(1) 平成 26 年(2014 年) 11 月 13 日 5 3URGXFW,QIRUPDWLRQ 3D ビジュアルファンクション トレイナー ་⒪ᶵჾᒆฟ␒ྕ㸸13B1X00049SQ0001 第 3 巻発刊によせて 3D Visual Function Trainer(3DVFT)-ORTe の冊子「3DVFT2」第3号をお手にしていただきあ りがとうございます。 2013 年 7 月に 3DVFT-ORTe が発表されて1年余りが経ちました。新しい多目的視機能検査・訓練シ ステムとして静かながらも着実に認知され,臨床現場で使用され始めております。3DVFT-ORTe の利 点は①小スペースでの多項目の視機能検査・訓練,②高い検査効率,③再現性のある視能訓練です。 1) 3DVFT-ORTe の特徴及び利点をご理解いただければ,患者様及び医療者に優しい視機能検査・ 訓練装置とお考えいただけると思います。 3DVFT-ORTe の視機能検査法は一部の機能を除き,従来法を踏襲した方法となっています。しかしながら検査距離や両 眼分離法の違いにより,従来検査機器と検査結果に違いにズレ生じる場合があり,従来機器との検査互換性について疑問 を持たれることが想定されます。また 3DVFT-ORTe に導入される視能訓練については初めてのデジタル式多目的視能訓練装 置であり,実際の具体的な訓練計画について疑問を持たれることと思います。 今回は 3DVFT-ORTe の検査機能の一つである「両眼開放視力検査」 ,3DVFT-ORTe とシノプトフォアなど「従来検査機器と の検査結果の一致性」 , 「3DVFT-ORTe を用いた弱視,斜視訓練の実際」 ,及び「家庭用タブレット型弱視・斜視訓練装置 Occlu-pad®」について掲載いたします。 日本発の視機能検査訓練システムである 3D Visual Function Trainer-ORTe が先生方のご診療のお役に立てることを願って おります。 北里大学 : 半田 知也 (2) 1.両眼開放視力検査 両眼開放視力検査はクロストークを自覚しない専用フルハイ ビジョン 3D モニタ及び円偏光眼鏡により、両眼開放下で片眼 のみに視力視標を提示する機能により実現した両眼開放下で片 眼視力検査を行う両眼開放視力検査法です。 (図 1) 視力は通常,自然瞳孔で測定することが原則とされ,散瞳薬な ど点眼後はピンホール装用にて測定されます。2)日常の眼科臨 図1 両眼開放視力検査法 床における視力検査において,遮眼子で非測定眼を遮閉して視 力測定されます。しかしながら,この片眼遮閉が瞳孔径の散大 を起こし,日常瞳孔を保つことが難しくなることはあまり意識されていません。 (図 2) この散大効果には個人差があるが,約 3 割程度の瞳孔散大が認められます。3)自覚的視力・屈折検査結果において瞳孔径 の寄与は大きく,瞳孔径の散大による焦点深度の低下,収差の増大により,自覚屈折度数の増大,即ち過矯正の恐れが懸念さ れます。当院での 3D Visual Function Trainer-ORTe を用い た臨床結果によると、片眼遮閉下での自覚屈折値は両眼開放 図2 片眼遮閉,両眼開放における瞳孔径変化 下での自覚屈折値に比べて平均 0.25D(最大で 1.0D)の過矯 正が認められたことが報告されています。4) 3D Visual Function Trainer-ORTe の両眼開放視力検査は, 屈折矯正(眼鏡・コンタクトレンズ処方)時において日常視下(両 眼開放下)の視力を評価できる臨床的に有用な検査機能です。 加えて,両眼視力は良いが,片眼遮閉下の片眼視力結果の悪 い潜伏性眼振や,心因性視力障害の患者を対象とした視力検 査としても有用です。 2.3D Visual Function Trainer-ORTe と従来検査機器の検査結果の一致性 3DVFT-ORTe は複数の検査・訓練機能を有しているため,検査項目によっては従来の検査法と検査距離が異なる場合があり ます。そのため、注視距離によって値が変化する眼位検査結果に違いが認められる場合もあり,検査設定距離による影響を考 慮する必要があります。特に考慮すべきは 3DVFT-ORTe の検査機能 VFT-HESS と従来の HESS チャートプロジェクタ,VFT同時視及び融像とシノプトフォア(クレメントクラーク社)の同時視,融像検査結果の互換性です。 3DVFT-HESS の検査距離は正面を中心として± 30° の測定の場合 25㎝(± 15° 検査のみの場合は 50㎝で測定可能)ですが, 従来の HESS チャートプロジェクタ((株)はんだや)の検査距離は 1.4m です。共同性内斜視や外斜視の患者においては調 節・輻湊の状態によって眼位異常が増減することがあり,検査結果に差異が認められることがあります。