当院における下肢装具選択時の傾向について

当院における下肢装具選択時の傾向について
福多
真奈美 1、須藤 真史 1、山本
齊藤
1 一般財団法人
賢雅 1、奈川 英美 1、中村 学人 1、佐藤
成美 1、岩田
翔 1、
学 1、高見 彰淑 1
黎明郷 弘前脳卒中・リハビリテーションセンター
キーワード;下肢装具・脳卒中片麻痺患者・アンケート
【目的】
脳卒中患者において、
下肢装具は歩行や下肢機能向上、
ADL 向上を目的によく使用される。しかし、当院で実際
に下肢装具を作製する際、指標となる基準値や参考値は
なく、選択に難渋する症例を多く経験する。また、成書
においても装具の機能・適応は書いてあるものの、歩行
周期ごとに対応した適応については見当たらない。そこ
で、脳卒中患者の特徴的な歩容からどんな装具を選択す
るのか、アンケートを実施し当院における選択時の傾向
を調査した。
【対象・方法】
当院の理学療法士 46 名(経験年数 2~24 年)を対象
に無記名によるアンケートを行った。Rancho Los
Amigos Center の歩行周期ごとに片麻痺患者の異常歩
容を分割し、それに対し当院にある主な短下肢装具(金
属支柱付き短下肢装具(シングルクレンザック継手:以
下金属支柱付き AFO)
、Gait Solution Design(以下
GSD)
、後方支柱付き短下肢装具(以下 TAPS-AFO)
、
Shoe Horn Brace(以下 SHB)
、オルトップ AFO)の
中からどの装具を選択するか、
選択する順に優先順位を
つけてもらった。また、それぞれの装具のメリット・デ
メリットについて記載してもらった。
なお、
本研究は
「臨
床研究に関する倫理指針」に従って行った。
【結果】
アンケートの回収率は 35/46 名(76%)だった。
金属支柱付き AFO は立脚期で最も多く選択されてい
た。特に、荷重応答期に踵が接地しない、膝折れすると
いうような制動力が強く求められる場合に選択される傾
向にあった。GSD は初期接地で足底接地となる、足関
節背屈が不十分など、比較的制動力が強くなくても良い
ような場面で選択されていた。また、遊脚期で多く選ば
れていた。
TAPS-AFO は立脚~遊脚期まで一貫して同程度選択
される傾向にあった。SHB は TAPS-AFO ほど多くない
が、立脚期全体で同程度選択されていた。オルトップ
AFO は、順位は低かったが立脚・遊脚期ともに足関節背
屈はあるが不十分な場合で選択されており、特に遊脚期
で選択されることが多かった。全体として、筋緊張が高
いことで起こる異常歩容から順に、金属支柱付き AFO、
TAPS-AFO、GSD、SHB、オルトップ AFO が選択さ
れていた。
【まとめ】
装具を選択する際に、その装具の特徴を理解している
ことはもちろんだが、臨床では実際の歩容からより適し
た装具やその設定を選択することが重要であり難しいと
ころでもある。今回のアンケート結果では、記載しても
らった装具のメリット・デメリットの内容と、実際に歩
容から選んでいる装具とずれがあるものも散見された。
このことから、当院では装具の大まかな特徴は理解して
いるが、実際場面では個人の主観によって選択している
ことが考えられる。今回の調査結果を当院での参考とし
て使用することで、個々のずれを減らすことができるの
ではと考える。
さらに、今回の結果から当院スタッフの多くが疑問に
思っていることを明確にし、新人指導や院内勉強会の際
に重点的に疑問点に対して指導することで、装具を使用
した運動療法への理解をより深めていきたいと考える。
今後は、経験年数ごとの選択の違いや急性期・回復期で
の装具選択の違いがあるかなど検討していきたい。