第1章 さしがねと勾配

 国土交通省 平成 26 年度 住宅市場整備推進等事業(木造住宅技能者育成・技術力向上事業)
隅木のある屋根架構の実技演習
「 リフォーム技術を学ぶ<奥越大工塾>」
平成 27 年3月
一般社団法人 福井県建築組合連合会 奥越ブロック会
目次 はじめに
・・・・・2
(ガイダンス)
第1章 さしがねと勾配 1-1 用語の説明
・・・・・3 1-2 さしがねについて ・・・・・6
1-3 規矩術の種類 ・・・・・7
1-4 勾配について ・・・・・8 第2章 墨付け要領の解説
2-1 図面を読む
・・・・・12 2-2 隅木の墨付け要領 ・・・・・13
2-3 桁の墨付け要領 ・・・・・17
2-4 配付け垂木の墨付け要領
・・・・・20
2-5 鼻隠し・広小舞の墨付け要領
・ ・・・・21
2-6 小屋束の墨付け要領 ・・・・・22
(実技演習)
第3章 墨付け
3-1 尺竿の墨付け ・・・・・24 3-2 桁の墨付け ・・・・・25 3-3 小屋梁の墨付け ・・・・・28 3-4 隅木の墨付け ・・・・・29 3-5 母屋の墨付け ・・・・・32
3-6 垂木の墨付け
・・・・・33
3-7 小屋束の墨付け ・・・・・34
3-8 鼻隠しの墨付け ・・・・・34
3-9 広小舞の墨付け ・・・・・35
3-10 墨の確認と注意点 ・・・・・36
第4章 工作
4-1 上桁の工作
・・・・・37 4-2 下桁の工作 ・・・・・39
4-3 母屋の工作 ・・・・・41
4-4 隅木の工作 ・・・・・42
第5章 地組み ・・・・・43
(事業の総括)
第6章 事業の記録 6-1 事業全体の流れ ・・・・・49
6-2 事業の評価と課題 ・・・・・51
【 図面集 】
・・・・・53
-1-
はじめに
福井県建築組合連合会 奥越ブロック会
会長 山川 栄治
私たち地域の大工が、地域の木材を使って、地域らしい住宅をつくること
を目指す「奥越大工塾」は、今年で 3 回目を迎えます。
大工技術の継承、後継者の育成に熱心にご協力いただいている指導員の
方々、それを受け継ぐ高い志をもった受講生の方々に支えられてのことであ
り、皆様に深く感謝申し上げます。
昨年の実技課題は、真壁の和室造作でした。造作材を精緻に工作し、隙間
なく組み立てる要領が求められました。今回は隅木を学びます。
第2回 真壁の和室造作を学ぶ<奥越大工塾>
「大工と雀は隅木で泣く」という大工仲間に伝わる諺があります。雀が巣
をかけれないほど、取り合いが複雑であることを意味します。しかし、さし
がねの原理と使い方を理解できれていればさほど難しいものではありません。
墨付けも、工作も楽しいものになります。
参加いただく受講生のなかには、見習いを始めたばかりの方もおられれば、
墨付けを経験している方もおられます。その技量はまちまちであっても、さ
しがねについての知識はさほど変わりません。
さしがねはカギ型に曲がっただけの道具ですが、実に多くのことを教えて
くれます。さしがねがうまく使えると、屋根廻りの仕事に役立ちます。
たとえばリフォーム、軒先廻りの改修では今回学んだことを十分に活かす
入母屋の民家(大野市)
ことができます。また新築においても、隅木廻りはプレカットの機械加工に
対応できない箇所が残ることがあります。その箇所には従来通りの手加工が
必要です。
そして今回、講座を開くにあたって吟味したことがあります。
私たちの年代の大工は、親方の下に弟子入りしても、親方が教えてくれる
ことはありませんでした。親方や兄弟子のつけた墨を工作する合間に、さし
がねを当てがいながら墨付けの要領を覚えてきました。そのため、その覚え
方は大工それぞれに異なります。
玄関の反り隅木(勝山市)
墨付けの機会が少なくなった現在、皆さんはそのまねができません。時代
に合った教え方が必要です。数をこなして覚えるのではなく、理にかなった
説明のもとで理解することが早道です。また、教えるうえでは共通の方法と
しなければなりません。そのような点に配慮しつつ今日の開講式を迎えまし
た。
2日間のガイダンスでは規矩術と墨付けの模擬演習を行います。そして6
日間の実技演習では、9尺四方の屋根を地組みします。課題を完成させるに
●和室造作ができる割合
●入母屋が墨付けできる割合