例えば遠見眼位より近 見眼位において眼位ズレが増大する輻湊不全型の間欠性外斜視症例や非屈折性調節性内斜視症例などにおいては注意が必要 です。しかしながら,3DVFT-HESS の主な検査対象である非共同性(麻痺性)斜視の検査評価おいては従来の検査法と高い 互換性を有していると考えます。 3DVFT- 同時視及び融像の検査距離は 50㎝、シノプトフォア (クレメントクラーク社)の同時視,融像検査距離は光学的遠見 (接 眼部に+ 6.5D の凸レンズが組み込まれている)です。特に検査距離の違いによる影響について注目すべきは融像検査において です。シノプトフォア(クレメントクラーク社)を用いた融像(幅)検査の正常値は開散側 4°∼ 6°,輻湊側 20°∼ 25°とされて います。5)実際に健常青年 25 名を対象にシノプトフォア(クレメントクラーク社)を用いて融像(幅)検査を実施した結果,開 (3) 散側 7.0 ± 1.7° ,輻湊側 47 ± 12.8°でした。同様に 3DVFT- 融像(幅)検査を実施した結果,開散側 10.2 ± 3.3° ,輻湊側 38.9 ± 11.7 でした。検査結果の互換性として注目すべきは 3DVFT- 融像(幅)検査における開散側の融像幅が広く,輻湊側の 融像幅が狭いことです。この違いは融像幅測定の基準位置(Base 位置)が検査距離 50㎝であることに起因します。開散方向 の融像幅を測定する際,検査距離 50㎝に輻湊した状態であるため,視線を無限遠(輻湊,開散なし)に戻すまでの輻湊運動 量も開散側の融像幅として含まれるためと考えられます。 一方,輻湊方向の融像幅を測定において,測定基準位置が検査距離 50㎝の輻湊した位置から測定されるため輻湊側の融像 幅が従来検査器より狭く計測される傾向を示したと考えられます。3DVFT の融像幅の正常値は開散側 10° ,輻湊側 20°以上と して設定できると考えられます。 3.3D Visual Function Trainer-ORTe を用いた 弱視・斜視訓練の実際 図3 3DVFT-ORTe の Catch-game を用いた弱視訓練 3DVFT-ORTe には多目的な視機能検査だけでなく,視能訓 練機能を有しており,弱視訓練,抑制除去訓練,融像訓練, 立体視訓練という項目が導入されています。過去に四半世紀 前には様々な視機能訓練装置が発表されていましたが,現在 3DVFT-ORTe が本邦で視能訓練装置として市販されている唯 一の装置です。 3DVFT-ORTe の弱視訓練法は Catch-game と Touch-Game の二種類が初期導入されており,片眼遮閉を行うことなく両眼 開放下で弱視眼を作動させる新しい弱視訓練法です。3DVFTORTe の Catch-game は両眼開放下で患眼のみにターゲット (ア リ,カブトムシ,蝶)を提示し,マウスによってアリを捕まえて, 虫かごに入れるゲーム感覚の訓練法です。 アリ以外の周辺映像(草,岩,虫かご,及びディスプレイ枠) は健眼,患眼ともに提示することで周辺融像を促し,両眼視を 促しやすい設計です。訓練中に患者は等速度で動くアリを捕捉 するために滑動性追従運動を安定して行う必要があり,アリを マウスで捕まえるためには眼と手の協調運動による訓練効果を 得られます。 図4 3DVFT-ORTe の Catch-game を用いた間欠性外斜視の視能訓練 3DVFT-ORTe の Catch-game を用いた実際の弱視訓練は, 完全屈折矯正の後,対象となる小児の集中力を考慮し,通院 毎に 1 日 9 分(1 回 3 分× 3 回)以上行うように設定します。 通院頻度は多いほど,訓練時間が長いほど効果的であることは 言うまでもなく,幼稚園,保育園または小学校の帰りに毎日訓 練を行うことが理想です。しかしながら両眼視下で弱視眼を使 うきっかけを掴むことができれば、数回の訓練でも弱視眼の視 力向上を得られる可能性があります。6) (図3)また弱視訓練法 である Catch-game は間歇性外斜視の視能訓練法として用いる ことで抑制除去訓練及び融像幅増訓練効果が確認されています。7) 8) (図4)。 間歇性外斜視の視能訓練方法は完全屈折矯正の後,通院毎に Catch-game 1 日 9 分(1 回 3 分× 3 回)以上行うことで外 斜位を維持,持続しやすくなる効果が認められます。訓練対象となる間欠性外斜視の斜視角は 25 ∼ 30 ⊿程度以下であること が適応条件と考えます。 (4) 平成 26 年(2014 年) 11 月 13 日 4.家庭用タブレット型弱視・斜視訓練装置「Occlu-pad®」の紹介 3DVFT-ORTe の両眼開放下弱視訓練は家庭訓練としても行うことが理想です。