平成26年発生災害の概要及び災害復旧事業採択について 国土交通省水管理・国土保全局防災課 畠 山 愼 一 総括災害査定官 目 次 Ⅰ.平成26年災害と被害の特徴 Ⅱ.公共土木施設災害復旧事業の概要 Ⅲ.災害申請の基本知識 Ⅳ.査定時に議論となりやすい点 平成26年発生災害の概要及び 災害復旧事業採択について 国土交通省 水管理・国土保全局防災課 総括災害査定官 畠山 愼一 Ⅰ.平成26年災害と被害の特徴 平成26年に発生した主な災害は、水害(床上浸水10棟以上)21の地域、土砂災害(死者が 発生したもの)7の地域、地震(最大震度5弱以上)9件、関東地方を中心とした2月、四国地 方等の12月の大雪や9月の御嶽山の噴火。(H26.12時点) 5弱 【台風11号経路】 5弱 【台風19号経路】 長野県 北部 【台風18号経路】 5弱 京都府 福知山市 【台風12号経路】 山形県 南陽市 ① 広島県 広島市 5弱 6弱 【台風8号経路】 5弱 5弱 ① 5弱 5強 【凡例】 ・水害・・・床上浸水10棟以上 ・土砂災害・・・死者発生 が発生した地域 御嶽山 噴火 長野県 南木曽町 高知県 5弱 地震(震度) 火山噴火 台風経路 平成26年7月台風8号 長野県南木曽町の土砂災害 ○長野県南木曽町では時間雨量76mm ※ の豪雨により土砂災害が発生。 (死者1名、家屋被害13棟) 7月9日 被害の概要(南木曽町) 死者数 住家 被害 1名 全壊 10棟 一部損壊 3棟 なしざわ 梨子沢 土石流による流路工の損壊(梨子沢) 土石流の流出範囲 JR中央本線 至:長野市 国道19号 至:名古屋市 南木曽町役場 木曽川 土石流の流出範囲 土石流により橋台損傷(梨子沢橋) 平成26年7月 山形県南陽市の浸水被害 ○昨年に引き続き、今年も時間雨量 52mm ※の豪雨により最上川水系吉野川等が氾濫し、南陽市 街地で約2,350戸の浸水被害が発生。 7月9日~ 10日 被害の概要 (最上川水系吉野川) 床上浸水 161戸 床下浸水 2,196戸 一般被害の概要 (最上川水系吉野川) 床上浸水 167戸 床下浸水 2,182戸 浸水面積 836ha 山形県南陽市 道路欠壊 (米沢南陽白鷹線) 橋梁損傷(四ッ谷橋 南陽市漆山) 鉄橋橋第背面洗掘(織機川 南陽市漆山) 河岸欠壊(吉野川 南陽市宮内) 平成26年8月 四国南部の浸水被害 ○平成26年8月に高知県で総雨量1,000mm以上※を観測する雨をもたらした台風12号・11号により 各地で水害が発生。 ※香美市 繁藤観測所(台風12号:1,360mm以上)、馬路村 魚梁瀬観測所(台風11号:1,080mm以上) 被害の概要 水系 (仁淀川水系 日下川、宇治川) 名称 日付 H26台風12号 8月1~4日 H26台風11号 8月9~10日 床上浸水 251戸 27戸 床下浸水 164戸 76戸 宇治川の氾濫(高知県いの町) 県道坂瀬吉野線欠壊 (高知県長岡郡本山町坂本) 県道高知安芸自転車道線欠壊(高知県安芸市穴内) 国道493号法面崩壊 (高知県安芸郡北川村平鍋) 平成26年8月 京都府福知山市の浸水被害 ○昨年に引き続き、今年も時間雨量62mm ※により、由良川水系弘法川等が氾濫し、福知山市街 地で約4,400棟の浸水被害が発生。 (H16, H25, H26と、この10年間で3回の浸水被害) ※福知山観測所 国道9号 福知山市篠尾地内 府道私市大江線 福知山市私市地内 国道175号 福知山市森垣地内 福知山市奥榎原地内 法川橋(市道荒木神社堀線) 平成26年8月豪雨 広島市の土砂災害 ○平成26年8月に広島県広島市で時間雨量101mm ※の豪雨によ り、166件の土砂災害が発生。(土石流107件、がけ崩れ59件) ○死者74名、負傷者44名。 