神奈川県立こども医療センター NST (表紙:甲斐維子、裏表紙:沼﨑瑞希) はじめに 小児がんは治癒する可能性がとても高い疾患です。しかし多くの場合、がんの治療には様々な副作用 が伴い、副作用への対策は小児がん治療における重大な課題のひとつです。こどもたちには治療を終え た後にも長い人生が待っていることを考えると、より体や心に影響の少ない治療を受けることが、成人 の患者さん以上に重要かもしれません。 がんの治療は手術や抗がん剤を使った化学療法だけではなく、感染予防や心理的ケア、栄養サポート など多くの支持療法などによって構成されています。がん治療の進歩において支持療法が果たす役割は とても大きく、よりよい治療のためにはきめ細かな支持療法は欠かせません。 このパンフレットは小児がん治療における支持療法のうち、特に食事や栄養についてまとめたもので す。成長・発達の過程にあるこどもたちにとって、きちんと食事をとること、適切に栄養を摂取するこ とはとても重要で、それは小児がん治療中であっても何ら変わることはありません。むしろ、厳しい治 療を受けるこどもたちにこそ、食事や栄養の問題がより重要であるとも言えます。 このパンフレットを患者さん、患者さんを支えるご家族、小児がん診療に携わる医 療従事者など多くの方々に手に取っていただき、より良い小児がん治療の一助とな れば幸いです。 血液・再生医療科部長 医師 後藤裕明 「食べることは生きること」わたしたちの体は、食べたものでしか作られません。がんの治療中も同じ で、治療をしっかり行うためにも栄養はとても大切です。特に成長・発達している途中のこどもたちに とって栄養は欠かせません。しかし、治療中は副作用で、ごはんがあまり食べられなくなることもたく さんあります。そんなときにどうやって栄養を摂ったらよいか、私も日々みなさんと 一緒に悩んでいます。また、食べることは生きるうえでの楽しみであり、おいしく楽 しくたべることは、心も豊かにしてくれます。 「からだ」と「こころ」、両方の栄養が 満たされるよう、この冊子が少しでも皆さんの役に立てれば幸いです。 チームリーダー 管理栄養士 和田碧 私たちが普段使う薬は「効果」がとても大きくて「副作用」はほとんどないか軽いものが多いのです が、抗がん剤は「効果」と「副作用」が同じ位だったり、時には「副作用」が強く出る場合もあります。 また、薬によって副作用の種類や程度も違ってきます。がんの治療を行っていく時、治療に伴う様々な 副作用症状を軽減し、栄養や食事をしっかりとることが、患者さんの生活の質(QOL)の維持や治療の継 続を目指す上でとても大切だといわれています。そして、こどもたちにとって栄養は、 成長に欠かせない重要なものでもあります。 治療中の栄養を考える時、この冊子が、皆さんの「いつごろ?どんな?どうして? どうしたら・・」の解決につながることを願っております。 編集主幹 薬剤師 甲斐維子 1 もくじ ●はじめに 1 ●もくじ 2 ●がん治療中の栄養 3 ●小児がんの治療と副作用 ◆化学療法 ◆ 抗がん剤による消化器系の副作用とその程度 抗がん剤と食品の相互作用 副作用対策 4-7 6 6 くすりを使う 7 ●小児がんの治療と副作用 ◆手術◆ 8 ●小児がんの治療と副作用 ◆ 放射線 ◆ 9 亜鉛って? 9 ●小児がんの治療と副作用 ◆造血幹細胞移植◆ 10-11 ●こどもに必要な栄養について 12-13 ●副作用の症状別食事の工夫 14-16 造血幹細胞移植後早期の食事について 16 ●症状別おすすめレシピ 野菜を好きになろう 17-19 18 病棟でできる食事の工夫 19 こども医療センターで行っている取り組み ●栄養療法の原則 栄養補助食品 19 口から食べること以外にも 20 20 ●お口のケアの必要性 21 ●お口のケアの方法について 22 どんなうがい薬があるの? 23 ●こどもの発達に合わせた生活におけるヒント 24-25 ●Q&A コーナー 26-27 ~よく聞かれる質問より~ ●こどもたちの運動療法 緩和ケアサポートチーム 28 28 ●おわりに 29 2 がん治療中の栄養 これから皆さんと、がん治療にあたっての取り組みかたについて、学びましょう。 がんとの取り組みの過程には、 「治療」とともに、 「生活」があるのです。 「治療」はまさにがんをやっつけるための治療で、化学療法、手術、放射線、そして 造血幹細胞移植があります。これはおもに、主治医の先生が担当してくれます。 「生活」はがんや治療の副作用から身を守るための生活上の療養のことです。栄養、運動、睡眠、排 泄、お口の健康、心の健康、人間関係など、生活のすべてです。これは自分自身の取り組みではあり ますが、それぞれの専門家の支援を受けることができます。がんとの取り組みは、生活全般と関連し ているのです。 がんになると、体力が落ち、体重が減ってしまいがちです。がん細胞が出す有害物質や、治療の副 作用で、体が傷ついてしまうのです。体力が落ちているというのは、筋肉が減ったり、免疫力が減っ たりしているのです。一番わかりやすいのは、体重でしょう。 がんになると、栄養が不足しやすくなります。食欲が減ったり、吐き気があったり、口内炎ができ たり、唾液が減ったり、味覚が変わったりして、食事が進まなくなりがちです。 栄養には、エネルギーの元(カロリー)と、栄養素ごとの役割があります。 エネルギーが足りないと、体の一部を分解してエネルギーに替えなくてはな らなくなるので、体は傷つき、体重が減ります。 栄養素は、タンパク質、脂質、糖質、ミネラル、ビタミン、食物繊維、抗酸化物質があり、それぞ れが役割を果たしています。足りなくならないようにしたいものです。 体力が落ち、体重が減ることは、がん治療にとっては不利にはたらきます。有利に進めるために、 体力をつけ、体重をなるべく減らさないようにしたいのです。そのためには、栄養、運動、お口の健 康など、総合的に取り組むことが大事です。 栄養サポートチーム(NST)はそのためのお役に立ちたいと活動してい ます。医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、歯科医師、歯科衛生士、理学 療法士、作業療法士、臨床検査技師など、たくさんの専門家が力を合わせ て、あなたの取り組みを支援しようとしています。 3 小児がんの治療と副作用 ◆ 化学療法 ◆ 小児がんの治療は、主に①化学療法、②外科的治療(手術) 、③放射線療法、によって構成されます。 疾患に応じてこれらを組み合わせて治療が行われますが、例えば、急性白血病では化学療法が治療の中 心となります。 この章では、化学療法とその副作用についてご説明します。 ☆化学療法とは がん治療における化学療法とは、抗がん剤を使った薬物療法のことを指します。 薬剤や治療法によって、静脈内への点滴・注射、皮下注射、筋肉内注射、内服(口から飲むこと) 、 髄腔内注射(腰椎の間から髄液内に注射すること) 、などの投与方法が選択されます。また、がんの種 類によって、使う薬剤の種類や量が違ったり、複数組み合わせて使ったりします。 従来から使用される抗がん剤は、増殖が著しく盛んな細胞を障害する(死滅させる)ようにできて おり、一般的にがんは細胞増殖が盛んなので、抗がん剤治療の標的となります。