特別増大号 冬 WINTER 2015 Vol.10 No.3 通巻39 号 [ランナップ] ●Basic Eye ─インタビュー ● 行ってきました!─ 歯科衛生士編 これからの在宅医療を考える 日本老年歯科医学会 第25回学術大会 横倉 義武 先生[日本医師会 会長] ● 在宅ケアQ&A─ 第3回 ∼地域包括ケア時代のかかりつけ医の役割∼ 聞き手 川越 正平 先生[あおぞら診療所 院長] ●Basic Eye ─インタビュー 髙野 ひろみ さん[高野歯科医院 歯科衛生士] 意欲が無く困った同僚(訪問看護師)との付き合い方 超高齢社会の本質 ● 在宅こぼれ話 ─ 第3回 ●QOLの観点から栄養を考える─第23回 太田 秀樹 先生[医療法人アスムス 理事長] 秋山 弘子 先生[東京大学高齢社会総合研究機構 特任教授] 《座談会》第二部 <司会> 太田 胃瘻の在り方 秀樹 <出席> 長尾 和宏 (五十音順) 東口 髙志 丸山 道生 監修:川越 正平 先生[あおぞら診療所 院長] 先生[医療法人アスムス 理事長] 先生[長尾クリニック 院長] 先生[藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座 教授] 先生[田無病院 院長] ●QOLの観点から栄養を考える─第24回 監修:川越 正平 先生[あおぞら診療所 院長] 終末期患者のためのリクエスト食 池永 昌之 先生[淀川キリスト教病院 ホスピス・こどもホスピス病院 副院長] 大谷 幸子 さん[淀川キリスト教病院 ホスピス・こどもホスピス病院 管理栄養士] 回答者 : 角田 チ ュ ー ジ 直枝 先生[茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター 看護局長] ン グ ワ イ ズ リ ー Choosing wisely ● FORUM 地域での生活を復権させる 在宅リハビリテーション 石垣 泰則 先生[医療法人社団泰平会 理事長/城西神経内科クリニック] ● FORUM チームで取り組む褥瘡対策 ∼彦根市立病院:褥瘡専門外来におけるチーム医療の実際∼ 彦根市立病院褥瘡専門外来 インタビュー これからの在宅医療を考える ∼地域包括ケア時代のかかりつけ医の役割∼ 住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアを展開するには、その サービス提供に携わる各専門職が所属機関や職種を超えて連携していくことが不可欠となります。各 サービスに連続性が求められることから、地域医療を司るかかりつけ医にはその中心として重要な 役割が期待されており、地域連携に医師との連携は欠くことができません。2014年6月に日本医師 会会長に再選された横倉義武先生は、就任にあたり、行政と地域の医師会が連携し、かかりつけ医を 中心とした地域医療の拡充を活動の柱の一つに掲げ、地域包括ケアの推進を図るとする姿勢を明確 に示されました。今号では横倉先生に、地域包括ケアシステムの構築においてかかりつけ医に求めら 横倉 義武 先生 日本医師会 会長 《聞き手》 川越 正平 先生 あおぞら診療所 院長 れる役割や、地域の特性に合わせた在宅医療の在り方、在宅医療に携 わる医師の育成に向けた取り組み、そして今後の展望を伺いました。 地域の特性や実情に合わせて、 在宅医療の在り方も様々 川越 横倉先生は日本医師会会長として非常にお忙しい公 務にあたられる一方、現在も地元の福岡県で院長・理事長を 務めておられるヨコクラ病院で、外来診療だけではなく往診 も行っておられると伺っています。 横倉 私は福岡県南部の農村地域の出身です。終戦直後、 軍医だった父が無医村の土地に診療所を開きましたので、私 はその地域で育ちました。当時、地域住民は病気になっても 左/横倉義武先生、右/川越正平先生。 医者にかかることができない、もしくは医者にかかるために経 済的に大変な苦労をしなければならないという困難な状況で、 れから過疎地域で大きく異なりますね。人口が少なく、医療 それを目の当たりにしてきました。私自身は医学部卒業後、 資源や社会資源が限られた地域の場合は、病院に拠点機能 外科医として研鑽を積んでいましたが、30代後半の1983年に としての役割が期待されます。 地元に戻りました。 横倉 日本医師会の地域医療対策委員会が、地域医師会を 当院は1945年の診療所開設以来、現在では199床の地域 中心とした在宅医療の推進について、特に病診連携の観点 中核病院として機能していますが、現在でも50 ~60人の患者 から検討した報告書が2014年3月にまとめられました。その さんを在宅で診ています。昔も今も、町にはこの1 件しか病院 なかでは、在宅医療の提供体制として、地域の人口密度や医 がありません。当然のことながら外来で診療を行いつつ、往 療機関数、 「都市型」や 「過疎地型」に分けられ、それぞれの 診や訪問診療も行っていました。 「おじいさんが亡くなりそうだ 地域の実情に応じて多様な選択例が提示されています。 からすぐに来てほしい」 と呼ばれ、昼間は開業医の先生にも診 例えば、開業医が一人で実施するケースのほか、開業医が ていただきながら、お亡くなりになるまでお付き合いしたことも チームを組んで行うケース、一つの診療所の複数の医師が実 幾度かあります。最近はできるだけ診療所の先生に往診して 施するケース、それから複数の診療所や中小病院がグループ いただいているので減ってきていますが、診療所から遠い患 を組んで実施するケースもありますし、入院機能を有する有 者さんなど、片道30分程度の地域であれば、私も往診や訪 床診療所や中小病院が在宅医療を担うケースもあります。こ 問診療に出向くこともあります。 のように、地域の特性や実情に合わせて様々な形があって良 川越 地域包括ケアの担い方は、大都市部と地方都市、そ いと思うのです。 2 Vol.10 No.3 さらに、在宅医療とは、自宅だけではなくサービス付き高 教育研修に取り組まれていますね。 齢者向け住宅や介護施設等、高齢者が集まって暮らす場に 横倉 在宅医療は、地域のかかりつけ医が行ってきた“患者 入っていく医療も含めた概念として捉える必要があると報告 を最期まで責任を持って診る” という代表的な診療形態の一 書は指摘しています。 つです。この推進のためにも日本医師会では、各都道府県医 かかりつけ医に求められる役割 〜地域資源を駆使して住民の健康を守る〜 師会および地域医師会での研修会等で使用するテキストを作 成し、2012年からかかりつけ医の研修を始めています。中央 研修では都道府県のリーダーの育成を目指して研修を行い、 川越 高齢多死社会を迎えるにあたり、今後、在宅医療の その参加者にそれぞれの地元で同じテキストを使って研修を ニーズはますます高まるものと予想されます。かかりつけ医と 行っていただき、それぞれの地元に研修内容を広げていただ して地域で活動されている開業医の先生方は、外来診療の くという形で進めています。こうした活動を通じて、日本医師 ほかにも、予防接種や健康診断等の公益活動を担っておられ 会は、地域で核になる在宅医療のリーダーの育成を支援して ます。そして近年は、地域における在宅医療の担い手として いきたいと考えています。 も期待されているわけですが、今後、かかりつけ医にはどの 川越 在宅医療の底上げを図ると同時に裾野を広げていくこ ような役割が求められるとお考えでしょうか。 とが、今後ますます求められるということですね。 横倉 日本医師会では、「なんでも相談できる上、最新の医 療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を 紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う幅 地域医師会が進める診診連携 〜ライバルではなく共に地域を守る仲間〜 広い総合的な診療能力を有する医師」 を 『かかりつけ医』 と定 川越 地域医師会は様々な専門性や特徴を持った医師によっ 義しています。 て構成されていることから、地域における医局としての機能 仰るとおり、かかりつけ医は外来診療のほか、在宅医療、 が期待されています。在宅医療ニーズが今後も増大するなか、 夜間休日診療や地域保健・公衆衛生活動等の様々な活動を 開業医が一人で24時間365日体制でこうしたニーズに応えるこ 地域で行っているわけですが、近年特に力を入れているのが、 とは容易ではありません。医療機関や職種の壁を超えて地域 地域包括ケアや地域医療への取り組みです。高齢化が進む で支援する体制づくりを進めていく必要があるのではないで 地域では、医療と介護の連携を推し進めていますが、今後、 しょうか。診診連携や訪問看護師との連携、複数医師による 急速に進むと予想される東京・大阪・名古屋等の大都市圏で グループ診療等、様々な取り組みが報告されていますが、診 の高齢化に対してどのように取り組むかが 診連携については、うまくいって 大きな課題となっています。日本の半分近 いる地域とそうでない地域がある い人口が集中しているこれらの地域では ようですね。 特に、地域医療を担う開業医が「地域の 横倉 診診連携がうまくいってい 住民の方の健康を我々が守る」という強い る地域は、人と人とのつながりが 気持ちを持つことが重要になってきます。 しっかりできているようです。地 適切な初期対応を行うとともに、必要に応 域医師会の重要な活動の一つが、 じて専門医療機関に紹介したり、行政や 会員同士の交流です。会員の交 他の職種とも連携し、適切な介護につな 流を通して互いの考えや異なる専 げていくといった機能がより重要になってくると思います。 門分野への理解を深めることができ、自分が困ったときには 川越 対応可能な患者数には限りがあるかと思いますが、通 患者さんをお願いできる信頼関係が生まれるなど、会員同士 院が難しくなる外来患者さんも増えていくと思いますので、そ の交流から次第にネットワークがつくられていきます。そういっ ういった患者さんを、かかりつけ医が継続して最期まで在宅 た点からも、地域医師会の役割は非常に重要だと考えていま で診てくだされば、患者さんも安心できますし、意思決定支 す。私の地元医師会では、十数人の会員が毎月1回集まって、 援や食支援等、かかりつけ医だからこそアドバイスができる 情報交換をしながら連携を深めています。こうした連携には ことが数多くあると思います。 信頼関係が不可欠ですから、日ごろから顔の見える関係を築 日本医師会としても、地域の在宅医療に関して力を入れて いておくことは大切です。これまでは、お互いに同業の競争 2015 年 冬号 3 インタビュー これからの在宅医療を考える す。各地域にこのような医師会立病院と同等の機能を果たす ∼地域包括ケア時代のかかりつけ医の役割∼ 地域病院ができると理想的ではないでしょうか。今後はそう いった病診連携がますます重要になってくると思います。 相手だからと、交流を図ることについては躊躇する向きもあり 川越 今から医師会立病院を建てるのは大変なことですが、 ました。しかしこれからは、競争ではなく協調していく姿勢 地域医療の担い手の一翼として、既存病院の機能を拡充して が重要になってくると思います。 いくことは素晴らしいアイデアですね。 川越 同じことが訪問看護ステーションにも当てはまります。 どうしても近くのステーション同士はライバル視することもあるか と思いますが、共に同じ地域の医療を守っている仲間という意 識を持って、連携を進めていくことが大切だということですね。 各地で進む病診連携の取り組み 〜かかりつけ医が病院医療にも関与〜 行政との連携が地域連携の成否を左右 〜それぞれの役割を補完しつつ協働を〜 川越 今後、介護保険においては保険者である市町村が在 宅医療連携拠点機能を所管するとされていますが、医療に関 してはノウハウを持たない市町村も少なくありません。医師会 や医療機関等への委託も想定されていますが、どのようにそ 川越 一方で、かかりつけ医には病院や介護・福祉サービス の機能を構築し、地域のなかでタッグを組んで活動を展開し 等の関係機関との連携を強化する役割も期待されているかと ていくべきでしょうか。