y - 医療法人篠洋会 篠崎クリニック

低温岩盤浴療法のがん治療への応用について
ー特に膵臓癌の長期生存効果について―
ー特に膵臓癌の長期生存効果について
篠崎洋二
医療法人篠洋会 篠崎クリニック
目的
超高齢化社会を迎え、癌による死亡者数は2014年
の統計では年間約37万人(全体の死亡数の1/3)に達
に達
の統計では年間約37万人(全体の死亡数の1
している。外科的治療や化学療法の適応のない高齢者
や衰弱者における癌治療は、無理をすれば要介護状態
を誘導する可能性もあり、高齢者や衰弱者に特化され
た治療が必要であると思われる。
我々は第15回日本補完代替医療学会(2011年)等
において、低温岩盤浴治療法の高齢者や衰弱者に対す
る安全性と膵癌、特に早期の膵頭部癌に対する治療効
果や延命効果の可能性を発表してきた。
今回、我々は最終的な予後の調査を行ない、高齢者の
膵臓癌を含む進行癌の治療効果や延命効果、さらに緩
和ケアとしての有用性について報告する。
【対象】
対象】
当クリニックにおいて、2004
当クリニックにおいて、2004年
2004年7月から2015
月から2015年
2015年6月現在まで
に経験した主として高齢者や衰弱者の進行癌51
に経験した主として高齢者や衰弱者の進行癌51例につい
51例につい
て、低温岩盤浴の効果と予後について検討した。
今回対象とした51例は、肺癌11
今回対象とした51例は、肺癌11例、上咽頭癌
11例、上咽頭癌3
例、上咽頭癌3例、胃癌5
例、胃癌5
例、膵臓癌19
例、膵臓癌19例、悪性リンパ腫
19例、悪性リンパ腫3
例、悪性リンパ腫3例、その他11
例、その他11例である。
11例である。
【方法】
方法】
当院の2004
当院の2004年
2004年7月から2015
月から2015年
2015年6月現在までの期間におけ
る、高齢者及び衰弱者51
る、高齢者及び衰弱者51例
51例(うち転移のある39
うち転移のある39例及び転
39例及び転
移のない12
移のない12例
12例)の癌症例について低温岩盤浴を施行し、
その効果の判定を行なった。
青龍石の岩盤を用いて、36℃‐39℃
青龍石の岩盤を用いて、36℃‐39℃、
36℃‐39℃、40分程度の低温岩
40分程度の低温岩
盤浴を原則、週4回以上施行し、進行癌に対する効果を
CT、
CT、MRIおよび内視鏡等により判定した。
MRIおよび内視鏡等により判定した。
緩和ケアとして、積極的に関節内注射や星状神経節ブ
ロックを含むペインクリニックを早期より併用した。
低温岩盤浴とは?
なぜ低温岩盤浴なのか?
•一般的な岩盤浴には、欠点があります。40度以上の高温で行なう岩盤浴
では、高齢者や心不全などの病気を持つ方にはリスクが高いのです。
•ところが、質の高い岩盤では、36-39度の低温でも十分、岩盤浴の特性
を発揮するのです。
•低温岩盤浴においては、たとえ高齢者や病人であっても安全に岩盤浴を
楽しむことが出来るのです!
