地方都市の親水空間整備をカタリストとした中心市街地再生に関する研究

地方都市の親水空間整備をカタリストとした中心市街地再生に関する研究
徳島市新町川周辺を対象として
高山 達也
1.はじめに
日本型アーバン・カタリストの確立に向けた知見を得
1.1. 研究の背景と目的
る (6 章 )。表 1 にヒアリング対象を示す。
地方都市における中心市街地の衰退が問題視されて
2.2. 徳島市と中心市街地の概要
久しい。全国的に様々な活性化方策が企画、実行され
徳島市は吉野川の三角州上に発達した都市であり、
てきたが、衰退から抜け出せていない都市も存在する。
市内に 138 もの川が流れる。徳島市の大半は徳島平野
近年、海外において注目されている「アーバン・カ
に位置し平坦であるが、ほぼ中央には眉山がそびえて
1)
タリスト」 という都市再生手法がある。この手法は、
いる。中心市街地を図 1 に示す。中心市街地の核は内
スクラップ・アンド・ビルドのような手法とは異なり、
町と新町により構成されている。新町はかつて藍や砂
対象となる場所に触媒になる要素を投入することで、
糖の積出港があり最盛期には徳島随一の商業地を形成
周辺地域に変化を起こし再生させる手法である。日本
していた。しかし、現在では大型商業施設の誘致や徳
ではアーバン・カタリストと謳っていないプロジェク
島駅の改修に伴い内町が商業の中心地として位置づけ
トであっても、結果としてカタリスト的効果を発揮し、
られている。新町川は内町と新町の境界部に位置する。
都市に活力を与えた事例は多数見受けられる。
3. 中心市街地の時系列分析
本稿で取り上げる徳島市新町川周辺は中心市街地の
現在から遡ること約 30 年分のデータを収集、整理、
衰退が問題視される地区にある。1998 年に完成した
可視化し都市の変容を明らかにする。
ボードウォーク ( 木製遊歩道 ) により一時的に賑わい
3.1. 統計データによる分析
を集めたが、中心市街地の全てが活気を取り戻すには
統計データ ( 国勢調査、事業所企業統計、商業統計 )
至らず、その影響は限られた範囲にとどまっている。
を収集、データ化を行い分析した。徳島市を 23 地区
しかし、近年ボードウォーク周辺を会場とした新たな
に分割した 23 行政区を基に集計した。内町、新町の
イベントが企画され、賑わい創出に一役買っている。
2 地区の記載にとどめる ( 図 2)。
本稿はカタリスト的事例として新町川周辺の取り組
内 町 で は 1983 年 そ ご う (27,000 ㎡ ) 進 出 に よ り
みに着目し、取り組み以前から現在までの過程と効果
売場面積が急激に増加し、商品販売額は緩やかに増
を時系列で明らかにすることで、日本型アーバン・カ
加したが、2000 年には急激に落ち込む。一方、新町
は 1980 年以降徐々に商品販売額が減少する。これは
タリスト確立に向けた知見を得ることを目的とする。
表 1 ヒアリング対象
1.2. 既往研究
プロジェクト ・ イベント名
ひょうたん島周遊船
ボードウォーク
パラソルショップ
マチ★アソビ
徳島 LED アートフェスティバル
とくしまマルシェ
アクア ・ チッタ フェスタ
新町川に着目した論文は数多く存在する。本稿はい
ずれの研究とも着眼点が異なり、カタリスト的効果に
ついて詳細に明らかにした事例は見受けられない。
板野町
2. 研究の概要
対象団体
NPO 法人新町川を守る会
中川建築デザイン室
( 株 ) サーブ、 中川建築デザイン室
徳島県、 徳島市商工会議所
徳島市、 NPO 法人コモンズ
徳島経済研究所、 ( 株 ) サーブ
NPO 法人アクア ・ チッタ
松茂町
北島町
藍住町
2.1. 研究の方法
徳島駅
城山
吉野
本研究では、時代背景をつかむため、徳島市の中心
川
石井町
市街地がどのように遷り変ってきたのかを統計デー
内町
徳島市
タや文献など各種資料に基づき明らかにする (3 章 )。
眉山
新町
そして、新町川周辺の変容に焦点を当て、ボードウォー
クが果たしたカタリスト的効果をヒアリング・文献
調査から分析する (4 章 )。近年の取り組みに着目し、
主要なイベントの主催者にヒアリングを行い、現状と
0
課題を明らかにする (5 章 )。各分析を総合的に考察し、
5-1
小松島市
佐那河内村
2,500
5,000