み いりみなみ 三入南2丁目 死者1名 みいり ※:三入観測所 か べ ちょう か 可部東地区 や ぎ 八木8丁目 死者2名 や げ ぎ 八木4丁目 死者9名 や と 可部町桐原 死者1名 べ ひがし か べ ひがし 可部東6丁目 死者3名 ぎ 八木3丁目 死者41名 か べ ひがし 可部東2丁目 死者1名 市道安佐北3区82号線 (安佐北区可部東地区) や ぎ 八木地区 みどり い 緑井8丁目 死者4名 みどり い 緑井7丁目 死者10名 やま もと 普通河川新建川 (安佐北区可部東地区) 山本8丁目 死者2名 凡例 土石流 がけ崩れ ※電子国土WEBデータ(国土地理院)を基盤図として作成 平成26年11月長野県北部地震 ○長野県北部、深さ5kmを震源とするマグニチュード6.7の地震が発生。 長野県長野市、小谷村、小川村で最大震度6弱を観測。 ○長野県長野市など計12件の土砂災害や、長野県内の補助国道等で路面亀裂による通行止めが 発生。 家屋被害497棟(H26.11.25時点) 被害の概要 住家 被害 全壊 31棟 半壊 57棟 一部損壊 409棟 JR大糸線 土砂流入 (白馬大池駅~千国駅間) 県道114号(通行止め) 小谷村役場 迂回路(県道433号) 国道148号(通行止め) JR大糸線 土砂流入状況 白馬村役場 長野県庁 国道148号 土砂崩落状況 長野市役所 小川村役場 国道406号(通行止め) 姫川水系姫川 (護岸崩壊約2.5km(左右岸)) (主)白馬美麻線 (通行止め) 国道406号 路面亀裂状況 ※道路は上記の他に新潟県上越市道、長野県白馬村道・小谷村道でも通行止めの報告有り ※鉄道はJR大糸線の信濃大町駅~平岩駅間で運転休止中 すそ ばな 信濃川水系裾花川(土砂崩落) 平成26年の公共土木施設被災状況 平成26年は、全国47すべての都道府県において、公共土木施設災害が発生。自治体が管理 する公共土木施設において、9,003箇所、被害額は1,679億円(H26.12.26時点)。 これは、過去4年間(H21~H25 東日本大震災が発生したH23は除く)の平均並の規模。 累積被害報告額の推移 (億円) 30,000 港湾 海岸 下水道 3% 2% 25,000 平成21年災害 20,000 (参考)平成16年災害 11,165億円 ● 平成22年災害 3% 公園 3% 砂防 4% 平成23年災害 3,000 15,000 平成24年災害 2,000 10,000 道路 34% 橋梁 2% その他 1% 河川 48% 平成25年災害 4カ年平均 (H21,H22,H24,H25) 平成26年災害 1,000 5,000 工種別被害報告額の割合(H26) 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)のべ4,225人・日を32都道府県、122市町村に派遣。 山形県、長野県、広島市からの要請により災害復旧技術専門家を派遣(全国防災協会) 「普段からの備え」、「臨機の対応」 委託パイロット単独飛行ヘリ (国交省)の映像 写真右の「両石海嘯記念碑」 に刻まれた漢文の一部翻訳 (岩手県釜石市) この碑はいつか無くなる。 しかし、この恨みを忘れてはいけない。 たとえ( この碑が) 雨に洗われ、 苔に蝕され、文字が摩滅しようとも、 明治二十九年六月十五日の 津波被害を昔からの言い伝えとして 子孫に伝えよ・ ・ ・ 太田名部地区防潮堤(岩手県譜代村) Ⅱ.公共土木施設災害復旧事業の概要 根拠法令 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年3月31日法律第97号) 目 的 自然災害により被災した公共土木施設を迅速に復旧することで、公共の福祉を確保 特 徴 ① 様々な公共土木施設が対象 (河川、海岸、砂防設備、林地荒廃防止施設、地すべり防止施設、急傾斜地崩壊防止施設、道路、港湾、漁港、下水道、公園) ② 高率な国庫負担 ③ 迅速で確実な予算措置 ・事業費確定のための災害査定は、地方公共団体の準備が整い次第速やかに実施 ・災害査定等により災害復旧に必要な費用を過不足なく確実に措置 ④ 迅速な工事着手 ・災害復旧工事は、国の災害査定を待たず、発災直後から実施可能 ⑤ 原形復旧だけでなく適切な施設形状で復旧 ⑥ 県単位で一括し予算交付 ・災害復旧事業費は、予算費目ごと(河川等=河川、海岸、砂防等、道路、 下水道/都市=公園等)に災害年ごとに県単位で一括して交付 ・災害復旧事業として採択された同一予算費目の工事であれば、工種、箇所にか かわらず市町村も含め県内で自由に活用可能 災害復旧事業の定義 ○ 災害復旧事業は、被災箇所を原形に復旧することを目的としている。 ○ ただし、原形復旧とは、単なる元どおりだけではなく、従前の効用を復旧するこ とができる。 ○ さらに、原形復旧が困難な場合や不適当な場合には、形状、材質、構造を改良 する等、従前と異なる施設形状で復旧することができる。 -参考- 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和二十六年三月三十一日法律第九十七号) (抜粋) (定義) 第二条 2 この法律において「災害復旧事業」とは、災害に因つて必要を生じた事業で、災害にかかつた施設 を原形に復旧する(原形に復旧することが不可能な場合において当該施設の従前の効用を復旧す るための施設をすることを含む。以下同じ。)ことを目的とするものをいう。 3 災害に因つて必要を生じた事業で、災害にかかつた施設を原形に復旧することが著しく困難又は 不適当な場合においてこれに代るべき必要な施設をすることを目的とするものは、この法律の適用 については、災害復旧事業とみなす。 原形と異なる施設形状での復旧 ①広域の地盤沈下、極端な河床の洗掘等により、地形地盤が大 きく変動したため、原形での復旧が不可能な場合 → 地盤の沈下量や河床の洗掘深を考慮した上で、同位置で護 岸法長を増加して、従前の効用(防災機能など)を復旧 ②大規模な山腹崩落等により、地形が大きく変動したため、原 位置での原形復旧が困難な場合 → 道路のルートを変更し、トンネルで、被災した施設に変わる べき施設を復旧 ③木橋が全橋被災し、原形での復旧が不適当である場合 → 現在の設計基準に合わせ、コンクリート橋で復旧 ④洪水等が堤防を越える「越水被害」が発生し、背後地の集落 地、主要交通幹線路が浸水する等、原形での復旧が不適当 である場合 →当該災害を与えた洪水等を対象として堤防を嵩上げして復旧 被災前 被 災 洪水で木橋が流出 復 旧 コンクリート橋で復旧 事業の採択要件 (「負担法」での必要3条件) 1.異常な天然現象により生じた災害である 1)河川 ①警戒水位以上の水位 ②河岸高の5割程度以上の水位(警戒水位未定部)・・・・護岸高ではないので注意 ③長時間にわたる融雪出水等 2)河川以外の施設災害 ①最大24時間雨量80mm以上の降雨 ②時間雨量が20mm以上の降雨 3)10分間平均風速の最大値が15m以上の風・・・・最大瞬間風速ではないので注意 4)高潮、波浪、津波による軽微でない災害 5)地震、地すべり、落雷等による災害 6)積雪が過去10ヶ年間の最大積雪深の平均値を超え、かつ1m以上の雪による災害 事業の採択要件 (「負担法」での必要3条件) 2.地方公共団体又はその機関が維持管理している公共土木施設の被災である 3.地方公共団体又はその機関が施行するものである ただし、負担法の適用除外(法第6条)に該当しないものであること 管理施設であっても・・・ 2.5% 民地法面の 崩壊は負担 法対象外? U300 民 地 法面は 公共土木 施設? 山側の法尻側溝に土砂堆積していたため、 維持管理不良(法6条の5)で欠格 (参考)H26災害復旧に係る主な運用改変 査定、変更協議の効率化 採択要件の明確化 ○査定設計と実施(発注用)設計の乖離縮小 ★単価、数値基準を実施設計に整合 ★処分費、事業損失防止費を計上可 (ただし、限度額判定の際は対象外) ・工事分割発注の必要性は事前相談可 ○新規追加 ★下水道を追加 ○既施設とのすりつけ工(雑工) ★必要に応じて、影響範囲の既設ブロック 積の取り壊し、再設置を可。 ○兼用施設(護岸等)の申請主体 ★効用の大きな施設で申請 →要件を満たせば、いずれでもよい。 ○カゴ護岸の根入れ ★必要に応じて0.5~1.5m可 ○原形復旧不適当の活用 ★護岸上部の土羽被災に対する法覆い工 設置例を表示 ○崩土内の不可視部分(調査不能な場合) ・査定計上せず、被災事実確認後に設計 変更。(H26.5.15事務連絡) ○査定前着工(事後査定)の奨励 ★契約済み箇所は実施設計を査定 ○概略図面での査定拡大と概略工事発注の奨励 ・総合単価の上限撤廃【H26.6.27通達】 ○写真、机上査定 ★写真撮影(全景、縦横断)の省力化徹底 →省力化対応していない申請は不受理 ★ビデオ(生中継、録画)や3D画像の活用可 ○その他 ★単費合冊は重変手続き不要(明確化) ・2ヶ月査定:引き続き状況に応じて柔軟対応 ・査定は週連続4日上限制(8月中旬~12月) 美山河改定 ○チェックリスト(A表) ★設計書作成時点等各段階で提示 ★査定官によるクロスチェック 注)★はH26災害手帳の記載事項 Ⅲ.災害申請の基本知識 ① 1箇所工事の定義について ②査定前着工について ③査定用写真の撮影方法について ④応急工事について ⑤兼用工作物の申請について ⑥原形復旧のとらえ方(護岸高を例として) ①1箇所工事の定義 1. 管理者(県・市等)別、工種(河川、道路等)別、災害別に区分した上で、直線距離で 100m以内のものをまとめて1箇所とする強制規定。 2. ただし、災害が異なっていても、前災と分離できない場合は、前災(未施工分)を内 未成、内転属として含め1箇所で申請。 3. 1箇所の事業費(内未成、内転属、応急仮工事費、処分費等を除く)が限度額120 万円(都道府県・指定都市)、60万円(市町村)以上の場合は採択。 (問題)県道で以下のようなH26被災(ただしBはAの増破)があった場合、 どのように申請すべきか? 300万円 25災 A 200万円 26災 B 500万円 100m以内 26災 C 100万円 100m以内 26災 D ①A+Bを1箇所、C+Dを1箇所として2箇所申請 ②A+B+C+Dを1箇所で申請 ③A+B+Cを1箇所で申請(Dは限度額以下で申請不可) (参考)被災拡大時の対処方法 ②査定前着工について ~査定が終わるまで工事着工できないのは誤解~ (アナウンサー) ・・・しかし一方で○市や○○町など 他の被災地では今も主な工事が始 まっていません。なぜここまで時間 がかかるのか。背景には国などで 進めていた災害査定の作業が工事 に影響していることがあります。 災害査定は補助金の交付額を決 めるために被害にあった場所を調 査してその規模を確認します。災害 査定が行われている間は工事を始 めることができません。そのうえ査 定には多くの時間を必要とします。 ・・・略・・・ 豪雨災害から半年、国や地元自治 体による迅速な対応と、住民への 極め細かい説明が求められます。 災害復旧事業の主な流れ ○ 災害査定を待たず、被災直後から応急工事が可能(応急工事も災害復旧事業の対象)。 ○ 地方公共団体の意向を踏まえ、災害緊急調査、事前打合せを実施し、早期復旧を支援。 ○ 災害査定は、地方公共団体の準備ができ次第、全国から査定官を派遣して速やかに実施。 大規模な災害が発生した場合など 災害発生 災害報告 災害終息後10日以内 *1 現地調査・設計図書作成 国庫負担申請 申請を受けて速やかに実施 災害査定(工事費決定) 国庫負担金の交付 事業費の精算 通常、被災後2ヶ月以内 ( 応急工事も含む) 県等からの申し入れがあった場合 工事実施 事前打合せ 災害復旧工事は、国の災害査定を待たず、 被災直後から実施可能 *2 ・災害緊急調査(本省査定官) ・災害復旧技術専門家派遣制度 成功認定(完了検査) *1 災害終息後10日以内に概算被害額を報告。訂正を要する場合は1ヶ月以内に訂正報告。所定の期間内に報告できない場合は、防災課に連絡し別途指示を受ける。 *2 査定前に着工する箇所については、写真が被災の事実を示す唯一の手段のものとなるので、被災状況等ができる限りわかる写真を撮影しておく。 ③査定用写真撮影~ポール縦横断写真の改善(H25.8) 多人数を配置した非効率な作業。高所・水中等では危険が伴う作業 リボンテープ、 作業員を省略 現 状 L=13.0m 終点(NO.○) NO.○ 3.0m 起点(NO.○) NO.○ 5.0m 5.0m ※ 改訂(案)のポール、木杭等 はイラスト表示であり、実際 には実物を設置すること。 杭間距離表示の例 スケール貼付の例 測点ポール 改訂(案) 註1) 起終点の確認、距離判別のため、可能な限り正面から撮影のこと 註2) 被災の全景、範囲等が良く分かるように周辺を合わせて撮影のこと 註3) 写真の歪みなどにより、起終点付近の距離判別しにくい場合には水平ポール 等を設置して、延長の判別が可能なように工夫のこと ④応急工事について 1. 応急工事とは「現地調査(査定)時において竣工又は着工している工事」であり、次の 2種類に分類。 2. 応急仮工事とは復旧までの間に暫定的に必要な代替施設設置や現施設の補強等を 実施する工事で原則管理者負担。ただし「仮道、仮橋、仮さん道、仮締切り、決壊防止 等」に限定して必要最小限の範囲は国庫負担。 3. 応急本工事とは、復旧工事の全部又は一部となる工事(復旧工事を施工するために 必要となる仮設を含む)であり、採択要件を満たせば国庫負担。 4. 応急工事の積算は全て未着工と仮定して積算。特に大型土嚢を実設置個数計上して いる積算間違いが多いので留意のこと。(ただし、1箇所工事の全部を査定時に契約 済みの場合は実施設計書(土嚢も実設置個数)で査定) (問題)国庫負担対象となる道路の応急仮工事に該当するものはどれか? (複数選択可) ① ② ③ ④ 現道の交通確保のための道路上の崩土除去 交通安全のために現道に設置した仮設防護柵 迂回路の幅員が狭いため実施した幅員拡幅 法面崩壊拡大防止のために設置した大型土嚢 ⑤兼用工作物について 兼用工作物(道路・河川等双方が国交省所管)の場合には、効用が大きい施設側 で一括した申請が可能 道路 道路 D.H.W.L D.H.W.L L.W.L この場合は道路の効用が大 河川 河川 L.W.L この場合、破堤の恐れがあるので 河川の効用大 (問題)左図の場合(道路で申請)に応急仮工事として実施した決壊防止のため の大型土嚢積は負担法の対象となるか? (問題)左図のような堀込河道で背後に道路及び民地がある場合(地盤線が水 平な場合)効用の大きいのは河川、道路のどちらか? ⑥原形復旧のとらえ方~護岸高を例として~ 連続性を欠く復旧、施設バランスの欠如 支障事例 (H19全国知事会資料より抜粋) 復旧護岸高(被災水位<既設護岸高の場合) 復旧護岸高(被災水位<既設護岸高の場合) あなたならどう申請しますか? 地盤高①の場合 D.H.W.L>既設護岸高 復旧護岸高は? 既設高?DHWL? 地盤高②の場合 ・地盤高①の場合:背後地の被災状況と当該区間の河川特性により○○工を追加可 ・地盤高②の場合:背後地資産と施設被災状況により、○○や○○工を追加可 復旧護岸高(被災水位>既設護岸高の場合) ・既設護岸以上の土羽が側方洗掘されたことにより、背後民地まで被災が発生してい る場合等は、既設護岸高まで原形復旧しても被災原因の除去ができない。 ・水衝部などの河川特性を把握したうえで、土羽では対応出来ないのであれば、法面 保護工を追加又は被災水位までの護岸を申請。(原形復旧不適当条項の適用) 負担法逐条解説:既設土羽部分を栗石などに材料を変更(要綱3-【二】-イに該当) (災害手帳「工種別の特殊な採択基準」の頁を参照) Ⅳ.査定時に議論となりやすい点 ① 国庫負担の対象となる応急工事の範囲 ② 復旧工法の重複(二重対策) ③ 被災程度の問題 ④ 工法選定の妥当性 ⑤ 河川環境の保全 ① 国庫負担の対象となる応急工事の範囲 被災直後 被災直後 カゴマット護岸 DHWL 応急仮工事 ブロック張護岸 応急仮工事 幅員?