は相当に忙しく、時間の余裕はないかもしれませんが、断念することなく最
「大工・職人の実態に関するアンケート調査」
後まで取り組んで下さい。受講生皆さんの奮闘を期待します。 出所:全国木造住宅生産体制推進協議会
-2-
ガイダンス1
第1章 さしがねと勾配 実技に使うさまざまな用語と合わせて、さしがねの原理、そして勾配の意味と求
め方について学ぶ
講師 安下 省三
(元福井県立職業訓練校 教員)
1-1 用語の説明
左
ろ
は
1
右
い
かみ
【1. 陸墨・立水】
上
一
陸(ろく)とは水平の意であり、水平の墨を陸墨、あるいは水墨をいう。
立水は陸に対して垂直、鉛直方向の墨をいう。大工用語には垂直という言葉
ろ又二
□ 二
●
しも
はない。垂直を矩(かね)という。
●
ろ又二又
【2. 番付け】
下
●
ろ二又
三
図面には、横方向に右から左へ「いろは・・」
、縦方向には上(かみ)から
下(しも)へ「一二三・・」と書いてある。これを番付けという。材料に番
番付けの振り方: 「い二」に柱が立つとする。
青線側を「い二の上(かみ)」、赤線側を「い二の
左ツラ」という。
2
付けを振ることで位置が決まり、番付けを記す位置によってどの向きで使う
かも決まる。
かみ
上
たとえば図1の例で「い二」の位置に柱があるとする。柱の番付けは、下
(しも)となる側に縦書きする。そのため、
「い二」の上(かみ)、あるいは「い
右桁
木
二」
の左ツラが柱のどの面を指すのかは番付けを見ればわかる。ほぞの向きも、
しも
隅
上下(かみしも)、左右といった呼び方をする。墨付け前に図面の向きを頭に
下
入れておかないと、仕事がはかどらない。
左桁
番付けの通りをまたがる位置に仕事がある場合もある。二番通り「ろ」と
隅木の番付けの描き方: 「い1」を例に、垂木
を使って、左右の桁と隅木に番付けを書いてみた。
「は」の間に束が立つ場合には、番付けの若い方の末尾に又を付け、ろ又二と
3
地の間
して番付けを打つ。
梁、桁の番付けは、天端に下手から読める向きで縦書きする。斜めに入る
隅木も、文字が上下(かみしも)に向くように書く(図2)
。
ろ
は
い
□
□ 一
間
二
の
入り、棟梁は材料の向きや配置に間違いないか確認できる。番付けは、遠く
隅
地の間
このルールによって、番付けは建物の下(しも)から見て全て縦に文字が
からでも読めるよう材料に合った大きさと太さで、そして読みやすい文字で
書き入れる。
□
□ 三
地の間と隅の間:測る方向の呼称。通常、隅木は
隅の間方向に入る。
【3. 地の間・隅の間】
平面において長さを測る方向をいう。地の間は番付けの方向をいう。いろ
4
木
は・・、一二三・・・ともに地の間である。隅の間(隅地の間ともいう)は
隅木は隅の間方向に入る。その隅木の平面的な長さを計算するとき、地の
間の長さを√2倍して求める。長さを云うとき、
どの方向での長さなのか、しっ
小平
配付け垂木
隅
対角線 45°の方向をいう(図 3)
。
かり区別する。
【4. 小平・配付け垂木】
隅木の山の稜線を境にして左右の三角形の屋根を「小平」という。また、
隅木に取り付く垂木を「配付け垂木」という(図 4)
。
-3-
棒隅木の模型:白線で囲んだ部分を小平という。
小
舞
右桁
隅木右ツラ
広
隅木左ツラ
左桁
5
6
7
隅木
隅木右ツラ
母屋
投げ墨
舞
小
広小舞
広
垂木
右桁
芯垂木
落ち掛り
芯垂木
上端留め
向こう留め
隅木を水下側から見て左右を決める
投げ墨:垂木木端の勾配を横から見通して、隅木 落ち掛り:写真は母屋と隅木が交差するところ。
側面に映した墨
隅木下端と母屋ツラとが取り合う線が「落ち掛
り」。母屋の内側と外側にできる。
8
【5. 右桁・左桁、上端留め・向こう留め】
1.5 〆
芯に入る垂木を「芯垂木」という(図 5)
。
1.6
同様の考えで「隅木右ツラ」
、
「左ツラ」という言葉が生まれる。また、桁の
1.0
広小舞の角は留めになる。上端を
「上端留め」
、
見つけを「向こう留め」という。
小屋梁
1.0
隅木を水下から見たとき、右側の桁を「右桁」
、左側の桁を「左桁」という。
0.5
梁長さ
4.0
【6. 投げ墨・落ち掛り】
梁
桁巾
屋根を真横から見たとき、垂木木端の勾配を隅木側面に投影した線を「投
げ墨」という(図 6)
。また、隅木下端が桁ツラ(もしくは母屋ツラ)と取り
