低炭素型車両に着目した都市交通政策の有効性についての研究

平成 27 年度研究プロジェクト計画概要
研究種別
■共同研究 5
主査名
秋山孝正 ・ 関西大学環境都市工学部 教授
研究テーマ
低炭素型車両に着目した都市交通政策の有効性についての研究
研究概要:
近年、低炭素型車両としてハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、超小型モビリティ(ULV)などの普及が顕著である。本研究
では低炭素社会での多様な車両普及に対応した都市交通政策の方向性を検討する。
まず超小型モビリティ(車両)を用いて、現実道路上の走行状態を把握するため実態調査を行う。ULV にセンサーを搭載し、加
減速・転回挙動などの走行性能、空間占有状態、環境性能などの実証的観測を行う。すなわち、現実道路での ULV の走行実態
の観測から、道路混雑・環境負荷に与えるインパクトを推計する。さらに、従来研究の成果である EV 混在時の道路交通現象分析
に加えて、ULV 混在時の道路交通変化が解析できる。これより、ULV 普及に伴う道路交通環境変化の推計が可能となる【ULV の
道路走行性能計測と評価】。
つぎに環境経済的政策による地方都市圏の道路交通に関して、二酸化炭素排出量削減効果の推計を検討する。ここでは、持
続可能な交通手段転換と低炭素型車両(PHV・EV・ULV)への更新に関して、既存研究で構築してきた意思決定モデルを統合し
て、マルチエージェント型交通シミュレーションを構築する。さらに、道路交通での渋滞緩和の影響を把握のためにネットワーク交
通流シミュレーションと連動させて、各種の都市交通政策シナリオを比較検討する。【低炭素型車両に対する都市交通政策評価
のモデル分析】。
さらに道路交通の低炭素化に加えて、多様なモード間の交通機関分担を考慮した都市交通政策として、歩行者・自転車・公共
交通機関の運用に着目した環境影響評価を行う。すなわち、低炭素社会における各交通機関の適正分担を考える。特に、自転
車・自動車・ULV は代替的関係にあると考えられ、意識調査結果を踏まえて交通機関推計モデルを構築する。これより、低炭素
車両含む各交通機関の妥当な利用水準を提案する【低炭素社会での適正交通機関分担の検討】。
最終的に PHV・EV・ULV を中心とした低炭素型車両の普及は、スマートハウスの発電・蓄電・受電の一体化から、環境負荷に
加えてエネルギー消費の変化を与える。そこで、既存の空間的地域経済モデル(SCGE)を拡張して、低炭素型車両に関する都
市交通政策評価を試みる。このとき、スマートハウスのエネルギー消費と炭素型車両の導入によるライフスタイルの変化を定量化
する【低炭素型車両導入に関する都市活動への影響評価】。
研究の方法:
本プロジェクトでは、概要に示すようにサブテーマが設定されており、研究グループを構成する。各サブテーマの課題に中心的
に取り組む研究分担者を整理する。
①
【ULV の道路走行性能計測と評価】(秋山・井ノ口・岸野・奥嶋)
②
【低炭素型車両に対する都市交通政策評価のモデル分析】(奥嶋・井ノ口・兒山・小谷)
③
【低炭素社会での適正交通機関分担の検討】(宇都宮・小川・松澤・山田浩)
④
【低炭素型車両導入に関する都市活動への影響評価】(武藤・秋山・鈴木・小澤)
各サブテーマに対応する研究グループメンバーは、個別に研究推進を行うとともに、定期的に研究討議を実行して、情報交換
を行う。また全研究メンバーは、随時開催される研究会において大学関係者については、学術的な視点からの意見を、実務者メ
ンバーについては、現実的視点からの意見を交換することで、研究プロジェクト全体の実用的な研究推進を目指す。
さらに、大都市圏の都市交通政策に関して、関西地区の都市交通研究グループとの研究協力を行う。最終的に、各サブテー
マに関する研究成果を総合的に取りまとめることによって、道路交通のスマート化に着目した、総合的な都市交通政策の具体的
内容を提示する。
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