15komaba6

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2015 年 4 月 27 日、5 月 11 日
2.3.選択の科学
記述的理論:
個々人は現実にどのような選択をしているか
価値判断なし
規範的理論:
個々人はどのような選択をするべきか
経済学者が良し悪しについて価値判断する
⇒ 「このように行動するといいですよ」と忠告
⇒ 「なるほどそうしよう」 Good Theory
「いやだ」
Bad Theory →Need modification!
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個人の選択問題
選択肢集合 B の中から一つの選択肢 x を選択する
x  C ( B)  B
から、みかんを選
例:
山田さんは選択肢集合 B {みかん、イチゴ、トマト}
んだ。
∴ C ( B)  みかん
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様々な選択肢集合 B 、 B 、 B 、…について
実際に何が選択されたかについてのデータがある
選択肢全体の集合 X
B  X 、 B  X 、 B  X ……
選択肢集合全体の集合 2 X
B  2 X 、 B  2 X 、 B  2 X ……
選択ルール(Choice Rule)
C : 2X  X
where we assume C ( B)  B for all B  2 X .
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例:選択肢全体の集合 X {みかん、ばなな、いちご、とまと}
C ( B) とまと
B {みかん、いちご、とまと}
C ( B)  みかん
B {みかん、いちご}
B  X {みかん、ばなな、いちご、とまと} C ( B)  ばなな
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顕示選好の弱公理(Weak Axiom of Revealed Preference)
選択ルール C についての最重要要求条件
[ C ( B )  B  and C ( B)  C ( B ) ]⇒[ C ( B)  B ]]
選択肢集合 B からは C ( B) が選択された。
では、別の選択肢集合 B からは何が選ばれるのか。
C ( B) が B に入っているならば、 C ( B) が選ばれるかもしれない。
C ( B) が選ばれない場合には、 B の中の選択肢は選ばれない。
つまり、差集合 C ( B) \ C ( B) の中にある選択肢が選ばれる
例:
例:
みかんとバナナ:
みかんとバナナとイチゴ:
バナナ
みかん?
NO!
みかんとバナナとイチゴ:
バナナとイチゴとトマト:
バナナ
イチゴ?
NO!
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効用関数(Utility Function)の導出
経済学ではベンサムの快楽的効用と「全く異なる」効用概念を用いる
序数的効用:
顕示選好の公理をみたす場合には
選択肢に好き嫌いのランクをつけることができる
例:選択肢全体の集合 X {みかん、ばなな、いちご、とまと}
C ( B) とまと
B {みかん、いちご、とまと}
C ( B)  みかん
B {みかん、いちご}
B  X {みかん、ばなな、いちご、とまと} C ( B)  ばなな
1位:
2位:
3位:
4位:
ばなな
とまと
みかん:
イチゴ:
4点(あるいは 56 点、100 点、などなど)
3点(あるいは 54 点、40 点、などなど)
2点(あるいは 53 点、33 点、などなど)
1点(あるいは 52.5 点、-40 点、などなど)
点数の値はどうでもいい。大小関係さえ正しければいい:序数性のみ重要(cf. 基数性)
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u (banana )  56
u (tomato )  54
u ( mikan )  53
u (ichigo )  52.5
効用関数の一例
この個人の選択行動は「効用最大化問題」として定式化できる
C ( B )  arg max u( x )
xB
つまり
u (C ( B))  u ( x) for all x  B \ {C ( B)}
(cf. 無差別の場合は?)
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規則性の仮定
過去のデータは不規則に(でたらめに)選択された結果ではない。
過去のデータから導かれた効用関数 u ( x) は、
この個人の「これからの」選択行動をよりよく記述するものである。
経済学者は、この個人のこれからの選択行動の予測を
効用関数 u ( x) の最大化としてモデル化する。
この個人は効用関数 u ( x) にしたがって今後実際に選択するか?
する場合:
この人は合理的だ。理論は正しかった。
しない場合: そうするべきだ(規範理論)
「そうしよう」:
非合理な個人に有益なアドヴァイス
「そうしたくない」: 個人は非合理? それとも
モデルを修正すべき?
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2.4.行動経済学:
合理的な個人、非合理的な個人
現実の経済主体(個人)は合理的に行動するか?
そうでない場合、経済学者は非合理的な個人をどのように分析するか?
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2.4.1.WARP 再考
顕示選好の弱公理(WARP , Weak Axiom of Revealed Preference)
[ C ( B )  B  and C ( B)  C ( B ) ]⇒[ C ( B)  B ]]
選択肢に好き嫌いのランクをつけられる
⇒ 経済厚生上望ましい配分(パレート効率的配分)はなにかを検討するための必須条件!