1.5 〆
〆(しめ)寸法:通り芯(芯墨)を基準に工作する。
図は蟻落としの仕口(梁幅 4.0 寸として作図)
。
合う線を「落ち掛り」
(図 7)という。 9
今、巾 4 寸の桁に小屋梁を「蟻落し」することを考える(図 8)。桁に 5 分
天
大入れし、蟻首 1 寸、蟻頭は 1 寸 6 分でつくる。蟻頭 1 寸 6 分は、昔から適
大入れ 0.5
切な寸法として使われており、蟻頭を大きくすれば、頭の角は欠けてしまい、
下木
(先掛け)
小さくすれば抜けやすくなる。
大入れの仕口をつくるとき大切なのが、
「〆(しめ)寸法」という考え方。
H /3 未満
上木
(後掛け)
異なる部材同士が取り合うところを「仕口」という。
H
1.5 〆
【7. 仕口と〆寸法】
天
1.5 〆
渡りあごの基本:材は1/3 以上欠きこまない。
桁巾 4 寸といっても、正確な 4 寸ではない。製材や乾燥による誤差がある。 上下の材が重なる位置を天という
桁ツラから 5 分測って大入れの墨をするのではなく、桁芯から1寸 5 分測っ
10
隅木の入り方
左桁(下木)
て大入れの墨をする。これを 1 寸 5 分〆という。小屋梁の長さも、桁芯を基
右桁(上木)
準に全体の長さを測り、そこから 1 寸 5 分〆として大入れの位置を決める。
墨付けは芯墨が基準であり、材料の面 ( ツラ)をあてにしない。ピッタリ
胴着させるための大工の作法である。
り
【8. 渡りあご】
掛
ち
そして上木と下木が重なる面を「天」という。天の位置の決め方は、強度に
直接影響する。互いの材を 1/3 以上欠きこまないことが絶対条件である。
落
ち
掛
落
り
右
「渡りあご」は下木(先掛け)と上木(後掛け)とが交差する仕口(図 9)
。
左
隅木の入り方と左右の桁。桁の上端が揃った渡り
あごであり、この上に隅木が渡りあごで掛る。
11
大入れは、上木のせん断力を高め下木に荷重を伝達するための仕口。やは
り芯墨を基準に、〆寸法の分だけ戻って大入れの位置を決める。
左桁
【9. ねじ組み】
隅木がある場合、左右の桁を天端を揃えて渡りあごで組む(図 10)
。さら
にその上に隅木が渡りあごで掛るため、複雑になる。桁を弱らせないため、
天
天の墨
左落ち
掛り
天のつくり方を工夫する必要がある。
隅木には勾配があり、その勾配で桁を欠き取っていく。その残った部分で左
右の桁が組み合うが、左右の桁を均等に少しでも丈夫にするため、天を水平に
つくらず、緩い傾斜面で工作する。これを「ねじ組み」という(図 11)。
-4-
右桁芯
下桁のねじ組み。桁同士の渡りあごの天が、桁の
長さ方向、巾方向ともに傾斜していることから、
ねじ組みと呼ばれる。
10
【10. 峠・口わき】
2.0
口わき墨
梁
や乾燥収縮等によって、桁成が 6 寸ない場合には柱との間に隙間ができる。
峠より3.0 下
水墨
6.5
りとするとき、口わき墨を桁上端から 5 分下に打ってはいけない。製材誤差
峠
●
桁
3.5
今、屋根勾配が 5 寸、桁寸法が巾 4 寸×成 6 寸、桁上端が峠より 5 分下が
6.0
おける垂木下端の高さをいう(図 12)
。
0.5
峠とは、桁 ( 母屋)芯と垂木下端とが交わる高さ。口わきとは桁外ツラに
12
5
垂木
そのため口わきは、桁下端を基準に求める。その要領は次の通り。
桁外ツラ
2.0 2.0
①桁の中腹に水墨を打ち、峠からの寸法を記しておく(例:桁下端から 3.5
桁の高さの取り方: 峠から桁下端の高さが決ま
り、次に口わき(垂木下端)の高さが決まる。
寸上がりに水墨を打ち、峠から 3.0 寸下と記す)。
②水墨から 2 寸上がって口わき墨を打つ。 10
13
5
水墨は、
桁の内側にも同じ高さで打つ。外部では下見を張る際の基準となり、
小返り
2h
室内側では天井高を求める基準となる。
【11. 小返り】
墨になる。5寸勾配であれば、桁上端から口わきまでの高さ(h)の2倍を
梁
6.0
桁外ツラからとる(図 13)
。桁に反りがある場合、垂木ひとつひとつ口わき
口わき
h
桁上端で垂木下端と交差する水平寸法を小返りという。垂木あたりをとる
0.5
峠
桁
の高さが異なるため、小返りをひとつひとつ墨する。
小返り: 桁上端において垂木下端と交差すると
ころ
【12. 入中・本中・出中】