2012年度の在宅医療連携拠点事業の 思います。イギリスの場合、どのような人 モデル事業は、47都道府県105カ所 生を歩まれた患者さんなのか、人工呼 で実施されましたが、うまくいかな 吸器や胃瘻造設等の医療処置、延命処 かった地域では、やはり行政との連 置等に対してどのような希望を持ってい 携が機能していなかったようです。 るのかなど、病院医師がかかりつけの家 横倉 行政との連携がうまく機能し 庭医に電話で相談することもあると聞き ないと、地域医療に影響が出るとい ます。日本でも、かかりつけの患者が入 うことは実感しています。やはり地域 院した際には、患者の生活や生き方、 の医療事情をよく知っているのは、地 医療処置に対する希望などをよく知るか 域医師会です。患者さんや家族の状 かりつけ医が病院主治医にそれらの情 況もよく知る立場にあります。一方、行 報を伝えるなど、病院医療に今以上に関 政には各関係機関や住民にアウト 与していく姿勢が求められるようになる リーチするといった別の強い力があり のではないかと思うのですが、この点に ついて、先生の考えをお聞かせください。 ます。今後は今以上に、行政と医師 例えば、医師会立病院や医師会立訪問看護ステーションが れの役割を補完しつつ協働していくことが重要になるでしょう。 ある地域は、地元の開業医をバックアップして補完機能を担っ お互いにいろいろな主張がありますので、基本的に互いに半歩 ている地域もあり、一つのモデルとして参考になるのでしょうか。 譲って、互いを尊重しながら関係をつくり上げていくという意識 横倉 そうですね。我々は医師会立病院を「共同利用施設」 を持つ必要があります。 と表現しており、長い歴史があります。こうした施設がない地 医師会は行政とともに、日ごろから地域の医療・介護につ 域では、地域の基幹病院と開業医がネットワークを組んで、 いて協働できる場をシステムとして構築することが重要です。 「開放型病院」という形で病診連携を図っています。これは医 4 会がお互いを尊重しながら、それぞ 横倉 義武 先生 そのためにも、医師会側から行政や消防機関、保健所等の 療法で定められた制度で、病院医師が主治医、登録開業医 地域の関係機関に働き掛けることが大切だと考えています。 が担当医となり、共に診療にあたるものです。診療所の患者 近年は、住民の健康を守るという観点からも、各地の医師 に入院治療が必要になったときなど、何かあれば病院で引き 会が市民健康大会等の様々な健康活動を地域で展開していま 受けますよという趣旨で、病診連携における重要な制度です。 す。こうした活動は、必然的に行政と一緒に取り組むことにな 当院でも開放型病床を設置して病院の施設や設備を地域の るので、それまで交流がなかった行政と連絡を取り合うように 医師に開放しており、約40名の開業医が登録、利用していま なるといった効果も生まれています。姫路市医師会による姫路 Vol.10 No.3 健康フェスティバルはよく知られていますが、私の地元でも毎 様々な取り組みが展開されており、国民にとっては健康につい 年秋にみやま健康・福祉フェスタを開催しています。講演会や て考える機会が増えるきっかけにもなっているのではないで 各ブースで健診を行うなどして、地域住民の方々に健康への意 しょうか。こうした活動を通して教育的な役割をかかりつけ医 識を高めてもらいつつ、医師会と行政との交流も深めています。 が担う意義は大きいと思うのですが、いかがでしょうか。 地域を包括的に診るかかりつけ医 〜サービス提供体制の整備や教育活動にも従事〜 横倉 がん対策推進基本計画では、取り組むべき施策として、 子どもに対するがん教育の必要性を挙げています。それぞれ の地域には内科や外科等、様々な専門領域でがん治療に携 川越 糖尿病のように生活習慣への介入による行動変容が必 わっている医師がおられるので、医師会に力を発揮していた 要不可欠な病態や、認知症、がん、脳卒中等のように療養生活 だき、地域の先生方には今後、そういったがん教育にもかか を送るなかで医学的助言を必要とする病態等、かかりつけ医が わっていただくことになると思います。こうした教育活動を通し 継続してかかわっているからこそ果たし得る役割は大きいと考 て、正確な知識を子どもたちに伝えていく必要があります。 えられます。2014年の診療報酬改定では地域包括診療料とい う、まさにかかりつけ医を評価する報酬が新設されましたね。 横倉 私は、医療機関の役割を、検査や指導料等に応じて 互いに半歩譲って垣根を低くすることが、 チームをつくり、地域連携を可能にする 算定する 「特掲診療料」 ではなく、 「基本診療料」 で評価してい 川越 最後に、在宅医療を行う上で大切なことは何だとお考 くべきだと考えています。基本的な診察を評価していくことで、 えでしょうか。読者へのメッセージを頂戴できればと思います。 医師や医療関係者の評価を高めていくことが非常に重要だと 横倉 在宅医療を行うには、訪問看護師さんが最も大切な存 思っています。ですから今回、かかりつけ医機能を評価する 在だと思います。訪問看護師さんがしっかり動いてくれること 点数が新設されたことについては、高く評価をしています。 で、初めて医師が動けます。訪問看護師さんがいなければ、 川越 地域包括ケアを担う医療機関を支援する目的で、医療 医師はお手上げ状態で何もできないでしょう。 提供体制改革のための基金が創設 しかし、訪問看護ステーションが整備 されました。この基金ができた背景 されないと、地域のかかりつけ医は24時 や、どのように活用されるのかといっ 間体制が負担となり、在宅医療へのか た展望をお聞かせください。 かわりを躊躇してしまいます。訪問看護 横倉 団塊世代が後期高齢者とな ステーションは、医師の24時間体制の負 る2025年を控え、病床の機能分化 担を大きく軽減してくれます。電話対応 や連携、在宅医療・介護の推進、 だけのステーションには改善を期待しま 医師や看護師等の医療従事者の確 すが、在宅医療を推進していくには、開 保や勤務環境の改善、地域包括ケ 業医だけではなく病院勤務医や歯科医 アシステムの構築といった医療・介 師、看護師、薬剤師、ケアマネジャー、 護サービスの提供体制を整備してい 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、 くことが喫緊の課題です。そこで今 ヘルパー等の多職種や、行政を含めた 回、消費税増税分を財源として、こ 多機関が協働する、地域ぐるみの取り うしたサービス提供体制の改革を 川越 正平 先生 組みが不可欠です。 推進する新しい財政支援制度がつくられることになりました。 ですから、みんなで共に動く、チームで働くという意識を 今後、都道府県ごとに事業計画が作成され、地域包括ケア 持って協働していくことが非常に大切だと思います。自分たち を担う医療機関への支援にも活用が期待されています。 の職種だけでどうにかしようとすると失敗するでしょう。医師 川越 医学部が教育・臨床・研究を担うように、地域医師会 だけでも看護師だけでも駄目なのです。各職種がそれぞれの もまた、臨床活動のほか、医学生の地域医療実習や研修医 独自性だけを主張しているだけでは失敗しますし、まとまりま の地域医療研修の受け入れ、小中学生へのいのちの授業や せん。お互いに言いたいことが言えるように互いに半歩譲って 市民に対する認知症の啓発等、 人材育成や地域の教育を担っ 垣根を低くすることが、地域にチームワークを生み出し、地域 ています。先ほどお話にあった市民健康大会のように各地で 医療をつくり上げていける重要な要素になると考えています。 2015 年 冬号 5 インタビュー 超高齢社会の本質 65歳以上の高齢者は2012年に3,000万人を突破し、2013年には3,186万人、総人口に占め る割合は25.0%となりました。総人口が減少する一方で高齢者の急増により高齢化率は上昇を続け ると予想されており、とりわけ1947∼49年生まれのいわゆる「団塊の世代」が2015年には65歳 以上に、2025年には75歳以上になることから、「2025年問題」として注目されています。かつて 秋山 弘子 先生 東京大学高齢社会総合研究機構 特任教授 どの国も経験したことのない超高齢社会を迎えるにあたり、高齢 者ケアを取り巻く制度や環境、そして人生観や価値観もまた大き な変化を経験すると予想されます。来る超高齢社会の実像や、医 療、介護、生活を支える社会インフラの整備、人生90年時代に求 められる生と死に対する意識の在り方等について、秋山弘子先生 にお伺いしました。 5人に1人が75歳以上の後期高齢者に 〜自立した高齢者が都市部で急増〜 ―― 社会の高齢化をめぐり 「2025年問題」 が注目されて いますが、2025年以降、どのような問題が懸念されている のでしょうか。 現在、日本では4人に1人が65歳以上の高齢者で、総 人口の25.0%を占めています。その割合は今後ますます 高まると予想されており、日本は超高齢社会のフロントラ ンナーとして世界から注目されています。今後は特にアジア 討した東京都老人総合研究所 (現 東京都健康長寿医療 で急速に高齢化が進むと予想されています。例えば、日本 センター研究所)の調査では、1992年と2002年で比較す に10年遅れて高齢化を経験すると予想されている中国も ると男女とも11歳若返っていることが示されています。65 膨大な人口を抱えています。これらの国から、日本は高 歳以上の人生で要介護期間は比較的一部で、自立期間 齢化にどのように対処するかと注視されているのです。 が長い、つまり自立した高齢者が増えるというのがこれか 日本人の平均寿命は男性80.2歳、女性86.6歳と、世界 らの超高齢社会の特徴です。 でも最長寿の国です。トップランナーとしての日本が直面 長年、高齢者問題は農村部の問題といわれてきました しているのは、人生第四期、すなわち75歳以上の後期高 が、これから高齢者が増えるのは都市部です。高度成長 齢者人口が急増するという問題です。2035年には総人口 時代に地方から都市に若い世代が流入しましたが、その の3分の1が65歳以上の高齢 者になると予想されていま 団塊の世代が都市で高齢化を迎えることになるのです。 す。さらに団塊の世代が高齢化して、75歳以上の高齢者 財務省のデータによると、支える人と支えられる人の比 は2005年からの20年間で1,000万人以上増えて、全人口 率は、1965年には65歳以上 1人に対して20~64歳は9.1 の5人に1人、20%を占めると予想されています。 人と 「胴上げ型」でしたが、2012年には2.4人で1人を支え この後期高齢者の問題をどう解決するかが今後の大き る「騎馬戦型」に、2050年には1.2人で1人を支える 「肩車 な課題なのですが、特徴的なのは、急増するのは要介 型」になると予想されています。こうした将来を見据えて、 護者や認知症患者ではなく、元気な高齢者という点です。 高齢者が長く働ける環境作り、女性が働きやすい環境整 実際に、身体機能に関して通常歩行速度の変化を検 備、子育て支援の充実等、支え手を増やす施策が必要 6 Vol.10 No.3 査までが完了しています。そのなか A 男性 自立 3 で自立度の変化パターンを日常生 10.9% 手段的日常生活 2 動作に援助が必要 基本的&手段的日常生活 1 動作に援助が必要 死亡 0 B 70.1% 19.0% 1 活動作 (IADL) で検討したところ、 男性の2 割は70代になる前に急速 に健康を損ねて亡くなるか重度の 介助が必要となり、7割は70代の 半ばまで一人暮らしができるほど 63∼65 66∼68 69∼71 72∼74 75∼77 78∼80 81∼83 84∼86 87∼89(歳) 7 89 年齢 女性 自立 3 元気だったのが、その辺りから少 しずつ自立度を失っていくことがわ かりました。80 ~ 90代でも元気に 自立生活を送れるのは1割強のみ 87.9% 手段的日常生活 2 動作に援助が必要 です(図 A) 。 