、決壊防止の高さ?、材料? 本復旧 ② 復旧工法が重複している場合 いわゆる二重対策 では? 擁壁とロックネット 根継と根固 ロックネットと ストンガード ・目的が重複していないことの説明が必要 (根固めの例:水衝部や著しい局所洗掘を受けた箇所において、根入れのみ 確保し根固めを申請しない例が多い。河川特性、被災状況等により周辺と同 等な根入れを確保した上で根固で洗掘緩和をすることが必要。) 法枠工と落石防止柵が「二重対策」では? 法枠工 落石防止柵 二重対策 不安定土塊・浮石 法枠工 落石防止柵 目的や経済性 から二重対策 とはならない ③ 被災程度の問題 1. 天然河岸の欠壊で、背後に人家、公共施設等が存在しない。 河床堆積が河積の3割未満。(他に高さ1m未満の小堤、幅員 2m未満の道路等) 2. 地山の崩壊を伴わない法面処理工のみの被災。道路山側法 面の崩壊で、交通への支障が小さく、崩土の除去のみをすれ ば供用が可能。( 他に路面のみ、側溝のみ、凍上災の歩道 のみ等) 3. 土羽護岸の被災で法面整形程度で機能復旧可能。 (ただし、護岸復旧の間に短距離 の中抜け(土羽)区間ができると 弱点となることに注意) 被災程度の問題 1. 天然河岸 維持上、公益上特に 必要か?(①~⑤に該 当するか) 山 林 天然河岸 ① ② ③ ④ ⑤ 人家、公共施設、田畑等が流失した場合 橋梁、床止工、井せき等の機能が喪失した場合 隣接の堤防もしくは護岸が損傷した場合 河道が著しく変化して、他に被害を及ぼした場合 これらの恐れが大きい場合 適用除外(法第6条) 天然河岸 欠格(天然河岸) 被災程度の問題2 地山の崩壊を伴わない法面処理工の被災 法面処理工 のみの 災害 欠格 (問題)同一箇所内に、地山の崩壊を伴う法面被災工区と地山の崩壊を伴わない法面 被災工区の双方が混在する場合に負担法の対象範囲はどこまでか? 被災程度の問題3 被災状況 道路山側からの土砂流出→①崩土 除去、②法止めフトンカゴ、③集水桝 を申請 路面、排水管に支障なし 斜面は現状で安定 ①は限度額以上あれば採択可 ②、③は施設被災ないので不可 路面等に影響なし 被災程度の判断を誤ると再度被災 被害少としてカットに合意した区間を含めて再度被災 ④ 工法選定の妥当性 1. 被災原因が除去されていないため、再度災害のおそれが大き い場合(原形復旧不適当 条項の活用が不十分など) 2. 河川護岸の死に体判断が不適当、根入長や河床安定対策(帯 工など)の検討が不十分な場合 3. 道路の切土のり面対策で経済比較なしに画一的に法枠工が選 定されている場合及び盛 土法面の排水対策の検討がなされて いない場合 4. 大型ブロック工設計に関する誤解 5. 用地を十分に活用していない場合 6. 仮設費、用地補償費が多額の場合 7. 地すべり対策において抑止工のみの内容となっているもの及び 施工中の安全度を確保 していないもの ④1 被災原因除去~何故再度被災を受けたのか? 護岸天端保護工をカットした箇所の未満災 被災原因除去~経済性だけで判断すると・・・ 被災橋梁の復旧をボックスカルバート 工で申請・採択。河床変動による再度 被災のリスク大。 ④2 死に体の判断を誤ると・・・ 工事施工中に被災した事例 「護岸積み換え+根固め工」申請を「根継工」に変更した結果、床堀実施中に被災 床堀 査定後の小出水で増破した事例 L=37.0m 根継工の事故 根継工型枠(裏型枠)解体のため、根継擁壁の背面にて作業をしていたところ、突 然既存のブロック基礎が崩れ落ちた。 型枠解体作業をしていた作業員は、崩れ落ちてきたブロック基礎と根継工との間 に挟まれ死亡。また既設ブロック張上でシートの撤去をしていた作業員は、崩れ落 ちたブロック基礎を根継工との間に足を挟まれ骨折。 工事着手直前(石積がずり落ち) ・死に体に根継ぎはNG。→原則積み換え ・死に体ではない護岸基礎の露出対策は根固めを優先。