一方で、正常な細胞 でも、髪の毛の細胞や血液の細胞のように増殖が盛んな場合には抗がん剤による影響(副作用)が強 く出てしまいます。 副作用 骨髄抑制 攻撃 がん細胞 脱毛 抗がん剤 粘膜障害 増殖がさかんな正常細胞 抗がん剤による治療のスケジュールは様々ですが、多くの場合は、一定期間、複数の抗がん剤を投 与し、しばらく休薬して、正常細胞の機能が回復したら、また抗がん剤を投与することを数か月間、 場合により一年以上繰り返します。 上手に化学療法を行うこととは、これらの副作用を上手に予防、管理することにつきます。 ☆化学療法での副作用 いつごろ・どんな・どうして 化学療法は、がんの細胞にダメージをあたえるのと同時に、正常な体の細胞にもダメージをあたえて しまうためにいろいろな副作用が出ることがあります。ここでは、一般的な副作用と栄養低下につなが る副作用についてご説明します。 一般的な副作用 治療の内容によって副作用の出かたは変わってきますが、一般的には次頁の図のようなものがあり ます。出てくる時期も違うので、治療を受けた後、どんなものがどんな時期に起きやすいかを知って おくと、心構えや対処がしやすくなります。 4 抗がん剤治療の副作用と発現時期 出典:国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」 栄養低下につながる副作用 吐き気(悪心) ・嘔吐 吐き気が出やすい薬と出にくい薬があります。吐き気が強い薬を使うときには予防的に制吐剤(吐き 気止め)を使います。それでも気持ち悪くなった時には追加したり別の制吐剤を使ったりします。無理 してたくさん食べない、少量ずつ食べる、安静をこころがけるなどすると良いでしょう。 粘膜障害(口内炎、下痢) 口や腸管の粘膜がやられることで起きてきます。痛み止めを積極的に使いましょう。うがいや歯磨き などお口のケアをしっかりすることで予防できます。消化の良いものを食べ、刺激物は避けましょう。 感染予防のためにトイレの後に陰部をキレイにすることも大切です。 味覚障害 味がしない、味を強く感じる、いやな味がするなどいろいろな出かたがあります。味を感じる細胞(味蕾)の傷 害や粘膜の障害で起こります。唾液が減ったり、体の亜鉛不足(9 ページ参照)でおきてくることもあります。お口 のケア、食事内容の工夫(食事内容の変更や調味料での味の調節)の他、亜鉛を補う薬を使ったりもします。 便秘 腸の動きが悪くなることで起こります。水分をこまめに取りましょう。お腹のマッサージなどが有効 です。なかなか出ないときには便を軟らかくする下剤や腸を刺激する下剤を使います。 効果と副作用 「副作用が強く出ているからがん細胞にも効いているはず」とか「副作用はがまんした方ががんにも 効く」といった話を聞くことがありますが、これは誤った思い込みです。薬剤のがんへの効果と副作用 の程度は全く関係がありません。副作用がなるべく出ないでがんに効果が出るのが一番いい治療です。 なので、副作用をがまんする必要もありません。つらい治療はなるべく楽に受けられるよう、予防や対 症療法(吐き気止め、痛み止めなど)は積極的に行いましょう! 5 抗がん剤による消化器系の副作用とその程度 成分名 嘔気/ 嘔吐 メトトレキサート 下痢 便秘 口内炎 主な商品名 ○ ◎ メソトレキセート® ○ ○ キロサイド® シタラビン ○ シスプラチン ◎ ブリプラチン®、シスプラチン カルボプラチン ○ パラプラチン® エトポシド ベプシド®、ラステット® ○ ビンクリスチン ◎ ビンブラスチン ノギテカン ○ ○ オンコビン® ○ エクザール® ○ ハイカムチン® カンプト®、イリノテカン イリノテカン ○ シクロホスファミド ◎ ○ エンドキサン® イホスファミド ○ ○ イホマイド® ○ アルケラン® ○ ブスルフェクス® メルファラン ◎ ○ ブスルファン ○ ダカルバジン ◎ ドキソルビシン ○ ピラルビシン ○ ダウノルビシン ○ ○ ○ ダウノマイシン® イダルビシン ○ ○ ○ イダマイシン® ○ ノバントロン® ダカルバジン® ◎ ピノルビン® ミトキサントロン アクチノマイシンD イマチニブ アドリアシン® コスメゲン® ○ グリベック®、イマチニブ ○ 副作用の程度:◎非常に強い、○強い、印のないものも多少の症状があるものが多い 治療中の副作用により「食べられない、食べたくない」という状態になった時は、 その原因を探る必要があります。がまんをせず、担当医や看護師に相談しましょう! 抗がん剤と食品の相互作用 くすりの中には食事の影響をうけるものもあります。 一緒に取ることで、くすりの効果が弱くなったり、副作用が強く出ることがあります。 ◆グレープフルーツの摂取を止められている抗がん剤(副作用が強くでる) :イリノテカン、イマチニブ ◆多量の肉や卵、乳製品、揚げ物など脂肪分の多い食事で効果が弱まる抗がん剤:ネクサバール® ⇒食事を極端に制限する必要はありませんが、調理の工夫をしたり、高脂肪食を食べる時間と、 くすりを飲む時間をずらしましょう。 高脂肪食を食べた後は 2 時間くらいたってから、ネクサバール®を服用するとよいでしょう。 6 副作用対策 くすりを使う 治療による効果をあげるには、副作用を上手にコントロールすることが大切です。 食事や生活上の工夫をしたり、つらい症状をくすりで抑えることで治療中の副作用症状を和らげることが できます。 ☆吐き気(悪心)・嘔吐はしっかり抑えることが大切です ・ 抗がん剤や放射線治療の吐き気・嘔吐には、セロトニン拮抗薬(グラニセトロン、カイトリル®など) という吐き気止めの薬のほか、ステロイド、プリンペラン®、アタラックス P®などの薬を使います。 ・ 吐き気止めの薬(制吐剤)は、抗がん剤の種類や患者さんごとの状況によって、組み合わせや投与 する量が変わってきます。 ・ 吐き気や嘔吐が長く続き、食事がとれない時は、点滴で水分や栄養を補います。 おくすりは、決められた量を決められた時間に服用しましょう! ☆下痢は重症化させないことが大切です ・ 下痢が続くと治療の継続ができなかったり、重症化すると危険な状態になります。 ・ 下痢止めには、腸の動きを止めてしまうもの(ロぺミン®等)、殺菌作用のあるもの、腸の動きを 正常化するもの、腸内の細菌バランスを整えるもの(整腸剤)、漢方薬(半夏瀉心湯、大建中湯等) などがあります。 ・ 水分や電解質を補いながら、症状に合わせて下痢止めを使います。 1 日 4~6 回の強い下痢や何日も下痢が続くようでしたら、担当医や看護師に伝えましょう! ☆便秘は予防と早めの対策が必要です ・ 便秘は予防が大切ですが、なってしまった時は、酷くならないように早めに対策をしましょう。 ・ 吐き気止めの薬(グラニセトロン、カイトリル®など)でも便秘が起こります。 ・ 下剤には、便を柔らかくする薬(酸化マグネシウム)と腸を刺激して排便を促す薬(プルゼニド®、 ラキソベロン®、テレミンソフト®坐剤、新レシカルボン®坐剤、グリセリン浣腸など)があります。 両方を上手に組み合わせて使うことで、排便コントロールをつけます。 