ドーム型
岩盤ベッド
温度の微調整が可能です。
36-39℃の
BNP値の変化
BNP値の変化
低温岩盤波動浴の
心臓機能の保護効果
90.0
80.0
№1
岩盤
浴前
岩盤
浴後
30.8
28.5
比率
92.5%
岩盤浴
前後比
70.0
-7.5%
60.0
№2
74.8
52.7
70.5%
-29.5%
№3
82.4
44.3
53.8%
-46.2%
№4
23.5
8.1
34.5%
-65.5%
№5
17.0
32.3
190.0%
90.0%
50.0
40.0
30.0
№6
43.5
12.6
29.0%
-71.0%
20.0
№7
8.5
6.5
76.5%
-23.5%
№8
38.6
37.9
98.2%
-1.8%
№9
66.0
36.3
55.0%
-45.0%
10.0
0.0
岩盤浴前
岩盤浴後
NK細胞活性の変化
NK細胞活性
36-39℃の
低温岩盤波動浴の
免疫能の改善効果
60
50
岩盤 岩盤
浴前 浴後
比率
岩盤
浴
前後
比
40
30
№1
41
47 114.6%
14.6%
№2
38
42 110.5%
10.5%
20
№3
50
48
96.0%
-4.0%
№4
20
36 180.0%
80.0%
10
№5
57
55
96.5%
-3.5%
0
岩盤浴前
岩盤浴後
青龍石のデータ
【青龍石の成分の特徴】
①鉄分豊富
通常の岩石の中には、鉄分は多く入っていても
5%程度が一般的。対して、青龍石には、16%も
の鉄分(酸化鉄)が含まれる。
■鉄分の特徴
温泉でも、鉄分と空気中の酸素が反応し茶褐色
となる「 酸化鉄温泉」は、身体の芯から温まり、湯
冷めしにくい。血液の循環をよくし、貧血や婦人病
に効果があるとされている。
②酸化チタンを含有
通常の岩石の中には、ほんのわずかしか含まれて
いないチタンが、青龍石の中に1.7%も存在する。
■酸化チタンとは
太陽光、蛍光灯の光が当たるだけで、汚れなどの
有機物を酸化還元し、水と二酸化炭素に分解する
光触媒作用のある物質。防臭・防汚・抗菌効果、
また傷口を消毒作用する効果がある。
麦飯石No3のデータ
成分(%) :
酸化けい素63.7 / 酸化アルミニウム18.4 / 酸化鉄2.83 /
酸化カリウム5.09 / 酸化チタン0.46 / その他
作用 :
肥満・美肌・疲労回復
血液リンパ系悪性腫瘍の有効例
一般進行癌における症例提示
(低温岩盤浴単独療法による効果について)
症例1.94歳 女性
Borrmann1型
1型 進行胃癌+肝転移
大動脈周囲リンパ節転
症例2. 81歳 女性
膵体尾部癌 閉塞性黄疸 ステント挿入術後
症例3. 61歳 男性
原発性肺癌 右無気肺+転移性肺癌
症例4.94歳 男性
悪性リンパ腫(右耳下腺原発)
進行胃がん(BorrmannI型)の一例(94才)女性)
高齢で多発性肝転移が見られ、手術不能とされた。
青龍石を用いた低温岩盤浴のみで治療をおこなった。
09.2.12
09.2.12 低温岩盤浴開始
12・12・22死亡
(1280日生存)
09.6.2.
09.2.12
09.6.2.
4ヵ月後、肝転移がほぼ消失した。
ヵ月後、肝転移がほぼ消失した。
多発性に小型の肝転移を認めた。
10.2.27
原発病巣は消失した。
傍大動脈リンパ節も縮小した。
進行膵臓癌の一例(81才、女性)
進行膵臓癌の一例(81才、女性)
青龍石を用いた低温岩盤浴のみで治療をおこなった。
2ヵ月後、腫瘍が縮小
膵臓周囲から
ガン浸潤が消滅
大動脈
大動脈
800
CA19-9
07.7.28.
07.5.12
岩盤浴前
738
腫瘍マーカーの推移
700
PR
600
500
QOLも著明に改善した。
400
365
300
岩盤浴後
2007/3/24岩盤浴開始
2009/2/4死亡(670日生存)
200
174
100
0
術前
術後
岩盤浴後
進行肺癌の一例(61才、男性)
進行肺癌の一例(61才、男性)
他施設の岩盤浴にて原発性肝がんを14年コントロール。
今回、肺がんを合併し手術を望まなかったため、
青龍石を用いた低温岩盤浴のみで治療をおこなった。
09.3.19
09.3.9
低温岩盤浴開始
主気管支
完全閉塞
09.5.12.