一方、女性では1割強が70代前 12.1% 基本的&手段的日常生活 1 動作に援助が必要 死亡 0 活動作 (ADL) および手段的日常生 に亡くなるか重度の介護を要する 状態となり、約9 割は70代の初め 63∼65 66∼68 69∼71 72∼74 75∼77 78∼80 81∼83 84∼86 87∼89(歳) 年齢 全国高齢者20年の追跡調査。 n=5,715 :80代後半まで自立を維持する群 :70代後半から緩やかに自立度が低下する群 :比較的若い段階で自立機能を喪失する群 図 加齢に伴う自立度の変化パターン 提供/秋山弘子先生 ごろから男性よりも緩やかに自立 度を失っていきます(図 B) 。 男女合わせると、約8割が70代 半ばごろから徐々に衰えはじめ、 何らかの 介 助が 必 要となります が、その一方で、大多数は多少 の助けがあれば日常生活を送るこ とされています。 とができる実態も明らかとなりました。この8 割の人たち 現在、65歳以上高齢者の15%が認知症と推計されてお が、多少の疾病や障害があっても安心して快適に暮らせ り、今後は認知症患者数のさらなる増加が予想されてい る生活環境を整える必要があります。 ます。認知症は加齢とともに発生率が高まるので、後期高 齢者の増加に伴い認知症は大きな問題となるでしょう。ま た、半数が独居で、老々世帯も増えると予想されています。 健康寿命を延ばし、絆を育む サービス付きの地域社会を創生 一方、人付き合いが希薄になっているというデータがあ ―― 疾病や障害を抱えながらも安心して暮らせる生活環 ります。家族以外の友人、近所の人、親戚との対面接触 境を整えるために、具体的にはどのような対策が求めら の1カ月の平均回数を1987年と1999年で比較すると、女 れるのでしょうか。 性では増えていますが、男性は減っています。2013年に 大きく分けて、①自立期間 (健康寿命) の延長、② 住み も同様の調査を行ったところ、現在、解析中ではありま 慣れた地域で日常生活の継続を支える生活環境の整備、 すが、 男性はさらに減っていると予想されます。このよう ③人のつながりづくり、の3 つの課題があります(表) 。 に、人の絆が希薄化しており、孤独死予備群が大勢いる ことが推測されます。 われわれは、1987年から加齢に伴う高齢者の生活の 変化を検討した全国規模の追跡調査を行っています。全 表 2025年に向けて求められる具体的対策のポイント ①自立期間(健康寿命)の延長 国の住民基本台帳から60歳以上の住民約6,000人を無 ②住み慣れた地域で日常生活の継続を支える生活環 境の整備 作為抽出し、 3年ごとに訪問面接調査を行うという調査で、 ③人のつながりづくり 1987年に1次調査を実施し、現在までに2012年の8次調 提供/秋山弘子先生 2015 年 冬号 7 インタビュー 超高齢社会の本質 にとって家の維持管理はストレスになります。子どもが独 立したら小さなユニットに移り、一人暮らしが不安になった らサ高住に移り、介護が必要になったら介護施設やグ 75歳を境に急激に自立度が下がるというデータを図で ループホームに移るというように、ライフステージや健康状 お示ししましたが、この自立度が下がる時期を5年先延ば 態等に応じて同じコミュニティ内で住み替えていく、循環 しにして80歳まで元気に過ごせるようになれば本人も幸 型の住まいの在り方を考える時期に来ていると思うので せですし、支える側に回ることもできるので介護費用の す。在宅医療では住宅問題は重要です。住まいに医療や 抑制にもつながり、社会にとっても有益です。 介護を届けるのが在宅医療です。これからは、住まいを いわゆる 「ピンピンコロリ」で最期を迎えられる人は少な 住み替えても同じ八百屋やスーパーで買い物ができ、同じ く、現実的には、弱っても安心して快適に暮らせる環境 医師に診てもらえるような、同一地域内での循環型の住 をいかに整備するかが重要になります。 まいが求められるようになると考えています。 それと同時に、希薄化する人のつながりを再構築する ために、人の絆をつくって維持していく仕組みを社会のな かに埋め込んでいく工夫が必要になるでしょう。 専門職の人材育成と同時に 地域に介護力を付ける われわれ高齢社会総合研究機構は、全国2カ所で長 ―― ケア従事者の深刻な人手不足が指摘されています 寿社会のまちづくり研究を行っています。その一つ、都市 が、どのようにお考えでしょうか。 部のモデルとして、千葉県柏市および都市再生機構 (UR) これからニーズが高くなるのは明らかなのに、訪問看 と連携してまちづくりの社会実験を行っています。人口40 護師も訪問看護ステーションも不足しています。外国から 万人の柏市は、8割以上が東京に通勤している典型的な 看護師や介護士を受け入れることも一つの解決策です ベッドタウンです。全面建て替えが予定されていた5,000 が、最終的な解決にはなりません。イギリスではチェコの 戸の柏市豊四季台地域のUR団地が研究フィールドなの 看護師がケアにあたり、チェコの首都のプラハに行ったら ですが、この団地の高齢化率は41%と日本がこれから迎 ブルガリアの看護師がケアをしていました。 そのブルガリ える超高齢社会を先取りしています。そこで、5階建ての アでも高齢化が進んでいます。 つまり、地球全体で高齢 棟を10 ~14階に建て替え、空き地になった場所には在宅 化が進んでいる状態ですから、外国から人材をかき集め ケア拠点等、長寿社会に対応した様々な ても最終的解決策にはならないので サービス拠点をつくり、2014年5月1日に開 す。人材不足解消のためには、違う 所しました。 方向を模索する必要があるでしょう。 そのうちの一つのサービス付き高齢 者 柏市の社会実 験で取り入れたい 向け住宅 (サ高住)では、上階に入居者が と思っているのは、地域に介護力を 暮らし、下階に主治医診療所や在宅療養 付けることです。60 ~65歳のすべて 支 援診療所、24時間対応の訪問看護ス の方が介護に関する基本的な講習 テーションと訪問介護ステーション、薬局、 を受け、前期高齢 者は全員介護に 居宅介護、小規模多機能、地域包括支 関する基礎知識と技術を身に付ける 援センター等が入居しており、上階の居住 ことで、元気な地域住民が要支援 者だけではなく、地域周辺の住民にもサー 者にある程度のサービスを提供でき ビスを提供しています。サービス付きの住 る地域づくりができないものかと考 宅ではなく、サービス付きの地域社会、コミュニティにす えています。このように、介護の人材不足をまかなうには、 るという概念を具体的な形にしたモデルです。 専門の介護士を増やすだけではなく、地域住民に介護力 在宅医療を進めていくには、住宅をバリアフリーにする を付けることが重要だと考えています。そして、それは災 だけではなく、循環型の住宅政策が必要だと思っていま 害対応にもなり得ると考えています。 す。持ち家政策は人生60年時代には合っていたのかもし 訪問看護に関しては、専門職の人材養成に力を入れる れません。しかし、人生90年時代になると、後期高齢者 べきです。訪問看護は総合的に判断して行動しなければ 8 Vol.10 No.3 ならず、高度教育が必要です。在宅療養を支えるのは訪 うと思われますか。また、日本は2025年問題に対応で 問看護師であり、医師にとっても頼りになる存在になるこ きるのでしょうか。 とが求められています。 日本は、良いモデルができれば、それを全国に広げて ――女性の社会進出が政策的に推進されていますが、 いくことを得意とする国だと思っています。柏市のプロジェ 家族介護の担い手不足も懸念されています。どうしたら クトが成功すれば、この1カ所のモデルを手本として全国 女 性 の 介 護 力に 頼らず に、 各地に広げていくことは可能だと これらの問題を解決できると 考えています。 お考えでしょうか。 地方や限界集落等では、イン 今後は独居高齢者世帯や フラをどこまで維持できるかが課 老老世帯が圧倒的に多くなり 題となります。先祖代々のお墓や ますので、それらの世帯を支 田畑等があると、人口が減ったか えるシステムをつくっていかな らといって簡単には引っ越せない ければなりません。家族介護 でしょう。しかし、インフラの整 力が低下しており、奥さんや 備や人材不足等の課題を考える 娘・嫁による介護を前提としな と、将来的には社会インフラを集 いシステムをつくっていく必要 約したコンパクトシティにならざる があります。高度な専門職は を得ないと思っています。そうす 別途必要ですが、専門職がす ると、最後は各 個人の選択の問 べてを担うのは無理がありま 題です。他の地域に移るか、先 す。家族の代わりに地域に介 祖代々の土地に残るならサービス 護力を付けていく、子育ても はあきらめるか、のどちらかでは 介護も地域で、みんなで支え ないでしょうか。選択の結果、一 合う方法に切り替えていくことが現実的だと思います。 地域の力を高める政策と 死を日常的に語り合える文化の育成を 人で亡くなることになったとしても、それはそれで尊重す べきです。孤独死とくくる必要はありませんし、孤独死も 悪くありません。亡くなるときに常に医師や看護師がいる ということも不可能です。また、最期の瞬間に医療職や ―― 超高齢社会は、多死社会ともいわれています。こ 介護職の人たちに側にいてほしいと本人が望むかといっ の多死社会に突入するにあたり、どのような備えが必要 たら、必ずしもそうではありません。どのように最期を迎 だとお考えですか。 えたいか、日頃からみんなで話し合える文化をつくってい 社会的なインフラの見直しというマクロな課題に加え くことが大切だと思います。 て、個人の人生設計というミクロな課題も超高齢社会の ―― 最後に、在宅ケアの第一線で活動している読者に 課題です。これまでは、子どもたちが自分の最期を決め メッセージをお願いします。 てくれることは幸せなことだと考える高齢者が少なくあり 高齢期でも安心して暮らせる社会を支えることができ ませんでした。しかし、医療が高度に発達し、人生90年 るのは、在宅ケア従事者です。これからのシステム作り 時代を迎えた現代では、QOLのためにも最期までどう生 において試行錯誤はあると思いますが、高齢者が総人口 きたいかという本人の意思を明確にしておく必要がありま の3 分の1を占める時代はすぐにやって来ます。ですから、 す。在宅医療では大きな問題となることから、本人の意 急いで社会システムを整備する必要があります。日本に続 思について日常的に話をしておくことが大切です。自分の いて高齢化が問題となるアジア各国は、先に超高齢社会 人生を最期までどう生きるか、自分の生き方について主 の問題に取り組まなければならない日本の動きに注目して 体的に考え、若いときから家族と話し合って計画しておく いますし、日本と同じような仕組みを取り入れていくと思 文化をつくり上げていく必要があると思っています。 われるので、責任も重大です。皆さんの活躍を期待して ―― 2025年まであと10年ですが、システム作りは間に合 います。 2015 年 冬号 9 から QOLの観点から 栄養を考える 第 23回 前号の座談会第一部では、2012年に日本老年医学会より出された 「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン∼人工的水分・栄養補給の導入を中心として∼」の 捉え方や、在宅療養患者の栄養状態や栄養管理の重要性について、ご指摘をいただきました。 それを受けて今回の座談会第二部では、胃瘻の適応や、その利点を最大限に引き出すための ポイント等について、ご討議をいただきました。 監修:川越正平 先生(あおぞら診療所 院長) 《座談会》第二部 胃瘻の在り方 <司会> 太田 秀樹 先生 医療法人アスムス 理事長 <出席>(五十音順) 長尾 和宏 先生 長尾クリニック 院長 東口 髙志 先生 藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座 教授 丸山 道生 先生 田無病院 院長 左より丸山道生先生、太田秀樹先生、東口髙志先生、長尾和宏先生 のです。こうしたケースにおける胃瘻と、 てもアンハッピーに見えるわけです。そ 認知症や老衰が進行した場合の胃瘻と の状況を、患者自身が不本意だと思って では、性質が大きく違うと考えています。 