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エンゼルケア
遺族ケア 死後の処置 エンゼルメイク
こうなんクリニック
看護師 片岡歓子
H27年4月17日(金)
18:00~19:00
遺族ケア
Ⅰ死亡状況
1)覚悟していた死
2)予期していた死
3)突然の死
1)覚悟していた死・・・余命告知、高齢者など
→患者の死後、比較的早期にパニック状態から
平常心を取り戻す傾向がみられる。
2)予期していた死・・・手術後(病状)の急変
3)突然の死・・・内因性急死、不慮の事故
→死亡直後、遺族はショックを受け、混乱している。
混乱状態は数分から数時間、数日かかることもある。
Ⅱ 遺族ケアの目的
 遺族が悲しみから回復へ向かうための援助
1)死の受容への援助
2)セルフケア機能向上への援助
(喪失からの回復、立ち直り、希望を見出す)
Ⅲ遺族ケアの実際
 看取りとは・・・
臨終に付き添うことや患者のそばでいろいろ
世話をすることをいう。
そばにいなくても今までお世話をされた
ことへの言葉かけをすることで、
グリーフケアに繋がる。
看取りが行われたケース
(在宅医療など)
 喪失による悲哀から回復への心の営みは、遺族
自体が乗り越えなくてはならない宿命である。
医療者はその営みを助けることはできないが心
が回復するためには健康を取り戻すことが必要
であり、介護による身体の疲労を自覚させる
言葉をかけることが望ましい。
・死後処置の手順
取り掛かる前に遺体に声をかけ、
その後遺族に声をかける。
・医療者による言葉かけは
遺族の感情の表出を促す効果があると
いわれる。
死の受容への援助の声かけ
 遺体への声掛け
・「○○さん、よく頑張られましたね。
皆様に囲まれてお幸せですね。」
・「楽になられたでしょう。
やっと自宅に帰れますよ。」
・「○○さんからいろいろなことを教わりました。
ありがとうございました。」
・「○○さん、最後のお世話をさせてくださいね。」
遺族への声掛け
・「よくお世話なさいましたね。皆様に囲まれて、
○○さんはお幸せだと思います。
お帰りになられたら、
十分休息をとってください。
辛くなったり、話したくなったら
いつでも来てくださいね。」
ポイント
・看護や介護、付き添いに対するねぎらいの
言葉を遺族にかける。(共感する)
・遺族の疲れを自覚させ、
睡眠をとるよう促す。
・今後の生活への励ましの言葉をかける。
死後の処置
(感染予防対策)
1 目的
遺体を清潔にし、病原菌の飛散を
防ぐとともに、生前のその人らしい姿に
より近い状態に整え死による外観の変化を
できるだけ目立たないようにするために
行われる。
2 具体的処置
1)遺体用圧迫固定
創傷部を圧迫して血液・体液等が
流出しないようにする処置で、
ガーゼと伸縮性のある粘着テープを使用。
2)縫合
気管切開痕、ペースメーカー抜去痕等の
創には、開口部を小さくする目的で縫合が
望ましい。
3)吸引
気管切開、ドレーン抜去痕は血液、
体液が流出しない処置だけでなく、
体内に貯留する血液、体液を吸引が
望ましい。
3 必要物品
医療廃棄物袋・針ボックス・微温湯・
次亜塩素酸ナトリウム・浴衣・シーツ・ディスポ手袋
エプロン・脱脂綿・青梅綿・割り箸(ピンセット)
紙おむつ・タオル・ガーゼ・防水性ドレッシング剤
伸縮性粘着テープ・防水シート・メイクキット
4 手順
①死亡確認
②医療器具抜去・介助→チューブ抜去、
創の縫合を医師に依頼
5 医療器具抜去後の手当て
1)注射針痕→圧迫固定
2)CVカテーテル→血液排出→圧迫固定
3)気管切開痕→吸引→吸収性材料詰める→(縫合)
→圧迫固定
4)胃瘻抜去痕→吸引→器具抜去→吸収性材料詰める
→(縫合)→圧迫固定
5)腸瘻→器具抜去→圧迫固定
6)ストーマ→パウチ交換
6
創傷の手当て
