回復期脳卒中患者の歩行に対する満足度へ関連する因子 奈川英美 1、2、対馬栄輝 2、石田水里 3、上川香織 2、4、原子由 1、岩田学 1 保健学研究科、 3 鳴海病院リハビリテーション部、4 弘前市立病院 1 弘前脳卒中・リハビリテーションセンター、2 弘前大学大学院 キ ー ワ ー ド ; 脳 卒 中 患 者 ・ 歩 行 ・ 満 足 度 【目的】 本邦において、脳卒中患者の歩行に対する満足度とそ の関連する因子を調査した研究は少ない。ここでは、回 復期病棟に入院している脳卒中患者の歩行に対する満足 度へ関連する因子を明らかにすることを目的とした。 【方法】 回復期病棟に入院する脳卒中患者 20 名(男性 15 名女 性 5 名、平均年齢 63.4±11.8 歳、発症からの平均期間 82.3±38.8 日)を対象とした。被検者は、装具・補助具 の使用を問わず近位監視~自立で 20m以上歩行可能な 者とした。測定項目は、下肢ブルンストロームステージ (Br.S) 、下肢感覚障害の有無、下肢 modified modified ashworth scale(MMAS)、Berg Balance Scale(BBS) 、下 肢関節可動域(ROM) 、下肢荷重量、下肢筋力、10m歩行 時間、歩容、歩行満足度とした。下肢感覚障害は、足底 の表在感覚と、下肢各関節の深部感覚を測定した。下肢 MMAS は、股関節屈曲筋・伸展筋・内転筋、膝関節屈曲筋・ 伸展筋、足関節底屈筋を測定した。下肢 ROM は股関節伸 展・外転・内転・内旋、膝関節伸展、足関節背屈を測定 した。下肢筋力は、股関節屈曲筋・伸展筋・外転筋、膝 関節伸展筋、足関節底屈筋を、徒手筋力測定(MMT)で 3 以上か否かを記録した。10m歩行時間は、被検者に 16m 歩行路を、可能な限り速く歩行させ、中間 10mの歩行時 間を計測した。歩行時は、日常生活あるいは歩行練習時 に使用している装具・補助具を使用させた。歩容の評価 は、自作の歩容評価表を用いた。脳卒中患者に対して用 いられる Tinetti gait assessment、Wisconsin gait scale、Rivermead visual gait assessment の 3 つを統 合、一部改変し作成した。歩幅・クリアランス・遊脚期 の膝関節屈曲の有無・分回しの有無などの、25 項目で構 成され、1 項目の選択肢は 2 ないし 3 である。合計点は 25~72 点となり、点数が高い程正常からの逸脱が多いと 判断できる。被検者に 10m歩行路を快適歩行速度で 1 往 復してもらい、中間 5mの歩行を矢状面・前額面の 2 方 向からデジタルスチルカメラ(CASIO 社製 EXFH100)で 撮影した。歩行時は、日常生活あるいは歩行練習時に使 用している装具・補助具を使用させた。撮影したビデオ 映像を、検査者 2 名に観察させ、事前に信頼性が高いこ とを確認した自作の歩容評価表を用いて、歩容を評価し た。 歩行満足度は、 Visual analogue scale(VAS)を用いた。 床に垂直となるように対象者に提示し、上端は最も満足 している状態、下端は最も不満足な状態とし、現在の歩 行状態についてどのくらい満足しているか印をつけさせ、 下端から印までの長さを記録した。統計解析は、歩行満 足度と各測定項目について、 差の検定と Spearman の順位 相関係数を用いた。有意水準は p=0.05 とした。 本研究はヘルシンキ宣言に基づき、対象者へ研究の意 義、目的、方法などの説明を行い、書面上で研究協力の 同意を得た。なお、本研究は弘前大学医学研究科倫理審 査員会による承認(整理番号 2013-175)を得て実施され た。 【結果】 歩行満足度と相関のある測定項目は、足関節底屈筋力 (Mann-Whitney 検定 p<0.05;効果量 r=0.49)のみであ った。そして足関節底屈筋が MMT3 以上だった症例は 3 例であった。また他の測定項目については有意確率が 5%を超え、 有意な差または相関があるとはいえなかった。 【考察】 足関節底屈筋は、下肢の麻痺が軽度の場合でも痙性や 筋力低下を生じやすく、脳卒中患者において、障害を受 けやすい筋である。しかし、歩行中は立脚後期に前方へ の推進に寄与する重要な筋である。このことから、足関 節底屈筋力が MMT3 以上ある症例は、身体機能・歩行能力 の低下が少ない症例といえる。故に、現在の歩行に関し ての満足度を、病前と比較して考えた場合に変化が少な く、歩行満足度が高くなったと考える。 今後は、回復過程や退院後の変化を含めて検討する必 要がある。 【まとめ】 回復期病棟に入院している脳卒中患者の歩行に対す る満足度へ関連する因子を検討し、足関節底屈筋力のみ が選択され、他の因子は関連が認められなかった。
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