いるのだろうと推察するのですが、その 太田 本来あるべき胃瘻の適応となる 長 尾 その点に関して、誰の意思で人 人はもはや意思表示ができません。しか と、可能な限りチューブを抜くことを前提 工栄養を行っているのかということが問 し家族はその状態に満足しているという に活用しようという考え方が、誰でも素 題です。 ことが、現実には非常に多いですね。 直に受け入れられるものだと思います。 太田 経管栄養をしている場合は、回 東口 日本緩和医療学会では、 『終末期 しかし実際の臨床では、例えば栄養状 復の期待のある人たちが多いです。とこ がん患者の輸液療法に関するガイドライ 態が悪化した、活気が無くなった、老衰 ろが、そういう状態で在宅に戻ってこら ン』を発行しましたが、その中で終末期 の進行が疑われる、認知症が強い、脱 れたものの、コミュニケーションが取れ の際に、点滴を減らす、あるいは中止に 水がある、さてどうしようかというときに、 ない状況でベッドで寝たきりになってし ついて家族に説明することを示しました。 胃瘻を行ってきたという背景があると思 まってから、 「先生、何とかなりませんか」 胃瘻についても、こうした問題は似てい 患者や家族の利益と 本来あるべき胃瘻の適応 うのですが、いかが という相談を家族 ると考えています。これらの問題に共通 でしょうか。 から受けるケース して重要なことは、それが患者や家族 東 口 おっしゃる通 が多いのではない の利益になるのかどうかということです。 り、胃瘻の適応はしっ かと思っています。 利益とは、幸せや人生観も含めた上で利 かりと場 合を分 けて 長尾 実際、多い 益になるものという意味です。胃瘻をし 考えなければいけま ですね。その場合、 ていることが、患者や家族にとって幸せ せん。例えば急性 期 医師としては家族 でないならば、やめるべきでしょう。そ の脳血管障害患者に の希望にできるだ れは医療者としての倫理観であると思い け沿おうとすること ます。 し か で きま せ ん。 丸山 その点においても、胃瘻を造る 対して「食べるための 胃瘻」 と考えると、でき 丸山 道生 先生 るだけ早く胃瘻を造設し、急性期に十分 私は「アンハッピーな胃瘻」という言葉を 医師の立場から考えた場合、また患者 な蛋白質を含むエネルギーを投与し、口 使いますが、本人が文書ないし口頭で、 さんから相談される場合でも、2012年 腔ケアでリハビリテーションを進めるべ 延命措置や人工栄養を明らかに望んで に発表された日本老年医学会のガイドラ きです。そこで胃瘻が不必要になれば いないという意思表 示をされていた場 イン「高齢者ケアの意思決定プロセスに 抜き、必要であれば留置しておけば良い 合、本人の意思に反した状態は、どうし 関するガイドライン~人工的水分・栄養 10 6 Vol.10 No.3 補給の導入を中心として~」は哲学的で、 養剤の良いところは、短時間で注入でき 胃瘻の適応について難解であると感じて るという点です。認知症患者の自己抜去 います。こういうガイドラインが出てきた の予防や、リハビリ時間を確保するために こと自体、今の世相では、 「胃瘻は非」 で 短時間で摂取を終えたい人、褥瘡対策 あるという方向に傾きつつあるように感 のために体位を頻繁に変えたい人にとっ じています。ここは、日本でも医学的で て、投与時間の短縮は大きなメリットと 実用的なガイドラインを作っていくべきで なります。最近では市販の半固形化栄 はないかと考えています。 養剤が多くを占めるようになり、手軽に 太田 国民のリテラシーの問題もありま 短時間で投与できることがクローズアップ す。死生観を、もっとしっかりと持たな されています。臨床効果としては、肺炎 ければいけません。自分の人生をどう締 が起こらなくなった、 下痢をしなくなった、 剤の形状等に関しては、退院後に地域 めくくりたいか、自らの意思をはっきり主 瘻孔からの漏れがなくなった、発熱がな の多職種のコンセンサスを得ながら進め 張しないといけません。現状は患者本人 くなった、などが挙げられます。 ていく必要があると実感しています。 よりも家族の意思で治療が行われている 太田 半固形化栄養剤によるデメリット 東口 医師の啓発、特に若い研修医の というのが、特に高齢者を取り巻く医療 はありますか。 教育ということに関しては、長尾先生の の現実です。どのような医療を行うかに 丸山 これまでは、医薬品の半固形化 ご 指 摘 の 通 りだ と 思 い ま す。N S T ついては、本人の意思確認を基本としな 栄養剤がなかったために、在宅療養さ (nutrition support team)設立当初の ければならないはずです。 れている患者にとってはコスト面で負担 1998年当時は、栄養管理に関する知識 が大きくなっていました。しかし、2014 の乏しい医師がほとんどでした。そこで、 年6月に医薬品としての半固形化栄養剤 N S Tを全国に広げるためにも、次にや が発売されたことで、患者や家族の金 るべきことは教育でした。その結果、現 太田 胃瘻を正しく使うための一つの 銭的負担は解消されると思います。 在では医学部で教育を受けて臨床に出 工夫として、栄養剤の形状について、ど 長尾 半固形化栄養剤の使用に関連し てくる若い医師たちは、栄養に関する授 のようにお考えでしょうか。 て強調したいのは、病院医師の意識の 業をしっかりと受けていますし、経口摂 丸山 我々は今まで、液体の栄養剤が 問題です。例えば、液体栄養剤を使用 取についての重要性も知っています。そ 経 腸栄養 剤だと思っ している退院患者 こで問題になるのが、それ以前の教育 ていましたが、現在注 に、退院後はコス を受けてきた、栄養に関する知識の無い 目されている半固形化 トやQOLの面等も 臨床の医師です。そこで、日本静脈経 栄養 剤は、世界の経 考慮した上で患者 腸栄養学会では、全国各地で医師向け 腸栄養剤のイメージを や家族に半固形化 の勉強会を開催したり、N S Tに研修医 変 えるかもしれませ 栄養剤を勧めてい を参加させるなど、啓発・教育に力を入 ん。半固形化栄養 剤 ます が、 「病 院 の れています。 は、日本の在宅医療 先 生が液体の栄 丸山 東口先生のお話の通り、研修医 養 剤を教えてくれ や若手医師においては、栄養学の臨床 たので、半固形化 的な知識に優れた医師もいますが、知ら 主な使用目的は、胃食道逆流症や誤嚥 に変更したくない」というケースが少なく ない医師もまだいるわけです。特に半固 性肺炎の予防です。そのほかにも、嘔 ありません。そういう意味で、病院の医 形化栄養剤は、在宅医療の現場から出 吐対策、下痢対策、投与時間の短縮と 療者の影響力の大きさを感じています。 てきたものですから、むしろ大病院の医 いうメリットがあります。特に半固形化栄 だからこそ、胃瘻の在り方や適応、栄養 師の方が分からないこともあるようです。 経腸栄養剤のイメージを変える 半固形化栄養剤 発祥の栄養 療法とし て、誇るべきものです。 東口 髙志 先生 長尾 和宏 先生 2015 年 冬号 11 7 《座談会》第二部 から QOLの観点から 胃瘻の在り方 栄養を考える 第 23回 これから医学を学ぶ人たちはチーム医療 脈カテーテルを留置したままということ 太田 在宅からフィードバックする機会 も習いますし、在宅医療の研修も受けま は考えられないはずです。少量でも口か を持っておられるということですね。 す。それらの積み重ねによって、胃瘻に ら食べられるのであれば、残りは経管栄 東口 在宅を知らなければ、医療者とし おける半固形化栄養剤の大切さについ 養で対応できますので、合理的な方法 て何かが欠けているような気がします。 ても、次第に知られるようになってくるの はやはり胃瘻だと考えて、私たちは胃瘻 私もNSTに取り組み始めたころに、患者 ではないでしょうか。今は、そこに至る を振興させてきました。しかし今度は逆 と一緒にお風呂に入るなどして、患者の 過渡期だと思っています。 に、適応を慎重に検討することなく胃瘻 生活を体験していました。振り返ると、 が広く行われるようになってしまいまし それは私にとって必要な経験だったと た。最近は、胃瘻に対するマイナスイメー 思っています。 ジが強くなってきましたが、胃瘻イコール 長尾 今回の議論は胃瘻がテーマでし 太田 胃瘻という一つの医療技術を通 悪ではありません。実際に予後調査をし たが、水分補給も含めた栄養管理につ して患者を幸せにすることが本来の目的 たところ、胃瘻が悪いとは思っていない いて、医療職やNSTに関係する専門職 であり、私たちは医師の立場で最善を尽 患者・家族は少なくありませんでした。 だけではなく、市民や介護者にも加わっ くしてきましたが、顧みると空回りしてい 患者の利益という視点でみれば、胃瘻を ていただき、一緒に勉強するという時代 た部分もあります。この現実を踏まえて、 良い方法だと捉えている人がいることも になってきているのではないでしょうか。 在宅ケア従事者へのメッセージをお願い 知っていただきた すべてを病院 や医師 します。 いのです。 任 せにするのではな 長尾 例えば、今日のこの話がどこまで 太 田 早い 時 期 く、セルフケアの意識 通じるのだろうということです。全国各 に胃瘻を造り、全 を市民の皆さんに持っ 地には医療資源が不足している地域もあ 身状態を悪化させ ていただきたいと思っ りますし、東日本大震災の被災地は、い ないうちにリハビ ています。 まだに仮設住宅で、生活もままなりませ リテーションや治 太田 今回のお話をま ん。そうした現状を考えると、私たちの 療を行い、胃瘻は とめますと、胃瘻はあ 今日の議論は、都会の議論ではないか 抜くことを前提に、 在宅の視点あればこその 胃瘻という有益な医療技術 くまでも栄養管理の一 太田 秀樹 先生 つの手段であり、胃瘻 と思うのです。栄養士がいない、嚥下リ 急性期に胃瘻を活 ハビリテーションができないという地域 用しようということですね。そのような活 造設だけで解決する訳ではありません。 があるなかで、栄養の原点は「おいしく 用方法であれば、胃瘻は多くの人に受け 嚥下訓練も同時に行いながら、口から食 食べること」ではないかと思うのです。そ 入れられると思います。 べる楽しみを優先するという共通認識の の「おいしく食べること」の土台の上に、 丸山 嚥下障害を意識しながら取り組 上で胃瘻を行う必要があるようです。口 胃瘻や中心静脈栄養という方法があると む地域であれば、胃瘻造設を早い時期 から食べることは原則ですが、経口摂 いうように意識を変えていくべきではない から意識するようになり、家族や本人も 取だけでは十分な栄養管理ができない でしょうか。この点で、繰り返しになりま 胃瘻をするか否かを深く考えるようにな 場合には、補助的な方法として胃瘻を造 すが、地域のなかではやはり病院の医 ります。その辺りが、胃瘻の問題を解決 る大きな意義があるということです。胃 師や研修医の影響力が非常に大きいの する一つの方法ではないかと思います。 瘻を造ると口から食べられなくなるとか、 で、病院と在宅医が協働することが重 また私自身、NSTを始めた当時 から、 胃瘻を造れば肺炎にならないなどといっ 要だと実感しています。 地域の医師に頼まれて、在宅に出て胃瘻 た誤解もありますが、私たち医療者が、 東口 もともと胃瘻は、口から食べさせ 交換を行っていました。病院との違いを 胃瘻の在り方を正しく伝えていく努力を るためという目的が大前提なので、経鼻 感じていた経験が今、胃瘻造設の際に 怠ってはならないということでしょう。先 胃管でのチューブの置き去りや、中心静 生きていると思います。 生方、本日はありがとうございました。 12 Vol.10 No.3 から QOLの観点から 栄養を考える 第 24回 口から食べることは生きることにつながり、食べられなくなることは、患者や家族にとっては死に対する不安へ とつながります。今回は、終末期のがん患者に対して、本人の希望する食事を「リクエスト食」として提供してい るホスピス・こどもホスピス病院の取り組みに注目し、副院長の池永昌之先生と、管理栄養士の大谷幸子さん に、その意義等についてお話を伺いました。 