たん白質、ビタミンB6 筋力系 運動種目 短距離走、短距離水泳、 体操、筋トレ、柔道 持久系 糖質、ビタミンB1、鉄、 クエン酸 マラソン、長距離水泳、 走り込み 混合系 糖質、ビタミンB1、鉄 たん白質、カルシウム 野球、サッカー、バス ケット、テニス、卓球 1日の摂取エネルギー量の目安 身体活動 レベル 6~7歳 男 女 8~9歳 男 女 10~11歳 12~14歳 男 男 女 女 低い (Ⅰ) 1350 1250 1600 1500 1950 1750 2200 2000 ふつう (Ⅱ) 1550 1450 1800 1700 2250 2000 2500 2250 高い (Ⅲ) 1700 1650 2050 1900 2500 2250 2750 2550 運動者は多くの 栄養量が必要! 資料:厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2010) 基礎代謝基準値 年齢 6~7 8~9 10~11 12~14 男子 女子 44.3 40.8 37.4 31.0 41.9 38.3 34.8 29.6 種類 持久力系 (軽い) 持久力系 (激しい) 瞬発力系・筋力系 年齢 6~7 8~9 10~11 12~14 エネルギー蓄積量 男子 女子 15 25 35 20 20 25 30 25 身体活動レベル(PAL ) 1時間 2時間 3時間 1.55 1.70 1.75 1.65 1.90 2.00 1.75 2.10 2.25 基礎代謝 体重 身体活動 + エネルギー × kg × レベル 蓄積量 基準値 = 必要エネルギー 量(kcal) 必要エネルギー量算出例 ●中学1年生( 13歳) 男子 ●体重 45kg ●基礎代謝基準値 31.0kcal/kg体重/日 ●一日の運動時間 2時間 身体活動レベル2.00 ●エネルギー蓄積量 20kcal/日 *必要エネルギー量(kcal/日)= 31.0×45×2.00+20=2810kcal その他の栄養量(1日分) 10~11歳 日本人の食事摂取基準 身体活動レベル「高い」 たんぱく質 g 10~11歳の場合 脂質 必要量は微量でも、 食事の偏りで不足 が見られる。 給源となる野菜・海 藻・きのこ類の摂取 強化を図る 炭水化物 g 食物繊維 g 女 たん白質エネルギー比 15%前後 脂肪エネルギー比率 25~30% (23) ビタミンA μgRE 600 550 ビタミンB1 mg 1.2 1.1 ビタミンB2 mg 1.4 1.2 ビタミンC mg 80 カルシウム mg 700 食塩 微量栄養素に比べると、 多くの量が必要 炭水化物エネルギー比 60%前後 (25) 鉄 とりすぎ注意! g 男 運動実施者は特に、 ビタミン・ミネラル類の 不足に注意が必要 エネルギー・3大栄養素の 代謝に必須 骨の成長に重要 mg 10.0 9.5(13.5) g 8未満 7.5未満 貧血防止に重要 1日の食品群別摂取目安量(例) 小5,6年男子 中1男子 ごはん 450 600 コンビニおにぎり1個100g パン 90 120 食パン6枚切り1枚 60g 魚介類 70 70 切り身魚1枚80~100g 肉類 80 140 薄切り肉1枚15~20g 卵類 50 50 Mサイズ1個50g 豆類 60 85 豆腐1/3丁100g、納豆1パツク50g 緑黄色野菜 150 150 ミニトマト1個10g、ピーマン1個30g その他の野菜 250 250 きゅうり1/3本30g、玉ねぎ1/4個50g きのこ類 20 20 生しいたけ1枚10~15g 海藻類 5 5 焼き海苔1枚3g いも類 40 60 じゃがいも中1個100g 果実類 200 250 かき中1個150g、みかん中1個100g 乳類 540 600 200cc計量カップ約1杯 種実類 5 5 アーモンド・ピーナッツ1粒1g 砂糖類 10 10 スティックシュガー1本3~6g 油脂類 20 25 大さじ1杯12g 食品群 主 食 主 菜 副 菜 そ の 他 ※女子は男子の80%、 小学3,4年は70~75% 目安量 こどもの食べ方の状況 好んで良く食べる ふつうに食べる あまり食べない 72.1 27.9 0 いも類 41.0 68.9 36.1 21.3 31.1 26.2 24.6 47.5 44.2 26.2 55.7 67.2 44.3 57.4 59.0 42.7 14.8 4.9 8.2 11.5 24.6 16.4 14.8 9.8 果実類 72.1 21.3 6.6 乳類 50.8 41.0 8.2 食品群 主 食 穀類 魚介類 主 菜 肉類 卵類 豆類 緑黄色野菜 副 菜 そ の 他 ※日立陸上クラブ 61名調査結果 その他の野菜 海藻類 栄養バランスを整えやすい食事構成 