前回資料への追加(10/23) • 音楽の「枠構造」 – 調・調性 (音高についての枠構造) – 拍・拍節 (時間についての枠構造) • 「枠構造」(ここだけの言葉) – 曲の各音の意味・役割・関係を理解するために作 用している「文脈」 – 枠構造自体、曲の各音から形成・認識される ⇒ 曲の認知過程において「循環性」がある 1 調・調性(1) 概要 • 調性音楽(調性感のある音楽)は特定の「調」に基づいて いる。 • 調(key) – 特定の音高集合に属する音(音階音)よりなる。 – 構成音は調内で固有の役割を担う。 ⇒ 構成音間の音程は不均等配分 特に中心となる音を「主音」、「核音」などと呼ぶ。 • 7音音階(heptatonic scale)、5音音階(pentatonic scale) など。 • 西洋調性音楽(Western Tonal Music) 長旋法(major)、短旋法(minor)の2つの mode が中心 2 調・調性(2) 用語 • 調性(tonality) – 曲が特定の音高集合により構成され、またそれにしたがって認識さ れる(ような音楽である)こと。 • 旋法(mode) – 調性を形成する抽象的な音高同士の関係(音高相互の音程の集合) – 「音高の相対性」参照 • 主音(tonic 等) – 調の中心となる音。1つの調には1つの主音が普通だが、中心となる 音を複数想定する場合もある(核音:テトラコルド理論) • 調(key) – 旋法と主音を決めることにより確定する音高集合 • 音階(scale) – 調を構成する各音の音列 • 和音(chord) – 複数の音を同時(的)に鳴らしたもの • 和声(harmony) – 和音を連ねた和音列により得られる構造 3 調・調性(3) 音高の相対性 • 音同士の相対的な音高差(音程)による関係は、 各音の実際の音高の如何に拠らない – 曲全体の音高を平行に上げ下げしても、曲としての認 識には変化がない、ということ – 例えばカラオケで「自分のキーで歌う」といった場合、 どのキーであっても歌われる曲に違いはない • 調が旋法と主音により決まることの基礎 – ハ長調、ニ短調、... – オクターブ等価性(循環性):オクターブ違っても調とし ては同じと認識される 4 調・調性(4) 音階(再掲) • 音階(scale): 特定のジャンル・様式の曲が用いる音高集合、及 び各音に機能(役割)を付したもの。 • オクターブを周期とするのが普通。 • 西洋調性音楽: 7音音階(長旋法、短旋法) – オクターブを12半音に分ける。全音:2半音 – 長旋法 全 全 半 全 全 全 半 ●ー・ー○ー・ー○ー▲ー・ー■ー・ー○ー・ー○ー○ – 短旋法(自然短音階) 全 半 全 全 半 全 全 ●ー・ー○ー○ー・ー▲ー・ー■ー○ー・ー○ー・ー○ ●:主音(tonic) ■ :属音(dominant) ▲ :下属音(subdominant) 5 調・調性(5) 音階 • その他の音階 – 教会旋法(Church mode) 現在の西洋調性音楽に先行する旋法 – 民族音楽:5音音階(pentatonic)が多い • 日本の音楽の多くは5音音階 いわゆる「ヨナ抜き」音階 「君が代」は雅楽の音律の「壱越調」(いちこつちょう) • 音階音が上行/下行で異なる場合もある – 例: 旋律的短音階 • 民族音楽では音階音の音高に幅のあるものも多い 6 音程による関係: 半音円 (Chromatic circle) B C B♭ C♯ A D A♭ E♭ G E F♯ F 7 5度円 と調号 8 5度円 と調号 ♭1 F C 0 ♭2B♭ G ♯1 ♭3 E♭ D ♯2 ♭4 A♭ A ♭5 D♭ E F♯ ♯6 ♭6 B ♯3 ♯4 ♯5 9 音程分布 • 長旋法 全 全 半 全 全 全 半 ○ー・ー○ー・ー○ー○ー・ー○ー・ー○ー・ー○ー○ • 短旋法 全 半 全 全 半 全 全 ○ー・ー○ー○ー・ー○ー・ー○ー○ー・ー○ー・ー○ • 音程分布(6半音以内): 総数 7C2 = 21 音程(半音) 1 2 3 4 5 6 個数 2 5 4 3 6 1 • 各音程ごとに個数が異なる: 偶然?必然? 10 Tonal Pitch Space (音高関係の幾何的表現) 11 調・調性(6) 性質 • 調によって曲全体の「枠」となる雰囲気・印象が決まる。 – 長調: 明るい、元気な、... – 短調: 暗い、沈んだ、... • 基本的には1つの曲は1つの調に基づくが、曲中で一時的 に調が変わることも多い(転調 modulation)。 • 曲全体の調(大域調)は統計的手法など、比較的単純な方 法でも抽出できる。 しかし各部分での調(局所調)を割り出すのはかなり難しい。 ⇒ 人間にとっては直観的に自明? 12 拍・拍節(1) • 通常の音楽は、一定の時間間隔の繰り返しの上に展 開される。 • 拍・拍節に関する用語等 – 拍(pulse, beat) 基準となる音の長さ(4分音符等) – 小節(measure) 拍をいくつかまとめた音楽的な単位 – 音価(time value) 拍の長さを表す抽象的・相対的単位 4分音符、全音符、付点2分音符等 – 拍子(time) 小節あたりの拍数の指定。音価で表す 2/4, 3/4, 4/4, 6/8, 3/16, ...(分母は 2 のべき乗) – テンポ(tempo) 音価を時間長に対応づけたもの。曲の速さを表す 13 拍・拍節(2) • 拍節(meter)は全体として階層構造をなす。 階層構成: 「2・3等分の原理」 – 1曲の途中で拍子が変わることはまれ。 • 実際の演奏では、楽譜上の音長通りに演奏されるわけでは ない。 ⇒芸術的・意図的逸脱 • したがって拍節の認識(ビートトラッキング)はそれ自体が重 要な研究課題になる。 ⇒ 人間の場合、直観的に自明? • 変拍子もある(5拍子、7拍子等) • 現代音楽や民族音楽等では特定の拍・拍子を持たないもの、 拍子が絶え間なく変わるものもある 14 2等分・3等分の原理 • 時間長は、2ないし3等分(2ないし3倍)の 長さで階層的に構成される。 • 3/4 と 6/8 15 ヘミオラなど • 自然なグルーピング • 拍節境界と異なる 16 楽譜上の表記・記号 音部記号 (ト音記号) 調号(変ロ長調/ニ短調) 拍子記号(3/4) 小節線 音符(四分音符) • 音部記号: ト音記号、ヘ音記号が普通 – 他にハ音記号(ソプラノ/アルト/テノール)等 • 調号からは長調か短調かわからないこと に注意(楽譜記法の1つの問題点) 17 参考:すべての調がある曲集の例 • 長調/短調×主音12通り=24曲 • バッハ(Johann Sebastian Bach) 平均律クラヴィーア曲集(1,2巻) BWV 846~869, 870~894 – 各曲とも、前奏曲とフーガが一対になっている • ショパン(Frederic F. Chopin) 24 の前奏曲 op.28 • ショスタコービッチ(Дмитрий Д. Шостакович: Dmitrii D. Shostakovich) 24 の前奏曲とフーガ op.87 18
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