Jpn J Extra-Corporeal Technology 39(3),2012 一般演題 1 研究開発 O-1-1 O-1-2 抵抗線ひずみゲージを用いたローラーポンプの圧閉度 評価法の実験的検討 数値流体解析に基づく小児用膜型人工肺の設計開発 埼玉医科大学 保健医療学部 医用生体工学科 1)東京電機大学大学院 理工学研究科 2)東京電機大学 フロンティア共同研究センター ○ 奥村 高広、小野寺 勝浩、見目 恭一 智哉 1)、幡多 徳彦 2) ○ 青木 達哉 1)、柴田 1) 1) 福井 康裕 、舟久保 昭夫 【緒言】 【緒言】 現在、ローラーポンプの圧閉度は、回路内の液面降下や 圧力降下速度により調整されているが、目視観測による手 小児専用の人工肺では、患者負担を低減させるため低血 液充填量で小型の人工肺が望まれている。 法のため施行者により誤差を生じるという報告がある。 我々は、ローラーのポンプチューブの圧閉を介したポンプ 数値流体解析(Computational Fluid Dynamics)による 人工肺設計を行うことで、血液流れを最適化し、有効膜面 ヘッドへの押付け荷重の測定による定量的な圧閉度調整法 を検討しており、今回、抵抗線ひずみゲージを用いたひず 積を増加させ、更なる人工肺の小型化が可能であると考え られる。人工肺内の血流状態は人工肺の形状、特に流入流 み計測により圧閉度を評価する基礎実験を行ったので報告 する。 出ポート形状に大きく左右される。そこで本研究では、 CFD に基づいて人工肺のポート形状を変化させることで、 【方法】 実験には 2 ローラー式ポンプを用いた。厚さ 0.1mm の 人工肺内の中空糸膜を最大限に使用し、血液の停滞・偏流 のない均一な血液流れを可能とする人工肺の開発を目的と りん青銅板試験片にひずみゲージを接着したセンサーを作 製し、チューブとポンプヘッド周壁の間に設置した。セン した。 【方法】 サー直上で JIS に基づいた滴下数による調整にて、圧閉度 を不完全圧閉から滴下間隔が 1 分以上となる完全圧閉まで 本研究では、3 次元ソリッドモデラで人工肺形状を設計 し、汎用数値流体解析ソフト STAR-CCM+を用いて人工 調整し、その間の試験片に生じるひずみを計測した。ひず みは押付け荷重に比例することから、圧閉度(滴下間隔) 肺内の血液流れの解析を行った。設計条件は、血液充填量 71.22mL、有効膜面積 0.5m2、中空糸外径 225µm とした。 とひずみの関係を計測して本手法の有用性を検討した。ま た、センサーを設置した状態で滴下間隔 6 秒(適正圧閉) 解析条件は、人工肺の中空糸充填率 40%、境界条件は壁 面滑りなし、流出部を自由流出とした。流体は比圧縮性 に調整後ポンプを駆動させ、回転数ごとのひずみ変化を記 録し、ポンプ駆動中の圧閉度モニタリングに関する検討を ニュートン流体とし、粘性 3.3cP、密度 1,060kg/m3 の温 行った。 【結果】 度 37℃における一般的な血液の特性条件を加えた。 【結果および考察】 CFD シミュレーションによる解析結果より、新たに開 滴下間隔とひずみとの関係の 10 回の計測(n=81)の 結果、計測ごとの値は大きくばらついたが、2 変数に有意 な正の相関(r=0.86、p<0.01)を認めた。また、ポンプ 駆動時、ひずみは回転数の 2 倍の周波数にて一定振幅で変 動し、その振幅および最大値は回転数と有意な負の相関(r =−0.91、p<0.05)を示し、最小値は正の相関(r=0.87、 p<0.05)を示した。 【考察】 滴下間隔とひずみとの関係から、押付け荷重による圧閉 度調整の可能性が示唆された。