副菜(緑) 主菜(赤) ビタミン・ミネラル・食物繊維源 たんぱく質・脂質源 野菜・海藻・きのこ類を 毎食しっかりとりましょう 主食(黄) 炭水化物源 ごはん・パン・めん類の いずれかを毎食適量とりましょう 卵・肉・魚介・大豆類を 毎日バランス良くとりましょう 汁物(緑) 水分・ビタミン・ミネラル ・食物繊維源 うす味・具だくさんで 1日2~3回とりましょう ●その他、果物、牛乳・乳製品を毎日適量とりましょう ●菓子類、ジュース類に含まれる見えない糖分・油分・塩分に注意しましょう ●3色そろっていることを確認しましょう 朝 44% 夕 27% 家庭での提供状況 朝 72% 朝 31% 夕 96% 果物 夕 99% 主菜 副菜 朝 100% 夕 99% 朝 37% あるいは 汁物 夕 74% 朝 66% 夕 24% 主食 牛乳・乳製品 日立陸上クラブ 68人対象調査結果(2012) 食欲の状況 朝食 ある ない 夕食 無回答 31名 30名 7名 (45.6%) (44.1%) (10.3%) 生活リズムを 整えましょう 朝食の働き ある ない 無回答 60名 1名 7名 (88.2%) (1.5%) (10.3% 日立陸上クラブアンケート結果(対象:68名) ●体温を上昇させる(特に主菜) ●胃・結腸反射で排便(水分、繊維) ●脳のエネルギー補給(穀類、糖分) ●抗ストレスのビタミンC(果物) スティッ ク野菜 朝食を自分で準備できる 手間 いらず! レンジで チン! インスタ ントでも おにぎりや パックごは んでも! むくだけ! 間食(補食)は適量を ●1日の総エネルギーの10~15%程度が適量 小学生:150~250kcal 中・高生:250~350kcal ●糖分・脂質分・塩分の取りすぎ注意(資料参照) ●エネルギー源として おにぎり(ゴマ、青のり、きなこ、桜エビ等を利用) サンドイッチ(フルーツ、かつおフレーク、なまりぶし等を利用) ●たんぱく質・カルシウム源として 牛乳、ヨーグルト、チーズ、豆乳など ●ビタミン・食物繊維源として 果物類、100%果汁飲料、野菜ジュース、サラダ類 菓子類のエネルギーと砂糖量 重量(g) エネルギー量 (kcal) 砂糖量(g) コーラ 350 150 38 サイダー 350 130 33 缶コーヒー 250 115 23 アイスクリーム 150 270 25 チョコレート 50 278 28 ショートケーキ 100 340 29 あんぱん 100 270 29 カステラ 50 160 19 蒸しまんじゅう 50 130 17 100 145 17 70 165 17 食品名 プリン 大福もち 砂糖 1日の目安量 5~10g 最大でも 30g以下に 間食としての エネルギー量は 200kcal以下に 見えない糖分 に要注意! 大さじ1杯の 砂糖は9g 見えない油に注意 食品名 重量(g) エネルギー量 (kcal) 脂質量(g) ポテトチップス 85 470 29.8 ミルクチョコレート 50 278 17.0 ショートケーキ 100 340 14.0 アイスクリーム 100 212 12.0 ホイップクリーム 15 63 5.7 イーストドーナッツ 60 232 12.2 デニッシュペストリー 80 317 10.4 クロワッサン 50 224 13.4 即席カップ麺 80 358 15.8 食パン 60 158 2.6 フランスパン 60 167 0.8 100 168 0.3 ごはん 油 1日の目安量 15~20g 大さじ1杯 油 12g 運動力を高めるには栄養が肝心! 項目 関連する栄養素 丈夫な骨をつくる たん白質、カルシウム、ビタミンD 強い筋肉をつくる たん白質、ビタミンB6 貧血を防止 たん白質、ビタミンC、カルシウム、 コラーゲン たん白質、鉄、ビタミンC、ビタミンK、 スタミナをアップ 糖質、ビタミンB1、アリシン、クエン酸 集中力をアップ 糖質、ビタミンB1、DHA、レシチン けがに強い 糖質、たん白質、ビタミンB1、 疲労回復を早める ビタミンB6、アリシン、クエン酸 特に大切なビタミン(脂溶性) 種類 V.A (β-カロテン) 働き 皮膚・粘膜強化 抵抗力のアップ 主な給源となる食材 うなぎ、レバー 緑黄色野菜 など V.D カルシウムの吸収に 魚類、卵黄、干しし 関与し、骨をつくる。 