10,000
m
鉄道
0
中心市街地
23行政区境界
図 1 徳島市と中心市街地
500
1000
m
1995 年丸新 (7,898 ㎡ )、2005 年ダイエー (4,097 ㎡ )
と映画館、駐車場の立地について分析した。データ化
という商店街の核をなす 2 大商業施設の倒産、撤退、
に際し、2009 年の Z-map を基に、各年毎にゼンリン
県民の娯楽施設でもあった 6 つの映画館の閉館により
地図を GIS にプロットした。特に駐車場に関しては、
客足が途絶え始めたことが要因と考えられる。
GIS 上で面積計算し、広がり具合を算定した(図 4)。
3.2. ハード的変容から見る中心市街地
1983 年 と 比 べ 2012 年 に は、 駐 車 場 は 2 倍 以 上 に 拡
紙面の都合上、都市変容に深く影響したと考えられ
大している。大型商業施設が増加している内町に比
る交通網の変容と施設変容のみ記述する。
べ、新町では集客力のある大型施設は次々と消滅し
3.2.1. 交通網の変容
た。2012 年 3 月にアニメを中心に上映する映画館が
バイパス道の整備、高速道路の開通、架橋等に着目
開館するまで、約 6 年間市内に映画館は存在しなかっ
し分析した。中でも明石海峡大橋 (1998 年 ) の開通は、
た。店主の高齢化、跡継ぎ問題などから商店街の半数
片道 2 時間ほどで大阪や神戸に行くことを可能にし
近くが閉店し、空き家や駐車場は増加の一途で、新町
た。併せて整備された高速バスにより、多くの県民が
はシャッター街化している。集客施設の跡地には高層
気軽に京阪神に買い物へ出かけれるようになった ( 図
マンションが建てられ、街の様相に変化を与えている。
3)。交通網が整備されたことは、皮肉にもストロー化
4. カタリスト分析
現象を引き起こし、中心市街地の疲弊を加速させた。
4.1. 新町川整備前の状況
3.2.2. 施設の変容 ( 大型商業施設、映画館、駐車場 )
昭和 36 年の台風で甚大な被害を被り、護岸にコン
10 年ごとに地図を遡りデータ化し、大型商業施設
クリート製パラペット堤を築いた。水運の衰退も重な
内町
新町
30,000
70,000
30,000
70,000
25,000
60,000
25,000
60,000
50,000
20,000
車場となり、水辺空間は都市の裏側へと退き、人が滞
50,000
20,000
40,000
15,000
り、市民の生活は川から離れていく。護岸の多くは駐
留しない場所となった。工場排水や家庭排水の流入
40,000
15,000
30,000
10,000
20,000
5,000
30,000
10,000
10,000
により川は汚れ、魚も棲めない悪臭漂う川となった。
20,000
5,000
4.2. 新町川整備の変遷
10,000
0
0
0
0
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005
人口[人]
世帯数[世帯]
売場面積[㎡]
事業所数[所]
従業員数[人]
販売額数[千万円]
汚れてしまった川をきれいにするとともに、再び川
に人々を近づけるために様々な整備が行われた。変遷
図 2 内町と新町の時系列統計データ
5,000,000[人]
を平面・断面の変化とともに図 5 に示す。
1998 年明石海峡大橋開通
4,500,000
浄化事業に始まり、水際公園、護岸整備、ボード
4,000,000
3,500,000
ウォークと 1990 年前後に相次いで整備された。
3,000,000
2,500,000
2,000,000
1,500,000
m
1,000,000
38
A
⑥
500,000
0
1987 1989 1991 1993
徳島駅乗車数
(一日平均乗車数×365日)
1995 1997 1999
フェリー・旅客船
(徳島~阪神)
2001 2003 2005
航空便
(徳島~大阪)
2007 2009 2011
高速バス
(徳島~京阪神)
①
図 3 交通網の変容 ( 徳島~京阪神 )
1983年
2012年
③
③
C 東船場商店街
新町川整備の変遷
①1971 ~ 1987 浄化事業
1975 ~ 1994 浄化導水事業
②1989.8 新町川水際公園
③1989 ~護岸整備 ( 青石+緑化 )