ただし、センサーに対する チューブの上下のずれによると考えられる計測値のばらつ きがみられ、定量評価を行うためには計測方法の改良が必 発した人工肺形状では、市販人工肺形状と比べて圧力損失 で 10.38%、膜部内平均流速で 3.28%、膜部内流速標準偏 差で 60.78%のいずれも向上が確認された。市販人工肺形 状では流入流出ポートが一直線上にあるため膜中央部に血 液が集中的に流れる偏流が発生しやすい。 一方新形状では、 血液を膜に対して平行に流入する形状にすることで血流の 偏流を解消することができた。 【結論】 人工肺の流入流出ポート形状について CFD に基づいた 設計を行うことで、人工肺内において血流よどみのない均 一な血液流れを可能とする人工肺形状が開発できた。 要と考える。また、ポンプ駆動中の押付け荷重の変化をモ ニタリングすることは可能であるが、回転数による振幅変 化を換算した評価が必要であることが示唆された。 【結論】 押付け荷重の計測によるローラーポンプの圧閉度調整お よび圧閉度のモニタリングの可能性が示唆された。 体外循環技術 Vol.39 No.3 2012 319 O-1-3 O-1-4 オートマチック in vivo キャリブレーション機能による 圧力測定精度に関する実験 IABP 駆動装置における駆動圧ベースライン異常波形の 解析(第 1 報)―corart BP21-T の異常波形について― 北里大学病院 ME センター部 1)加古川東市民病院 臨床工学室 2)泉工医科工業(株)ヒューマンシステム部 ○ 木下 春奈、東條 圭一、藤井 正実、宮地 鑑 【目的】 洋平 1)、真島 駿太 1)、前田 真由美 1) ○ 尹 成哲 1)、梅田 1) 1) 1) 岡 佳伴 、村井 俊博 、三木 悠資 、長谷川 靖 2) 【緒言】 近年、IABP カテーテルは細径化され、バルーン先端に 圧力センサーを内蔵した製品が販売されている。MAQUET 近年、泉工医科工業社製 IABP 駆動装置 corart BP21-T (BP21)と 7Fr の IABP バルーン使用中の間歇駆動時に駆 社製 IABP カテーテル TRANS-RAY は、光ファイバーを 使用した先端圧の測定が可能で、専用駆動装置はオートマ 動圧ベースライン(ベースライン)が異常に上昇する現象 が頻発するようになった。そこで今回、ベースライン異常 チック in vivo キャリブレーション(オートキャル)機能 を有している。そこで今回我々は、オートキャル実施時の 波形発生のメカニズム解析を目的に、流体模擬回路を用い て検討を行った。またバルーンの細径化と留置時のカテ落 圧力測定精度に関する実験を行ったので報告する。 【方法】 ちも一因と考え、バルーンインナーシャフトの先端荷重に ついても検討した。 実験回路として、人体の血管抵抗やコンプライアンスを 模擬した測定回路を作製した。回路内は 40%グリセリン 【対象および方法】 VAD を用いた流体模擬回路を作製し IABP を駆動させ、 溶液を充填し、拍動流送血可能なローラーポンプを用いて 灌流条件を変更し、血圧トランスデューサーを用いて測定 バルーン内圧の計測と収縮・拡張状況の観察を行った。バ ルーンは東海メディカルプロダクツ社製(TMP)7Fr 30mL、 した疑似血圧(回路内圧)と IAB 先端圧(先端圧)を測 定しオートキャル機能の精度確認を行った。灌流条件は回 8Fr 35mL、泉工医科工業社製(MERA)7Fr 28mL(A2)、 8Fr 30mL(P2)を使用した。また、バルーン部先端荷重 路内圧、拍動数、循環水温を変化させそれぞれ測定を行っ た。 についてはバルーンプロキシマル接合部をグリップし、イ マダ社製プッシュプルスケール(DPS-5)にて各 3 回測定 【結果および考察】 低回路内圧でオートキャルを施行した場合、回路内圧 した。 