褥瘡等→消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)使用し膿を
掻き出し洗浄→ガーゼ等で水分を取る→創部に
ガーゼと平オムツを当て周囲をテープで固定
浸出液のある創
創が小さい場合→圧迫固定
創が大きい場合→平オムツ+包帯
7 口腔ケア
次亜塩素酸ナトリウム(0.5%)を用いて口腔の消毒
義歯がある場合は取り外してから行う
8 口腔詰め物
喉の奥、喉頭蓋に向かって脱脂綿を固く詰める。
9 鼻腔詰め物
幅2cm×長さ20cm程度の脱脂綿を左右3本づつ
交互に挿入。枕を外すと挿入しやすい。
10 排泄物処理
腹部を圧迫して便を排出させた後、脱脂綿→青梅綿
→脱脂綿を詰める。
便の付着、下血のある場合は次亜塩素酸ナトリウム
(0.1%)を用いて消毒。
11 膣詰め物
脱脂綿を詰める。
血液の付着、臭気のある場合は次亜塩素酸ナトリウム
(0.1%)を用いて消毒。
12全身清拭
微温湯(30~40℃)使用。
感染性疾患、血液、体液の付着の場合は
次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)を用いて消毒後、
微温等で清拭。
13着衣、オムツ交換
遺族が希望する着衣または清潔な寝衣をつける。
14容姿を整える
髪、顔を整える
エンゼルメイク
(メイクは感染予防とは関係性がないため、死後の処置に含まない!)
1 目的
遺族の心情を察して穏やかな顔に整えること
2 ポイント
遺族にとって穏やかな、美しい顔
肌の乾燥を抑制
少量の赤みを加える
3 早期死体現象(遺体の変化過程)
死亡→顔から血の気が引く(血液が低位置へ移動を始める)
体温が降下開始(1時間に0.5℃づつ室温まで低下)
約2時間→死後硬直開始
死斑出現
約20時間→死後硬直強度
死斑が定着
約24時間→皮膚の乾燥が明らかになる
4 メイク
1)スキンケア:スキンケアクリーム
(肌の乾燥予防、化粧下地)
水分蒸発を保護し、潤いのある肌に整える
2)ベースメイク:ファンデーション(肌色の調整)
パウダー、リキッド、クリーム、練り状があるが、
パウダーは肌の乾燥は防げない
(ご遺体にはクリームよい)
3)ポイントメイク:リップメイク、アイブロー
(唇の色の調整、眉を描く)
口紅はベージュか落ち着いたピンクがよい
眉は欠損部と整える程度にする
●男性メイク
①顔の清拭
②スキンケアクリームをつける
額、頬、顎につけ指3本で顔全体に伸ばす。
③ひげそり
クリームが付いた状態で剃る。
剃る際にはご遺族に尋ね剃る。
④スキンケアクリームをふき取る。
コットンにて拭き、テッシュペーパーを当て、
余分な油分を吸い取る。
⑤仕上げ
眉毛の長い人は、つまんで、眉毛を立たせ、
立体感をだす。
●女性メイク
①顔の清拭
②スキンケアクリームをつける。
③口周りの産毛を剃る。
④スキンケアクリームをふき取る。
化粧用コットンを使いふき取る。
肌のべたつきがなくなったら終了。
⑤ファンデーションをつける
素肌が見える程度に薄くつける。
手の甲にファンデーションを出し、円を描きながら
伸ばし、伸ばしたファンデーションを指で
パッティングしながらつける。
額は生え際との境目ができないようさらに薄くつける。
⑥頬紅をつける
⑦眉を描く
眉毛がない方は眉の薄い方に描きたす。
描いた部分が線にならないよう気を付ける。
⑧口紅を付ける
口紅を手の甲でのばし、リップブラシで先端に少量の口紅をつけ
薄くなる。
似合わない時は他の口紅で調整。
年齢に応じて、唇の山の高さと幅を調整する。
口紅がはみ出た場合、綿棒で取り除く。
⑨仕上げ
メイクを終え少し離れて、
口紅が濃い過ぎないか調整。
襟元を整え、メイクを終了。
※施設、在宅の方へのお願い
・亡くなった方(ご遺体)が着られる衣服の準備
・遺族ケアの経費(訪問診療
看護師が実施した場合)
自費にて15000円(材料費、ケア代含)
ご清聴ありがとうございました。