<根継ぎは最終手段> 「死に体」の判断は適切に 沈下・滑動 ③陥没 ②裏込流出・緩み ①基礎部洗掘・支持力低下 判断のポイント ●基礎下部の土砂が緩んで地盤支持力が失われていないか ●裏込め材の流出や緩みにより、背後の水圧・土圧を減ずることができるか ●支持力の低下や偏圧作用により、構造物が沈下、滑動又は破壊していないか 施設機能が確保されているか? 工事が安全に施工できるか? ○急流河川の特徴 ・流速が速い ・ほとんどが射流 ・掃流力が大きい ・河床変動が大きい ・水面形が乱れる ・場合に因って水面波 (ウエブ)が発生 出水中の状況 護岸沿い を流水が走っており、洪水 中の洗掘が伺われる。 洪水後の護岸の状況 (基礎部は浮いていない) 平成21年 災害復旧申請数(河川) 約6,000件※ 1.5m 2.9% 1/500~ 1.5m~ 7.0% 1m 11.7% 0.5m 9.2% 0m 33.3% 最大洗掘深の分布 0.4m 5.5% 0.3m 10.7% 0.2m 13.0% ~1/10 1/10~ 1/30 1/100~ 1/500 0.1m 9.6% ①最大洗掘深 勾配別分布 1/50~ 1/100 1/30~ 1/50 ②河床勾配 ・0mが約1/3 調査不足又は計算チェック不足? ・0.2m以下で約6割近くに上り、0.5m以下で約8割 ・1mを越えるのは1割程度 ・1/50より急勾配が概ね半数 ・急流河川が多い 全体的に洗掘深の適切な評価がなされているのかが疑問 ※ 平成21年申請数(河川)約6,000件に対し、収集したB表データ数は約28,000件 根入れ~最大洗掘深の把握が不適当 ○局所洗掘の場合 洗掘により既設護岸が崩壊 平均河床 被災後河床 ×:実績最大洗掘深(横断図より) ○:実績最大洗掘深(既設護岸の根入れ以上) ○全体的な河床洗掘の場合 従来の1mでは根入れ不足→根入長見直し又は根固追加 洗掘により既設護岸が崩壊 洗掘前の河床痕跡 ○:実績最大洗掘深(洪水前河床痕跡より) 被災後河床 平均河床 ×:実績最大洗掘深(横断図より) ④4 道路法面対策のポイント のり面災害 約8割 ( 山側 約3割) ( 谷側 約5割) 山側斜面の災害 谷側のり面の災害 ① のり面の安定勾配の確保 ・土工による復旧を基本とする ・安定勾配確保が難しいときに構造物を設置 ② 水処理(表流水、地下水等) ・被災原因の除去の上から極めて重要 ・微地形や現地状況に合わせた計画 ③ のり面の劣化(浸食)防止 ・雨水や風化による劣化、浸食の防止 適用基準 切土工・斜面安定工指針 盛土工指針 排水工指針 落石対策便覧 ④4 法枠工が不可欠?~吹付法枠 ⇒ 擁壁+植生 豪雨により、法面が飽和し、 地山法面が崩壊 ●申請: ・法面を安定させるため、吹付 法枠を申請(吹付法枠) 申請額 14,349千円 ●査定: ・隣接施設に合わせて復旧 (擁壁+植生基材) ・査定額 9 ,523千円 S= SL=1:0.5 2.6 0 5 S=1 SL=:0.5 2.6 0 5 19000 0.50 5100 S= SL=1:0.5 5.5 9 5100 2.00 0.50 S=1 SL= :0.45 5.2 5 法枠:湧水?凹凸(長期安定不 安)?急勾配?被災特性? S=1 SL= :0.5 9.2 0 20600 20600 吹 付 25 法枠 20 0 植生基材吹付工 ④4 法面排水対策 H25災・実査 豪雨により、大量 の路面水が流下 し、路側のり面が 被災 ●申請: ・路肩および法面保護が必要 ・L=8.0m Co張ブロック ・申請額 1,923千円 ●査定: ・路面水の流下浸食対策として張りブロック 保護ではなく、集水路と縦排水に変更 ・法面保護は土羽盛土に変更 ・査定額 1,044千円 ブロック張 ⇒縦排水路 ④5 通常のブロック積擁壁について • 主としてのり面の保護に用いられ、背面の地山が締まっている 切土、比較的良質の裏込め土で十分な締固めがされている盛土 など土圧が小さい場合に適用される。