隅木に関する用語。
14
木
隅
隅木長さを隅木芯で求めたとしても、材中であるため隅木芯に長さを印する
芯
左桁芯
平面的に云えば、隅木は左右の桁芯の交点を通り、隅の間(45°)に入る。
●
ことはできない。墨付けできるのはあくまで隅木の側面である。
●
そのため左右の桁芯の位置を隅木外ツラに印する。これが入中・本中・出
●
●
●
●
合うところが出中となる。一方、左 ツラでは、左 桁芯と合うところが入 中、
ラ
また、墨付けの際には、言葉の由来を知っておくと間違いが起こらない。
●
●
●
入
中
本
中
出
中
右
ツ
右桁芯と合うところが出中となる。本中は、左右の桁芯が交差する点を外ツ
ラに引き出したところである。
●
ラ
●
ツ
●
左
●
右桁芯
●
●
中である(図 14)
。隅木右 ツラでは、右 桁芯と合うところが入中、左桁芯と
●
●
●
入中・本中・出中: 隅木右ツラは右桁芯との交
点が入中、左面は左桁芯との交点が入中となる。
15
●
桁や母屋は入中から入って、出中へ出る(抜ける)
。そこが桁・母屋の芯であ
立水寸法:a
垂木
るから「中」とつく。
き墨
)
口わ 木下端
(垂
a
隅木長さは入中から測り、配付け垂木は出中から割り付ける。わずらわし
品下寸法(立水)
:b
い計算を省くための知恵である。
隅木
【13. 品下(仕込み寸法)
】
隅木と垂木、隅木と桁とはそれぞれ勾配が異なる。一方の材料の高さを他
桁
方にとるとき、勾配の異なる材料同士は立水方向でしか長さを比べることは
できない(図 15)
。 垂木の成を立水に測り(a)
、隅木側面の立水に写すことで、隅木と取り合
口わき墨(垂木下端)
b
墨
下端
隅木
品下:隅木立水高さから垂木立水高さを差引いた部
分。勾配の違う材料同士は、立水で高さを比べる。
う垂木下端の高さ ( 口わき)を求めることができる。そして、立水に測った
16
に渡りあごで仕込む部分となる。桁では、口わき墨と入中の交点から下へ品
隅
隅
木
木
芯
芯
口わきから隅木下端までの長さを品下(しなした=仕込み寸法)と呼ぶ。桁
下寸法をとると、隅木下端角が求まり、落ち掛りの起点になる。
【14. 芯見通し・つら見通し】
垂木先端
対のツラまで伸ばすことをツラ見通し(=端見通し)という(図 16)
。芯見
通しは投げ墨(垂木先端を見通した線)から半巾だけ長く、ツラ見通しは隅
木の巾だけ長くなる。
-5-
【芯見通し】
巾
木
隅
木
隅
芯見通しは、垂木先端と隅木の芯が交差するところで矩手に切る方法。反
半
巾
隅木木端の位置をあらわす用語。
垂木先端
【ツラ見通し】
隅木木端の切り方には 2 通りある。ともに、垂
木先端を見通して決める。当然長さは異なる。
1
1-2 さしがねについて
【1. 尺とセンチ】
隅木
さしがねの使途は、長さを測ることと、勾配をつくることである。さしが
A
ねの目盛には尺とセンチがあり、
演習では尺を使用する。その理由は 2 つある。
陸墨
●
●
B
ひとつは目盛の読みやすさ。尺のさしがねの目盛は 1 分 (3.03 ㎜)単位で
墨
げ
投
あり、目盛が粗く読み違いが起こりにくい。1 分以下の単位は目測で読むが、
工作するうえで大きな誤差にはならない。 尺に対して 5 寸上がる。10 ㎝に対しては 5 ㎝上がる。大きな三角形ほど精度
つくる三角形が大きすぎると、さしがね上の 2
点のうちひとつ(B)は、材料からこぼれてしまう。
ひと回り小さな三角形を作らなければならない。
1尺
裏
常に頭の中で 3 倍する計算が伴ない、矩使いに慣れない初心者には煩雑であ
●
る場合もある。材料に見合った適切な大きさで勾配をつくることが大切であ
り、さしがねにはそのための知恵が詰まっている。
【2. 表目と裏目】
5
0.707 倍
1尺
0
い。材料が小さい場合、2 つの点のどちらかが材料からこぼれてしまう(図
1)
。三角形の大きさを半分にする矩使いもあるが、三角形が小さくなりすぎ
7.07
0.707 倍
る(矩使いに慣れてから、センチのさしがねを使うと良い)。
また、勾配をつくるとき、材料に納まる三角形の大きさでなければならな
10
目
倍
7
70
0.
1/ √ 2)掛けた値が裏に出る。裏で 10 を押え表に返すと、およそ 14.14 と読
7
2.
5
70
0.