④1996.2 ボードウォーク完成
⑤1996.5 両国橋袂西詰公園
⑥1997.7 新町橋袂東詰公園
⑦1998 ~パラソルショップ
②
⑦
④
7m
28
D 東新町 1 丁目商店街
川側に表を
向けた建物
ボードウォーク沿いの
13 棟 ( 全 21 棟 )
B
パラソル
20
m
アーケード
中心市街地
歩行量調査地
( 提供 . 商工会議所 )
0
0
125
250
500
m
駐車場(地下駐車場除く)
大型商業施設
映画館
家屋形状
対象範囲
鉄道
140,000
120,000
100,000
80,000
駐車場
面積(㎡) 60,000
40,000
20,000
0
62.5
ボードウォーク着工前
1983
1991
2001
125
m
ボードウォーク完成後
⑤
パラソルショップ時
0
2012
図 5 新町川整備の変遷
図 4 中心市街地の施設の変容
5-2
2.5
5
m
4.3. カタリストの概要
4.4.2. 周辺施設の変容
新町の活性化を目的に内町からの人の流入を狙って
ボードウォークの完成によって川側に表を向けた建
計画されたボードウォークとパラソルショップの 2 つ
物が増加した ( 図 5)。現在では 13 棟が川側にも店舗
に焦点を当てカタリスト効果を分析する。
や入口を構えている。東新町の方向へ通り抜けられる
4.3.1. しんまちボードウォーク
ように改築された建物も存在する ( 写真 2)。これには、
水際公園完成により川辺に足を運ぶ市民が増加し、
ボードウォークがみなし道路として接道条件を満たせ
その流れを新町まで引き込む狙いでボードウォーク構
たこと、パラソルショップにより川側に賑わいが生ま
想が誕生した。1995 年に県や市とともに東船場ボー
れたことが大きく関連している。また、ボードウォー
ドウォーク整備事業を実施し、河岸に木製遊歩道を整
ク沿いの東船場商店街では店舗の増加がみられた ( 図
備した。しんまちボードウォークは、総延長 287 mの
7)。近隣商店街の店舗増加には至っておらず、効果は
東船場ボードウォークとその両端の公園から構成され
あまり広範囲に及ばなかったと考えられる。パラソル
る。完成前後の写真を添付する ( 写真 1)。以前と比
ショップから独立し、商店街内に店舗を構えるといっ
べ視線も抜け水辺と近くなり、川辺の環境は一変した。
た波及効果もあった。独立した店舗が 26 店舗あり、
4.3.2. パラソルショップ
その内周辺商店街には 14 店舗が出店している。
パラソルショップは、図 5 のようにパラソルをボー
5. ボードウォーク周辺を会場としたイベントの調査
ドウォーク上に設置し、そこで物品等の販売を行う仮
近年、ボードウォーク周辺でのイベント数が増加
設商店街のようなものである。パラソルショップの開
し、特徴的な取り組みや集客力の高さが注目を集めて
始によってさらにボードウォーク周辺の賑わいは高
いる。イベントとカタリストの関係性に着目し、現状
まった。しかし、その賑いも長く続かず、プロアマ問
と課題を明らかにする。
わない出店や客のニーズとのミスマッチ等のために売
5.1. イベント数について
上は減少、規模は縮小していった。
継続的に実施されているイベントだけでも年間 145
4.4. カタリスト効果の分析
回もの開催があり、週末をターゲットにしたボード
4.4.1. 人の流れの変化
ウォーク周辺の賑わいが特徴的である ( 表 2)。
徳島市中心商店街通行量調査の結果を抜粋する ( 図
5.2. 主要イベントへのヒアリング
6)。新町川周辺地点の休日歩行量は 1996 年に比べ、
主要なイベントの関係団体に対してヒアリングを
1999 年は増加している。これはボードウォークの建
行った。対象は、ひょうたん島周遊船、徳島 LED アー
設とパラソルショップの実施による効果であると考え
トフェスティバル、マチ★アソビ、とくしまマルシェ
られる。県営駐車場 ( 河川管理用通路 ) をボードウォー
等で、ボードウォーク周辺を会場として行われている
ク ( 都市公園 ) としたことで、飲食や物品の販売が可
ものに限定し記載する ( 表 3)。開催場所を図 8 に示す。
能となり、利活用の幅が広がった。しかし、徐々に減
a) とくしまマルシェは農業ビジネスと観光の活性化
