いわき湯本病院

ミラクル賞
平成27年9月度
いわき湯本病院
概
要
63歳男性。重症肺炎の治療にあたり、不穏が強いとして、麻酔薬持続点滴による薬
物抑制の状況下に加療され、持続点滴状態のまま慢性腎不全(血清クレアチニン値
最高7.47)の末期療養患者として紹介され、当院へ転院となりました。
転院後、まず、薬物による抑制の解除を目標に、麻酔薬持続点滴の中止、経口鎮静
剤への変更、さらに投与量の漸減、離脱を試みました。栄養管理、水分管理も試み
たところ、入院100日目前後から一切の抑制もなく経口摂取が可能になり、血清クレア
チニン値も脱水状態の改善とともに下降し、腎不全末期で回復は困難と説明され転
院してきた病態から驚異的に回復し、入院280日で退院となりました。退院後は、有
料老人ホームに入所されました。
内 容
元来、精神遅滞があり施設入所中の63歳の男性。発熱と食欲不振があり、かかりつけ医から重症肺炎
と慢性腎不全増悪の診断で、急性期病院に紹介され入院しました。急性期病院では、不穏状態が強く
体動も激しいことからベッド上安静加療が困難との判断で、家族了解のもとで鎮静・麻酔剤(ドルミカム、
プロポフォール)の持続点滴下に抗生剤治療が行われました。
重症肺炎はほぼ軽快しましたが、慢性腎不全(血清クレアチニン値7,47)の病態回復は極めて困難で
あり、さらには不穏が強いということで鎮静剤の持続点滴静継続と末梢点滴静注のみの状況で療養依
頼があり、当院へ転院されました。
長期臥床のため四肢拘縮は著明でご家族にも、腎機能不全の今後の回復は見込めずほぼ看取りの状
態であるとの説明がなされていました。
当院入院後のCT検査所見では脳萎縮所見もアルツハイマーとして矛盾しない所見でした。さらに、胸
水の貯留も認められました。
当院入院時、担当医を含めたチームカンファレンスでは、腎不全対策も重要でしたが、まず、鎮静剤持
続点滴による薬物抑制の解除を目標とすることとし、麻酔薬の離脱を即日実施しました。栄養と水分調整
は経中心静脈栄養によることとし、鎮静剤は経口で調整を開始しました。当初不穏状態も見られ、一時
的には抜管の防止の為ミトンの装着も余儀なくされましたが、徐々に安静が保持できる状態になり、水分
バランスの補正が進むに従って、経口摂取も可能になってきたことから、経中心静脈栄養も中止しました。
ミラクル賞
平成27年9月度
入院100日目ころになって、クレアチニン値も低下の傾向がみられるようになり、長期臥床のため四肢拘縮
が進んだ状態でしたが、リハにより座位の保持が可能になってきました。
最も問題であった不穏状態もほぼ調整が可能となり入院280日目、ADLは車いす軽介助、経口摂取可、
腎不全状態はクレアチニン値は4.33レベルでしたが下降傾向が見られるようになり、かかりつけ医の管理
のもとで施設入所生活も可能と判断し退院されました。
ほぼ退院は困難とされ、不穏状態コントロールのため麻酔剤持続点滴による薬物による抑制状態で転院
された患者さんに対し、抑制を解除しチームで退院にまでつなげることができ、家族からも大変感謝され
た症例です。