監修:川越正平 先生(あおぞら診療所 院長) 終末期患者のための リクエスト食 淀川キリスト教病院 ホスピス・こどもホスピス病院 副院長 池永 昌之 先生 リクエスト食の取り組み 管理栄養士の発案から始まる きもあります。あるいは、病気 によって食事制限をしなけれ ばならないなど、我慢を強い リクエスト食を始めたきっかけは、当院 られることもあります。 の管理栄養士の発案でした。当初は月1 生まれてから亡くなるまで、人間は食べ きることを支えていることになります。こ 回でしたが、当院が淀川キリスト教病院 続けます。つまり、生きることは食べるこ れはある意味で、人間の命にかかわる最 のホスピス病棟から独立型のホスピス病 とであり、食べることは生きることなのだ もシンプルなつながりです。だからこそ食 院となった2012年11月以降は、毎週金曜 と思うのです。そのためホスピスケアにお べるという行為は、患者本人にはもちろん、 に管理栄養士が患者のベッドサイドで食 いて食べるという行為には、もっと生きる 家族にとっても重要です。 べたいものを聴き取り、その希望に沿っ ことの根源にかかわる深い意味があると 終末期になると予後の見通しが悪いこと た夕食を翌土曜に提供しています。 感じています。 もあり、病状に関係なく、何を食べても良い 当院の患者は、ほとんどの方が末期が ですから当院で提供しているリクエスト という時期がきます。この時期に、家族が んで、自宅での生活が難しい状態です。 食は、単に楽しく食べていただくことを目 患者の食べたいものを用意して院内に持ち そして、食べることに関して何らかの障害 的とはしていません。例えば、ある患者さ 込むことは、他の病院でも行われているこ を抱えています。多くは、がん悪液質に伴 んは人生を振り返り、最も苦労をしていた とでしょう。しかし、毎日持ち込んでいた う食欲不振により飲食できない状態です。 時期に食べたバッテラの味を再び味わい だくことは家族の負担にもなりますし、病 平均在院日数は22日と、リクエスト食が たいと希望されました。このように、患者 院スタッフには自分たちも、自分たちにで 最後の晩餐になる可能性もあることから、 が希望する食事は、苦しい時代の思い出 きるケアをしたいとの思いがあります。そこ 当院での食事は一般病院の食事に比べ の食事であったりもするのです。 で当院では、リクエスト食を提供すること ると、その意味は大きく異なります。当院 また、リクエストできるからといって、豪 にしました。 では、ホスピスに必要なケアの一環として 華なメニューを希望されることもあまりない リクエスト食の提供にあたっては、患者 リクエスト食を提供しているのです。 ようです。むしろ、ごく普通の家庭料理で が食事をどれくらい食べたかで評価をす あったり、庶民的なご馳走、子どものころ べきではありません。一口でも食べられれ に食べたお袋の味などが多いようです。こ ば良いですし、家族と一緒に食べていた うしたことからも、食事とは、単なる楽しみ だいても構いません。もし食べられなかっ 病気の人にとって食べるという行為は、 だけではない、それまで生きてきた人生 たとしても、その食事にまつわる思い出 単においしければ良い、楽しめれば良い に関係する場合もあると感じています。 や昔話に花が咲くこともあります。話を聞 リクエスト食の意義 食事は生きることの根源 といったものではありません。時には、 死ぬことが怖いために無理をしてでも食 べることがあります。薬の副作用や病状 の進行により、食べること自体がつらいと 食事を通して患者の人生を知る きながら、この方がどんな人生を送ってこ 患者と家族との思い出の共有 られたのかを知るきっかけになれば良い 食べることを支えることは、その人が生 事を通して患者と家族が思い出を共有し のです。あるいは、私たちが用意した食 2015 年 冬号 13 終末期患者のための から リクエスト食 QOLの観点から 栄養を考える 第 24回 弱っているのではなく、既に食べられない くらいに病状自体が進んでいるということ を、前もって家族にしっかりと説明してお くことが必要です。 家族はどうしても、食べさせ れば患者はまだ頑張れる、生き られる、という思いを強く持って います。逆にもし食べられなけれ ば、弱ってしまう→ 無理をしても 2014年10月のある土曜のメニューより。 「天ぷら」 「インスタントラーメンと赤飯」 「お造りと野菜サラダ」……。 例えばインスタントラーメンは、トッピングの具や卵の半熟加減まで、 要望に応えます。天ぷらや刺身等の場合、 ネタの好みは様々ですので、 一人ひとりに合わせて料理が作られます。 食べられない →どうしたら良い のだろう、という悪循環に陥って しまいがちです。 ながら共に過ごしてくれれば良いのです。 そして希望を未来へつなぐためにも、食 したがって家族には、食べても食べら 食が細くなっている方に対して、たくさ 事は重要な役割を担っているのです。 れなくても、患者は弱っていくのだという んの料理を出すことは控えています。食欲 人間は、過去・現在・未来という時間の ことを時間をかけて説明し、食べさせな のない人に大盛りの食事を出したら、それ 流れのなかで、様々な関係を築いて生きて ければならないという思いから解放して差 だけで食欲を失ってしまいます。食事を残 います。その時間の流れのなかに生きてい し上げることが重要なのです。 すことを躊躇をされる方もいらっしゃいま る一人の患者を、食の面から支えることに、 がんによる悪液質になると、どれだけ す。また、食べ残した量が多いと、食べら リクエスト食の意義があると思うのです。 栄養を補っても患者の体は弱っていきま れない自分に気付かされて、衰弱していく 例えば食事の場面には、必ず作る人が す。必死に一口食べる、あるいは食べさ 現実を突きつけられることになり、楽しん 存在します。家庭では、作る人と食べる せたとしても、それはわずかなエネルギー でいただきたいはずの食事が、逆に辛い 人の存在がはっきりと分かります。しかし にすぎません。むしろ無理に食べること 時間になってしまうことがあります。です 病院の食事となると、作る人の姿は患者 で、その一口分のエネルギーを使い果た から、患者さんの状態に合わせて食事を には見えません。そこでリクエスト食では、 しているかもしれないのです。 少なめに出す配慮も時には必要です。 管理栄養士が患者の希望を聞き、それを そこで家族に対しては、患者本人が食 調理師に伝え、できた食事は調理師が部 べたいときに、食べたいものを、食べら 屋まで配膳をしています。こうした人と人 れるだけというのが、その人にとって必要 との関係性を大切にすることで、スタッフ なエネルギーなのだと説明する必要があ リクエスト食は終末期の患者にとって、 から患者に向けて、 「あなたのためだけに、 ります。 「食べさせなければならない」とい 過去の自分と現在の自分をつなぐ架け橋 この料理を作りました」 という気持ちを伝 う考え方に固執させてしまってはいけませ になることがあります。希望された食事を えることができるのだと考えています。 ん。終末期では、患者も家族も、食べる お出しすることで、苦労した時代の思い また、土曜にリクエスト食を提供するの ことの苦痛から、もう少し解放されても良 出や家族との記憶を想起し、過去と現在 は、家族が来やすい曜日であり、食事を いのではないでしょうか。 がつながります。さらに、 「来週は何を食 しながら家族と一緒に過ごす時間を持て 食べることと生きることは密接につな べようか」と考えることで、患者は希望を るからです。食事は一人でするものという がり、毎日食べることで、人は長い人生 未来につないでいきます。 よりは、人とのかかわりが大切なのです。 を生きています。その意識を終末期に QOLを高めるリクエスト食 食事は過去・現在・未来をつなぐ 患者が食べたいものを自由に選択でき る環境は、QOLの高い生活であるといえ ます。予後が悪いなか、少しでも患者の QOLを高めて過ごしていただくためにも、 14 Vol.10 No.3 食べることの苦痛も考える 家族を苦痛から解放するために 終末期がん患者の場合、食べないから なってから変えることは難しいことかも しれませんが、ちょっとそこから楽になっ てもらうことも大切なのではないでしょ うか。 患者さんの言葉の行間に心を寄せて その思いを献立に再現する ◉大谷 幸子 さん 患者のあらゆる希望に応える 淀川キリスト教病院 ホスピス・こどもホスピス病院 管理栄養士 ので、患者や家族に対する傾聴や、食事 の内容を聞き取る力を持っています。また、 毎週金曜午後に管理栄養士が一人ひと 患者の出身地域や年齢等により食の好み りの患者のベッドサイドで希望する食事の も様々ですので、できる限り希望に沿うた 内容を聞き取り、その希望に沿って料理を めには、郷土料理や調理法等、あらゆる 作り、土曜の夕食に提供している食事を、 料理に関する知識も必要です。 当院ではリクエスト食と呼んでいます。 また、最近はNST等のチーム医療への 寿司や刺身、ウナギ、天ぷら、鍋、ステーキ 参加により、患者の病態を把握しながら、 等、患者からのあらゆる要望に応え、これま その人に合った食事内容や食形態をマッチ でに希望を断ったことはほとんどありません。 させる力も持つようになりました。チーム医 患者は終末期で予後の厳しい方々ですか 療で育まれた多職種とのコミュニケーション ら、無理に食べていただくのではなく、自然 能力も、患者の希望や思いを聞きだす際に に、家庭料理の延長のようなイメージで、愛 役立ちます。 情の込もった料理を提供するように努めて リクエスト食の提供にあたっては、患者 います。ですから味付けも、複雑で凝ったも が望んでいる食事にどれだけ近づけるかが のではなく、シンプルであることを心掛けてい 一番の課題です。終末期の方にとっては ます。添加物などは控えて、手作りの味わい 最後の食事になるかもしれませんので、がっ でおいしいものを提供したいと考えています。 かりして欲しくはありません。そのため、で 具体的な調理法については、患者から聴 きる限り一人ひとりの要望にそのまま応え いた言葉だけではなく、声の張りや大きさ、 ることを心掛けています。ラッキョウ2~3 話し方、表情、仕草等、患者さんが全身で 粒と希望された方には、本当にそれだけを 発しているメッセージを読み取り、感じたこと お出ししました。その方はラッキョウを一 をすべて調理師に伝えます。 「行間を読む」 と 粒、ギュッと噛みしめておられました。それ いう言葉がありますが、例えば患者がその料 が最後の食事になりました。 理を希望する背景や思い出をあまり語らな また別の患者は、当院へ転院されてきて、 い場合でも、その人の望んでいる食事のイ 「ほんならお寿司。ハマチとサーモンと……」 メージを考えて、調理師に伝えています。 と寿司屋のカウンターで注文するかのよう 食形態は、容態に合わせて提供すること にリクエストをされました。お寿司は、苦 を心掛けています。例えば嚥下機能に問 労した時代に時々自分へのご褒美として食 題のある方が刺身を希望された場合には、 べた思い出の食事だったそうです。リクエ 刺身の裏に細かい切れ目を入れたり、食べ スト食をお出しした翌日、 「ここ1週間ほど食 る量を考慮するなど、調理師との打ち合わ 事が取れなかったのに、お寿司を食べて目 せは必要に応じて密に行います。 に力が出てきました。食の力はすごいです 患者に寄り添う食事提供 金曜昼過ぎ、管理栄養士の大谷さんはベッドサイドを回り、 患者さんに希望の食事を聞きます。人生色々。食事の話にと どまらず、故郷の話、仕事の苦労話、結婚生活の思い出など、 話に花が咲くこともあります。 金曜夕方、大谷さんは調理師の高藤信二さんと、食事のボ リューム、味付けの好み、食形態、食材の切り方や茹で方等、 献立について入念に打ち合わせをします。 土曜午前に買い出しを終え、午後から調理が始まります。食 べる力が低下している患者さんのお刺身には裏に細かく包丁 の目を入れるなど、細部まで心を配ります。 土曜夕方、料理 が完成。