主気管支
開存
完全無気肺
無気肺改善
右主気管支に原発した肺がんにより
右完全無気肺を来していた。
2ヵ月後、無気肺が改善、
症状も著明に改善した。
頚部悪性リンパ腫の一例(96才、男性)
麦板石および青龍石を用いた岩盤波動浴のみで治療をおこなった。
頚部腫瘍
頚部腫瘍
1ヵ月後腫瘍が縮小
06.10.25.
06.12.19.
頚部腫瘍
頚部腫瘍
06.10.25 治療開始
06.12.20 肺炎にて死亡
【結果】
結果】
• 全症例51
全症例51例
51例の効果判定と
の効果判定として、
判定として、CR4
して、CR4例
CR4例(8%)
(8%)、
%)、PR12
例(25
例(25%)、
25%)、MR3
%)、MR3例(
MR3例(6
例(6%)、NC7
%)、NC7例
NC7例(14%)、
(14%)、PD25例
PD25例
(49%)であった
(49%)であった。すなわち、NC以上が
であった。すなわち、NC以上が51%
。すなわち、NC以上が51%であった。
51%であった。
• 膵臓癌1
膵臓癌19例において
9例においてPD
においてPDは
PDは5例のみで3
例のみで3生率は
49.2% 、特に、膵乳頭部癌4例においては、全例
に、膵乳頭部癌4例においては、全例
PR及び長期生存が
PR及び長期生存が得られた。
及び長期生存が得られた。
• 胸腹水のない進行癌に
胸腹水のない進行癌においては、有意
癌においては、有意な生存率
おいては、有意な生存率
の増加を認めた(5
の増加を認めた(5生率 65.6%) 。
低温岩盤浴の進行癌に対する治療効果について
胸腹水の有無による生存率の差について
低温岩盤浴療法の予後
1.00
0.80
0.60
0.40
0.20
0.00
転移無
転移有
P=0.0316*
転移無(打ち切り)
転移有(打ち切り)
0
1000
2000
3000
4000
日
膵頭部癌の臓器転移の有無による生存曲線の相違
(カプラン・マイヤー法による)
累積生存率
累積生存率
癌全体の
全体の転移の有無による生存曲線の相違
(カプラン・マイヤー法による)
1.00
0.80
0.60
0.40
0.20
0.00
膵頭部・転移無
P=0.0275*
膵頭部・転移有
0
500
1000
1500
2000
日数
2500
低温岩盤浴におけるNC群
低温岩盤浴におけるNC群の扱いについて
NC群の扱いについて
継続は力なり!
【結論】
結論】
1. 低温岩盤浴は高齢者や衰弱者に対し、安全
低温岩盤浴は高齢者や衰弱者に対し、安全
かつ有益に適応
かつ有益に適応できる方法である。
適応できる方法である。
2. 適切な岩盤を選べば、
適切な岩盤を選べば、進行癌に対する良好
な治療法として、抗癌剤に匹敵する
な治療法として、抗癌剤に匹敵する有効性
、抗癌剤に匹敵する有効性
と延命効果が認められた。
と延命効果が認められた。
3. この方法は誰に対しても手軽にかつ安価に
使用できることから、とくに
使用できることから、とくに後期高齢者等に
とくに後期高齢者等に
おける進行癌の治療法及び予防法として、
おける進行癌の治療法及び予防法として、
有力な方法となると思われる。
低温岩盤浴療法を行なった膵臓癌症例(19
低温岩盤浴療法を行なった膵臓癌症例 19
生存期
治療
例
について
(低温岩盤浴療法)
患者)について
年齢 性別 膵臓癌
転移 手術
効果 併用療法 疼痛 癌死 状態
間(日)
継続
SM
KS
HY
KS
SM
KM
SK
NT
TT
YO
SI
MI
JY
TT
KM
RT
KI
SS
AN
82
62
53
86
