通信<第1号>特許調査の話

通信<第1号> 平成 27 年 4 月 特許調査の話 特許文献の検索データベースである特許電子図書館(IPDL)が終了し、J-platpatに刷新され
ました。新たな機能が付加され、利便性が高められたようです。 平成 27 年 4 月から特許異議申立制度が創設(復活?)されたので、有効活用できればありがたいです。 しかし、異議資料となる特許文献を調査して探し出すことは難しいものです。特許庁において既に調査され
ていることもありますが、発明は技術的思想であるため抽象的な表現がなされていることが多く、うまくヒッ
トしてくれません。 そのような中、特許電子図書館にあった「特許分類検索」は、探し求める文献にヒットすることがよくあり
ました。この検索は、「特許・実用新案分類検索」(以下、特許分類検索と略す)として引き継がれています。 「特許分類検索」は、特許文献に付与された特許分類(FIやFターム)により検索でき、古い文献もヒッ
トします。明治時代の公報がヒットすることもあります。 FIやFタームは、特許庁が発明を内容ごとに分類し、出願審査における調査のために付与する記号です。
特許公開公報の第1頁に記載されている、”A47J47/00A”や”4B066CC16”などの記号です。 どのような発明にどのFIやFタームが付与されているかは、J-platpatの「パテントマップガイ
ダンス」で調べることができます。 しかし、FI分類表やFタームテーマコード一覧情報(テーマコード表)をご覧になったことがある方はお
分かりになると思いますが、これを見ても探し求める発明がどの分類に属するのかなかなか理解できません。 そこで、おそらく該当するだろうと思われる分類と同じ分類が付与されている公報を3件抽出して査読する
ことにより、おおよそどのような分類か判断できます。 異議資料を調査する場合は、特許庁の調査範囲を考慮しながら特許分類を選択するのがベターです。 FIとFタームはかけ合せて検索できるため、これらをうまく融合させて件数を絞り込むことができます。 特許電子図書館では「公報テキスト検索」において、Fターム×キーワードの検索はできませんでしたが、
J-platpatではできるようになりましたので、これも活用できそうです。ちなみに、FI×キーワー
ドの検索は従前からできました。 これら検索を組み合わせて調査精度を上げていき、探し求める文献に遭遇できれば御の字です。 特許調査をなされるときはFIやFタームを用いた特許分類検索をうまく活用することをお薦めします。 また、有料になりますが、㈱野村総合研究所が提供している”NRI サイバーパテントデスク2”という検索デ
ータベースがあります。”PATOLIS 抄録”という独自の抄録や”概念検索”という発明概念などから検索するこ
とができ、別の観点から調査することができます。これらについては別の機会にご紹介します。 余談ですが、単純な発明は案外見つけ出せません。おそらく特許性がないと判断して誰も出願しないからで
しょう。そのため、当たり前と思われる技術が特許になってしまうことがあります。『当たり前特許』などと
呼ばれています。 文責:弁理士
栗原
弘 参考文献 (1)鈴木
利之「特許電子図書館を使った先行技術調査」パテント 2007 Vol.60 No.6 (2)酒井
美里「知財部員のための侵害予防調査」知財管理 Vol.65 No.2 2015 (3)尼崎
浩史「無効審判において新規性無と判断された事件から考察する精度の高い調査方法」パテント 2014 Vol.67 No.1