高藤さ んは料亭の板 前だった経験を 生 かして、彩り 良く、美しく盛 り付けます。 土曜夜、高藤さんが患者さん一人ひとりに配膳することで、 作った人と食べる人が出会います。 ね」と家族から言葉をいただいたときは、 られる家族がいるので、ちらし寿司・たこ 本当に嬉しく思いました。 焼き・お好み焼きのように皆で作れるパー リクエスト食の聞き取りについては、管 患者に寄り添う食事提供として、当院で ティー食等、バラエティーに富んだメニュー 理栄養士が行うことに意義があると考えて はリクエスト食のほかにも、毎食6種類から を用意しています。このように、少しでもよ います。それは、多くの管理栄養士には栄 料理が選べるようにメニューを揃えていま り良い時間を過ごしていただけるようにと、 養食事指導を実施してきた経験があります す。また、小児の場合は週末に泊まりに来 食を通した様々な支援を行っています。 2015 年 冬号 15 生 歯科衛 士編 日本老年歯科医学会 第25回学術大会 早期介入が機能回復のポイント 口腔機能低下の初期症状を見逃さず、 早めに適切な対応を 髙野ひろみさん 高野歯科医院 歯科衛生士 2014年6月13日 (金) ~14日 (土) 、福岡市の電気ビルみらい ものです。講演で皆さんにお伝えしたかったのは、早期から ホールにて、 「生活に寄りそう歯科医療と高齢社会」のテーマの の適切な介入がいかに重要かということと、実際には、既に 下に、日本老年歯科医学会第25回学術大会が開催されました。 重症化してから依頼を受けるケースの方が圧倒的に多いとい 今大会で注目したのは、歯科衛生士シンポジウム「いつまで うことです。 も自分の口から食べるために ~食べるを支える歯科衛生士の 力~」に登壇した、髙野ひろみさんの講演です。訪問歯科衛生 全身の機能に深くかかわる口腔機能 士として活躍する髙野さんに、口から食べることを支えるため 口腔機能低下が重症化するまで介入できない背景には、口 に歯科衛生士が在宅でどのようなかかわりを行っているのかと 腔機能が全身の機能に深くかかわっていることに対する理解 いう視点から、講演内容を振り返っていただきながら、訪問歯 の不足があるように感じています。 科衛生士の役割や課題についてお話しいただきました。 口腔機能で特に重要なのは、口唇閉鎖と臼歯部咬合です。 これができるかどうかは全身 高齢になるほど、 重症化してからの回復は難しい く影響します。例えば、口を 高齢化の進行と同時に、歯科医療に 開けたままの状 態で自分 の 携わる者の役割も、齲蝕等の疾患を治 唾 液を飲み込むことは意 外 す医療から、口腔ケアやリハビリテー と難しいものです。臼歯部咬 ションといった生活を支援する医療へ 合についても同様に、私たち と、大きく広がりをみせています。食べ は重い物を持とうとするとき ることは人間の生きがいの一つといっ や、パソコンに向かって ても良いでしょう。食べるためには口腔 機能をより良い状態に保つことが重要 ですが、在宅の要介護高齢者の多くは 口腔機能に何らかの問題があることが のリハビリテーションに大き 病院や在宅、施設等の多様な生活環境のなかで“食べ ること” を支える歯科衛生士の可能性について、歯科 衛生士3人と管理栄養士1人の演者がそれぞれの立場 から現状と課題を報告したシンポジウム会場は、ほぼ 満席となり、学会員の関心の高さがうかがえました。 入 力作業をしているとき など、様々な場面で無意 識に奥歯を噛みしめてい ます。このように、何気な 指摘されており、実際、私がこれまでに在宅でかかわった高 く行っている日常動作は、口唇閉鎖と臼歯部咬合ができてい 齢者の約9割が、摂食・嚥下機能に障害を抱えていました。 るからこそスムーズに行えているといっても良いでしょう。麻 口腔機能の向上を図り、食べることを支えることは、歯科衛 痺のある人がいくら懸命にリハビリテーションを行っても、 生士の重要な役割の一つです。今後、歯科衛生士が在宅に 奥歯が噛めない状態では立ち上がることも一苦労です。 おいてその役割をしっかりと果たしていくことが求められる そこで重要な役割を果たすのが義歯ですが、入院患者さ ようになると感じています。 んの場合、食事以外のほとんどの時間で義歯が外されたま 在宅で口から食べることを支えるために、歯科衛生士に何 まの状態でいる場面をよく目にします。義歯を装着せずにリ ができるのか、今回の講演では私自身がかかわった3つの事 ハビリテーションや嚥下造影検査が行われることもあるよう 例を紹介させていただきました。3例とも良好な経過をたどっ です。実は義歯には、食べ物を咀嚼する役割だけではなく、 ていますが、すべてに共通しているのは、症状が重くならな 口腔周辺の筋肉の形を整え、その機能を支えるという重要な い早期の段階からかかわることができたということです。高 役割も担っています。したがって口腔機能に障害を持つ人で 齢者の場合、いったん重症化してしまうと、機能訓練によっ あっても、義歯を装着することで口唇閉鎖、臼歯部咬合が可 て現状維持はできても、再び回復させることは非常に難しい 能になり、そのことで食べることはもちろん、日常のちょっと 16 Vol.10 No.3 るものの、肉や魚等の固形物は咀 《歯科衛生士シンポジウム》 いつまでも自分の口から食べるために ~食べるを支える歯科衛生士の力~ 嚼することで自然な嚥下反射が起 きていることがわかりました。トロ 歯科診療所歯科衛生士の立場から ミをつけることがかえって誤嚥のリ スクにつながると考えた髙野さん 高野歯科医院 歯科衛生士 は、歯科のある病院で改めて嚥下 髙野ひろみ さん 髙野ひろみさんの講演風景。 の検査を行うことを提案しました。 在宅療養支援歯科診療所の歯科衛生士として活躍する髙野さん こうして 「咀嚼した方が嚥下がスムーズ」という検査結果を多職種で は、訪問歯科衛生士として口から食べることをどのように支えてきた 共有することができ、食形態は変えずに食事回数を増やすなどの工 のかについて、自身の在宅での取り組みを紹介しました。 夫で、より安全に食べられるように支援しました。 髙野さんは現在、非常勤として福岡県の高野歯科医院で勤務して 3例目は、脳梗塞で麻痺が残る65歳女性に対し、在宅で摂食・嚥 おり、過去5年間で65歳以上の在宅高齢者20人を担当してきました。 下リハビリテーションを行った事例です。女性は入院先の回復期病 在宅で行う歯科医療の特徴について髙野さんは、生活の場で行う医 院でリハビリテーションを受けていましたが、寝たきりの状態に疑問 療であること、生活のペースや家族関係、介護力、経済力等に応じ を感じた夫が退院を強く希望して、在宅療養をスタートさせました。 た配慮が必要とされること、指導よりも支援の視点が重要であるこ 病院では刻み食やトロミ食等の食形態が中心でしたが、女性は残存 とを説明し、3つの事例を紹介しました。 歯が多く、口腔状態が良好だったことから、髙野さんは3度目の訪問 1例目は、廃用症候群による機能低下で飲み込みが難しくなった 時にスルメを持参して、咀嚼筋のリハビリテーションとして女性に噛 82歳男性のケースです。機能低下がそれほど進んでいなかったこと んでもらいました。すると、その様子を見て希望を持った夫が積極 から、髙野さんは毎食前に舌のタッピングを行うという、無理なく継 的に食事介助を行うようになり、退院後3カ月で、普通食が食べられ 続できるプランを立てました。その結果、嚥下機能は著しく回復し、 るまでに改善しました。 症状は1カ月で改善しました。 以上の事例から、病院における摂食・嚥下リハビリテーションに歯科 2例目は、脳梗塞の影響で食事が困難になった70歳女性のケース 的な視点が加味されていないことが多く、そのことが重症化を招いてい です。機能訓練により一度は刻み食まで改善したものの、再び食事 る可能性があるという現状が示されました。在宅へ紹介されるときには に時間がかかるようになり、トロミ食への変更が検討されるようにな 既に重症化が進んでしまっているケースが多いことから、髙野さんは改 りました。しかし、髙野さんが実際に観察してみると、水分は誤嚥す めて、歯科による早期介入の重要性を強調し、講演を締めくくりました。 した動作が以前よりも楽になることがあるのです。 も良いでしょう。 逆に、日常的に義歯を外したままの状態が続くと、口腔周辺 一方で、これらの問題に対応できる歯科医師や歯科衛生士 の筋肉を使わない時間が長くなってしまいます。それが2~3 が地域にどれだけいるのか、という課題があります。2006 カ月ほど続くと、高齢者の口腔機能は一気に低下してしまい 年の介護保険制度改正で、口腔機能向上が歯科衛生士の業 ます。そして、回復が難しいほど重症化してしまうのです。 務に加わって以降、歯科衛生士への教育は徐々に進んでいる 日常の小さな変化に気づくことが重要 ものの、決して十分といえる状況ではありません。 在宅で療養する患者さんの生活スタイルは、一人ひとり異 重症化する前に、少しでも早く口腔機能低下に気づき、適 なりますので、それぞれの暮らしや生活習慣に合わせた対応 切に対応することが重要ですが、医療や介護の現場では口腔 が求められます。だからこそ、在宅というフィールドでは、専 機能低下の兆しが見過ごされがちです。口腔機能低下の初期 門職としてのスキルだけではなく、人との接し方や対話の仕 症状は、日常生活のなかでちょっとした変化としてあらわれ 方等のすべてにおいて、人生経験が生きてきます。それは、 ます。例えば、食事や薬を飲む際にむせがみられる、食べこ 在宅ならではの醍醐味といえるでしょう。課題は山積してい ぼしが多くなった、 最近よくよだれを垂らす、 発音が悪くなった、 ますが、これから在宅で少しでも歯科を活用していただき、 などの変化です。施設等ではよく見られることですが、これ 生きがいにもなり得る食べることを、皆さんとともに支える らはすべて、口腔機能低下の兆候と考えて良いでしょう (表) 。 ことができれば嬉しく思います。 こうした変化に気づいたら、在宅診療を行っている歯科に 表 口腔機能低下の初期症状 ・食物残渣が多い、飲み込みにくい ・発音が不明瞭 ・調整しても入れ歯が合わない ・傷も無いのに舌など口の中が痛い ・お茶や薬を飲むときにむせる ・食後に声が変わる ・唾液が溜まっている、よだれを垂らす 提供/髙野ひろみさん 紹 介 する な ど の 対応 が 望まれま す。基本的にはケ アマネジャーに相 談 い た だくと 良 いと思いますが、 地域の歯科医師 会に相談してみて 日本老年歯科医学会 第25回学術大会 会 場:電気ビルみらいホール 開催日:2014年6月13日 (金) 〜14日 (土) 会 長:柿木 保明(九州歯科大学老年障害者歯科学分野 教授) 2015 年 冬号 17 在宅 ケア Q A ・・・・ & 回答者……● 角田 直枝 先生 茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター 看護局長 第3回 ............. 意欲が無く困った同僚(訪問看護師)との付き合い方 訪問看護ステーション(以下、ステーション)は、平成26年度診療報酬改定で機能強化型訪問看護管 はじめに…… 理療養費が新設され、職員数やサービス内容が評価されるようになってきました。この動きから、ス テーションでは規模の拡大という方向性が示され、それには職員数を増員することが必須となります。 ところが、ステーションの職員数が増加すると、職員同士の人間関係で新たな問題が生じかねません。 特に、職員のなかに仕事に対する意欲がみられない同僚がいると、それ以外の職員は不満を感じ、職場 全体の雰囲気の悪化につながります。 職場での人間関係は、良好に保つことで人材の確保定着や安全で質の高いサービスの提供につながり ます。今回は、 「意欲が無く困った同僚」への対応を通して、職員個々との付き合い方を考えてみます。 n Questio 1 r Answe 1 先月就職してきた同僚 (訪問看護師)は、いわれたことだけしか仕事を せず、仕事に対する意欲がみられません。もう少し意欲を高められな いかと対応に困っているのですが、どのようにしたら良いのでしょうか? 