害 虫 編 ワバ、タマナギンウワバなどが発生 て蛹になります。幼虫は多くの作物 幼虫は糸で葉を綴り、薄い繭を作っ 登録薬剤はないので、発生が見ら れたら幼虫を捕殺しましょう。 3~4回発生します。 突発的に大発生することがあり、年 を加害し、ニンジンでは9~ さなぎ 色の斑点があり、刺激を受けると黄 します。ミツモンキンウワバの成虫 しゅうかく 色い臭角を突出させて特有のにおい ㎜、灰褐色で、翅に白色 斑点のある蛾です。幼虫は成長する 月に は前翅長 はね を出します。幼虫はセリ科植物の葉 を食害し、特に老齢幼虫は大量に食 シのように歩きます。大きくなった が淡緑色~濃緑色で、シャクトリム ㎜、頭部が黒色、胴部 と体長 るため、小さい幼虫は集団で葉を食 ~ 害します。北日本では年2回、西日 月に成虫が見られます。 本では年3回以上発生し、西日本で は4~ 発生が見られたら、マラソン乳剤 を散布します。 ③100~200個の 卵を産むヨトウムシ類 病を媒介します。 が3~4㎝となり、昼間は土の中に 35 注意が必要な害虫とは ①ウイルス病を媒介する 17 30 11 (木村 裕 原図) アブラムシ類 新葉や芯葉に体長1・3㎜、緑色 または暗緑色で白粉に覆われている ため白く見えるニンジンアブラムシ、 体長2㎜、黄緑色~淡赤色で光沢の あるモモアカアブラムシなどが発生 ハスモンヨトウおよびシロイチモ ジヨトウが8~ 月に、ヨトウムシ します。ニンジンアブラムシは8~ 9月、モモアカアブラムシは4~5 月に発生します。成虫は卵を1 (ヨトウガの幼虫)が5~6月と9 ~ ~ 月に繁殖します。葉に群 月と がって吸汁するため、多発すると生 株が小さい時期には防虫ネットを 用いて、ベタがけまたはトンネルが 潜み、夜間は地上に現れて葉を暴食 00~200個ほどの卵塊で産卵す けしてアブラムシの飛来を防ぎまし します。 育が阻害されます。また、ウイルス ょう。発生が多い場合にはスターク ④秋に大発生することが あるウワバ類 ケード乳剤などを散布します。 たらフェニックス顆粒水和剤、カス ルなど、ヨトウムシの発生が見られ の発生が見られたらプレオフロアブ 害します。幼虫は大きくなると体長 ル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶 卵塊や幼虫の集団を見つけた時は 葉ごと捕殺します。ハスモンヨトウ 剤などをていねいに散布します。 ② キアゲハは セリ科植物の葉を好む ぜん し ちょう とう どが異なります。幼虫は大きくなる モモアカアブラムシ 10 ミツモンキンウワバ、キクキンウ (木村 裕 原図) !? と体長5㎝、黒と黄緑の縞模様に橙 ※文中で紹介している農薬は、タキイでは取り扱いのないものもございます。ご了承ください。 また、農薬をご使用の際は必ず登録の有無や使用方法をご確認ください(編集部)。 72 2015 タキイ最前線 夏号 11 成虫は前翅長 ~ ㎜のチョウで す。普通のアゲハに似るが大きく、 70 ハスモンヨトウ幼虫 ミツモンキンウワバ幼虫 10 10 黄色の部分が橙色を帯びて濃い点な 35 ニンジンアブラムシ キアゲハ幼虫 11 ニンジン 小規模菜園向け 誰でもできるお手軽病害虫対策 第19回 ひ よく 草刈 眞一、柴尾 学 まなぶ お しば しん いち くさ かり 病 害 編 は がれ 注意する病気と対策 くろ ①ニンジンでは発生の多い 葉枯病 黒 葉や葉柄、茎に褐色または黒褐色 の不整形の小斑点を生じ、次第に葉 腐敗して空洞化することもあり、貯 被害の激しい場合、根の中心部分も 軟腐状になってくぼみができます。 