1尺
5
刻まれている。
0
倍
今、表目を使って 1 尺四方の正方形を描き、対角を結ぶ(図 2)。対角線
1尺
七矩
5
七
1尺
目で測ればちょうど 1 尺。裏目で測る1尺を、
表目の 1 尺と区別するため「裏
またこの図から、裏目で読んだ長さを 0.707 倍(1/ √ 2)すると、表目で
4
裏
目
の長さを表目で測れば、およそ 14.14 となり切の良い値ではない。しかし裏
目 1 尺」という呼び方をする。
表目
10
5
0
七矩 :表目の値を 1/ √ 2(0.707)倍すると半
裏目になる。表目 10 寸→裏目 5 寸、表目 5 寸→
裏目 2.5 寸
10
【3. 七矩(ななかね)
】
3
裏
の方に短手を向けると、表が上に向くように出来ている。表は通常の目盛で
このように、裏目は表目の√ 2 倍の間隔で刻まれている。
14.14
●
10
5
0
表目と裏目: 裏目の目盛は、表目の√ 2 倍の間
隔で刻まれている。裏目から見れば 1/ √ 2 倍(七
矩)が表目になる
1尺
める。裏目に√ 2(= 1.414)を掛けた値が表に出る。
表目
●
さしがねには長手と短手、そして表と裏がある。左手で長手を持ち、自分
表で 10 を押え裏返すと、おおよそ 7.07 と読める。表目の数値に 0.707(=
2
●
目
よく作図できるため、センチのさしがねでは各辺 3 倍して描くことになる。 10
もうひとつは、勾配をつくるときの判りやすさ。5 寸勾配を描くとき、1
矩
●
●
●
●
●
●
●
を七矩といい、
「裏目の七矩は表目」と覚える。
0
●
七矩
も同じ値になることがわかる [ 裏目A× 0.707 =表目A ]。0.707 倍すること
次に、1 尺四方の正方形の対角線上に中点をとる(図3)
。正方形の角から
10
5
0
七矩:裏目 1 尺を七矩すると表目 1 尺、表目 1
尺を七矩すると裏目 5 寸、裏目 5 寸を七矩する
と表目 5 寸
1尺
5
倍を裏目で読むと、表目の半分になる [ 表目 A × 0.707 =裏目の A/2]。 こ
●
●
●
●
●
●
●
●
目
裏
●
れを「表目の七矩は半裏目」と覚える。
10
対角中央までの長さは表目で 7.07 寸、
裏目 5 寸となる。すなわち、表目の 0.707
表目
1尺
5 を七矩すると表目 5 になる(図 4)
。さしがねの長手には、表目裏目それぞ
▼
れに、この 4 つの点が印されている(図5)
。
5
▼
よって、裏目 10 を七矩すると表目 10、表目 10 を七矩すると裏目 5、裏目
ある大きさの勾配をつくるとき、
長手側のこの4つの点の中から最も適切
正確に描ける。
(例:5/10 =(5×1.414)/ 裏目 10 =(5×0.707)/ 裏目 5 =
(5×0.707×0.707)/ 表目5)
。
また、七矩の反対、すなわち√ 2 倍(1.414 倍)することを十四矩という。
-6-
表目
0
なものを選び、短手側だけを(電卓等で)計算するようにすると、効率よく
▲
▲
0
5
10
矩使いでは、表目、裏目とも、長手に記された 4
つの点だけを殳に使う。
1
1-3 規矩術の種類
(見えるか見えない
ほどの細い糸)
規矩術とは、さしがねを使って工作に必要な形と寸法を割り出す方法であ
る。おおよそ4つの方法がある。
玄(げん)
垂線
勾(こう)
辺
ひとつは勾配を主体に形や寸法を割り出す「勾殳玄法」
、もうひとつは木巾
斜
を基準単位として材料に直接墨付けしながら形を割り出してゆく「木の見返
(カギの
かたち)
底辺
し法」。もうひとつは、図解法というべき「小平起こし」
。そして「がんぎ矩」
殳(こ)
(真っ直ぐの長い棒)
も規矩術のひとつである。
「勾・殳・玄」の意味(漢和辞典による):殳勾
玄とは、さしがねそのものの形を意味している。
【1. 勾殳玄(こうこげん)法】
今、底辺の一方を直角、他方を鋭角とした直角三角形を描く。
「勾殳玄法」
2
では、垂線を勾(こう)
、底辺を殳(こ)
、斜辺を玄(げん)と呼ぶ ( 図1)
。
玄
矩使いでは、
底辺の長さ「殳」を定数 10(=1 尺)として固定し、勾配に応じて、
短
小殳
玄
「勾」と「玄」の長さだけが変化する。5 寸勾配とは勾を 5 寸とした勾配をいう。
勾
欠勾
勾
中
玄
長
また、殳と勾の交点から、玄に対して直角に引いた線分を中勾といい、玄
は中勾によって長玄と短玄に分割される ( 図2)
。同様に欠勾、小殳という呼
び名を決めている。これを規矩の基本図という。分割されてできる三角形は
殳= 10
全て相似形であるため、それぞれの長さは、各辺の長さの比から求めること
ができる。
「勾殳玄法」は、勾の値に中勾や長玄などそれぞれの長さをあてはめて勾配
規矩の基本図: 殳勾玄法では、殳を 10(= 1 尺)
とした値を勾にとるのが原則。
3
をつくり、作図に応用する方法である。
【2. 木の身返し法】
①
垂木上端
⑥
●
●
たとえば垂木。① . 垂木上端に水平の墨をする。② . ①の上端角から側面に
●
立水を下ろす。③ . 立水を基準に陸墨をひく、④ . 陸墨の線上に上端の巾だけ
④
●
③
進む。⑤ . その点を通る立水をひく。⑥ . ⑤の立水の上端角と①とを結ぶ。線
⑥と⑤が配付け垂木の隅木胴着きとなる ( 図3)
。このように木巾(この場合
⑤
は垂木巾)を基本単位とした作図法を「木の身返し(このみがえし)法」という。
作図の意味を知るためには勾殳玄法を理解する必要があるが(勾殳玄法で
は垂木の隅木胴着を長玄勾配として説明する)
、その理屈を知らなくても手順
②
木の身返し法の例:配付け垂木の隅木胴着きの作
図法。
を覚えることで作図できる。
4
F
参考書にはいろんな木の身返し法が紹介されている。数多く覚えても矩使
いは上手くならない。便利な方法を一つ二つ覚える程度として、勾殳玄法を D
基本に覚えてほしい。作図精度が高く、応用が効き、理解も深まる。
E
正方形に隣接して、屋根勾配を表わす三角形BCEを書く。BEが垂木長さ
となる。これと同じ長さをBC上にとりFを求める。屋根勾配の分だけ間延
垂木 実長
木
隅
とする ( 図4)
。三角形ABCは屋根の
「小平」
の平面を示すことになる。次に、
配
図解法のひとつである。今、正方形ABCDの対角線ACに隅木がかかる
勾
【3. 小平起こし】
根
実
屋
長
C
A
B
小平起こし:作図により実際の小平の形状を求め
る方法。
びした実際の小平の形状(三角形ABF)を作図できたことになる。
5
この作図法を「小平起こし」という。作図した図面の長さを測ることによっ
8
1
.1
1
て、隅木長さ、配付け垂木の長さを求めることができる。
8
11
【4. がんき矩】
1.