【結果】 180mmHg 以上の先端圧で低値を示したが、それ以下の場 合はその他の測定系誤差を含めた許容範囲内であった。た 7Fr バルーンが 8Fr に比較しベースライン異常波形の再 現 性 が 顕 著 に 高 か っ た。 先 端 荷 重 は 7Fr、TMP 16.3g、 だし、この低回路内圧は IABP 装置のオートキャル実施範 囲外であるため患者使用には影響ないと考えられた。拍動 MERA 21.3g、8Fr、TMP 25.0g、MERA 35.0g であった。 【考察】 数の変化に対する測定では先端圧はすべて許容範囲内で あったが、拍動数が増加するにつれ誤差が大きくなる傾向 ベースラインの異常波形は、近年のバルーン細径化に伴 うインナーシャフトの軟性増加とバルーンのたわみによる がみられた。そのため、オートキャル施行時の先端圧は灌 流条件により変化することがあるため、患者の状態が大き プロキシマル部の吸い付きにより起こったと考えられる。 また、先端荷重が低値なバルーンほど吸い付きが起こりや く変化した場合にはマニュアルゼロ調整を行うなどの注意 が必要であると考えた。また、温度変化による先端圧の影 すい傾向であった。BP21 は応答性を高めるためにダイア フラムとバルーン間に予圧弁があり、その制御により、吸 響は見られなかったことから、低体温療法実施患者に対し てもオートキャル機能は使用可能であると考えた。 い付きによるヘリウムガスの戻り遅延と予圧弁閉鎖後のカ テーテル側からのヘリウムガスの戻りがベースライン異常 【結語】 この実験においてオートキャルによる先端圧測定はその 精度が十分保たれていたことから、臨床使用においても信 頼性のある測定が可能であると考える。 波形を発生させる主因であると推定される。 【結論】 corart BP21-T におけるベースライン異常波形の原因の 解析を行った。バルーン細径化に伴うインナーシャフトの たわみによるプロキシマルシャフト部の吸い付きが原因で あると推定された。 320 体外循環技術 Vol.39 No.3 2012 Jpn J Extra-Corporeal Technology 39(3),2012 一般演題 2 O-1-5 装置 評価 O-2-1 IABP 駆動装置における駆動圧ベースライン異常波形 の解析(第 2 報)―予圧弁制御方式を改良した対策ソ フトウェアの開発― 人工心肺装置の違いにおける高圧アラームとローラー ポンプ自動制御反応時間の比較 1)加古川東市民病院 臨床工学室 2)泉工医科工業 (株)ヒューマンシステム部 独立行政法人 国立循環器病研究センター 臨床工学部 洋平 、真島 駿太 、前田 真由美 ○ 尹 成哲 、梅田 岡 佳伴 1)、村井 俊博 1)、三木 悠資 1)、長谷川 靖 2) 1) 1) 1) 1) 【緒言】 ○ 池宮 裕太、西垣 孝行、小川 浩司、高橋 裕三 松本 泰史、畑中 晃、中崎 宏則、守田 佳保里 林 輝行 【緒言】 泉工医科工業社製 IABP 駆動装置 corart BP21-T(BP21) における駆動圧ベースライン異常波形発生のバルーン側の 人工心肺(CPB)装置の圧力センサーに連動する高圧ア ラームやローラーポンプの自動制御機能は、CPB におけ 要因として、バルーン細径化に伴うインナーシャフトのた わみによるプロキシマルシャフト部の吸い付きが原因であ る安全装置設置基準(第 3 版)にも記載され、トラブルの 早期発見に有用であると考えられている。しかし、これま ることを第 1 報で明らかにした。今回、BP21 駆動器側の 要因として、他社ダイアフラムコンプレッサ型駆動器には でに高圧アラームや自動制御機能における CPB 装置の反 応時間の違いについて調査した報告は見られない。