すす状のかびが生じます。 やがて病変が伸展し、根表面に黒色 かに黒色部分が見られる程度ですが、 収穫時には、根部の皮目部分にわず したニンジンに被害が多く見られ、 多いようです。排水不良圃場で収穫 の菌核で、土壌中に未分解の有機物 ケシ粒大で薄茶色~茶色の菌核が多 位の菌糸塊は淡褐色~茶色になり、 急速に萎凋して枯死します。腐敗部 軟腐状に腐敗、地上部の葉・葉柄は 部または根頭部に白色菌糸が密生し、 壌で発生が多く見られます。葉柄基 なん ぷ 蔵ニンジンの腐敗の原因になります。 収穫後のブラッシング洗浄による 傷口から発生すると考えられていま が多いと多発します。 効です。 有機物の施用を避けることなどが有 による排水対策、わらなどの未分解 数形成されます。感染源はケシ粒大 い ちょう 防除薬剤として、ダコニールエー スの利用が可能です。 す。ニンジンを低温乾燥状態にする ③うどんこ病は葉に 粉状の病斑 春まきニンジンでは5月中下旬ご ろから、夏まきニンジンでは9月中 ことで被害発生を防止できます。 れ、株全体の葉に広がります。病斑 旬以降から被害が見られる病害です。 ℃程度のころ、多湿な土 ⑤白絹病には 未分解有機物を避ける 気温が 25 が黄化します。被害は外葉に認めら は拡大して融合し、葉は巻き上がっ ニンジンの葉に白色粉状の病斑がで しら きぬ 多湿な圃場条件で多く発生するた め、水はけをよくすることや、高畝 て枯れていき、葉が侵されると根部 き、病斑のできた部分が黄化して、 白絹病 の肥大が悪くなります。湿度が高い 激しい場合には葉が枯れてしまいま 収穫直後のニンジンの根にはほとん (駒田 旦 原図) り と枯れた葉の病斑部に黒色のかびが かく す。被害が進むと、罹病部位に小黒 早まきやチッソ過多の圃場です。 し 密生します。ニンジンによく見られ 点(子のう殻)ができます。被害発 ことがあります。 防除薬剤としては、ベルクートフ ロアブル、アミスターオプティフロ ほ る病害で、種子伝染し、汚染種子か 生が多いのは、乾燥している圃場、 防除対策として、ベルクート水和 剤、ストロビーフロアブル、ダコニ アブル、トリフミン水和剤などを使 たち が ら苗に感染すると立枯れ症状になる ールエース、ポリオキシンAL水和 うことができます。 ④ 収穫数日後の発生が多い 黒すす病 剤、カスミンボルドーなどが利用で きます。 こく はん ② 黒葉枯病に似た 症状の黒斑病 葉、茎、葉柄などの症状は、黒葉 枯病に類似します。赤褐色~黒褐色 ど病徴は見られませんが、収穫後に の病斑ができ、葉が黄化して葉柄、 市場や店頭で被害が発生することが 収穫後のニンジン根部に被害が発 生します。病原菌は土壌伝染病菌で、 葉がしおれ、根では根冠部が黒変し、 (木曽 晧 原図) (田中 寛 原図) 黒斑病 黒すす病 黒葉枯病 うどんこ病 大阪府立環境農林水産総合研究所 ニンジンは肥沃で粒子の細かい土壌を好むため、播種前に石ころや大きな土塊は取り除きます。 発芽適温は15~20℃で、発芽には十分な水が必要になります。発芽するまでは水を切らさないよ う潅水に注意しましょう。ニンジンの病気では黒葉枯病、黒斑病に注意し、害虫では、キアゲハ の幼虫、アブラムシの被害に注意が必要です。 71 2015 タキイ最前線 夏号
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