今、母屋間隔が 3 尺で屋根勾配が 5 寸のときの垂木実長を求めることとする。
ピタゴラスの定理を使い直接計算で求めることもできるが、材料に直にさし
れを 3 回繰り返して垂木実長を求める方法もがんぎ矩の応用である。
繰り返すほどに誤差が大きくなるため、大きな建物ではこの方法は使えない。
-7-
1尺
8
11
1.
5寸
1尺
がねをあて、1 尺づつ 3 回繰り返して玄の長さを求めることもできる(図 5)
。
この方法をがんぎ矩という。また、玄の長さ 1.118 尺をさしがねに印し、そ
5寸
5寸
1尺
がんぎ矩:さしがねを繰り返し当てて長さを求め
る。
1
勾:5 寸
1-4 勾配について
勾配
5寸
【1.平勾配と返し勾配】
今、5 寸勾配を描く。陸墨に沿って殳に 1 尺(= 10 寸)
、勾 5 寸とったも
陸墨
殳:1 尺
5寸
のが 5 寸勾配である ( 図1)
。この矩使いでは勾配を直接描くことはできない。
配
く線が 5 寸勾配になる。短手側で描く線は、水平に 5 寸、垂直に 1 尺とった
平勾
5寸
5寸
1尺
10/ 5の勾配になる。
陸墨
そのため規矩術では、さしがね長手でひく勾配を「平勾配」
、短手でひく勾
勾配
返し
実際の矩使いでは、殳と玄とを引っ繰り返して描き、さしがねの長手側で描
平 勾 配・ 返 し 勾 配: 平 勾 配 は 5/10 の 勾 配、
返し勾配は 10/5 の勾配になる。
配を「返し勾配」といって区別する。また 45°の勾配を矩勾配という。
2
2
2
100 + 25 。玄=√ 125 ≒ 11.18 となる ( 単位は寸)。殳を 1 尺としたきの玄
の長さは 1.118 尺。これが地の間 1 尺に対する垂木長さである。
【2.隅勾配】
隅木は地の間方向、45°の対角線の方向にかかる。隅木を真横から見た勾
配を隅勾配という。隅勾配の求め方は次の通りである。
5
配
2
2
ピタゴラスの定理により、殳(=10 )+ 勾(=5 )=玄 であるから、玄 =
平勾
2
隅勾
隅
配(
殳
隅玄
=1
裏
5.0
目
)
1
0
(
=
10
√
10
2)
2
勾 5
隅 勾
平
=
殳を 1 尺とした 5 寸勾配の玄の長さを求めてみる。
10
1 尺四方の正方形を描く ( 図2)
。その対角線の長さは裏目 1 尺であるから、 隅勾配の作図方法。対角線に対して矩となるよう
裏目 1 尺に対して平勾配の勾 ( 平勾という)が隅木の勾配になる。よって隅
に平勾配の勾をとる。
3
勾配は、
[平勾 / 裏目 1 尺]となる。殳には表目 1 尺ではなく、裏目 1 尺をとっ
規矩術では表目 1 尺を定数として長手にとることが原則である。そのため
隅勾配は[平勾の七矩 / 表目 1 尺]と覚えることになる ( 図3)
。
=
(玄
配
隅勾
平勾配 5 寸の隅勾配は(5 × 0.707)/10(= 3.535/10)、つまり裏目 2.5/10、
殳 10( =裏目 10 の七矩)
裏目 10
平勾配4寸の隅勾配は(4 × 0.707)/10(= 2.828/10)、つまり裏目 2 寸 /10
と求まる。さしがねを理解していれば電卓を使わず勾配を描くこともできる。
6)
.60
10
平勾 の七矩
= 3.535
尺の殳、勾、玄と云い方を区別する。
隅勾=平勾 5
ている。その場合の殳を隅殳、その勾を隅勾、その玄を隅玄といい、表目 1
隅勾配の殳を裏目 1 尺から表目 1 尺に戻す方法
次に平勾配 5 寸、殳を裏目 1 尺とした隅玄の長さを求めてみる。
2
2
2
2
2
4
√(200 + 25)=√ 225 = 15.0。玄の長さはちょうど 1.5 尺となる。これは
【中勾勾配】
5 寸勾配では 4.47/10
中勾
地の間 1 尺に対する隅木の長さである。
一方、殳を表目 1 尺とした場合には、玄の長さは 1.5 尺の七矩= 1.060 尺
殳= 10