また重要な場所への適用 には注意をする。 「道路土工 擁壁工指針」 直高(m) のり面 勾配 ~1.5 1.5~3.0 3.0~5.0 5.0~7.0 盛 土 1:0,3 1:0.4 1:0.5 ー 切 土 1:0,3 1:0.3 1:0.4 1:0.5 5 10 15 20 裏込めコンクリート厚(cm) 河川護岸の裏込めコンクリートの考え方 構造形式 練積 裏込め コンクリート あり 裏込め コンクリート なし ※河川用護岸 ④5 大型ブロック積擁壁設計に関する誤解 直高5mを超えると、とたんに控長が2~3mの異様な大型ブロック積が出現。土圧が 小さいにも係わらず画一的に安定計算(もたれ式擁壁)を実施していることが原因。 →経験に基づく設計法を適用すれば控長1m程度で対応可。 直 高 土圧小 土圧大 7m(5m)以下 7m(5m)超~8m以下 8m超 通常のブロック積擁壁 (経験に基づく設計法) 大型ブロック積擁壁 (経験に基づく設計法 +支持力照査) 安定計算などの 詳細設計が必要 大型ブロック積擁壁及び他形式の擁壁(比較設計により形式を選定) 注)直高の閾値は切土:7m、(盛土:5m) 土圧小の場合とは・・・・・背後の埋め戻し土質と嵩上げ盛土の形状(盛土勾配1割5分で 高さ4m以下又は盛土勾配2割以下)がポイント ④5 用地を活用した工法へ見直し 豪雨により、大量 の路面水が流下 し、路側のり面が 被災 官民境界 ●申請: ・路肩および法面保護が必要 ・L=4m Coブロック積 ・申請額 1,493千円 申請 ●査定: ・用地境界まで幅がある ・用地活用しブロック高を抑える ・査定額 420千円<600千円 失格 査定 民地 ⑤ 河川環境と経済性 被災前の環境保全(復旧)が可能な工法を選定 1. 災害復旧事業で、河川環境を犠牲にしてきた。(土羽7割→コン クリート護岸7割、河床が平らな水路化) 2. 被災前の河川環境機能も「従前機能(原形)」の範疇。 3. 管理者として環境保全・整備の方針を議論し確立しておくことが 重要。(例えば被災した石積護岸をコンクリートブロックに改変 していくことの是非。守るべき当該河川固有の環境・景観。河川 整備計画や維持管理計画への位置づけと実践など。) 4. 土羽を護岸に変えれば、更新・維持管理費用が増大。また、流 速増により上下流の土羽被災リスク増大。状況により護岸を整 備しないことも視野に入れた選定が必要。 5. 治水と河川環境保全を両立できる工法を選定した上での経済 比較。(治水機能だけを復元する工法は経済比較する意味が ない) 河川環境(美山河A表チェックリスト) 1. 査定官は査定資料で確定している事項にしかチェックを入 れない。又、申請者欄に配慮(チェック)が皆無な場合は申 請内容の再考を求める。 2. 設計から施工完了まで関係者の取り組みを持続・連携・向 上させることが目的。査定が終わればチェックは終わりで はない。 3. 天端コンクリートの処理、水際の土砂・植生、場所打ちコン クリートの明度等は平常時からの議論が重要。 岐阜県高山市 H26.10製作 護岸ブロックの明度計測方法の確立・普及と証明 (全国土木コンクリートブロック協会) 粗面仕上げ+吹きつけによる明度低下例 おわりに 1. 何故被災したか。被災しなかった区間と外力や構造がどう 違うのかを熟考(現状施設の諸元不明は入り口でアウト。 改善するためには・・・) 2. 被災前と同一構造で被災原因が除去できるのか?(原形 復旧不適当、関連事業の活用も視野に入れて) 3. 工法・被災データの蓄積・伝承・活用が重要(標準マニュア ル等にもまさる、査定官を納得させる貴重な武器) ・切土安定勾配、横断暗渠、根入れ、根固め重量など 4. スピード感ある工法決定と工事着手(放置するほど被災拡 大・再度災害のリスク大) 5. 被災地域や首長などへ継続した復旧見込み情報の提供
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