第 10 回北海道いじめ・暴力・ひきこもり治療研究会 2007 年6月 30 日(土)札幌市教育文化会館 1 階小ホール 治療体験談1 不登校児への内観療法と生活習慣の改善 医療法人耕仁会 札幌太田病院 3 階病棟 ○結城素子 長浦千穂子 佐々木智城 阿部一九夫 1.はじめに 当院における思春期症例は、自信のなさや耐性欠如、人生目標の不確かさなど人格形成 における障害がよく見られる。また家庭内では、親子の信頼関係が健全に構築されず、家庭 教育が不十分であり、正しい生活習慣を身に付けていない場合も多い。今回、不登校の男子 中学生に対して、病棟内・内観療法を中心とした入院治療を行ない、生活習慣の改善から解 決に至った過程を報告したい。 2.症例 A男(男子中学生)。幼少期から気管支喘息の既往があり、入退院を繰り返す状態であった。 家庭環境では、1 才時に両親が離婚し、母に引き取られた。5 才時に母が再婚し弟が生まれた が、10 才時に再度両親が離婚し、以降母との 2 人暮しとなった。成績は下位であり、友人は少 なく、学校でいじめに遭ったようだが、本人から被害を訴えることはなく「学校は楽しい」と答え ており、小学卒業まで不登校は見られなかった。 3.今回入院までの経過 小学生の時に、母親がうつ状態のため当院に入院し、A男も付き添いのため入院となり、母 子関係の調整のため親子同時内観を行った。中学入学後、「やる気がでない」「登校前は頭 が痛くなる」など訴え欠席が増え、母親が対応困難となり、2 回目の入院となった。集中内観お よび登校支援を行ない、退院後は、身体症状は残存するものの、自主的な登校が可能となっ た。しかし数ヵ月後、体調不良を理由に欠席が増え、3 回目の入院となった。 4.治療の経過 生活習慣の乱れがあったため、朝の運動、食事、睡眠、挨拶・礼儀指導を中心とした看護を 行ない、同時に短期間の集中内観を実施した。不登校に対する反省が得られ、登校意欲も回 復し、内観終了後は母同伴にて病院から登下校を開始した。継続して生活指導を行ない、そ の結果、登下校時の挨拶や学校生活のレポート内容など改善が多く見られ、10 日間の入院 治療を終結した。退院後は、頭痛など訴え欠席することもあるが、不登校などの生活状況は改 善された。 5.考察 A男は自己表現が不得手であり、知的にも境界水準であるため、不登校の原因などにつ いて深い自己洞察や言語化が困難であった。また母親自身がうつ病であるなど、家庭での 生活指導などが十分機能していなかったことも考えられる。そのため、病棟内・内観療法 において理解しやすい指導および明確な目標の設定、日常生活におけるより現実的な看護、 指導を徹底が有効であった。今後は再入院を防ぐべく、A 男および家族に対して外来、デイ ケアにおいて入院治療で得た効果を持続させるサポートが重要である。
© Copyright 2024 ExpyDoc