64
83
68
73
76
65
86
87
47
84
61
76
65
65
69
女
男
女
男
女
女
女
男
女
女
女
女
女
男
男
女
女
女
男
膵体尾部
膵体尾部
膵体尾部
膵体尾部
膵頭部
乳頭部癌
膵体尾部
膵体尾部
膵体尾部
乳頭部癌
膵頭部
膵頭部
膵頭部
乳頭部癌
膵体尾部
膵頭部
膵体尾部
膵体尾部
膵体尾部
n
y
y
y
n
n
y
y
y
y
n
n
y
n
y
y
y
y
y
y
n
y
n
n
n
n
y
y
y
n
n
n
不明
n
n
n
y
n
y
y
y
n
y
y
n
n
n
n
y
y
n
n
y
y
n
n
y
PR
MR
PD
PD
PR
PR
NC
MR
PD
PD
PR
PR
NC
NC
PD
PD
PD
PD
PD
n
化学療法
化学療法
化学療法
n
n
化学療法
n
n
化学療法
n
n
化学療法
不明
化学療法
化学療法
化学療法
化学療法
n
著効
著効
不変
改善
改善
改善
不変
不変
不変
不変
改善
改善
不変
不変
不変
不変
不変
悪化
不変
y
y
y
y
#
n
y
y
y
y
n
#
y
y
y
y
y
y
y
dead
dead
dead
dead
alive
dead
dead
dead
dead
dead
dead
alive
dead
dead
dead
dead
dead
dead
dead
670
384
133
96
2081
342
501
126
426
178
867
1418
419
不明
46
127
9
77
331
とくに低温岩盤浴単独療法を施行した膵臓癌症例
症例1.81歳 女性 腹痛
PR
膵体部癌(手術不能例)
症例2.85歳 女性 腹痛
PR
膵頭部癌(手術不能例)
症例3.65歳 女性 腹痛
膵頭部癌(手術不能例)
CR
症例4.84歳 女性 腹痛
膵頭部癌(手術不能例)
PR
症例5.
症例5 88歳 女性 腹痛、黄疸
膵頭部癌(ステント手術例)
NC
診断の動機はいずれも腹痛、CT及び造影
診断の動機はいずれも腹痛、 及び造影CTにより診断した。
及び造影 により診断した。
比較的早期癌ではあったが高齢と衰弱を根拠に手術不能とした。
早期膵臓がんの
造影CTの所見
造影 の所見
膵乳頭部癌 88才 女性
DU
拡張した膵管
CA19-9: 5.0
十二指腸
Low
Density
拡張した総胆管の近位側に存在する、
造影初期相でlow
densityを示す
を示すSOL
造影初期相で
を示す
Enhance+
十二指腸
Low Density Area
SOLは、第2相以降は
は、第2相以降はenhanceされ、
され、
は、第2相以降は
周辺と同シグナルとなっている。
膵頭部癌(Stage
III)の一例(85才、女性)
の一例(85才、女性)
膵頭部癌(
青龍石を用いた低温岩盤浴
単独で治療をおこなった。
腫瘍
十二指腸・総胆管
周囲への癌浸潤
腫瘍縮小
総胆管周囲の
癌浸潤消失
腫瘍
低温岩盤浴
十二指腸
10/03/15
十二指腸
CR
09/10/20
総胆管付近の腫瘍
は消失した
した。
した
腫瘍縮小
総胆管周囲の
癌浸潤消失
もとの腫瘍の位置
腫瘍
総胆管
低温岩盤浴
主膵管
十二指腸
十二指腸
10/07/17
10/09/04
09/10/20 岩盤浴開始
10/10/02 心筋梗塞にて死亡
(342日生存)
膵頭部癌(Stage III)の一例(65才、女性)
青龍石を用いた低温岩盤浴のみで治療をおこなった。
総胆管。主膵管周
囲への癌浸潤あり
膵頭部腫瘍は
十二指腸に浸潤
周囲組織への
癌浸潤改善
腫瘍縮小
