「話の要点をつかむことが難しい生徒が、要点を聞き取って整理することが

進路 個別教材グループ
「話の要点をつかむことが難しい生徒が、要点を聞き取って整理することができる」
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テーマ設定の理由
卒業後に様々な仕事を行う上で、周囲の人から様々な指示や説明を受けることが増えてくる。しか
し対象生徒の実態を知る中で、口頭での指示や説明から要点を聞き取ったり整理したりすることへの
困難さを感じた。そこで指示や説明から要点を聞き取り整理する力を身につけさせたいと考え、この
テーマを設定した。
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対象
高等部1年生 生活国語 F グループ6名(男子3名、女子3名)。認知・理解および入学時の学習能
力において学年内で2番目に高い学習集団として構成されている。卒業後の進路としては、就労移行
支援・就労継続支援・作業活動の多い福祉施設などが想定される。一問一答のような短い問題や指示
についてはおおむね理解し答えることができているが、
「誰が・いつ・どこで・何を・どうする」とい
った複数の要点を含む指示では聞き漏らしや聞き間違いが多くみられていた。
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目標
『メモを取るという学習活動を通して、指示や説明の要点を聞き取り整理する力を身に付ける。
』
メモを取ることは、話の内容を整理し理解するための一般的な手段である。一度聞いただけでは忘
れてしまいがちな言葉であっても、メモに残すことで後から確認することができ、ミスや失敗の防止
に繋がる。
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支援の手立て
(1)生徒の実態に応じたメモ帳の作成
・生徒が一度に聞き取ることのできる情報量や書く速度などに合わせ、メモ帳の記入欄を調節する。
・ヒントの書かれた穴埋め→箇条書き→罫線のみと、実態に応じて順次ステップアップを図る。
(2)生活国語の授業内で、メモ帳を使った聞き取り学習の実施
○活動内容は
①指示の中からポイントの言葉を聞き取る ②聞き取った言葉をメモ帳に書く
③書いたメモを見ながら報告をする
④メモを伏せて質問に答える という4段階で行う。
○③の報告は、仕事の基本となる「作業が終わったら報告をする」という流れに沿いながら、自発的に
ミスに気付いて訂正するという意識付けを図っている。
○④の場面では内容の確認だけでなく、
「メモを取ることで指示や説明のポイントを整理して覚えること
ができる」ということを実感してほしいと考え取り入れている。
○指示の内容は「いつ・どこで・なにをする・持ち物(4点以内)
・その他」を基本として、徐々に複雑
な指示を加えていく。
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結果および考察
メモ帳を使った学習活動を開始してから4カ月が経過した現在では、生徒の一度に聞き取ることの
できる情報量が増えてきた。また、一部の生徒は「青いバケツに水を入れる」という指示を「青→水」
と書くなど、自分の頭の中で情報を整理して要点のみを書き出したり言葉を省略したりといった工夫
が見られるようになった。指示の中で聞き逃した言葉がある場合にも、以前は「分からない」
「どうす
ればいいの」と困惑していた生徒が、学習を通して「○○をもう一度教えて下さい」と的確に聞き返
すことができるようになった。
一方で、
「聞き返せば答えてくれる」という安心感からか、一つひとつの指示を順番通りに書くこと
を優先して先の情報に意識が向かない様子もみられる。また、指示の内容を言った通りに全て書き取
ろうとするため要点のみを書き出すことが難しい生徒もいるため、
「話の要点を整理する」という点に
ついてまだ課題があると考える。
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今後の課題
上記のように、先の情報を追う意識の不足や話の要点を整理するという点に課題がみられている。
そこで、今後は先の情報に対する意識付けや要点を書き出す学習をさらに深めてきたい。
具体例としては、まず指示を読む速度の調節や聞き返しに対する制限などを通して「書いている間
も指示はどんどん進んでいく」ということを改めて確認させる。次に、指示の内容を文章に書き出し
て要点がどこかを視覚的に確認させる活動や、要点の単語だけが書き込めるように空欄を指定したメ
モ帳などを通して、話の要点を把握しやすくなるよう取り組んでいく。
また、指示の内容をさらに実践的なものに変えていく他、生徒の実態に沿ってメモ帳の形式を工夫
しながら実際の生活場面での活用につなげていきたい。