Question
WARP ははたして現実においていつも成立すると言えるのか
Answer
Not Neccessarily
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パレート効率的配分(効率的配分、最適配分)再考
他の経済主体の効用をさげることなく
特定の経済主体の効用を高めることができない配分
表記:
X  Y:XをYより選好する
X ~ Y: XとYは無差別
Bさんのランクを下げずにAさんのランクをあげる例
Aさんの選好:
ばなな  イチゴ
Aさんの初期保有: イチゴ
⇒ばななとイチゴを交換すべし
Bさんの選好:
イチゴ  ばなな
Bさんの初期保有: ばなな
Aさんの選好:
ばなな  イチゴ
Aさんの初期保有: イチゴ
⇒ばななとイチゴを交換すべし
Bさんの選好:
イチゴ ~ ばなな
Bさんの初期保有: ばなな
パレート効率的配分:(Aさん:ばなな、Bさん:イチゴ)
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ケース1:Choice Overload
選択肢が多すぎるとまちがった買い物(  )をしてしまう
⇒ 売り手はあらかじめメニューを厳選することで、買い手の選択に配慮すべし!
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ケース2:Addiction(中毒)
選択肢集合{タバコ、禁煙パイポ、水}においては
どれを選べばいい??
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WARP をみたす合理的な選択が見つけられない!
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パターナリズム(心理学、行動経済学、ベンサム)による
非経済学的(?)解決方法
カウンセラー(医者、相談員)
個人はえてして非合理にふるまうものだ
よって、個人の選択は「真の」快楽の最大化ではない
パターナリズムによって説得する必要がある。
この場合、「健康上タバコを控える」ことが本人にとって真の快楽である。
タバコ以外の選択肢を選ぶことを説得するべきである。
水を薦めする!
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選択の科学としての経済学による解決方法
この個人の行動を合理的に説明できる規範理論を構築しよう!
コミットメントの選択問題
ギリシャ神話:オデュッセウスはセイレーンに誘惑されないように
マストにからだをしばりつけた
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選択肢を、たばこ、禁煙パイポ、水、とせずに
「選択肢集合」自体を選択肢とみなそう
7種類の選択肢(もとの選択肢の部分集合)
{タバコ}、{禁煙パイポ}、{水}、{タバコ、禁煙パイポ}
{タバコ、水}、{水、禁煙パイポ}、{タバコ、禁煙パイぽ、水}
選択肢=コミットメント
{水}:
{禁煙パイポ、水}:
タバコ、禁煙パイポでなく、水を選択することにコミット
あらかじめタバコを選択できないことにコミット
「会議室にタバコをもっていかない」
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コミットメントの選択問題については
WARP が成立しうる!
ランキング
1{水}
2{水、禁煙パイポ}
3{禁煙パイポ}
4{タバコ、禁煙パイポ}
5{タバコ、禁煙パイぽ、水}
6{タバコ、水}
7{タバコ}
ただし、1,2,3,4のコミットメントが選択できない場合にはタバコを吸う羽目になる
これらのコミットメントができるようにすればこの人の Welfare(経済厚生)は改善される
ことになる!
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左の問題と右の問題(コミットメントの選択)は
ことなる問題であることに注意せよ
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補足
・
「タバコ  水  禁煙パイポ」であっても、コミットメントの選択問題は依然と
して重要な意義あり:「{水}  {禁煙パイポ}  {タバコ}」
・
パターナリズムとの関連は?
カウンセラーのアドバイス:
Informed Consent、および
コミットメントとしての役割
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ケース3:Present Bias
(Time Inconsistency、Preference Reversal, Hypaboric Discounting ...)
例:フィリピンの貯蓄性預金
Ashraf, Kalan, and Yin (2006): “Tying Odysseus to the Mast”, Quarterly Journal of Economics
フィリピンのとある銀行が、新しい Saving Account サービスをスタートした
ある期間すぎないと金を引き出せないとする仕組み
どのような人がこの口座を喜んで開設したか?
Present-Bias の強い人!
Present Bias の例:
今日「和食」、明日「中華」、明後日「フレンチ」?
今日の時点:
明日の時点:
私は明後日フレンチ食べたい
(昨日「和食」食べなかったとして)
明日までまてない!今日「中華」食べちゃおう!
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パターナリズム
「Present-Bias は、多重自己(Multiple Selves)という心の病である。
健康な人はこのバイアスは小さいはずだ」
経済学:コミットメント
コミットメントのランキング
{今日和食、明後日フレンチ}~{明後日フレンチ}
{今日和食}~{今日和食、明日中華}
{明日中華}~{明日中華、明後日フレンチ}~{今日和食、明日中華、明後日フレンチ}
フィリピンの貯蓄性預金:明後日まで引き出せないことにコミット
口座開設={明後日フレンチ}
口座開設しない={今日和食、明日中華、明後日フレンチ}
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2.4.2.ギャンブルはお好き?
(序数的)効用:大小関係だけが重要
1:1000円
2:700円
3:500円
4:300円
5:0円
効用
1000
700
500
300
0
効用(別表現)
100000
2
0
-15
―69
ギャンブル(くじ)についての選好も考えよう!
