JICA が取り組むジェンダー平等と女性のエンパワーメント 都市・地域開発

JICA が取り組むジェンダー平等と女性のエンパワーメント
プロジェクト情報
 国名:アフガニスタン
 事業名:カブール首都圏開発計画推進プロジェク
ト(技術協力プロジェクト)
 協力期間:2010 年から 2015 年
 相手国機関名:デサブ新都市開発委員会事務局、
カブール市役所、都市開発省
1.
プロジェクトの概要・背景
1999年に約200万人だったアフガニスタンの首都カブ
ール市の人口は既に500万人を超えており、2025年には
650万人にまで達すると予測されています。人口の急増
にともない、カブール市では、地下水位の低下や水質・
大気・土壌汚染、移住者や国内避難民等の流入・定住、
交通渋滞、衛生環境の悪化等の都市問題が深刻化し、道
路や上水道等の社会基盤施設の整備が重要な課題となっ
ています。このため、カブール市の再開発とともに、現
在のカブール市の北方に隣接するデサブ・バリカブ地域
を新都市として整備し、カブール首都圏の開発を進める
ことが、人口増加への対応や水資源を含む都市環境の悪
化の防止のために必要とされています。
日本は、これらの問題を解決するために、2008年から
2009年にかけて「カブール首都圏開発計画調査」を実施
し、カブール首都圏開発のための総合計画であるマスタ
ープランを策定しました。本プロジェクトでは、このマ
スタープランに基づき、カブール首都圏の都市開発を担
う行政機関の能力強化とカブールの都市環境や居住環境
の改善・整備等を内容とする技術協力を実施しています。
2.
ジェンダー視点から見た都市開発
都市開発には、土地利用計画の策定や都市インフラの
整備(運輸・交通インフラ、上水道・下水道、エネルギ
ー施設・供給システムなど)、スラム地区を含む居住環
境の改善、環境保全(公害対策や廃棄物管理など)、都
市の防災力の強化など、多岐にわたる課題が含まれます。
それらの課題において、男性と女性は異なるニーズを持
ち、異なる役割を果たしています。例えば、多くの社会
で、女性は、水汲みや燃料集め、家庭ごみの処理などを
担っているため、それらの課題に対する基本的なサービ
スやインフラの不足は、男性よりも女性のほうにより影
響を及ぼします。一方、居住環境の改善により女性の家
事労働に費やす時間が軽減されたり、女性が利用しやす
い公共交通機関を整備することにより女性の行動範囲が
広がるなど、女性のニーズに応えることにより、女性に
とって住みやすく、活動しやすいまちづくりを行うこと
ができます。
3. ジェンダー視点に立った取り組み
(1) 女性の意見を活動に反映させる
男女隔離の社会規範が強く、女性が地域の意思決定
都市・地域開発
に参加することが難しいアフガニスタンにおいて、
女性の意見を聴き、その意見を活動に反映させるこ
とは容易なことではありません。しかし、本プロジ
ェクトでは、アフガニスタンの行政機関や村の有力
者、長老と話し合いを重ね、女性のプロジェクト活
動参加への理解を得るとともに、地域の男性に対し
ても、女性参加の必要性を説明し、理解を得てきま
した。その上で、コミュニティで行われたニーズ調
査で男女別に意見を聴くことにより、女性のニーズ
を反映した次のような活動につながりました。
(2) 周辺地域の女性を対象とした活動
新たに開発される新都市の地域内に住む住民は開発
の恩恵を受けることができますが、新都市の地域外
の住民にはその恩恵が届かないことから、本プロジ
ェクトでは、新都市の周辺地域の村落を対象に、さ
まざまな活動を実施しました。女性を主な対象にし
た活動も実施され、小規模養鶏や家庭菜園、縫製な
どの生計向上事業への支援では、それらの活動を通
して世帯の所得が向上し、家庭内での女性の地位の
向上にもつながりました。また、識字教室では、女
性の識字能力が向上しただけでなく、村落内の女性
たちの相互理解が深まりました。
(3) 女性委員会による女性のための活動支援
JICAはプロジェクトの一環として、国連人間居住計
画(ハビタット)と連携し、カブール市が主体とな
って、コミュニティレベルの活動である「カブール
市連帯プログラム」を実施しています。このプログ
ラムでは、日本の町内会のような自治組織「近隣地
区開発委員会」をコミュニティで立ち上げ、住民が
話し合いをしながら実施する活動を決めていきます。
しかし、アフガニスタンでは男女が同席して話し合
いをすることは難しく、女性がコミュニティでの意
思決定や活動に参加するためには女性の組織が必要
です。そこで、このプログラムでは、女性委員会の
立ち上げを支援し、それら委員会によって、女性を
対象とした識字教室や縫製教室、コミュニティ・ク
リニック、法律などを学ぶ学習会の運営、ごみ減量
(3R)活動、公園整備を含む緑化活動などが行われ
ています。また、
女性委員会が継
続して活動でき
るように、会計
や資材の調達方
法についてのセ
ミナーも実施さ
れました。
都市は、男性、女性、子どもなどすべての人にとって
安心で安全なまちであることが望まれます。コミュニテ
ィレベルの活動から政策策定まで、あらゆるレベルにお
いて、女性の意見が反映された都市・地域計画が実践さ
れることが期待されます。
女性の参加を促進し、すべての人に住みやすいまちづくりを支援