低温岩盤浴
10/06/15
PR
09/11/08
周囲組織への
癌浸潤改善
腫瘍縮小
2009/8/30 治療開始
2015/6/13 生存中
(生存期間 2083日)
2083日)
低温岩盤浴
10/08/04
10/09/29
低温岩盤浴療法の膵臓癌(20例)の部位別効果について
低温岩盤浴療法における
膵臓癌の部位別効果と生存曲線の相違
膵頭部癌と膵体尾部癌の生存曲線の相違
(カプラン・マイヤー法による)
1.00
累積生存率
0.80
0.60
膵頭部癌
0.40
膵体尾部癌
P=0.0312*
膵頭部癌(打ち切り
膵頭部癌 打ち切り)
打ち切り
0.20
膵体尾部癌(打ち切り
膵体尾部癌 打ち切り)
打ち切り
0.00
0
1000
2000
3000
日
低温岩盤浴療法の
膵臓癌に対する効果について
膵頭部癌の各種
膵頭部癌の各種進行様式と
各種進行様式と予後
進行様式と予後不良因子
予後不良因子につ
不良因子について
について
6
5
4
2
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
PR
CR
PD
NC
MR
膵臓癌の部位別の進行度の相違
-予後との相関について
予後との相関について予後との相関について
膵頭部癌が早くから疼痛を来すため、
早期の発見が可能なのではないか?
低温岩盤浴の一般の症状に対する効果は?
著 改
効 善
消化器系
便秘
1
神経系・関節
痛
痛み
1 11
自律神経系
動悸
0
精神・神経系
不眠症
3
倦怠感
4
2
2
1
意識障害
循環器系
浮腫
冷感
血栓性静
脈炎
炎症
呼吸器系
合
喘息
計
不
変
悪
化
悪
化
0%
改
善
93%
1
1
2 25
不
変
0%
0
0
著
効
7%
【結論】
結論】
低温岩盤浴療法は高齢者や衰弱者にも安全に適応可能
であり、特に青龍石は膵頭部癌に対する有力な治療法と
考えられた。
混合診療の緩和が提案される近年、低温岩盤浴療法は
衰弱者や超高齢者における癌の治療及び予防法として
有力な方法となると思われる。
膵頭部癌は早期に腹痛などの症状を来すため早期発見
が可能であり、症状の出にくく発見時にすでに進行してい
る膵体尾部癌に比して、有意に予後良好であった。
膵臓癌のCT等による早期発見の重要性が示唆された。
膵臓癌の 等による早期発見の重要性が示唆された。
【考察】
考察】
•
オーストリア、ドイツ等においては、岩盤浴(ラドン浴)
は、すでに医療行為として認められている。
•
日本では秋田県、玉川温泉等の岩盤浴が癌治療に
有効とされるが、現実問題として、進行癌患者には利
用困難である。
•
今回紹介した低温岩盤浴は、良質の岩盤を切り出し
て、適度に加熱して用いる簡便な岩盤浴であり、日常
生活の中で、通院治療を受けることが可能である。
•
青龍石等の適切な岩盤を選べば癌の治療や予防に
用いることが可能と思われ、高齢者や衰弱者に対す
る、きわめて有力な癌治療法と考えられた。
癌治療に伴うねたきり”を解消するために(その1)
ー腰下肢の疼痛に対する股関節に対する治療の有効性ー
• 高齢者において術後の疼痛や化学療法による全身の痺れなどを
きっかけにして、寝たきりになることを予防することは重要なテーマ
であろうと思われる。特に腰下肢のいたみと脱力は寝たきりの原因
として重要と思われる。
• 今回、我々は”ねたきり”状態(ねたきりランクC2)の患者3例につい
て股関節内注射を行い、寝たきりの改善に有効であったので、これ
を癌治療における寝たきり予防策の一つとして提案したい。
寝たきりの原因疾患
40
35
30