意欲が無い職員がいると、一緒に働い ニケーションが苦手という人が増えていますから、実 ている人たちのやる気も下がるものです。 はコミュニケーションが 苦手で、自分から発言しない ただ、同僚に対して 「意欲が無い」という のかもしれません。 評価は、どの職場でも聞かれることのようです。 そこで、意欲を高めるための対応を考える前に、こ さてそこで質問ですが、意欲が無い同僚に対して、 の人が今、どのような気持ちでいるのかを聞いてみる そのように評価された本人に、意欲の有無を尋ねたで ことをお勧めします。 「仕事はどうですか?」など、オー しょうか? そして、本人から 「意欲がない」 という答え プンクエスチョンで声をかけると、 「不慣れな自分を気 が返ってきたのでしょうか? 実は、周囲が「意欲がない」 遣ってくれた」 と、相手は安心します。それ以外では 「慣 と評価していても、本人がどうかを意外と確認してい れるまでは大変でしょう?」といった投げかけは、自分 ないことが多いのです。つまり、問題は意欲の有無で が困っていることに共 感してくれていると感じさせま はないかもしれないのです。 す。このようなやりとりから、互いに同僚としての関係 だとすると、この人が抱える問題を明らかにするこ が形成されます。表面的な評価で 「意欲が無い」ととら とがまず必要です。就職したばかりだと、どう行動し え、 「もっと意欲を出して」 と指示するだけでは効果はあ たら良いのかわからないために、 「間違えないように、 がりません。新しい職員の気持ちにどうぞ焦点を当て まずはいわれたことから頑張ろう」と考える人も少なく て、 対応してみてください。そうすることで安心を生み、 ありません。また、最近では、年長者や上司とのコミュ その人の長所が発揮されていくことでしょう。 18 Vol.10 No.3 在 こ 宅 ぼ れ 話 太田 秀樹 先生 医療法人アスムス 理事長 〈第❶回〉 第❸回 Choosing wisely チ ュ ー ジ ン グ ワ イ ズ リ ー 97歳のよしさんは、大家族の農家の最長老だ。4 んだから、そんな態度で接せられるとなんとも複雑 世代が敷地内に住んでいる。最近まで野菜作りを手 な思いがめぐる。 伝っていたが、夏の終わりごろから全身が痛んで食 歩くことができなくなり、ほとんどベッド上での生 事も取らなくなった。布団から出てこなくなったので 活となったが、ひ孫の誕生に顔をほころばせたりと、 近所の病院に連れて行ったものの、原因がわからず 病状も安定した療養生活がしばらく続いた。突然の 入院することとなった。ところが「死んでもいいんだ。 発熱で緊急往診を依頼されたのは、そろそろ99歳の 家に連れて帰ってくれ」 と泣きながら訴える毎日であ 誕生日を迎えるころだった。黄疸症状が出て、腫瘍 る。見かねた長男が病院から勝手に退院させてし マーカーが相当上昇している。肝胆道系の腫瘍は間 まったから、さあ大変だ。ちょっとしたお家騒動に 違いない。既に転移があるかもしれない状態だ。臨 なりそうだったが、ヘルパーをしていた孫嫁が介護 床経過や検査値から病状を説明したが、一切の検 保険制度や在宅医療のことを知っていたので、さっ 査も積極的な治療も拒否だった。とにかく辛くないよ そくクリニックに相談にやってきた。すぐに往診した うにと緩和医療の方針とした。徐々にではあるが、 が、血沈 (ESR)が異常に亢進している。どうやらリ 衰弱が進んだ。臨床経過は、がんというよりも老衰 ウマチ性多発筋痛症らしく、プレドニゾロンが奏功 のように感じられた。 して、しばらくすると元気になっていった。痛みは良 状態がおかしいと連絡を受けたのは、誕生日を迎 くなったが、この年齢でしばらく寝たきりでいると筋 えて少し経った日の明け方だった。往診すると既に 肉が弱って、トイレにも行けなくなってしまった。そ 呼吸は止まっていたが、わずかに笑みを浮かべたよ こで、訪問看護を受けて在宅医療が始まった。 うな穏やかな顔だった。家族は慌てる様子もなく、 昭和の初期に隣村から歩いて嫁いできたらしい。 「昨夜は大好物のてんぷらを、おいしい、おいしいと まるで映画で観る花嫁行列を想像させるが、そんな 言って、食べたんですよ」 と満足げだった。不思議と 時代の人だ。農家の嫁として重労働に耐え、太平洋 悲しみに包まれる雰囲気はなく、訪問看護師と長男 戦争、高度成長期、バブル期と日本の近現代史を体 の嫁が笑顔でエンジェルケアを行った。 験し、ささやかながら幸せな暮らしがあった。夫は 今米国では、choosing wisely*という学術会議を とっくに旅立ち、馴染みの親戚はもういない。 「先生 巻き込んだ運動が展開されている。日本語にはなっ が来てくれるから家で死ねるよ」 と、手を合わせて拝 ていないが「賢明な医療の選択」 といえるだろう。よ まれるが、悲壮感がない。病気を治すはずの医師な しさんとその家族の選択はまさに、これである。 *:Choosing wisely 米国内科専門医認定機構財団が米国内の各学会等に、各分野において無駄な医療と思われる事項を5項目挙げ るよう依頼したところ、60以上の専門機関が不要と思われる検査や治療介入を挙げました。無駄だと思われる医療行為をリスト にして公表するこの取り組みはchoosing wiselyキャンペーンと呼ばれて2012年に始まり、全米に展開されています。 2015 年 冬号 19 フ ォ ー ラ ム 地域での生活を復権させる 在宅リハビリテーション 医療法人社団泰平会 理事長 城西神経内科クリニック …………………………………………………石垣 泰則 先生 在宅リハビリテーションは、病院でのリハビリテーションに比 べて、より患者や家族のQOL向上に役立つ可能性を持ってお り、各地で構築が求められている地域包括ケアシステムにお いても、大きな役割が期待されています。そこで、在宅リハビ リテーションに積極的に取り組んでいる城西神経内科クリ ニック (静岡県)理事長の石垣泰則先生に、在宅リハビリテー ●●●●●● ションの考え方やその実践について伺いました。 リハビリテーションとは 全人間的復権の医学 在宅リハビリテーション(以下、在宅リハ)という言葉につ いて、まだ普遍的な定義はありません。それ以前に、リハビ リテーションという用語に対する誤解があり、単に運動や訓 練をリハビリテーションだと思っている人が少なくないのが現 状です。 リハビリテーションの語源はラテン語で、 「再び人間として しかし生活の視点で捉えると、病院よりも在宅生活の方が ふさわしい状態にする」という意味です。医学的には生活機 患者にとって居心地が良くて暮らしやすく、高いQOLを保っ 能を改善し、障害を持ちながらも生活ができるように身体機 て生活することができます。また在宅で機能訓練を受けると 能を高め、その人が生活する場の環境を整えることです。 いうことは、実生活の場で訓練を受けることになりますので、 全人間的復権の医学といえるでしょう。 より実用的です。 在宅リハを分類すると、医療保険を利用して行う通院リハ ●●●●●● つまり在宅リハとは、在宅においてリハビリテーションを行 ビリテーション(以下、 通院リハ) と訪問リハビリテーション(以 専門職として在宅リハにかかわるのは、医師、看護師、リ 下、訪問リハ) 、介護保険を利用して行う訪問リハと通所リ ハビリテーションの専門職である理学療法士 (PT) 、作業療 ハビリテーション(以下、通所リハ)があります。なお介護認 法士 (OT) 、言語聴覚士 (ST) 、ケアマネジャー等です。現在、 定を受けている場合、介護保険は医療保険に優先されます。 各地でセラピストが積極的に在宅リハを展開していますが、 しかし例外として訪問看護ステーションから提供される訪問 それをさらに発展させるためには、地域でリハビリテーション リハは、訪問看護の一環として解釈されるため、難病やが のマネジメントができる医師が必要です。 んのターミナル期では医療保険が適用されます。 また、高齢者を含めた一般的な在宅療養者はもちろん、 病院と在宅におけるリハビリテーションの違いは次の通り 体力の消耗が激しい神経難病患者においては、栄養を十分 です。病院のリハビリテーションは疾病治療の一環として行 に摂っていただくことが大切です。そのため、管理栄養士の われるもので、訓練室が完備されており、1日のスケジュール 役割も重要になります。例えば医薬品の半固形化栄養材が が管理され、医師や看護師、セラピスト等の専門職によりプ 登場しましたが、これを活用することで投与時間を短縮して ログラムが進行します。 リハビリテーションにあてることもできますし、下痢や消化器 一方で在宅リハは、患者は生活者として自宅で生活をしな 症状も改善しますので、在宅リハと栄養の関連は大きいとい がらリハビリテーションを受けています。生活の場に医療者 えるでしょう。 や専門職が24時間いないことが、病院との大きな違いです。 そのほか介護職、音楽療法士、マッサージ師、盲導犬や うための活動全般を指しているのです。 20 Vol.10 No.3 在宅リハビリテーションが目指す 高いレベルでのQOL に捉えると、大きな財 政効果があるのではな いでしょうか。 一方で在宅リハのリ スクには、身体 機能の 問題をはじめ、訓練す る場や事故につながる 問題点について、医師 や看護師、セラピスト が十分に理解し、指導 をしていかなければなり ません。最も難しい問 題は、治療をする人と 患者・家族との人間関係 的なトラブルのリスクが 石垣先生が代表を務めるNPO法人静岡難病ケア市民ネットワークでは、静岡市の難病患者さんやその家族に対し、外出支援を中心とする社会参加促進事業、 医療・介護職への難病をテーマにした研修会等を実施しています。写真は、ALS患者さんによるハンドベル演奏会の様子。 あることです。患者や 家族との信頼関係をつ 介助犬を扱うような専門職等も、在宅リハにおいて役割を くり上げ、それを維持するために、患者や家族と同じ目線や 担っています。患者を取り巻く環境を考えると、家族はもち 気持ちで、互いに理解・信頼をして、人間関係を築いていく ろん患者の友人や隣近所の方々、地域の人たちをサポートす ことが大切です。 は外出困難な機能低下が著しい患者や、日常生活で介護の ●●●●●● る体制としての行政も重要です。 必要な人が対象となります。訪問リハというと、一般的には 単なる機能回復ではなく生活回帰という考え方に立ってリ 寝たきりの高齢者等の介護度の重い人が対象となるイメージ ハビリテーションに取り組むためには、その人の住んでいる があるかもしれませんが、実際にはあらゆるADLレベルの人 家での治療を考えなければなりません。生活の場をきちんと が対象になります。 把握したリハビリテーションでなければ、生活回帰という目 リハビリテーションの専門職は、その人の住環境や生活状 的を達成することができません。 態等を理解し、生活の場で指導し、社会活動につなげてい こうした在宅リハを実践するためには、患者にかかわる専 く流れをつくります。 門職が、それぞれの立場を通して生活の場で感じた問題点 当院の実績を少しご紹介します。訪問リハを受けている を共有して話し合うことが大切です。その上で、患者・利用 患者は約50人、通所リハに来ている患者は約280人、外来で 者をどこまでサポートするのか、サポートできるのか、どこま 医療保険の通院リハを受けている患者は120~130人です。 で頑張ってもらうのか、あるいはそれ以上頑張らないように 在宅リハを受けている人で最も多いのは脳血管障害です。 するのかなどという点も含めて検討します。また、地域にお 次いで骨粗鬆症に伴う骨折や運動器疾患です。また、最近 いて多職種がスムーズに連携できるためには、 メディカル・ソー 増えているのは、認知機能障害や難病患者です。その他、 シャルワーカー(MSW)が大きな役割を果たします。一般的 小児疾患の障害者については、成長して青年になった方も含 にMSWは病院からの退院支援を主な役割とするイメージが め、必要な支援が十分に受けられないということが、これか 強いかもしれませんが、患者を病院から受け入れる地域の ら大きな課題になってくると思います。 