中勾 4.47
ピタゴラスの定理により殳 (=10 √ 2 )+ 勾(=5 )=玄 であるから玄=
になる。これは隅の間 1 尺に対する隅木の長さである。
【長玄勾配】
【3.中勾勾配】
5 寸勾配では 8.94/10
殳に定数 1 尺をとり、勾に中勾の長さをとった勾配を中勾勾配という。こ
長玄 8.94
の中勾勾配の返し勾配を広小舞の向こう留めに使う。
中勾という言葉そのものに馴染みはない。規矩術は殳を定数 10 として作図
長玄
する方法であるが、まずは中勾勾配を [ 勾 / 玄]と覚えた方が判りやすい。
5 寸勾配の玄の長さは 11.18 であるから、中勾勾配は 5/11.18 となり、分
殳= 10
母を 10 に整えると 4.47/10 となる。4.47 寸が中勾の長さである(図4上)
。 殳に定数 1 尺をとり、勾に長玄の長さをとった勾配を長玄勾配という。長
.18
玄勾配は、配付け垂木の隅木胴着き、隅木上端のたすき墨、返し勾配を広小
玄
舞の上端留めに使う。
そして中勾勾配同様、長玄勾配は [ 殳 / 玄]と覚えた方が判りやすい。
5 寸勾配の玄の長さは 11.18 であるから、長玄勾配は 10/11.18 であり、分
母を 10 に整えると 8.94/10 となる。8.94 寸が長玄の長さである(図4中)
。
-8-
C
中勾勾配=BC / AC
長玄勾配=AB / AC
A
=
11
殳= 10
勾 =5
【4.長玄勾配】
B
中勾勾配・長玄勾配 : 中勾、長玄の長さは、中
勾勾配は [ 勾 / 玄 ]、長玄勾配は [ 殳 / 玄 ] であ
ることを知れば簡単に求まる。
5
平勾の 2 倍 = 10
【5.倍勾配】
倍勾配とは隅勾配の倍の勾配、すなわち隅殳(=裏目 1 尺)に対して平勾
の 2 倍を勾とする勾配をいう(図5)
。倍勾配の返し勾配を投げ墨に用いる。
配
勾
しかし、隅木の陸墨を基準に、直接この矩使いで投げ墨を作図しようとし
ても、つくる三角形が大きすぎる。そのため、七矩を 2 回おこない半分の大
隅殳 = 裏目 10
平勾の 2 倍
裏目 5 寸の殳に対して、5寸勾配なら5寸、4寸勾配なら4寸を勾にとれ
殳 10
墨
げ
投
きさにする。すなわち、倍勾配を[平勾 / 裏目 5 寸]と覚える。
勾 5
倍
)
能
可
ば倍勾配が描ける。とても便利な矩使いである。
不
図
(作
配
勾
【6.落ち掛り勾配】
倍
落掛り勾配とは、隅木下端と桁ツラが取り合う勾配をいう。
隅木
隅殳 = 裏目 10
陸墨
1 尺角の正方形を書く ( 図 6)
。右側に屋根の勾配を示す5寸の平勾配を書
勾の半分の長さになる。 回
の線とそれぞれ交点をつくる。この 2 点間の長さを「落掛り度」と呼び、平
配
勾
倍
2
正方形のもう一方の対角をひく。この対角線は、隅勾配そして隅木 ( 伏図)
矩
七
ACは隅木の勾配 ( 隅勾配)を示す線となる。
)
墨
げ 2倍
投
の
勾
平
(
く。隅木 ( 伏図)を示す対角線ABをひき、これに矩手に平勾の5寸をとる。
目
10
裏
殳
隅
倍勾配 : 上図 倍勾配は(平勾の 2 倍)/ 隅殳
下図 投げ墨の矩使い(青字)
次にその長さを、正方形の下 ( 右桁ツラを示す)と左 ( 左桁ヅラを示す)
6
C
勾 5
隅 勾
平
=
配
にとり、正方形の角と結ぶ。これが落ち掛り勾配であり、隅木に対して左右
勾配
掛り
度
勾
O
10
/2
1
左落
り
掛
の勾配であれば、落掛り勾配は2寸5分の勾配となる。
平
勾配 ] になる(作図の意味については 19 ページにて解説)
。屋根勾配が5寸
落
この作図からわかるように、落ち掛り勾配は平勾配の半分、すなわち [ 半
勾 5
B
隅勾
それぞれを右落ち掛り、左落ち掛り勾配という。
2.5
先と同様、1 尺四方の正方形を描き隅勾配を作図する ( 図 7)。対角線の交
10
A
勾配
掛り
