前頭側頭型認知症の 特徴とケア 中西亜紀

特集2
前頭側頭型
認知症の
特徴とケア
前頭側頭型
認知症の
正しい知識と
適切なケア
認知症に罹患する人は高齢者(65歳以上)の約15%に
達すると言われる現在,医療現場で認知症を患う人とかか
わったことのない医療職はまずいないであろう。しかし,
「認知症」と言われる病気は,一つの疾患を指してはいな
い。「後天的に脳に病気が起こることにより,認知機能す
なわち知的な能力のいずれか2つ以上が継続的に低下し,
そのために日常生活に支障を来した状態」を認知症と言う
が,その定義には,
「①発達障害ではない」
「②認知機能障
害の2つ以上の組み合わせにはいろいろな組み合わせがあ
る」
「③一時的なものではなく進行性である=治らない」
「④自立した生活はいずれ困難になる」という意味が包含
されている。つまり,あくまで認知症とは,状態像を表し
た総称であり,多様な原因疾患から生じ得るため,その病
中西亜紀
像も原因疾患により多様である。
認知症の原因疾患としては,高齢者においてはアルツハ
イマー型認知症が最も多く,若年発症者では,脳血管性認
知症が多いと報告されている1)。そして,年齢を5歳ごと
大阪市立弘済院附属病院
神経内科 部長/認知症疾患医療センター長
福井医科大学(現・福井大学)医学部卒業。医学博士。大阪市立大学大学院医学研究科・
生活科学研究科非常勤講師。大阪市立大学医学部附属病院を経て1998年より現病院に
勤務。2006年に、併設する第2特別養護老人ホーム職員等と共に前頭側頭型認知症
研究会を始め、前頭側頭型認知症ケアに取り組んできた。2013年3月「認知症の医
療・介護に関わる専門職のための『前頭側頭型認知症&意味性認知症〜こんなときどうす
る!』
」
( http://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000212765.html
)初版作成。
に区分すると,65歳以上の認知症の発症率は5歳上がる
ごとにほぼ倍増していく。特に,アルツハイマー型認知症
は高齢女性に多く,かつ女性は平均寿命が長い。そのため,
医療・介護現場にはアルツハイマー型認知症の患者が圧倒
的に多く,認知症診療・ケアはアルツハイマー型認知症を
主な対象として発展してきた。社会の急速な高齢化の進行
に伴い,認知症対策の重要性が叫ばれ,市民啓発活動もア
ルツハイマー型認知症に主眼を置いて行われてきた。した
がって,アルツハイマー型認知症において,初期から最も
前景に立つ「もの忘れ(記憶障害)
」こそが,認知症の代
名詞のように取り扱われてきた。
もの忘れの目立たない認知症
認知症の診断とは,まず認知症であるか否かを診断し,
次にどの疾患による認知症であるかを診断する。医師が診
断に用いる診断基準は複数あるが,2011年にNIA/AAから
➡続きは本誌をご覧ください
臨床老年看護 vol.22 no.3
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