側にもMSWがいるとスムーズに話が進むため、当院には 在宅リハの目標は、QOLの向上であり、在宅リハがうまく MSWを配置しています。 機能した場合は、患者だけではなく、家族、友人、かかわっ 在宅リハは、 “One for all, all for one.” (一人はみんなのた た専門職に至るまで、幸せの輪が広がります。これはある意 めに、みんなは一人のために)だと私は考えています。専門 味で、地域づくりにもつながります。患者が自立することで 職の皆さんには、それぞれの地域で、リハビリテーションを 介護負担が軽減し、若い人が自立して働けるようになること 通して一人ひとりの力が、一人の患者、あるいはその地域の で、税金を使う立場から払う立場へと変わります。このよう 方々に伝わるような活躍をしていただきたいと思っています。 在宅リハを、訪問リハと通所リハに大別すると、訪問リハ 生活回帰の在宅リハビリテーション 〜One for all, all for one.〜 2015 年 冬号 21 5 フ ォ ー ラ ム チームで取り組む褥瘡対策 ∼彦根市立病院:褥瘡専門外来におけるチーム医療の実際∼ …………………………………………彦根市立病院褥瘡専門外来 ●●●●●● 平成26年度の診療報酬改定では、在宅における褥瘡対策の推進 が掲げられ、多職種で構成された在宅褥瘡対策チームが在宅患 者を訪問して褥瘡のケアにあたることを評価する「在宅患者訪問 褥瘡管理指導料」が新設されました。この多職種による在宅褥瘡 対策チームには、今後どのような効果が期待されるのでしょうか。 今回は褥瘡専門外来を通じて在宅患者の褥瘡対策を展開してき た彦根市立病院の取り組みに注目し、褥瘡対策におけるチーム医 療の実際と、在宅褥瘡対策の今後の可能性について紹介します。 褥瘡専門外来で在宅患者への チーム医療を展開 彦根市立病院では、2008年10月より形成外科の外来に週1回の 左から、管理栄養士の小野由美さん、皮膚・排泄ケア認定看護師の北川智美さん、形成外科医師の 伊藤文人先生。チームの中心となって多職種をコーディネートするのは、皮膚・排泄ケア認定看護師 の役割です。褥瘡の原因を聞き取り、療養環境を調整して原因を取り除きます。医師は主に患部の治 療を行い、管理栄養士は栄養評価を実施し、介入を行います。この3職種が中心となって、褥瘡対策 を行っています。 褥瘡専門外来は、毎週水曜日の午後に開設しています。受診する患者の8割は高齢 者、残りの2割は事故等による脊髄損傷の患者です。 褥瘡専門外来を開設し、地域の褥瘡対策に力を注いでいます。そ の特徴は、形成外科医、皮膚・排泄ケア認定看護師、管理栄養 たがって褥瘡専門外来は、単に褥瘡を治療する場としてではなく、 士を中心とする褥瘡対策チームが連携して対応していることです。 褥瘡に対して地域の人々を教育・啓発する役割を担う場にもなるべ さらにこの3職種に加えて、理学療法士、薬剤師、 医療ソーシャルワー きだと、形成外科医師の伊藤文人先生は考えています。 カー等の職種が必要に応じてかかわる柔軟な連携体制により、地 「在宅における褥瘡対策は何よりも、介護者が在宅でケアを継 域の褥瘡対策に精力的に取り組んできました。 続できるかどうかにかかっています。そのために医療者に求められ 同院には、褥瘡専門外来開設以前から、院内の褥瘡対策チー ることは、ベストな方法を一方的に提示するのではなく、その人た ムによって入院患者への褥瘡対策が進められてきた経緯がありま ちの日常生活のなかで無理なくできるベターな方法を、一緒に考え す。その取り組みにより、入院中に発生する褥瘡は大幅に減少しま て提案していくことに尽きるでしょう。やる気を支えて褥瘡対策へ したが、一方で課題となっていたのが、入院前から褥瘡ができて の意識をいかに高めるかが、外来では何よりも重要です」 しまっている持ち込み褥瘡の問題でした。そこで、入院患者の褥 こうした地域住民への教育的な働きかけを地道に積み重ねるこ 瘡を減らすためには、入院前の段階にも目を向けていく必要がある とで、当初は傷を見るのを怖がっていた介護者が積極的にケアに と考えて、院内で行ってきた褥瘡対策チームの活動を地域に広げ かかわるようになるなど、地域の人々の意識に徐々に変化があらわ ていくために、褥瘡専門外来を開設したのです。 れ始めました。 その褥瘡専門外来で皮膚・排泄ケア認定看護師として活躍する 例えば、介護施設で療養している高齢者に付き添って褥瘡専門 北川智美さんは、地域における褥瘡対策について、次のように考え 外来を訪れた介護職のAさんは、褥瘡の処置が始まると、女性の ています。 不安を少しでも和らげようとさりげなく手を握り、声をかけながらそ 「褥瘡は多様な要因が複合的に関与した結果として発生するもの ばに寄り添います。既に何度も外来を訪れているAさんは処置の流 ですから、単に傷を治療すれば良いだけではありません。療養環 れをよく理解しているため、こうした形で診療をサポートしています。 また、同じく施設の介護職として別の高齢者に付き添ってきたB 対策になります。その意味で、褥瘡対策は院内だけではなく、地 さんは、処置の内容をメモに取り、入浴の際の注意点等の具体的 域全体の問題として捉えることが重要です。そこで私たちは、これ なケアのポイントについて、細かい質問をしています。 までに院内で築き上げてきた褥瘡対策におけるチーム医療の体制 このように、介護者が褥瘡専門外来に繰り返し足を運ぶことで、 を、広く地域で生かしていこうと考えたのです」 褥瘡専門外来スタッフの一員としての意識が芽生え、外来の機会 ●●●●●● 境や食事の問題等、生活面からトータルに見直すことが根本的な 外来が地域啓発の場となり、 在宅褥瘡患者が減少 に普段のケアについても積極的に学ぼうとする介護者が、次第に 増えてきています。 こうして地域全体の褥瘡対策への意識向上は、在宅褥瘡患者 全身管理を行いやすい入院患者とは異なり、外来の場合には、 数の減少 (図)や重度褥瘡の減少につながり、院内への持ち込み 家族や施設の介護職等の介護者が日常のケアを行っています。し 褥瘡も少なくなっていきました。 22 Vol.10 No.3 「栄養的な介入は褥瘡対策の核と −彦根市立病院 褥瘡専門外来(2008年10月1日開設) − なるものですから、管理栄養士が臨 構成メンバー:形成外科医師、皮膚・排泄ケア認定看護師、管理栄養士、等 前期 (2008年10月∼2009年9月) 全褥瘡患者数= 65 重度褥瘡 28% 3 12 重度褥瘡 4 9% 7 床の場でそのスキルを存分に発揮し 後期 (2009年10月∼2010年9月) 全褥瘡患者数= 44 2 褥瘡重症度分類(褥瘡の深さ) 4 14 15 22 19 16 d0:皮膚損傷・発赤なし 在宅の現場に出向いていただくこと d2:真皮までの損傷 で、地域の褥瘡対策が大きく前進す D3:皮下組織までの損傷 るのではないかと期待をしています」 D4:皮下組織を越える損傷 D5:関節腔、体腔に至る損傷 チームで在宅現場へ働きかけることにより、在宅褥瘡患者数の減少、重度褥瘡の減少、早期治癒 をもたらした。 ●●●●●● また、同院の管理栄養士である 小野由美さんは、褥瘡対策における 管理栄養士のやりがいについて、次 治療日数 19.5日 図 彦根市立病院における在宅褥瘡対策チームの事例 は管理栄養士の皆さんに積極的に d1:持続する発赤 DU:判定不能 治療日数 25.5日 ていくことは不可欠です。これから 提供/彦根市立病院 のように語ります。 「臨床の場に出始めた当初は、ケ アの現場に慣れることができず、戸 惑いを感じていました。しかし、患 新制度創設を機に、 在宅褥瘡対策のさらなる推進を 者さんと向き合って栄養的な介入を 行ううちに、明らかに状態が良くなっ 褥瘡専門外来におけるチーム医療で成果が得られ ていく姿を見て介入の効果を実感す た一方、北川さんが問題意識を感じていたのが、患 ることができ、やりがいを感じるこ 者の通院負担が大きいことでした。そもそも褥瘡患 とができました。管理栄養士の必要 者の通院は、本人はもちろん介護者にとっても大き な負担です。そこで重症患者については、褥瘡対策 チームのスタッフが在宅へ訪問することにしました。 褥瘡専門外来風景。多様な職種がそれぞれ専門的な視点をもっ て治療に加わります。付き添いの家族や介護職に対して褥瘡ケア の啓発・教育を行って地域の褥瘡対策の意識を高めることも、褥 瘡専門外来の役割です。 性が制度上において認められたこと は大変喜ばしいことです。今後は、 褥瘡対策において管理栄養士として 患者宅への訪問を始めた後、その活動を後押しするかのようなタ の役割を全うしていけるように努めていきたいと思っています」 イミングで、在宅患者訪問褥瘡管理指導料(750点) が2014年度の 褥瘡には、 それを引き起こしている要因が必ず潜んでいるもので、 診療報酬改定で新設されました。これは、多職種から構成される その要因を取り除いていけば傷は着実に治癒へと向かっていくもの 褥瘡対策チームが、褥瘡予防や管理が難しく重点的な褥瘡管理が だと、北川さんはいいます。 必要な患者に対してカンファレンスと適切なケア等を実施した場合に 「治療や栄養的な介入等、行ったことの成果が目に見える形で 算定できるもので、病院の褥瘡対策チームが在宅を訪問して褥瘡 はっきりと表れることが褥瘡対策の良いところです。在宅の現場で 対策を行うこと (あるいは病院と訪問看護ステーションとの協働で在 も、良くなったことが実感できるような働きかけを患者さんや家族に 宅褥瘡対策チームを構成して、在宅での褥瘡管理をチームで行うこ 対して行い、在宅介護へのさらなるやる気を高めるようなかかわり と) に対して評価が行われます。この在宅褥瘡対策チームには、医 を続けていきたいと考えています。新制度によって、多職種による褥 師、看護師 (もしくは保健師、助産師、准看護師)、管理栄養士の 瘡対策を在宅で行う道が開けた今こそ、これを起爆剤にして、病院 3職種のかかわりが要件とされていますが、北川さんはここに管理 と在宅が互いに協力しながら、褥瘡対策をしっかりと進めていけれ 栄養士が明確に位置づけられたことに、大きな意義を感じています。 ばと思っています」 Run&Up̶ランナップ̶ 地域に暮らす人たちの健やかな暮らしを守るために、日々颯爽と街をゆく──。 そんな訪問看護師のみなさんのさわやかなイメージを言葉にしました。 表紙のことば …………………………………………………………………………………………………… 表紙「春よこい」 吹雪のなか、凍った大地の下で、 長い冬を耐えてきた動物や草花たち。 雪どけの水が滴る音、湿った土の匂いで、 指折り数えて待った春の訪れを感じる喜び。 世界が動き出す春、あなたは何をしたいですか。 ◎Run&Upの表紙には、 知的障害者施設を運営する社会福祉法人共生社 の「あじさいアート」 を使用しています。 〈あじさいアートのお問い合わせ先〉 社会福祉法人共生社 あじさい学園 TEL.0280-48-0431 E-mail : [email protected] 社会福祉法人共生社ホームページ http: //www.kyoseisha.or.jp/ ●発行月変更のお知らせ 2014年秋号を休刊させていただき、2015年冬号を特別増大号としてお届けします。 なお、今後は毎年5月、11月の年2回発行へと変更させていただく予定です。 (敬称略/五十音順) ●編集顧問 太田 秀樹 医療法人アスムス 理事長 川越 正平 あおぞら診療所 院長 ●編集アドバイザー 佐々木静枝 社会福祉法人世田谷区社会福祉事業団 看護師特別参与 ●編集委員 乙坂 佳代 一般社団法人横浜市港北区医師会 港北区医師会訪問看護ステーション 管理者 角田 直枝 茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター 看護局長 白井由里子 八幡医師会訪問看護ステーション 管理者 当間 麻子 一般社団法人在宅医療推進会 代表理事 Run&Up編集部 (FAX:03-3835-3040) まで、ご意見、ご質問をお待ちしています。 2015 年 冬号 23 15
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