我々は JST 復興促進事業(マッチング促進) 研究成果最適展開支援プログラム ハイリスク挑戦タイプ(復興促進型)課題名「タブレット端末への特殊剥離加工による小 児・子供向け視能訓練装置の開発」の助成を受け,液晶パネルの変更フィルムのみ剥離除去するホワイトスクリーン技術を応用 したタブレット型視機能訓練装置 Occlu-pad® を研究開発しました6)9)。ホワイトスクリーンは、裸眼では真っ白な画面しか見 ることができず、偏光フィルムを通した部分からのみ、映像を 見ることができます(図5) 。 不同視弱視症例に対する Occlu-pad® による弱視訓練は, 非常に良好な成績を得ています。訓練結果の代表例を示す (図6)。訓練方法は完全屈折矯正の後,家庭で 1 日 1 時間 Occlu-pad® による Catch-game(飽きてしまった場合は Web 及びゲーム)を行うように設定します。実際に訓練を行った 時間はタブレット内に保存され,実際に行った訓練時間を評 価・管理することができます。脳機能計測装置を用いて他覚 的効果検証したところ,Occlu-pad® の Catch-game 実施時に は片眼遮閉に比べ両眼開放により後頭葉視覚野の反応が顕 著となり,さらに画面タッチありの場合,より高い後頭葉視 覚野の反応が認められました。Occlu-pad® の Catch-game は後頭葉視覚野を効果的に刺激できる可能性が示唆されてい ます。9) (図7) 図5. タブレット型視機能訓練装置 Occlu-pad® 図 6. タブレット型視機能訓練装置 Occlu-pad® を用いた不同視弱視訓練 現在,Occlu-pad® 使用時にはタブレット画面をタッチしな がら訓練を行いますが,タッチがし難い低年齢の小児でも行 えるような触れるブロック型インターフェース(画面内の情報 を画面上においた積木様ブロック端末で操作する)を開発し, より効果的な訓練法として発展できる可能性があります。家庭 訓練の Occlu-pad® と病院通院時の 3DVFT-ORTe と合わせる ことでより従来の弱視訓練法である片眼遮閉法に代わり得る 弱視訓練法として発展できる可能性が期待されます。 参考 1)半田知也:3D 映像技術を用いた視機能検査訓練の新たなパラダイム -3DVisual Function 図7.Occlu-pad® の Catch-game 時の後頭葉視覚野の脳血流動態変化 ・使用機器:fNIRS 計測装置 LABNIRS((株)島津製作所) ・レスト (画面中央に十字)とタスク (各条件での Catch-game)の後頭葉視覚 野の脳血流動態変化 Trainer-ORTe-.ITE Technical Report.37:23-26,2013. 2)所 敬:屈折異常とその矯正改訂第4版.p43,金原出版,東京,2004. 3)Kawamorita T, et al. Natural pupil size and ocular aberration under binocular and monocular condition. J Comput Sci Sys Biol. 7: 15-19, 2014. 4)小橋英長 , 他:両眼開放下と片眼遮閉下における自覚及び他覚屈折度数の検討.第 67 回 JSCRS 学会,福岡,2014. 5)岡 真由美:両眼視機能検査.小口芳久、澤 充、大月 洋、湯澤美都子(編):眼科検 査法ハンドブック第4版.p111,医学書院,東京,2009. 6)半田知也:3D 映像注視時の視覚反応(シンポジウム7 3D 立体映像と斜視弱視).第 118 回日本眼科学会総会.東京,2014. 7)戸塚和子,他:新しい視能訓練装置を併用した間欠性外斜視に対する視能訓練効果 . 臨 床眼科 .68:213-217,2014. 8)半田知也:3D 映像の現状と視機能検査・訓練応用(シンポジウム 3D 映像が視機能に 与える影響と安全性対策).第 52 回日本視能矯正学会,横浜,2011. 9)半田知也:両眼開放下の視力・屈折検査及び視能訓練法(シンポジウム2 根拠に基づく視力・屈折検査) .第 50 回日本眼光学学会.金沢,2014. 発行者 ジャパンフォーカス株式会社 本社/〒 113-0033 東京都文京区本郷 4-37-18 IROHA-JFC ビル TEL : 03 (3815) 2611 FAX : 03 (3815) 7284 E-mail : [email protected] 大阪/〒 541-0053 大阪市中央区本町 4-6-7 本町スクウェアビル TEL : 06 (6262) 1099 FAX : 06 (6262) 1137 E-mail : [email protected] http://www.japanfocus.co.jp 40+11
© Copyright 2024 ExpyDoc