酸化マグネシウムを服用する時は、多めの水で服用することがポイントです。 少ないとあまり効果がでません。 ☆口内炎の予防は治療前から始めましょう ・ 口内炎の予防には、治療前から口腔ケアを始めることが大切です。 ・ 口の中を清潔にし、うがいなどで保湿を保つことが感染予防にもつながります。 ・ 現在、口内炎に対する特効薬はありませんが、口腔内の症状に応じて、ぬり薬(ケナログ®口腔用 軟膏、デキサルチン®口腔用軟膏など) 、局所麻酔薬の外用薬(キシロカイン®)、うがい薬(アズ ノール・グリセリンの含嗽液、ネオステリングリーン®など)、痛み止め(アセトアミノフェンやオ ピオイド)などを使います。 7 小児がんの治療と副作用 ◆ 手術 ◆ この章では、外科的治療(手術)とその副作用についてご説明します。 ☆手術とその副作用 小児がんの患者さんのうち行われる手術の種類としては、大きく分けて三つの場合があります。 ① 小さめの表面の手術(カテーテルを入れる、体表からの生検を行う時など) ② 大きめの体の手術(開腹、開胸などの手術) ③ 頭の中の摘出手術など それぞれの手術と副作用について、下記に示します。 小さめの手術の副作用 首や鎖骨下のカテーテル、体表からのリンパ節などをとる場合の手術がこれに当たります。この場合 には、おそらく麻酔関連の合併症が主になるでしょう。これは、例えば人工呼吸器の管を一時的に入れ たことによる喉(のど)のかすれ、頭痛、吐き気、めまい、腰痛などです。これらは、個人差がありま すが、一過性であることが多く、数日で改善します。水分や食事は、麻酔科の先生や看護師さんからの 指示に従って開始しますが、当日や翌日には、食事がとれるようになることがほとんどです。この場合、 喉の違和感が一時的に残ることがありますから、酸味のある刺激物などは避けて、のどごしが良いもの にしたほうが良いでしょう。 大きめの手術の副作用 これらの手術は麻酔時間も長くなりますから、上記の軽い合併症のほかに、手術をした周辺臓器の合 併症についても注意が必要です。たとえば、肝臓や腎臓、腹部のリンパ節や副腎から一部の組織をとる など、開腹手術をした場合には、おなかの腸管の動きが一時的に低下する場合があります。その場合に は、外科の先生からの許可が出るまで、食事ができない(絶食)となります。その後、水分から開始し て、柔らかい食事から、通常の食事へと段階的にアップしていくことが多いでしょう。主治医の勧めに 従って刺激物を避けて食事を進めることが良いでしょう。 頭の手術の副作用 頭蓋内の腫瘍摘出術がこれに当たります。術後に悪心、嘔吐、頭痛、意識障害などが出る場合がある ため、絶食の期間が長くなる場合があります。脳にはいろいろな部分がありますので手術の部位によっ て症状の出る場所は異なりますが、場所によっては咀嚼(そしゃく)機能や嚥下機能、舌の動きなどに 影響が出る場合がありますので、注意が必要です。まずはクリアウォータ―から開始し、誤嚥(ごえん) と言ってむせ込む事が無いかどうか、確認してから食事が開始となります。 8 小児がんの治療と副作用 ◆ 放射線 ◆ この章では、放射線の副作用についてご説明します。 ☆放射線の副作用 放射線照射は、照射を行う部位によって副作用の発現が大きく違い、照射していない部位の副作用は 出現しません。以下の副作用がお子さんの照射部位に当てはまるかどうか、主治医に確認していただく ことをお勧めします。 放射線性皮膚炎 照射をした部位に皮膚の赤みやただれが起きる場合があります。そのような状態は数週で改善するこ とが予想されますが、軟膏を塗布する場合があり、続く場合には皮膚を保護します。 口やのどの乾燥 照射部位によっては唾液が出にくくなる場合や、耳下腺、唾液腺の痛みがあることがあります。口当 たりの良いゼリーやお豆腐を使ったり、味付けをマイルドにしたり といった食事の工夫に加え、うがいをすることが適切です。 その他 全身の倦怠感などが出る場合があります。 その場合に食事がとりにくいときには点滴などで栄養補給をします。 また全脳照射や、全身放射線照射(TBI)を行った場合には、吐き気や嘔吐、 頭痛が起きる場合があります。 亜鉛って? 亜鉛は人間の体に微量にしか存在しませんが、多くの酵素が働くために必要で、皮膚や免疫機能、 味覚などを正常に働かせる大事な役割をはたしており、必須微量元素と呼ばれています。 亜鉛が足りないことで起きる症状は、亜鉛欠乏症といいます。亜鉛欠乏症には、味覚や嗅覚の障害・ 創傷治癒遅延(傷がなおりにくい事)などがあります。 ☆どんな食べ物に含まれているの? 亜鉛は、食べ物では肉類、魚類、穀類に多く含まれます。 特に多く含んでいるのは、牡蠣、レバー(豚、牛)、鶏卵、鶏肉、チーズです。 ☆亜鉛欠乏症の対策はあるの? 亜鉛は血清中の濃度を測定することができます。 亜鉛が不足する場合には、食事から補うことが基本ですが、亜鉛を含む栄養剤や薬剤で補充する 方法もあります。 9 小児がんの治療と副作用 ◆ 造血幹細胞移植 ◆ この章では、造血幹細胞移植とその副作用についてご説明します。 ☆造血幹細胞移植 全ての血液の細胞(赤血球、白血球、血小板)は造血幹細胞という一種類の細胞に由来します。 造血幹細胞は通常は骨髄の中に存在しますが、特殊な状況では血管の中を流れる血液(末梢血)に骨髄から 誘導されることがあります。また、出生時の胎盤や赤ちゃんの臍の緒の血液にもたくさんの造血幹細胞が残 されています。 造血幹細胞移植とは? 何らかの理由で造血幹細胞の数や機能に異常がある場合、その異常を改善させるために他人の、も しくは以前保存しておいた自分自身の造血幹細胞を患者さんに移植することを造血幹細胞移植といい ます。造血幹細胞移植を行うと、大量の抗がん剤や放射線治療を行うことができるため、通常の治療 では治りにくい小児がんに対する治療として行われることがあります。 造血幹細胞移植の種類 予め保存しておいた自分自身の細胞を使った造血幹細胞移植を自家骨髄(末梢血幹細胞)移植とい います。自分以外の人の造血幹細胞を移植することを同種造血幹細胞移植といい、使用する細胞の種 類により、同種骨髄移植、同種末梢血幹細胞移植、同種臍帯血移植に分類します。 上記にはそれぞれ長所、短所がありますので患者さんの状況にあわせて選択を行います。 前処置 無処置で同種造血幹細胞移植を行っても、移植された細胞は患者さんの免疫によって排除されてし まい、このことを拒絶といいます。拒絶を防ぐためには、患者さんの免疫を抑制することが必要で、 このために行う治療を前処置といいます。前処置には大量の抗がん剤、放射線、免疫抑制剤を使用し ます。小児がんの患者さんでは、前処置は拒絶を予防するだけではなく、がんの細胞を根絶すること を目的とした大量化学療法(および放射線療法)としての役割も担っています。 造血幹細胞移植の流れ 前処置にかかる時間は通常7~10日です。その後、造血幹細胞を含んだ骨髄血、臍帯血など を点滴で患者さんの体にいれます。移植された造血幹細胞がしっかり増殖して造血を始めるまで 2~4週かかりますが、この間は患者さん自身の造血も前処置によって抑制されていますので、 骨髄機能は極度に低下した状態になります。 