少傾向を示し、その効果は一時的であったとみられる。
だけでなく、中心市街地の活性化を目的として掲げて
川側に表を向けた建物
Before [ 1990 年頃 ]
通り抜け可能な建物
Before [ 1990 年頃 ]
写真 2 ボードウォーク沿いの建物
東船場商店街 ( 図 5-C)
After [ 2012 年 ]
After [ 2012 年 ]
[人]
10,000
9,000
休日
8,000
平日
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011
6,000 600
250
5,000 500
200
4,000 400
150
3,000 300
100
2,000 200
50
写真 1 新町川整備の変遷
新町橋東 ( 図 5-A)
東新町 1 丁目商店街 ( 図 5-D)
300
0
東新町 2 丁目旧ダイエー側 ( 図 5-B)
[人]
9,000
8,000
休日
7,000
平日
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
01993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011
18,000
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
1,000 100
1994
1997
商店数
2002
2004
従業者数
0
0
1994
1997
年間販売額(百万円)
2002
2004
売場面積(㎡)
図 7 ボードウォーク周辺商店街の商業統計
表 2 ボードウォーク上のイベント数
イベント名
パラソルショップ
とくしまマルシェ
マチ★アソビ
阿波踊り
はな・はる・フェスタ
計
図 6 ボードウォーク周辺の歩行者数の変遷
5-3
開催時期
土日祝日
毎月最終日曜日
5月、10月 各3日間
8月12日~15日
4月下旬 3日間
使用回数
120回程度
12回
6回
4回
3回
145回程度
初回開催年
1998年
2010年
2009年
1996年
1998年
表 3 ボードウォーク周辺の主要イベントについて
a) とくしまマルシェ
2010.12~毎月最終日曜日
計25回
台風のためH24.9.30のみ中止
b) 徳島LEDアートフェスティバル
2010[2010.4.17-25]9日間
2013HOP[2012.4.20-22]
2013STEP[2012.10.26-28]
2013[2010.4.20-29]
c) マチ★アソビ
2009秋:10.10-12
2011春:5.3-5.5
2010冬:1.16-31
2011秋:9.23-10.10
開催期間
2010春:5.2-4
2012春:5.3-5.5
2010秋:10.9-11
2012秋:9.22-10.8
2011冬:1.22-2.6
徳島県の選りすぐり農産物・食べ物が集ま LEDを用いたアートイベント。街中に作品が ufortableが企画するアニメイベント。街中で
内容
り販売、試食等が行われる。
展示され、音楽祭なども開かれる。
アニメ関連の展示・イベントが行われる。
主催者
とくしまマルシェ事務局
徳島LEDアートフェスティバル実行委員会 アニメまつり実行委員会(他開催回により変動)
2009秋:12,000人
2011春:20,000人
2010冬:21,000人
2011秋:50,000人
2010 :200,000人
2010春:18,000人
2012春:40,000人
2013
HOP
:13,000人
来場者数 平均来場者数12,000人
2010秋:20,000人
2012秋:52,000人
2013 STEP:40,000人
2011冬:25,000人
新町橋東袂公園にてイベント
新町橋東袂公園にてイベント
カタリスト 運営主体に長年パラソルショップを運営してきた
人材を起用。ボードウォーク及び中心市街地の 両国橋西袂公園にて仮設展示
パラソルショップをグッズ販売のブース等に
との関連 活性化とパラソルショップの再生が目的の一つ。 パラソルショップを屋台等に活用
活用
橋のLED装飾
アニメ産業の活性化(商店街内に映画館
近隣飲食店や百貨店での売上上昇
波及
期間中の空き店舗、空き地の利用
が復活、アニメ関連飲食店等の増加)