くじの例: (1000円50%、500円50%)
(700円30%、300円40%、0円30円)
くじの選択は経済学において欠かせない問題:不確実なベンチャービジネス
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期待効用理論(von Neumann and Morgenstern)
von Neumann (1903~1957)
合理的個人によるくじについての選好を定義する代表的なアプローチ
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くじ(1000 円 100%)の効用を100としよう
くじ(0円100%)の効用を0としよう
u (1000)  100
u (0)  0
その他のくじの効用を以下の手順で定めよう!
・ くじ(700円100%)の効用の定め方:
このくじと無差別なギャンブル(1000円 w %、0円(1  w )%)はなに?
Answer w  80
∴
u (700)  80
・ くじ(500円100%)の効用の定め方:
このくじと無差別なギャンブル(1000円 x %、0円(1  x )%)はなに?
Answer w  60
∴
u (500)  60
・ くじ(300円100%)の効用の定め方:
このくじと無差別なギャンブル(1000円 x %、0円(1  x )%)はなに?
Answer w  40
∴
u (300)  40
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1:
2:
3:
4:
5:
1000円
700円
500円
300円
0円
効用(  w )
100
80
60
40
0
このように効用を特定すれば
どのくじについての効用も簡単に特定できる!
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くじ(1000円 a  100% 、700円 b  100% 、500円 c  100% 、
300円 d  100% 、0円 (1  a  b  c  d )  100% )
a  0、b  0、c  0 、 d  0 、 a  b  c  d  1
このくじの効用はどう特定されるのか?
*このくじは
1000円を確率 (  b  0.8  c  0.6  d  0.4)  100 %で獲得でき
残りの確率でゼロ円しか獲得できないとするくじと
無差別である
∴
このくじの効用は
  100  b  80  c  60  d  40
と特定される!
効用の期待値!!
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期待効用(Expected Utility)
u ( )   u ( x) ( x)
xX
くじ :各配分 x  X を確率  100 %で実現するくじ
に対する効用は
効用 u ( x ) の期待値
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期待効用最大化が合理的とされる根拠:
独立性公理
任意のくじA,B、Cおよび任意の   [0,1] について
「くじAよりくじBを選好する」

「くじ(A:   100 %、C: (1   )  100 %)より
くじ(B:   100 %、C: (1   )  100 %)を
選好する」
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数値例:
はたしてあなたは独立性公理に従って行動できるか?
くじA(6万円100%)
くじB(6万円89%、30万円10%、0円1%)
「私はくじAを選択します」
Question:
くじ A ' (6万円11%、0 円89%)
くじ B (30万円10%、0 円90%)
「私はどっちを選択するべきでしょうか~?」
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Answer:独立性公理に従えばくじ A を選択するべき:Why?
くじCを(30 万円
10
1
 100 %、0 円  100 %)とすると
11
11
くじAは(くじA11%、くじA89%)と無差別である
くじBは(くじC11%、くじA89%)と無差別である
くじDを(0円100%)とすると
くじ A ' は(くじA11%、くじD89%)と無差別
くじ B は(くじC11%、くじD89%)と無差別
∴ [ A  B ]  [ A  C ]  [ A  B]
あなたはくじ A を選択するべきです。そうしなさい!
はたして独立性公理にしたがって人は(あなたは)選択するだろうか??
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現実の経済主体は確率が苦手!
例:エボラ出血熱にかかっていれば100%発見できる検査(陽性は赤反応)
エボラ出血熱にかかっていない場合に陽性反応が出る確率はたった5%
「赤反応だった!たいへんだ入院だ!」
しかし実際には検査に来る人でエボラ出血熱にかかっている割合はごくわずか
例えば 0.01%
条件付き期待確率の計算
0.0001 1
100

 0.2 %
0.0001 1  0.9999  0.05 100  49995
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アレのパラドックス
現実の人は独立性公理に従っていないことを示す古典的な実験
くじA(6万円100%)
くじB(6万円89%、30万円10%、0円1%)
多くの人はくじAを選択した(「確実に6万円」はとても魅力的)
くじ A ' (6万円11%、0 円89%)
くじ B (30万円10%、0 円90%)
多くの人はくじ B を選択した(30 万円ギャンブルは 6 万円ギャンブルより魅力的にみえる)
どうやら期待効用は、現実を必ずしも正しく記述する理論ではなさそう
cf. プロスペクト理論(Kahneman and Tversky 1982)
記述的理論として意義ある
規範的理論としては難点だらけ
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現実の経済主体は確率が苦手!(その2)
確率がわからない時はどうしたらいいのか?
期待効用理論:主観的に確率予想をたてよ
しかし、実際の経済主体はそうしてない……
エルスバーグのパラドックス
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現実の経済主体が期待効用に従わない場合
経済学者は
「従うべきだ」と強く suggest するべきか
・エボラ出血熱の検査の場合は?
・アレのパラドックスの場合は?
・エルスバーグのパラドックスの場合は?