合併症 同種造血幹細胞移植では拒絶とは反対に、移植した骨髄血などに由来するリンパ球が、患者さんの 体を異物とみなして攻撃することがあります。これを GVHD(graft versus host disease:移植片対宿 主病)といい、その重症化を予防するために移植した前後から免疫抑制剤を使用する必要があります。 10 骨髄機能が低下した状態では、通常は問題にならないような細菌や真菌の感染症が重篤化すること があります。移植後の免疫抑制剤の作用も加わって、サイトメガロウイルスなどのウイルス感染症も 問題になります。前処置に用いた薬剤、放射線照射、免疫抑制剤による臓器障害(粘膜障害、肝障害、 腎障害、心筋障害、血管内皮障害など)が起こる可能性があります。 移植の種類によっては、長期にわたって内分泌器官(甲状腺や性腺など)の障害や、 心肺機能に障害が治療の副作用として残る可能性があります。 ☆造血幹細胞移植の副作用 造血幹細胞移植は、大量化学療法に用いる抗がん剤の種類や、放射線照射を使用するかどうか、によっ て大きく変わってきます。放射線照射の副作用の中で TBI(全身放射線照射)の副作用については一部述 べましたので、移植中、移植後の合併症のうち、栄養や消化管に関するものを抜粋して述べます。 悪心、嘔吐、食欲不振 化学療法における副作用よりも、ややひどくなりますが、一時的です。吐き気止めを使用すること で予防はできますが、一時的に食事がとれない場合には経腸栄養や静脈栄養で栄養補給を行います。 粘膜障害 下痢、口内炎などが起こる可能性が高く、それらの疼痛緩和目的に解熱鎮痛薬や、一時的に麻薬を 必要とする場合があります。 予防的にグリセリンを含んだ消炎剤のうがいや、口腔内の診察を行って、 びらんなどの部分に二次感染を防ぐことが必要です。 急性 GVHD 移植後 1~2 か月くらいから水様下痢や腹痛を起こす場合があります。 軽度であれば経過観察ですが、重度であれば免疫抑制剤の追加やステロイドの治療を行う他に、絶食 となることもあり、静脈栄養で栄養補給を行うこともあります。 慢性 GVHD 移植後 3 か月を過ぎたあたりから、口腔粘膜や食道に硬化性変化が起きることがあります。唾液の 分泌が減っていたり、粘膜の萎縮などがないか、また体重減少や下痢がないか注意するとよいでしょ う。その場合には免疫抑制剤などを調整したり、栄養補給の方法を考慮したりします。 ほかに根本的な治療法がない多くの疾患が造血幹細胞移植によって治癒し、元気に社会生活に復帰した多 くの患者さんがいます。移植に関わる様々な医療が発展したため、造血幹細胞移植の安全性は高くなってい ると考えられます。しかしながら、依然としてすべての合併症を予期し未然に防ぐことは困難で、危険を伴 う治療であることには違いがありません。 11 こどもに必要な栄養について ☆成長・発達のため こどもは大人と違い、成長・発達します。体が大きくなったり、いろいろなことを覚えたり、勉 強したりするためには、栄養が不可欠です。また、その子の発育段階に応じた食事量・内容・形態 に配慮する必要があります。 ☆どのくらい食べたらよいのか 必要量は、年齢・性別・活動量によって変わります。 足りているかどうかは体重の変化を確認しましょう。 推定エネルギー必要量 性別 身体活動レベル 0~5(月) 6~8(月) 9~11(月) 1~2(歳) 3~5(歳) 6~7(歳) 8~9(歳) 10~11(歳) 12~14(歳) 15~17(歳) 18~29(歳) kcal/日 低い 1,300 1,350 1,600 1,950 2,300 2,500 2,300 男性 ふつう 550 650 700 950 1,300 1,550 1,850 2,250 2,600 2,850 2,650 高い 低い 1,750 2,100 2,500 2,900 3,150 3,050 1,250 1,500 1,850 2,150 2,050 1,650 女性 ふつう 500 600 650 900 1,250 1,450 1,700 2,100 2,400 2,300 1,950 高い 1,650 1,900 2,350 2,700 2,550 2,200 出典:日本人の食事摂取基準 2015 ☆バランスの良い食事って? 肉・魚・卵・豆腐など タンパク質 野菜・いも類 ビタミン ミネラル 主食+主菜+副菜の 3 つをそろえると 栄養のバランスが ととのいます。 例)食パン+オムレツ ごはん・パン・麺類 +サラダ+牛乳 炭水化物 12 ☆治療中の栄養 治療中は化学療法や放射線療法の副作用で食事量が 正常な小腸粘膜 化学療法+絶食 少なくなることが多くあります。しかし、絶食により 腸の粘膜が萎縮し、感染の原因となることもあります。 出来るだけ経口摂取や経腸栄養で腸を使い、粘膜を健 康に保つことが必要です。 (右図) また、栄養状態が悪くなると免疫力が低下し、感染 症にかかりやすくなったり、疲れやすくなったりしま す。治療のクールで副作用が治まってきたら、次回の 化学療法が始まる前までにバランス良く食べて、栄養 粘膜のひだが 粘膜が萎縮し、 たくさんあり 薄くなってしま 健康な状態 っている状態 状態を良くしておきましょう。 (下図) どうしても口から摂れない場合は、静脈栄養や経腸栄養(経管栄養)なども考慮する必要があります。 (20 ページ参照) 治療 治療 治療 有 食 欲 食欲低下 無 粘膜障害 食欲改善 骨髄抑制 骨髄回復 体調の良い時、悪い 時でメリハリをつけ できるだけ経口摂取を続 食事のバランスも考えて嫌 け、食べられるもの少量 いな物にもチャレンジ。次の でも摂る。症状に合わせ 治療に備えてしっかり栄養 た食事の工夫を行う。 を蓄える。 ☆栄養状態をみる指標 ・体重の変化(成長曲線) (右図) ・皮膚の状態(かさかさ、薄い、赤くなりやすい) ・爪(二枚爪、さじ状爪) ・粘膜(口、のど、お尻など) ・元気があるかどうか 体重の増えが悪かったり、増えすぎたりしていな いか、成長曲線で定期的にチェックしましょう。 13 ると良いでしょう。 副作用の症状別食事の工夫 治療中によく起こる症状にあわせた食事の工夫をご紹介します。 年長のお子さんは自分で食べたいものや症状を訴えられますが、小さなお子さんはなぜ食べられな いのか原因が分からないことも多くあります。そのような時はいろいろと試して、食べられる物を見 つけていきましょう。 食欲不振 食欲不振は、治療の副作用だけでなく、精神的な理由が原因となることもあります。食事の工夫も 大事ですが、環境面にも配慮すると良いでしょう。また、食べられそうな時にすぐに用意できるよう、 保存可能なものをストックしておくことも有効です。 ●食事内容の工夫 ・盛り付けを少量にして完食しやすくする。 ・のどごしの良い麺類やゼリー、プリンなどを試してみる。 ・食べたいものが思いつかないときは料理本をみてこれなら食べられそう、というものを探してみる。 ・飲み物なら摂れる、というときは栄養補助食品(20 ページ参照)を試してみる。 ・乳児で離乳食と母乳やミルクの併用の場合は形態を一段階戻して、みじんやペースト状のものにす ると食べやすくなります。また、食べられない時は無理にすすめず母乳やミルクで補いましょう。 ●環境面の配慮 ・いつもと場所を変えて食べてみる。 ・お気に入りの食器やお弁当箱に入れてみる。 ・明るい雰囲気を演出する(テーブルクロスや装飾、音楽をかけるなど) ・家族や友達と一緒に食事を摂る。 嘔気・嘔吐 症状の中で一番多くみられます。においにも敏感になることが多いため、周囲の環境にも気を配ると よいでしょう。つわりの症状によく似ているとも言われています。 ・一度にたくさん食べず、少量頻回食にする。 (3 回食にこだわらず、5~6 回食にする) ・においで吐き気がひどくなる場合は冷たい料理を取り入れる、冷ましてから食べる。 ・うがいをしてさっぱりしてから食べる。 ・脂肪や食物繊維の多すぎるものは控え、消化の良い物を摂取する。揚げ物は避ける。 おすすめ : 冷たい麺類(そうめん、冷やしうどん、ざるそば) 、ゼリー、果物、卵豆腐 下痢 ・冷たすぎる・熱すぎるものは避け、人肌くらいの温度にする。 ・辛い物など刺激物は避ける。 ・脂肪や食物繊維の多すぎるものは控える。 ・経口補水液やイオンウォーターなどで水分を補給する。 おすすめ : 雑炊、煮込みうどん 14 便秘 ・水分や食物繊維をしっかり摂る。 ・乳酸菌飲料やヨーグルトなどを取り入れる(移植後は注意)。 ・適度に油脂を摂る。 おすすめ : 温野菜のマヨネーズかけ(野菜と油脂が一緒にとれる) 、ヨーグルト、乳酸菌飲料 口内炎 ・患部に食べ物が触れても痛くないように、やわらかく、口当たりの良い食事にする。 ・香辛料(カレーや唐辛子)や酸味の強いもの(柑橘類、酢、ドレッシング、ヨーグルトなど)を 控える。 ・水分は患部に触れないようストローで飲むと良い。 ・口が開けづらい場合は、小さく切ったり、刻んだりする。 おすすめ : ゼリー、プリン、卵豆腐、茶わん蒸し、うどん 味覚障害 味覚障害にもいろいろなパターンがあります。特に移植経験者に多くみられ、パターンとしては 塩味を感じにくくなることが多い印象があります。 味を感じにくい(特に塩味と旨味) ・調味料をプラスして味付けをする。マヨネーズや練りごま、味噌などのコクを生かす。 ・フライドポテト、カップ麺など塩分の多いものが好まれる。 ・においが感じにくくなることもあるので、ゴマ油、カレー粉などの香辛料、バジルなどのハーブ を利用する。また、普段の料理に柑橘類を絞ったり、大葉や葱などの薬味をプラスしたりする。 ・ダシをしっかり取る、干し椎茸やごぼうなど風味の良い食材を使う。 ・あんかけにすると具材に味が絡まりやすい。 苦みや金属味がする ・ダシをきかせた汁物、香辛料を使う。 ・乳製品や茶碗蒸しなどの卵料理は食べやすい。 ・キャラメルや飴をなめる。冷たい物、チョコレートを避ける。 ・金属のスプーンやフォークを避け、プラスチック製のものを使う。 唾液が出にくい 治療の副作用で唾液の分泌量が減り、食事が食べにくくなることがあります。 ・水分をこまめに補給する。 ・スープや汁物、麺類など水分の多い料理にする。 ・唾液の分泌を促すため、ガムをかむ、すっぱいものを食べたり、思い出したりする。 (レモン、梅干しなど) ・パンなどのパサつきやすいものは、スープに浸して食べる。 15 肥満・食欲亢進 ステロイドを使用した治療中には食欲が亢進します。味の濃い物や揚げ物を好むようになることが 多いですが、一時的なものなので、薬が終われば食欲ももとに戻ります。 体重の増加が著しいときには高カロリーのものを控えたり、お菓子や市販品は 栄養表示を見て購入したりすると良いでしょう。 また、体調の悪い時は、食べられるものを食べることも大切ですが、治療中の食習慣が抜けず治療 終了後に肥満の心配が生じてきてしまうお子さんもいらっしゃいます。 治療の合間の元気なときは、バランスを考えた食事を心がけ、偏食・好き嫌いが習慣化されないよう 苦手な食材も一口は頑張ってみましょう。 外泊時にご家族と一緒に料理をしてみたり、 野菜に興味をもつきっかけがあると良いですね。 患者さんへのアンケートから、治療中でもよく食べられたものをご紹介します。 主食系 うどん、ラーメン、パスタ、 ご飯のお供 白ごはん、チャーハン、パン 納豆、鮭フレーク、ふりかけ 野菜・果物 野菜類(枝豆、きゅうり、 生野菜) 、果物 おかず系 ポテト、唐揚げ、たこ焼き、焼肉、 おやつ しらす、コロッケ、ソーセージ、スープ ヨーグルト、ゼリー、アイス、 スナック菓子、せんべい、ジュース 造血幹細胞移植後早期の食事について 造血幹細胞移植後、生着までの期間は特に感染しやすい状態にあります。食事からの感染を避ける ため、造血幹細胞移植ガイドラインに基づいて食品の選択に注意する必要があります。基本的に調理 後 2 時間以内に食べるようにし、市販品は殺菌・加熱表示があり個別包装されているものを選びまし ょう。 ☆禁止となる食品:生肉、生魚、生卵、生野菜、生フルーツ(オレンジ等皮をむいて食べるものは OK) 、殺菌されていない乳製品、納豆、ドライフルーツなど ☆アイスクリームやゼリーは個別密封されている製品を利用する ☆ペットボトル飲料は開封後冷蔵保存し、24 時間以内に消費する 16 症状別おすすめレシピ ✿コーンポタージュパングラタン✿ パングラタンにすることで口当たりもよくなり、口内炎のある方も食べられます。 熱すぎると刺激になるので、少し冷ましてからお召し上がりください。 <材料 1 人分> コーンポタージュの素 熱湯 1袋 150ml 6 枚切り食パン 1 枚(好みで耳は落とす) 粉チーズ 適量 <作り方> ① パンを 9 等分に切る。 ② 耐熱皿でコーンポタージュの素を熱湯で溶き、 パンを浸し並べていく。 ③ 上から粉チーズをかける。 ④ 250℃のオーブンで 10 分、またはトースターで表面がやや乾くまで焼く。 ☆スティックココアやミルクティーの素を使えばパンプディングにもなります。 ✿ごまだれそうめん✿ 食欲のない時も、冷たい麺類ならつるっと食べられます。 ごまのコクと風味で、味覚障害で味を感じにくい方も美味しく食べられます。 <材料 1 人分> そうめん 1束 ●ごまだれ めんつゆ(3 倍濃縮) 大さじ1 水 大さじ 2 ごまだれ(市販) 大さじ1 ●トッピング きゅうり ハム 1/4 本、水菜 1/4把、トマト 2 切(1/8 カット) 2 枚、ゆで卵 1/2 個 などお好みの具材 <作り方> ① 茹でたそうめんを水にさらし、よく水気を切る。 ② ごまだれの材料をよく混ぜ合わせ、①のそうめんに和える。 ③ 千切りにしたきゅうりやハムなど好みの具材をトッピング。 ☆冷たい麺類以外にも焼きうどんなど味のしっかりした 麺類が好まれています。味付はめんつゆ+鰹節で和風、 ソース+ケチャップで洋風、ソース+マヨネーズでコクを出す など色々なバリエーションがあります。 17 <おすすめトッピング> ツナ缶、焼とり缶、サラダチキン、 ゆで卵、きつねあげ、肉味噌、 ちくわなど蛋白質もしっかり 摂れるものがおすすめです。 ✿魚のパン粉焼き✿ 衣の香ばしさと油の風味で魚の匂いが抑えられ、味覚障害がある方や 魚嫌いのお子さんでも美味しく食べられます。 <材料2人分> 魚切り身(カジキなど)2 切れ 塩・胡椒 適量 小麦粉 大さじ1 溶き卵 適量 パン粉 1/2 カップ 粉チーズ 大さじ 1 合わせておく オリーブオイル 適量 <作り方> ① 魚は一口大に切り、酒をふる。 ② 酒をキッチンペーパーで軽くふき取り、塩・胡椒で下味を付ける。 ③ ②に小麦粉をはたき、溶き卵に浸す。合わせておいたパン粉・粉チーズの衣を付ける。 ④ 多めのオリーブオイルで揚げ焼きにする。 ☆お好みでケチャップやソースをかけて下さい。 野菜を好きになろう 野菜嫌いのお子様は、外泊時にお家でご家族と一緒に野菜のおやつを作ってみてはいか がでしょうか? 簡単に美味しく作れます♪ ✿お野菜アメリカンドッグ 茹でた好きな野菜(人参・アスパラ・芋類など)やウィン ナーを竹串に刺し、牛乳で固めに溶いたホットケーキミッ クスを付けて油で揚げる。 (材料の目安量は具材 100g に 対してホットケーキミックス 50g+牛乳大さじ 2 強) ✿芋もち レンジでチンしたさつま芋(中 1 本)を袋に入れて潰し、 大さじ 1 の片栗粉を混ぜ好きな大きさに丸め平たくし、 熱したフライパンにバターを溶かし焼く。 18 病棟でできる食事の工夫 ✿焼きおにぎり ご飯をおにぎりにし、両面に醤油を塗って トースターで焼く ✿野菜ジュースラッシー 好きな野菜ジュースと飲むヨーグルトを半量ずつ混ぜる ※造血幹細胞移植後早期の方はヨーグルトの摂取が できませんのでご注意ください。 ✿ピザトースト 食パンにケチャップを塗り、好きな野菜やハム、 チーズを乗せてトースターで焼く *他にもロールサンドや海苔巻など、普段とは違う見た目にすると 雰囲気が変わって食べてみようかなという気になるかもしれません。 こども医療センターで行っている取り組み こども医療センターではランチバイキング、クッキー作り、パフェパーティー、お好み焼きパ ーティーなど、定期的にイベント給食を開催しています。長い入院生活の中で好きなメニューを えらんだり、食事作りに参加したりすることは、こどもたちが食の楽しさを感じられる場となっ ています。普段あまり食事が進まないお子さんでも食べるきっかけとなっているようです。 また、栄養について気軽に相談できる「栄養サロン」を年 3 回行っています。 医療スタッフによるミニレクチャーとフリーディ スカッションの構成で、他のご家族とも栄養に関する お悩みを共有できます。 19 栄養療法の原則 口から食べること以外にも 栄養療法の原則は口から食べることに あります。しかし、事情により食べられな い場合には、管から栄養を入れる、経腸栄 養(経管栄養)という方法があります。腸 が使える場合には腸を使うのが望ましい のです。 腸が使えない場合には、 点滴で栄養を入 れる静脈栄養という方法を用います。 食べるものについては、できるだけ普通 の食品を食べるのが原則です。 しかし食べられない場合には、どろどろの 食品を管から注入する方法があります。 管が細いなどの理由から、どろどろのも のを注入できない場合には、さらさらの栄 養剤を注入する方法があります。 腸が使えない場合には、輸液製剤を点滴 します。 食事があまり進まない時に、手軽に少量で高カロリーが摂れる商品です。 栄養補助食品 ドリンクタイプやスープ、ゼリー、アイスなど様々な種類があります。 ご利用の際は医師や管理栄養士にご相談ください。 セルティ○(オクノス) R スープタイプで甘いものが苦手な方や味覚障害の時にもおすすめ。 においが気になる時は冷やして飲んでも good♪ メイバランス mini○(明治) R 1ml で 1.5kcal と少量で高カロリーが摂れる。味のバリエーション が豊富。ドラッグストアでも購入できます。 20 お口のケアの必要性 ☆お口の粘膜が治療の影響を受けやすい理由 お口の粘膜(下図の全体)は血管がとても多く、細胞の代謝サイクルも早いため、化学療法における 薬あるいは放射線治療の影響を受けやすい場所となります。 ☆治療によるお口の中の不快症状 ◆ 上唇 粘膜炎:お口の粘膜への放射線の直接的影響、 あるいは血管を通しての薬の影響 歯肉 →粘膜のびらんや潰瘍(口内炎) ◆ 硬口蓋 乾燥:唾液腺(だ液を作る組織)への影響 →だ液の分泌低下によるお口の乾燥、自浄作用の低下 軟口蓋 頬粘膜 ◆ 頬粘膜 感染症:骨髄抑制や自浄作用の低下による 感染が発症し易い状態 舌 →歯周病の悪化、むし歯の進行やカンジダ症・ヘルペス などの日和見(ひよりみ)感染発症 ◆ 歯肉 下唇 歯ぐきの出血:骨髄抑制による血小板減少や歯周病の悪化 →歯ぐきからの自然出血 ◆ 味覚障害:舌などの細胞への影響や口腔乾燥 →味感覚の喪失・変化 ◆ 知覚過敏:感覚をつかさどる神経の障害 →歯や歯ぐきの知覚過敏 ☆お口のケアの意義 いろいろな影響を受けやすいお口の粘膜ですが、より良いお口の環境は、さまざまな症状を抑えたり、 和らげたり、お口の感染症の予防につながります。 ☆より良いお口の環境とは? むし歯の治療 歯みがきの習慣 お口の中の保湿 必要に応じて治療前からの 歯みがき習慣の確立・規則正 小まめな水分摂取や保湿・う 歯科治療(むし歯の修復、歯 しい食習慣・フッ素剤などの がい薬の応用などによりお 石除去や専門的口腔清掃)や 利用によりむし歯・歯周病リ 口の乾燥の防止ができてい お口の清掃指導(ブラッシン スクがコントロールされて る グ指導・お口の粘膜清掃指 いる 導)を受けている 21 お口のケアの方法について ☆お口の中を清潔に保つ お口のケアは、起床時、朝食後、昼食後、夕食後または、就寝前に行います。 【お口のケア用品の選び方】 歯ブラシ ◆ 『歯ブラシ』は、年齢や症状に応じて、ヘッド部 シングルタフトブラシ が小さく、加工されていないストレートの毛先で、 粘膜ブラシ 「ふつう」~「やわらかめ」のナイロン製のもの スポンジブラシ が良いです。 ◆ 普通の歯ブラシが届きにくい奥の歯や裏側の清掃、 保湿剤 吐き気があったり、お口が開きにくい場合には、 『シングルタフトブラシ(一本磨き用の歯ブラシ)』 スプレー容器 歯ぐきやお口の粘膜、舌を優しく少ない刺激で清 掃するには、 『粘膜ブラシ』がお勧めです。 【磨き方】 ◆ 歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目に当てて、優しい力で、細かく 動かして磨きます。 ◆ 粘膜ブラシは、奥から手前にぬぐうようにして使います(図1) 。 【歯みがき剤】 ◆ 特に使用する必要はありませんが、使用する場合には刺激の少ないものを少量使用します。 【痛みがある時の対応】 (図1) ◆ 歯みがき剤は使わずに、「やわらかめ」の歯ブラシを使い、 毛先が歯ぐきや粘膜に当たらないように磨きます。 ◆ 痛みが強い時は、歯みがきを中断し、 「ブクブクうがい」をします。 ☆お口の中を保湿する 保湿は、毎食後、食間、就寝前、概ね 2 時間ごとに行います。 治療開始前(口腔粘膜炎の発症前)から、治療後まで継続します。 【粘膜ブラシの使い方】 1.うがい薬または水に浸けて絞る。 2.ほおの内側→歯ぐき→上あご→ 舌の清掃、保湿。 【方法】 (図2) ◆ こまめに水分補給する。 ◆ うがい薬を使う方法。 *ブクブクうがいをする。 *粘膜ブラシで、お口の粘膜や舌に塗る(図1)。 *スプレー容器に入れ、お口の中にスプレーする。 (図 2) ◆ 保湿剤を使う方法。 *指や粘膜ブラシで、お口の粘膜や舌に塗り広げる。 22 【スプレーする方法】 舌と左右のほおの内側に噴霧。 どんなうがい薬があるの? お口のケアに使われるうがい薬にはいろいろな種類があります。保湿、鎮痛、消毒など、目的 によって使い分けたり、組み合わせたりすることもあります。 ここでは、目的別にうがい薬の一例をご紹介します。 保湿を目的 アズノール・グリセリンの含嗽液 お口の乾燥をふせぎ、炎症を抑えたり、創傷治癒促進作用もあります。 造血幹細胞移植や大量化学療法の際に使われることがあります。 成分:アズレンスルホン酸ナトリウム、グリセリン 特徴:甘味がある、保湿効果がある、殺菌作用はない。 鎮痛を目的 キシロカイン®の入った含嗽液 飲み込み時や食事の際の口内痛があるときに使います。 成分:リドカイン塩酸塩 特徴:表面麻酔薬のリドカインが痛みを和らげます。 消毒を目的 ネオステリン®グリーンうがい液 0.2% お口の中の消毒や抜歯後の感染を予防します。 成分:ベンゼトニウム塩化物 特徴:陽イオン界面活性剤の力で細菌やカビをやっつけます。 刺激は少ない。 イソジン®ガーグル液 7% 強い消毒作用があります。 風邪をひいたときなどに良く処方されます。 成分:ポピドンヨード 特徴:エタノールを含むため口腔内が乾燥しやすくなります。 口内炎がある時は使用を避けましょう。 23 こどもの発達に合わせた生活におけるヒント ~乳児・幼児編~ 乳児期には少しずつ食べ物に親しみながら、噛んだり飲み込んだりすることを体験しています。 感染のことが気になるかもしれませんが、この時期手づかみで食べることはとても大切なことです。 食べる前に手をきれいにして、こどもが食べ物に触れるのを大切にしていきましょう。 幼児期には食べる意欲を大切にしながら食体験を広げることが大切です。 嫌いなものが出てきやすい時期でもあるので、こどもが関心をもてるような工夫や環境(人・場所など) は大事です。 「食べることが元気になる」と、こどもが楽しみながら食事できるとよいと思います。 治療中のいろいろな副作用のために、思い通りにいかないこともあるかもしれませんが、病院で行って いる以下のような工夫もたくさんあります。 こどもの状況に合わせて一緒に考えていきましょう。 ● ベッド上でなく他のこどもたちと一緒にたべることや、食堂で音楽をかけて楽しい雰囲気をつくっ たり、こどもの好きな食器を使うなどの工夫をすることで食事がすすむことがあります。 ● 病院食について栄養士とも相談しながら検討します。 ● 状況に応じて食事の内容そのものを変更するだけでなく、刻みにするなど形態をかえたり、また、 ふりかけ、のりなど少し足すだけで食事が進むこともあります。 ● 持ち込み食についてもこどもの状態や栄養の偏りなどからアドバイスすることができます。 これってできるのかな? と思った時には、ぜひ気軽にお声をかけてください。 ☆この時期のこどものお口のケアについて 歯磨きの習慣も食事と同じようにこどもの関心をひいたり環境を整えることが大切です。 それでも治療中、イヤイヤなことは多いかもしれません。 また、歯が生えてくる段階やうがいができない時期などもあり、どのようにしてケアしてよいか分からない こともあるかもしれません。 治療状況に合わせてお口のケアの方法を歯科衛生士らとも一緒に考えていきます。 24 ~学童編~ 学童期はだんだんと生活習慣が形成、確立される時期ですが、入院や治療の影響で、それが思うようにい かないこともあるかもしれません。しかし、この時期は学習体験を通して、例えば栄養バランスや、歯磨き の習慣など望ましい健康行動について理解したり、よいことについて頑張って取り組みたいと思うことが多 い時期だといわれています。そして、それに取り組めることがこどもの自信につながったり、また頑張れる 力になったりします。 学童期には、こども自身が自分で決めて行うことがとても大切です。 それを支えるために、いろいろな影響でやりたくてもできないこどもの気持ちがあることも理解しながら、 時には見守ったり、時には手伝ったりしながら一緒に考えていきましょう。 学童期は食習慣が確立する時期なので、栄養面に配慮された病院食を中心にとることが望ましいのですが、 味覚の変化や長い入院でそれが難しいこともあります。食事がとれなくなり栄養状態が悪くなることは、体 重や筋肉量、活動量などが減るだけでなく、治療効果にも影響があるといわれています。 こどもが不安を感じやすくなることもあるかもしません。こどもの食べられない理由を理解しながら栄養 状態が保てるような食事内容の変更や持ち込み食について配慮することができます。 ☆食べることとお口の状態はとても関係があります 治療開始前には予測されるお口のトラブルについてこどもに説明や指導をおこないます。 望ましいお口の状況を保つための歯磨きやうがい、またお口の中の観察が自分で行えるように支援をしてい ます。必要時には歯科衛生士から指導も受けられます。 それでも口内炎ができたりすることもありますが、早めに対処することが大切です。 消炎作用や鎮痛作用のあるうがい薬を使ったり、痛みどめの薬を使ったりすることもあります。 そのような時にも、こども自身がどうしたいか、痛みを少なくするためにできることを 一緒に考えるのは大切です。 25 Q&A コーナー ~よく聞かれる質問より~ Q:治療の影響で食事がすすみません。体重も減って、体力も落ちてい るように思います。無理やりにでも食べさせた方が良いのでしょうか? A:治療中は正常細胞への影響も大きく、普段よりもエネルギーを必要とすることもあります。 しかし栄養や体力面だけにこだわりすぎると、食べることが義務感になってしまい、こどもがか えって食べることを苦痛に感じてしまうこともあります。こどもがどうして食べられないのかに ついてこどもの意見も聞くようにしましょう(こどもは、それを親や看護師などに伝えましょう) 。 少しでも気分が良い時に、食べられるものを食べる、という姿勢を大事にしましょう。少しで もお口から食べ続けることは大切です。 Q:抗がん剤の影響で吐き気があるようです。食事はどうすれば良いのでしょうか? A:治療や子どもの特徴により吐き気や嘔吐のパターンがある場合もあります。タイミングをみ ながら食事を摂ることが大切です。吐き気止めについて看護師に相談するのもよいでしょう。 食べられる時には少量ずつ、数回に分けて食べたり、胃腸への負担が少ない食品を選びましょ う。また治療前の食事は軽めに摂ることをお勧めします。そして治療によっては胃腸の動きに影 響があるため、直後に固形物をとるのは控えた方がよいこともあります。 Q:治療の影響で、何を食べても味が同じで、前と味が違う様子があります。このような時 にできる工夫がありますか? A:味覚変化も人により様々です。どのような味の変化があるのか確認しましょう。それに合わ せて酸味や香辛料で味にアクセントをつけることもできます。塩分をとりすぎることは心配です が、少し塩味をつけたり、うまみやこくを効かせることもよいといわれています。 