25
20
15
10
5
0
骨格系疾患
脳血管疾患
介護度が進むにつれ、脳血管障害が増えてきます。
しかし、脳血管障害で介護度が進むケースは、麻痺や拘縮が強くなり、歩行で
きなくなるケースか、または認知症の増強であろうと思われます。
それがリハビリテーションが重要視されるゆえんです。
【対象・方法】
特別擁護老人ホーム”泉寿の里”(40床)におい
て、各種神経ブロックを併用した股関節内注射を
施行して、疼痛のコントロールをおこない、 “ねた
きり状態”の改善がどの程度見られるか評価した。
1) ステロイド(禁忌の場合はヒアルロン酸)の関節内注入を施行
2) 硬膜外ブロックおよび星状神経節ブロック療法を併用した。
治療に伴う“ねたきり”の改善について
自立歩行
入所時
現 在
13
13
車椅子自走 車椅子介助
6
12
全介助
18
15
ねたきり
ねたきり
3
0
治療による患者のADLの変化
の変化
治療による患者の
治療前
治療後
股関節内注射について
正面
側面
実際の治療手技
切痕
穿刺部位
穿刺部位
大転子
腸骨陵
切痕
大転子
穿刺部位
腹側5分の2
【小括1】
小括1】
いわゆる“ねたきり”の症例、3例に股関節内注射
を行ったところ、すみやかに車椅子移動に改善し
半年後には立位も可能となった。
股関節内注射はまだ普及していない手技である
が、歩行不能状態による寝たきりの治療や予防に
おいて注目すべき有効な手技と考える。
当院外来における神経ブロックを併用した
股関節内注射の症例と効果について
【症例と方法】
症例と方法】
当院、外来通院されている、腰痛症・変形性股関節症の
患者99例(男性35例、女性64例:平均年齢69.1
患者99例(男性35例、女性64例:平均年齢69.1歳)
について、股関節内注射の効果について検討した。
股関節内注射の腰下肢痛に対する効果
改善
著変なし
悪化
合計
89例
8例
2例
99例
【小括2】
小括2】
腰痛症で来院した患者99名(平均年齢
歳)について
腰痛症で来院した患者 名(平均年齢 69.1歳)について
腰痛症と股関節症の発症時期について調査を行った。
その結果、股関節症と腰痛症は、ほぼ同時期に発生して
その結果、股関節症と腰痛症は、ほぼ同時期に発生して
おり (p-0.06)、
、股関節内注射を行ったものについては99
股関節内注射を行ったものについては
例中89例(
例中 例(90%
例(90%)
90%)が症状の改善をみた。
高齢者の場合、腰痛症(あるいは腰下肢痛症)は股関節
痛と同時発症のことが多く(Hip-Spine
Syndrome)歩行困
歩行困
痛と同時発症のことが多く(
難をともなうケースが多くみられ、股関節内注射を併用す
ることにより、腰痛症の改善率が高いと思われる。
股関節内注射はまだまだ普及していない手技であるが、
歩行不能状態による寝たきりの治療や予防において、注
目すべき有効な手技と考える。
すべき有効な手技と考える。
癌治療にともなう“ねたきり”を解消するために(その2)
ー認知症予防と意識障害の改善に対する
星状神経節ブロックを併用した肩関節
星状神経節ブロックを併用した肩関節治療の有用性についてー
関節治療の有用性についてー
頸肩腕痛及び肩関節痛は広範囲な上半身全体の疼痛を
誘発し、交感神経の過度な緊張状態を誘発して脳循環を
低下させる。脳循環の低下が慢性化しラクナー梗塞や脳
萎縮を発症すると、急激に認知症を来す症例を経験する。
この為、頸肩腕痛及びそれに誘発される自律神経の異常
は認知症の誘因になっていると推測された。
今回我々は星状神経節ブロックを併用して、頸肩腕症候