本研究 ない予圧弁制御がベースライン異常波形発生の一因と仮定 し、予圧弁制御の方法を変更した対策ソフトウェアを開発 では、SORIN 社製 S5 システムと MERA 社製 HAS-Ⅱの 高圧アラームと自動制御機能の反応時間を基礎的に測定し した。 【予圧弁制御方法と対策ソフトの検証】 比較検討した。 【方法】 バルーン deflation 開始時に予圧弁を開放し、deflation エンドを予測し閉鎖する。予圧弁閉鎖後にバルーンから曳 両 CPB 装置の圧力センサーには Edwards 社製ディス ポーザブル圧トランスデューサーを使用し、高圧アラーム き切れなかったヘリウムガスが移動するため、間歇駆動時 の休止拍に駆動圧の上昇が発生する。休止拍の deflation を 450mmHg、 自 動 制 御 を 500mmHg に 設 定 し た。 両 CPB 装置の圧力センサーは同一箇所の回路内圧を同時に タイミング時に予圧弁を開放するため上昇した圧はベース ラインまで下がる。そこで、間歇駆動時は予圧弁閉鎖のタ 測定するために繋ぎ合わせ、回路内圧はシリンジを用いて 手動で調節した。高圧アラームと自動制御機能の反応時間 イミングを休止中の deflation タイミング直前まで遅らせ ることで、ヘリウムガスを装置内へ完全に戻し、ベースラ は、急激に回路内圧を上昇させた時点から S5 システム(S 群)と HAS-Ⅱ(H 群)それぞれのローラーポンプが自動 インの上昇を防止する対策ソフトウェアを開発した。そこ で、流体模擬回路にて対策ソフトウェアの有用性を検証し 制御で停止するまでの時間(T-stop)と高圧アラームが反 応するまでの時間(T-alarm)を測定(n=12)した。両 た。 【結果】 CPB 装置の反応時間は、実験状況を撮影して動画ソフト を用いて計測し student t-test を用いて比較した。 流体模擬回路にて、従来ソフトでベースライン上昇波形 を再現し対策ソフトに切り替えた。予圧弁閉鎖の時間を延 ばした対策ソフトウェアでは異常波形は消失し、その後も 出現しなかった。 【考察】 ベースライン異常波形発生の原因は今日のバルーン細径 【結果】 T-stop は、S 群 0.79±0.16 秒、M 群 0.29±0.07 秒 と M 群が有意に短かった(95%信頼区間 0.39-0.64、p<0.001)。 T-alarm は、S 群 3.03±0.33 秒、M 群 0.68±0.26 秒と M 群 が有意に短かった(95%信頼区間 2.09-2.59、p<0.001)。 【考察および結語】 化等の進化と BP21 の特性としての予圧弁とのミスマッチ により発生したと考える。そこで今回、機械側の予圧弁制 高圧アラームと自動制御機能の反応時間は、CPB 装置 のメーカーによって異なることが示された。自動停止まで 御方法の変更による対策を行った。対策ソフトウェアでは、 予圧弁の特性を残し、かつ異常波形の消失に成功したと考 の時間が長ければ自動停止後の最大回路内圧も上昇し、回 路破綻の危険性が上昇するため、自動制御の圧力設定は各 えられる。また、この異常波形は通常、陰圧領域での現象 であるが、使用環境の条件によっては陽圧を示す場合もあ メーカーの性能を考慮する必要があると考えられた。また 高圧アラームの反応時間は両 CPB 装置の間に 2 秒以上も るため、予圧弁制御方法を改良した対策ソフトウェアは有 用であると考えられる。 差を認めたことから、この差を十分に考慮して使用すべき であると考えられた。 【結語】 予圧弁制御方式の変更した対策ソフトウェアの開発によ りベースライン異常波形は消失した。 体外循環技術 Vol.39 No.3 2012 321
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