周辺地域におけるイベントの増加
効果
テラコヤ(常設LED教室)の開設
期間中の空き店舗の利用
とくしまマルシェを通じてのマッチング
d) ひょうたん島周遊船
毎日
午後1時~4時
(7・8月は午後5時~8時)
ひょうたん島の周囲6㎞を船でまわる30分の
船旅。
NPO法人新町川を守る会
2003:14,176人
2008:31,157人
2004:13,580人
2009:39,855人
2005:20,284人
2010:41,803人
2006:18,407人
2011:39,817人
2007:26,879人
2012:35,792人(7月まで)
周遊船自体に直接関連は見受けられない。
NPO法人新町川を守る会のイベント等で新
町橋東袂公園を利用。
他のイベントとのコラボレーション
(徳島LEDアートフェスティバル、
マチ★アソビなど)
写真
ある NPO 法人新町川を守る会は、川の清掃や川を利用
したイベントを一年を通して行っている。
城山
ポッポ街
ボードウォーク周辺は様々なイベントの会場として
徳島駅
今も活用されている。パラソルショップは仮設性を活
かし、屋台や販売ブースとして利用されている。また、
ヒアリングをする中で、各イベントに関わる人達が相
眉山
阿波おどり
会館
互に連携していることが確認できた。イベント間のコ
ラボレーションや運営等に活かされている。イベント
ボードウォーク
周遊船
マチ★アソビ会場
緑地
が集中する休日の賑わいは戻りつつあるが、平日はい
徳島 LED アート
フェスティバル
まだ閑散としており、今後の課題といえる。
イベント & 展示
会場
0
125
250
500
m
6. 考察・総括
図 8 イベントの会場 ( 中心市街地周辺 )
いる。運営主体に長年パラソルショップの運営をして
本研究では、以下のことが明らかになった。
きた人材を起用し、ノウハウの蓄積を活用している。
1) ボードウォークとパラソルショップによるカタリ
近くの飲食店や駅前百貨店では開催日に売上が上昇す
スト的効果として、周辺地区への人の流入や川側に表
るなど、周辺地域への波及効果もみられる。
( 顔 ) を持つ建物の増加、周辺地区における商店の増
b) 徳島 LED アートフェスティバルは仮設の作品だけ
加といった効果がみられた。川を表として活用するた
でなく LED 整備事業として新町川周辺の橋や公園内に
めのハードとソフトの整備が、カタリスト的効果の創
常設 LED アートを展開している。空き地や空き店舗を
出に大きく影響していると考えられる。
展示会場、パラソルショップを屋台等として有効活用
2) 人の流入や商店の増加といったカタリスト的効果
している。特に、新町や新町川沿いでのイベントや展
は一時的であった。しかし、川側に表を向けた建物が
示が多い ( 図 8)。また、LED テラコヤという LED の学
増えるといったハード的な効果は今でも残っている。
習施設をボードウォーク沿いに開設した。
一時的であるカタリスト効果をより活かすために、継
c) マチアソビは中心市街地一帯を使って行われてお
続的な活動を行っていく必要がある。
り、パラソルショップはグッズ販売ブース等として活
川という中心市街地の潜在的な魅力を、地域と行政
用されている。マチアソビの企画をするアニメ会社は
が一体となりまちづくりに繋げていることが新町川周
ボードウォーク沿いにスタジオとカフェを構え、アー
辺で行われる一連の取り組みの特色である。地域の潜
ケード内に映画館を復活させるなどアニメ産業を活用
在力に目を向け、それを活かすように地域一丸でまち
したまちの活性化に貢献している。
づくりに取り組むことは 、 ますます人口や経済規模が
d) ひょうたん島周遊船は毎日運航されており、近年
縮小していく地方都市にとって一つの再生手法の在り
来客数が増加している。また、LED アートフェスティ
方であると考える。
バルやマチアソビとの連携を行い、川をイベント会場
参考文献
1)Wayne Attoe and Donn Logan,American Urban Architecture:Catalysts
in the Design of Cities,University of California Press,1989
として活かす役割を担っている。周遊船の運営主体で
5-4