また、症状を抑える工夫として、口腔内の乾燥を防ぐために、飴をなめて唾液の分泌を促した り、うがいをするなどもお勧めです。 Q:ステロイドの影響ですごく食欲が増しています。体重も増えているし、顔も丸くなって きました。このままだと肥満になってしまうのではないでしょうか? A:お薬の影響で食欲が増している時に、無理に食事を制限するとこどものストレスが高まって しまうことも考えられます。しかし、ずっと食べ続けるのも心配です。また塩気の強いものや油 ものを好む傾向もありますが、この量が多いのも心配です。味つけの工夫をしたり、低カロリー で満足の得られる食品、例えば持ち込みのお菓子もノンフライのものなど考慮してみましょう。 生活のバランスも大切ですので、ベッド上だけにとどまることがないように促しましょう。 顔の丸さや食欲は、お薬がなくなれば次第に落ち着いてきますが、一時的でも食事につい てできる工夫を考えていきましょう。 26 Q:こどもが同じものばかり好んで食べています。 このままだと治療が終わったあとも、偏りのある食事になりませんか? A:吐き気や気分不快がある時には、食べられる時に好みのものを摂ることもお勧めしますが、 症状が軽くなってきた時期にも極端な偏りが続くのは心配です。理解ができるお子さんでしたら、 こどもが自分で考えて食べ物を選べるように栄養のバランスなど食育について考えるのもよいで しょう。小さいお子さんであれば、食事や環境の工夫を取り入れながらこどもが食べられる方法 を一緒に探していきましょう。 味覚の変化などで同じものばかりを好むこともあるかもしれません。食べやすいからと麺類や パン類などが多くなることもあります。このような時期にはチーズや豆腐などタンパク質の補充 が良いとも言われています。食欲不振が続いたり、栄養の偏りが気になる時には、栄養補助食品 の使用が良い場合もあります。気軽に看護師や栄養士にご相談下さい。 食事の極端な偏りが治療の後ずっと続く、ということはあまり見受けられませんが、入院中か ら食事の工夫について考えていくことは大切です。 Q:持ち込み食はいつでも持ってきていいのですか?またどんなものがいいのでしょうか? A:できるだけ病院食を食べるのが望ましいのですが、治療の影響で難しい時にはやむを得ない と考え許可する場合もあります。しかし、治療や状態により異なりますので、医師や看護師に確 認していただくようにお願いします。また、持ってくる物にも制限がある場合がありますので、 ご注意ください。 あまり一度にたくさんにならない様、あくまでも補助的なものになることをお勧めします。また 自宅で調理したものである場合、衛生環境に気を付けて必ず火を通して調理すること、調理後 2 時間以内で再加熱(電子レンジ)ができるものをお願いします。 Q:食事について困った時には誰に相談すればいいの? A:治療の影響や入院の影響でこどもは「食べられない」や「食べたくない」ことを体験してい ます。誰でも、話せる医療者に気軽に相談してください。誰にしてよいか分からない時には、看 護師にお伝えください。院内の栄養サポートチーム(NST)には、小児がんのこどもの栄養に関 することに取り組むグループもあります。みんなで状況を共有しながら、こどもが少しでもおい しく、楽しく食べられる、を目指して連携しています。 27 こどもたちの運動療法 こどもの運動療法の目的や内容は、年齢や状態に応じて多岐にわたります。 運動面、知的面、情緒や社会性など様々な面の成長が向上するように、一人 ひとりにあわせて関わります。治療中で制限がある中でも、できるだけ様々 な経験ができるように心がけ、心とからだの活気を維持することが大切です。 体調にあわせて散歩をしたり、座ったままゴムボールや風船でキャッチボールをして 遊んだり、体力や筋力が保てるように適度にからだを動かします。 からだを動かしたくない時は、枕やクッション、タオルなどを使って姿勢を工夫します。 ゆったり過ごしたり、絵本やビデオ、手先を使った遊びなどを、らくに楽しめるようにします。 また、事情が許せば、時々外気にあたりましょう。適度な日光はビタミン D を活性化して筋肉、 骨をはじめ全身を丈夫にする働きがあります。 少しずつでも、からだを起こしている時間を増やすことは大切です。 からだを起こしているだけで呼吸が少し深くなり、活気も高まります。 からだを動かすことで食欲が出て、栄養が取りやすくなることも期待できます。 逆に栄養があまり取れずに体力が低下している時は、無理をしないように気をつける必要があり ます。こどもたちに自分から動いてみようという気持ちになってもらえるように、環境や関わりを 配慮することが大切です。 緩和ケアサポートチーム こども医療センターには緩和ケアサポートチームがあり、栄養サポートチーム とも協力して活動しています。医師、看護師、保健師、医療ソーシャルワーカー、 薬剤師、臨床心理士、ファシリティドッグ(ベイリー) 、ハンドラーがチームメンバーです。 お子さんやご家族にとってのからだのつらい症状や、気持ちのつらさを和らげるお手伝いをし ます。また安全に苦痛なく検査・処置を受けていただけるように麻酔の提供をしています。 どうぞお気軽にご相談ください。 お問い合わせ先:こども医療センター緩和ケア普及室 045-711-2351(代)内線 5984 治療が終了したら退院です。 退院後は少しずつ元の生活に戻っていきますが、栄養のこと、食事の ことで不安や疑問などがある時は、外来通院でも対応できますので 栄養サポートチーム(NST)にお気軽にご相談ください。 28 おわりに わが子が「がんです」、と言われたら、目の前の景色がこれまでとは全く別の世界に見えてしま います。なんとか助かってほしい、助けたいと思う親の気持ちに寄り添いながら、私たち栄養サポ ートチーム(NST)も、力を合わせて、力を尽くして、がんとの取り組みの一翼を 担いたいと思います。この冊子はその第一歩ともいえるものです。情報提供、 情報収集、臨床研究も行っていきますので、ご協力お願いいたします。 いつでもお声をかけてくださいね。 アレルギー科医師 NST 座長 高増哲也 執筆者 管理栄養士 :和田碧(P1,12-16,19-20) 血液再生医療科 :後藤裕明(P1,4,10-11) 田口美礼(P17-19, 似顔絵) 浜之上聡(P4-5) 横須賀とも子(P8-9,11) アレルギー科 :高増哲也(P3,20,29) 歯科 :佐々木康成(P21) 麻酔科 :三輪高明(P28) 看護師 :竹之内直子(P24-27) 鈴木恵美(P26-27) 坂上みなみ(P24) 鈴木真由子(P25) 臨床検査技師 :原田法彰(P9) 歯科衛生士 :橋本富美(P22) 薬剤師 :甲斐維子(P1,6-7,23) 理学療法士 :廣田とも子(P28) その他、多くのスタッフ、ご家族にご協力いただきましたことに感謝いたします。 発行 神奈川県立こども医療センター 2015 年 3 月 NST 「小児がん栄養プロジェクトチーム」 第 1 版発行 ご意見・ご感想・アイディア・ご不明な点は 29 担当 薬剤科 甲斐宛て(内線 3108) 30
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