いたけ など V.E 抗酸化作用、血流の かぼちゃ、ナッツ類 促進 特に大切なビタミン(水溶性) 種類 V.C V.B1 V.B2 V.B6 働き 抗ストレス、抗酸化 作用、コラーゲンの生成 糖質をエネルギーに 変えるのに必要 脂質の代謝に関与 主な給源となる食材 各種野菜、果物 豚肉、ハム、うなぎ、 納豆、玄米など 青魚、納豆、卵、牛乳 乳製品、緑黄色野菜 タンパク質をアミノ酸 鮭、レバー、さつま芋、 に分解するのに必要 バナナ カルシウムをしっかりとろう! ●身体の土台となる骨・歯をつくる ●筋肉の収縮に働く ●心臓の規則的な鼓動を保つ ●出血防止 ●イライラ防止 ●カルシウム給源食品の摂取強化(資料参照) (牛乳・乳製品、小魚、藻類、緑黄色野菜、大豆類) ●ビタミンD、たんぱく質、クエン酸(果実類)と一緒に ●インスタント、加工食品の摂り過ぎ注意 カルシウム給源食品を しっかりとろう! 食品名 目安量 (g) カルシウム 量(mg) 乳 ・ 乳 製 品 牛乳 200 220 ヨーグルト(無糖) 200 240 プロセスチーズ 25 158 小 魚 類 しらす干し 10 21 桜えび 5 10 100 220 藻 類 干しひじき 5 10 70 90 煮干 こんぶ(乾) 資料:日本食品標準成分表(2010) 1日の必要量 小学生:550~700mg 中学生:800~1000mg 目安量 (g) カルシウム 量 (mg) 大根の葉 50 50 125 130 小松菜 70 119 モロヘイヤ 50 130 50 100 75 45 120 180 10 120 食品名 緑 黄 色 野 菜 カブの葉 大 豆 類 納豆 木綿豆腐 生揚げ 種 実 ゴマ(大さじ1) 鉄をしっかりとって運動能力を高めよう ●鉄は血液中のヘモグロビンとなり酸素を運びます 不足すると筋肉への酸素の供給が不十分に ●鉄含有量の多い食品を利用しましょう(資料参照) ●ビタミンCの多い食品(果物類、野菜類など)と一緒 に摂ると吸収率がアップ! ●赤血球を作る他の栄養素(葉酸、ビタミンB12など) も摂りましょう 1日の必要量 小学生:6.5~10.0mg ( 13.5) 中学生:10.0~11.0mg (14.0) 鉄の給源食品をしっかりとろう! 目安量 (g) 鉄量(mg) 豚レバー 60 7.8 鶏レバー 牛ヒレ肉 60 80 5.4 1.8 しじみ 80 食品名 肉 類 魚 かき 介 類 あさり なまり節 食品名 目安量 (g) 鉄量(mg) なばな 70 2.0 小松菜 70 2.0 スィートコーン 1本 200 1.6 4.2 緑 黄 色 野 菜 70 1.4 150 80 3.9 3.0 大 豆 類 豆乳 200 2.4 大豆(乾) 20 1.9 3.0 1.1 干しそば(乾) オートミール 100 50 2.6 2.0 2.8 ゴマ(大さじ1) 10 1.0 きの こ 黒きくらげ 60 3 海 藻 干しひじき 5 資料:日本食品標準成分表(2010) 穀 類 ほうれん草 水分補給を適切に ●体重の約60%を占める 細胞内液(約40%)、細胞外液(約20%) 1日の水分出納(成人) 摂取 (ml) 排出 (ml) 食事 700~ 1,000 尿 1,200~ 1,400 飲み物 1,000~ 1,200 不感 蒸泄 700~ 900 代謝水 300 大便・他 100~ 200 合計 2,000~ 2,500 合計 2,000~ 2,500 ●体の成分になる ・エネルギーの生産、 細胞の再生は水を通 して行われる ●細胞の溶液になる ・水を介して細胞内外 の圧力バランスを保つ ●栄養素を運ぶ ●体温を調節する 水分摂取の目安 ●飲み物の種類・・・お茶、水、スポーツドリンク等 ●練習や試合の前 開始30分くらい前 コップ1~2杯 ●練習中、試合中 15~30分おきに コップ1杯程度 ●練習や試合の後は適宜 疲労回復、エネルギー補給をかねて100%ジュース や牛乳を利用 試合前の食事で気をつけたいこと ●筋肉のエネルギー源としての筋グリコーゲンを貯える ●血中ブドウ糖濃度を維持し、脳・神経のエネルギー 源を確保する ●体調を整える ●体温を上昇させ、やる気を起す ●空腹感をなくす ●胃内停滞時間の長い食品は避ける ●腸内にガスが溜まるものを避ける ●水分補給もしっかりと 試合間・試合後の食事で気をつけたいこと <試合間> ●吸収が早い糖質とビタミン(特にビタミンB1、C)・ 水分を補給する おにぎり、果物(バナナ、オレンジ)、カステラなど <試合後> ●炭水化物で筋グリコーゲンを回復させる ※砂糖の過剰には注意 ●たんぱく質で筋肉の疲労回復を(消化の良い物) ●消費したビタミン・ミネラル類も補給 食事での心がけ 日立陸上クラブ調査結果 回答者68名 質問項目 栄養バランスを考える 野菜を多く取り入れる いろいろな食品を使う 手作りを多くする 間食を摂り過ぎない 時間を規則正しく うす味にする 夜食は控える 嫌いなものも出す 糖分を控える 回答率(%) 79.4 67.6 44.1 42.6 38.2 36.8 26.5 22.1 14.7 10.3
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