右落
落掛り勾配 : 作図から半勾配であることがわかる。 15
=
左
隅山
2
隅山
勾/
右
隅中
平勾配 5 寸の隅中勾勾配は、5 寸 ( 平勾)/1.5 尺(隅玄)となり、裏目 1
勾配
ける [ 隅勾(= 平勾)/ 隅玄 ] として求まる。
尺に対して 4.714 寸、隅中勾の長さの勾配となる。七矩すると、3.33/ 表目
勾 5
勾配
ることがわかる。
中勾勾配は [ 勾 / 玄 ] の勾配であった。同様に隅中勾勾配も、隅勾配にお
隅中
=4 勾
.71
4
隅玄
の正方形の対角と結ぶ。これが隅山勾配であり、右隅山、左隅山の勾配を示す。
この作図から、隅山勾配は [ 隅中勾 / 裏目 1 尺 ]、すなわち隅中勾勾配であ
=
の長さを、対角線の交点から隅木伏図の線上 ( 対角線上)にとり、もう一方
7
勾 5
隅 勾
平
.0
点から隅勾配に対して垂線を下ろすと、その長さは隅中勾の 1/2 になる。そ
10
隅山勾配の求め方: 作図から隅中勾 / 裏目 1
尺であることがわかる。
1 尺になる。
隅玄
【8.隅長玄勾配】
隅長玄勾配とは、隅勾配における隅殳 (= 裏目 1 尺)に対する隅長玄の長さ
8
隅勾 5
.0
15
隅勾配
隅殳 裏目 10
配
勾
の勾配をいう。隅木下端たすき墨の勾配に用いる。
玄
長
長玄勾配は [ 殳 / 玄 ] の勾配であった。同様に隅長玄勾配も、隅勾配にお
ける [ 隅殳 / 隅玄 ] として求まる。
平勾配 5 寸の隅玄の長さは 1.5 尺であるから ( 図 8)、隅長玄勾配は裏目 1
尺 /1.5 尺となり、裏目 1 尺に対して 13.33 寸、隅長玄の長さの勾配となる。
隅
.33
13
玄=
隅長
配
隅勾
隅殳=裏目 10
隅長玄勾配: 隅長玄 / 隅殳 = 隅殳 / 隅玄
七矩すると、表目 1 尺に対して 9.42 寸となる。
-9-
隅長玄 13.33
の勾配をいう。隅木を矩手に切ったときの隅山の勾配(隅山勾配)に用いる。
2.5
隅中勾勾配とは、隅勾配における隅殳 (= 裏目 1 尺)に対する隅中勾の長さ
10
【7.隅中勾勾配】
実技演習 (5 寸勾配 ) に使う8つの勾配、これを製図した。
5.0 /10
② 隅勾配 3.53/10
③ 中勾勾配 4.47/10
④
⑤
⑥
⑦
長玄勾配 倍勾配 半勾配 隅中勾勾配 8.94/10
7.07/10
2.5 /10
3.33/10
⑧
隅長玄勾配 9.42/10
ガイダンス風景:勾配の原理を理解しながら、ケ
ント紙にさしがねを使って製図した
板書による落ち掛り勾配・隅山勾配の解説
各種勾配を製図。実技指導員はガイダンスを聴講
することで、指導方法の統一をはかるとともに、
受講生の指導に当たった。
倍
勾
配
① 平勾配 配
配
平勾
勾
隅
隅山
勾配
中
勾配
掛り
げ
投
(
し
返
配
配
勾
勾
中勾
落ち
勾配
し
倍
返
=
勾
鼻隠し
)
墨
勾配の関係を立体的にとらえらるよう、受講生は
各種勾配の三角形を切り分けたスチレン模型(60
頁参照)を製作したうえで、受講した。
- 10 -
<勾配について> 電卓などなかったひと昔前、玄・中勾・
長玄などの長さは、殳を 1 尺とする三角形
a
c
b
(= √( a 2 +b2 )
を原寸で描き、その長さを実測して求める
(a ÷c)×10 (b÷c)×10
しか方法はなかった。
その一方、作図では測れない端数を知る
ため、右のような表が重宝がられ、どんな
実用書にも掲載されていた。
しかし、ピタゴラスの定理で玄を求め、
中勾勾配が勾 / 玄、長玄勾配が殳 / 玄であ
ることを知れば、いかなる勾配も表に頼ら
ず求めることができる。
若者にとっては、その方が矩使いをより
深く理解でき、上達も早くなる。
a
b
c
(= √( a 2 +b2 )
- 11 -
d
(a ÷b)×10 (a ÷c)×10 (b÷c)×10