小学校理科5年で取り上げられる植物の生殖の単元での教材として,教科書にはさ まざまな植物種が取り上げられてきた.古くは,アサガオを除雄して用いるような記 述もあった. 学習指導要領解説で,単性花を付けるウリ科植物の利用が指示されると,多くの教 科書でカボチャを教材とするようになった.ほかにはヘチマやヒョウタンなどを教材と することもあった. しかし、ウリ科植物は体が大きく,十分な広さの学校園が利用できる必要がある.ま た,肝心の雌花は,雄花の1/10程度の数しか咲かないので,授業の実施日などを 強く拘束されることになる. カタバミは,たくさんの花を次々と咲かせる小さな植物である.雄性不稔のカタバミ の花を雌花に見立てると,この単元の教材として,ウリ科植物を置き換えることが出 来る. 1 版権の都合で写真を表示できません. 2 カタバミには多くの遺伝変異が自然に見られる。ざまざまなりようが可能だ 3 雄性不稔を利用すると,除雄という厄介な作業を省くことが出来る.交雑は極めて 容易だ.開花した雄性不稔の花に,花粉を持つ花(野生型)を押しつければよい. カタバミは,明るい間(お日様が照っている間)花を開く.カボチャは未明から早朝が 受粉適期である.カタバミなら,午前中いつでも授業が出来るが,カボチャは1時間 目に受粉させなければ安定した結果が出ない. 4 雄性不稔を広く利用するには,種子による頒布を欠かすことは出来ない.しかし、雄 性不稔株は自殖することができない.すなわち、たねが出来ない. そこで、維持系統を作出する必要がある. 5 雄性不稔系統(KMT-‐HD)は純系ではない.なぜなら、花粉を持たないので,自殖の 種子を作りことができないので,純系化できな. V4の形質を持つ維持系統の作出を一番期待している. 6 雄性不稔の表現系には,核遺伝子と細胞質遺伝子が関わっている. 雄性不稔株の細胞質を野生型と置き換える,あるいは、野生型の系統に雄性不稔 の核遺伝子を導入することで,核に雄性不稔遺伝子を持ちかつ,花粉を作る植物を 作出することが出来る. 7 赤葉・匍匐枝・高性の維持系統を見つけた. 8 緑色の葉・匍匐枝を持つ高性の維持系統を見つけた. 9 野外から得た雄性不稔株を使った2度目の検定交雑では,未熟な種子ばかりが得 られ,発芽率が極めて低くなった.成熟した種子を得るために,最初の検定交雑で 得た不稔系統を使って2度目の検定交雑を行った. 10 左表:1/4を越える個体が雄性不稔遺伝子を隠し持っていることが分かる. 右表:ほぼ期待通りの確率で雄性不稔維持系統が得られた. 11 最初の検定交雑で雄性不稔遺伝子の存在が示唆された株を自殖した系統から維 持系統が得られなかった.そこで、2度目の検定交雑で多くの不稔系統を算出した 株の自殖種子についてさらに,検定を試みたが,維持系統は見出されなかった. 12 側枝が斜行、あるいは木立になると,栽培面積が小さくなる.また,コンテナ等に収 納したとき,互いに枝が絡むことが少なくなり,扱いやすくなる. 13
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