群及び肩関節周囲炎の治療を行い、認知症の予防及び
脳血管障害等に伴う意識障害の改善効果を析した。
肩関節の解剖
肩関節の解剖について
肩関節周囲炎で背部痛と腹痛・胃痛がおこる理由
肩関節の拘縮が起こると肩甲骨が上腕と
一体化して動く。そのため、
菱形筋が過進展し背部の疼痛を来す。
第4~8肋間神経の筋皮枝が、過
同時に第4~8肋間神経
第4~8肋間神経
の筋皮枝が、過
同時に
度に刺激され肋間神経痛を起こす。
肋間神経痛は側胸部から腹壁に及び、
末梢部ほど強いため、心窩部に圧痛および自
発痛をおこす。
この痛みは胃痛・腹痛と酷似しているが肩関
節のヒアルロン酸注入で即、軽減する。
中高齢者においてしばしば遭遇する、
意外な腹痛の原因;肩関節周囲炎の部分症状
肩関節内注射の効果について
星状神経節ブロック併用低温岩盤浴療法の
脳卒中後の意識障害への効果について
脳卒中後遷延性意識障害を来した患者、10例を対象。
星状神経節ブロックを併用した低温岩盤浴療法を施行した。
10例全例に改善効果が認められた。
星状神経節ブロック(SGB)と低温岩盤浴の併用効果
)と低温岩盤浴の併用効果
星状神経節ブロック(
脳卒中の意識障害が著明
脳卒中の意識障害が著明に改善
著明に改善
US
KO
KS
SM
SO
YK
KK
HN
TN
NS
意識レベル 意識レベル
(前)
(後)
Ⅰ-2
Ⅰ-1
Ⅰ-1
Ⅰ-1
Ⅲ-200
Ⅰ-3
Ⅰ-2
Ⅰ-1
Ⅲ-200
Ⅰ-3
Ⅱ-20
Ⅰ-1
Ⅰ-1
Ⅰ-1
Ⅱ-20
Ⅰ-1
Ⅲ-100
Ⅰ-1
Ⅲ-200
Ⅰ-2
【対象
対象】
対象
• 評価可能な29
評価可能な29例の、比較的認知症の軽いHDS-R
例の、比較的認知症の軽い
(平均27.4点)のデイ
(平均27.4点 のデイ ケア通所者(平均年齢82.
1歳、通院歴平均5.8
について、SGBの短期及
の短期及
1歳、通院歴平均5.8年)について、
について、
び長期的な効果についての評価を行なった。
• 短期的なSGBの効果について、
の効果について、SGB前、
前、SGB施行
施行
短期的な
の効果について、
前、
60分以内、
分以内、60分以後について比較検討をおこなっ
分以内、 分以後について比較検討をおこなっ
た。
• 長期的な効果について、経過中における、入院の必
要な重大疾病の発生の有無、慢性的な疾病の有無
に分類して、検討した。
星状神経節ブロック療法による脳血流の変化について
-文献的考察
文献的考察 -
星状神経節ブロックによ
り、脳の血流は1.8倍に
倍に
り、脳の血流は
増えるとされている。
星状神経節ブロック療法
第3版の記述より
版の記述より
武蔵野病院名誉院長
若杉文吉 著
【総括】
総括】
1. 要介護状態を誘発する原因疾患としてはロコモティブ症候群と
よばれる骨格系疾患と脳血管障害に代表される神経疾患が
双璧である。今回、我々が行っている両疾患に対する医療的
アプローチを紹介し、同時に医療的に要介護状態を予防する
ための有力な方法論として提案させていただいた。
2. 一方高齢社会において癌も重要な要介護疾患であり、治療法
を少しでも間違えるとQOLと、要介護状態を悪化させてしまう
を少しでも間違えると
と、要介護状態を悪化させてしまう
危険性を秘めていると思われる。我々は今回、高齢者や衰弱
者などのハイリスクグループに対し、安全性の高い癌治療法と
して低温岩盤浴療法の詳細を提案した。
3. 低温岩盤浴療法により、衰弱の強いがん患者の介護予防や
健康寿命の増進に留意した新しい癌治療を促進するとともに、
医療・介護費の節減にも寄与したいと考える。