■ 平面内の回転 s θ ω θ2 θ1 r • 角度の定義: θ= s r • 角度は足し算、引き算ができる。 • 角速度: 時間あたりの回転角, ω= dθ dt • 角速度の単位。 SI 組立単位は s−1 である。 角速度であることを明示する固有の名前は rad/ s 注意: 同じ SI 組み立て単位 s−1 を持つ振動数(1 秒あたり何回)の固有の 名称は Hz である。 エンジンの回転数は、しばしば、1 分あたり何回転であらわされ、r.p.m で表される。3000 r.p.m = 50 Hz. ■ 回転で点の座標はどう変わるか。 (x, y) を角度 θ 回転すると (x′, y ′) に移るとする。 (x’, y’) θ r を定数として、 x = r cos α, y = r sin α. (x,y) α x′ = r cos(α + θ) = r cos α cos θ − r sin α sin θ = cos θx − sin θy y ′ = r sin(α + θ) = r sin α cos θ + r cos α sin θ = sin θx + cos θy . 行列を使って表記すると ( ′) ( )( ) x y′ = cos θ − sin θ sin θ cos θ x y 1 3 sin θ = θ − θ + . . . 3! 1 2 cos θ = 1 − θ + . . . 2! もし、回転角 θ が無限小なら、θ 2 以上の高次の項は無視して x′ = x − θy , y ′ = y + θx. 無限小角 θ による無限小変位は ( ′) ( ) ( )( ) x y′ − x y = 0 −θ θ 0 x y もし無限小角 θ1, θ2 を続けて回転すると、 x′ = x − (θ1 + θ2)y , y ′ = y + (θ1 + θ2)x. 角度の足し算ができている。 ω= dθ dt なら x′ = x − ω(dt1 + dt2)y , y ′ = y + ω(dt1 + dt2)x ■ 3 次元空間中での回転 z 軸の周りに 90◦ 回転してから y 軸周りに 90◦ 回転した結果と y 軸の周りに 90◦ 回転してから z 軸周りに 90◦ 回転した結果. 足し算は計算の順序によってはいけない。 回転角をたし算を使って考えることができない。 ■ 回転による変位を数式であらわす。 • z 軸まわりの角度 θz の回転 ′ x cos θz − sin θz 0 x y ′ = sin θz cos θz 0 y 0 0 1 z z′ • y 軸周りの角度 θy の回転 ′ x cos θy 0 sin θy x y ′ = 0 1 0 y − sin θy 0 cos θy z z′ • x 軸周りの角度 θx の回転 ′ x 1 0 0 x y ′ = 0 cos θx − sin θx y 0 sin θx cos θx z z′ • (x 軸まわりの回転)(y 軸まわりの回転)-(y 軸まわりの回転)(x 軸まわ りの回転) 1 0 0 cos θy 0 sin θy 0 cos θx − sin θx 0 1 0 0 sin θx cos θx − sin θy 0 cos θy cos θy 0 sin θy 1 0 0 0 1 0 0 cos θx − sin θx − − sin θy 0 cos θy 0 sin θx cos θx 0 − sin θx sin θy sin θy − cos θx sin θy sin θx sin θy 0 sin θx − sin θx cos θy = sin θy − cos θx sin θy sin θx − sin θx cos θz 0 計算はできるけれど、なにが起こっているか、さっぱりりかいできない。 しかし、θx, θj が無限小量なら、差は 2 次の無限小量になっている。 ■ 3 次元空間中の微小回転は足し算を使って理解できる。 • z 軸周りに微小角度 θ 回転し、続いて y 軸の周りに微小角度 θ ′ 回転。 ′ x = x − θy y ′ = y + θx ′ z =z ′′ ′ ′ ′ x = x + θ z = x − θy + θ z y ′′ = y ′ = y + θx ′′ z = z ′ − θ ′ x′ = z − θ ′ x 微小回転だから θθ ′ は無視した。 • y 軸周りに微小角度 θ ′ 回転し、続いて z 軸の周りに微小角度 θ 回転。 ′ ′ ′′ ′ ′ ′ x = x + θ z x = x − θy = x − θy + θ z y′ = y y ′′ = y ′ + θx = y + θx ′ ′′ ′ z =z−θ x z = z ′ = z − θ ′x 結果は回転の順序によらない。 • z 軸まわりの無限小回転 ′ x x 0 −θz 0 0 x y ′ − y = θz = 0 × y 0 z 0 0 0 θz z z′ • y 軸周りの微少回転 ′ x x 0 0 θy 0 x y ′ − y = 0 0 0 = θy × y z −θy 0 0 0 z z′ • z 軸まわりの回転と y 軸まわりの回転を組み合わせると、順序によら ず ′ x x 0 0 x y ′ − y = ( 0 + θy ) × y z θz 0 z z′ • 結論 微少回転による微少変位 ⃗×⃗ δ⃗ x = δθ x ここで × は外積をあらわす。 ■ 角速度ベクトル ω ⃗ • 回転は足し算できないが、微小回転は足し算できる。 回転角はベクトルとして表せないが、その微分はベクトルとして表 せる。 • 角速度ベクトル ω ⃗ の方向は回転軸方向、大きさは角速度の大きさ。 空間中の回転(回転方向が変わる可能性のある回転)は微分、積分を使 わないと考えられない。 回転方向が変わらないことが保証できれば、微積は不要になって、問題 は簡単になる。 ■ 回転運動の解析の難しさ。 • 一般に、角速度 ω ⃗ の方向が変わりうる。 • ω ⃗ の方向が変わるとき、有限の角度の回転はベクトルではないから、 ⃗ dθ =ω ⃗ とは書けない。 dt 重要な問題だから数学の研究は深くまで進んでいるが、難しい。 • ω ⃗ の方向が変わらないと保証できれば、ω ⃗ の変わらない方向の成分 ω にたいしては、 dθ dt = ω と書ける。 この講義ではこの場合のみを論じる。 • したがって、運動方程式を使って、どんなとき ω ⃗ の方向が変わらない かを調べる必要がある。 ■ 回転で変わらないものを探す。 • 運動方程式からただちに分かるものは、角運動量の変化である。 ⃗ の定義 • 角運動量ベクトル L ⃗ =⃗ L r×p ⃗ ここで ⃗ r は位置ベクトル, p ⃗ は運動量ベクトル、× はベクトルの外積 を表す。 ⃗ とω ⃗ について調べる。 • L ⃗ の関係が必要だが、まずは、L ⃗ の方向が変わらないことが分かったとき、変わらない方向を z 方向, • L その成分を L とすると、 L = xpy − ypx である。この講義の問題で必要になるのはこの場合だけである。した がって、これを角運動量と呼ぶことが多い。 ■ 外積 ⃗ a × ⃗b = ⃗ c 2 つのベクトル ⃗ a, ⃗b に 1 つのベクトル ⃗ c を対応させる計算。 定義 • ⃗ a⊥⃗ c, ⃗b ⊥ ⃗ c. • |⃗ c| = S . S は ⃗ a, ⃗b が作る平行四辺形の面積。 • 右手系なら (⃗ a, ⃗b, ⃗ c) は右手系、左手系なら (⃗ a, ⃗b, ⃗ c) は左手系をな す。 a x b S b S a 右手系での外積 • 外積の計算 ⃗ a = (ax, ay , az ), ⃗b = (bx, by , bz ) とすると ⃗ a×⃗ c = (ay bz − az by , az bx − axbz , axby − ay bx). 行列式を学んでいるなら、次のように覚える方がよい。 ⃗ e2 ⃗ e3 e1 ⃗ ay az az ax ax ay , , ) ⃗ a × ⃗b = ax ay az = ( by bz bz bx bx by bx by bz 右左はきわめて難しい概念である。お箸を持つ手が右と教えられも、そ れは右左を分類して標識を付けただけで、左右で何が異なるかについて は何も言っていない。外積という計算で左右の違いが分かる。 ■ 右と左 • 右と左という 2 つの異なったものがある。 右と左で物理現象が変わることもある。パリティの非対称 過去と未来で物理現象が変わることもある。時間の非対称 • 左右は面の裏表とも結び付いている。 鏡のどちらが表か。 • 座標軸が右手系なら、鏡の中は左手系になっている。 親指 x 軸, 人差指 y 軸、中指 z 軸。 • 右手系を左手系に変えたとき (反転したとき)、変位ベクトルの異なっ た変化をするベクトルがある。 • 楊振寧, 李政道, 呉健雄の実験 60Co の β 崩壊: 60Co → 60Ni + e− + ν ¯e 鏡の中 コバルト60の崩壊 自転 電子 回転の向きは 鏡の中でも変わらない 鏡の中では前後が逆になる コバルトの崩壊は、その鏡の中の像と同じように起こるか? 答えは No. 電子が自転軸の反対側に放射される確率の方が大きい。 ■ 作用反作用の法則と角運動量 作用反作用の法則 m1 r1 d( d⃗ dt ) dt ⃗, =F m2 r2 d( d⃗ dt ) dt ⃗ = −F から、 ⃗ r1 × m1 r1 d( d⃗ dt ) dt +⃗ r2 × m2 r2 d( d⃗ dt ) dt ⃗1 − r⃗2 × F ⃗2 =⃗ r1F ( ) d⃗ r1 d⃗ r1 d⃗ r2 d⃗ r2 (⃗ r1 × m2⃗ v1 + ⃗ r2 × m2⃗ v2)− m1 × + m2 × = dt dt dt dt dt ⃗1 (⃗ r1 − ⃗ r2 ) × F d d dt ⃗1 (⃗ r1 × p ⃗1 + ⃗ r2 × p ⃗2) = (⃗ r1 − ⃗ r2 ) × F ⃗ =L ⃗1 + L ⃗ 2 に対して 全角運量動 L ⃗ dL dt ⃗ = (⃗ r1 − ⃗ r2) × F が導かれる。 ■ 力が作用線 (2 点を結ぶ直線) 上で働くなら、全角運動量は変化しない。 • 遠隔力の場合、作用反作用の法則を満たす力が作用線上で働くかとい う疑問がある。 大概の力はそうなっているが、例外が見つかり、大問題になった。そ の論争の結論は 2 点間に場(光のようなもの)が存在し、場が角運動 量を担っているというものであった。 • 結論: 力が作用・反作用の法則を満たしているとき、全角運動量は 保存する。 反作用を無視した力(外力)がないかぎり、全角運動量は保存する。 • 例: ケプラーの第2法則:面積速度一定の法則 面積速度一定の法則 v r 太陽 S = 12 rv sin θ ⃗ = m⃗ L r×⃗ v , L = 2mS . 惑星 θ F 万有引力 • 力学の法則から分るのは角運動量。目に見えるのは角速度。 ⃗ とω 残念ながら、L ⃗ は平行とは言えない。 ⃗ = I⃗ ▶ L ω と書くと、I は行列であることまでは言える。行列 I は 慣性モーメントと呼ばれる。 ⃗ が一定なら、運動は L ⃗ に垂直な面で考えればよい。 ▶ もし L ⃗, ω この面内では L ⃗ の大きさだけを考えればよい。 このとき、 I はスカラーとなる。 ▶ そのほか、いろいろな制約をつけて、L = Iω と考えられる場合 がある。 • 反作用を無視できる環境中での回転 m r d( d⃗ dt ) dt ⃗, =F から ⃗ dL dt ⃗, =N ⃗ =⃗ ⃗ N r×F ⃗ は外力のトルクと呼ばれる。 が導かれる。N ⃗ dL dt = d(m⃗ r×⃗ v) dt =m = m⃗ v ×⃗ v + m⃗ r× d⃗ v dt d⃗ r dt ×⃗ v + m⃗ r× d⃗ v dt ⃗ =N ⃗ = 0+⃗ r×F ▶ 物体はトルクを働かせることにより回すことができる。 環境は物体の反対方向に回るが、環境は大きくて回転しているこ とを無視できる。 落下運動で地球の運動が無視できるのと同じ。 ▶ 一般論ではないが、この講義で解ける問題の場合、 角運動労 L = xpy − ypx トルク N = xFy − yFx 回転角 dθ dt =ω と考えればよい。 一般論としては正しくないが、このように書ける特殊な場合以外、 基礎物理の問題としては難しすぎる。 ■ こまの運動 ⃗ と地面の接点 ⃗ ⃗ は同 • こまの重心 ⃗ r1 に働く重力 F r2 で働く面の抗力 N じ大きさで反対方向。 L F N ⃗ = −N ⃗ F ⃗ は平行ではない。 • こまの軸が傾いているなら、⃗ r1 − ⃗ r2 と F ⃗ ̸= 0 (⃗ r1 − ⃗ r2) × F ⃗ は時間的に変化する。 • こまの軸が傾いているなら角運動量 L ⃗ + ∆L ⃗ はL ⃗ を鉛直軸まわりに回転させたもの L こまの歳差運動。 • 重力は地球が蒙る反作用を無視した力だから、コマの角運動量は変 わってもよい。 ■ 剛体振り子: ホイヘンスのアイデア 2 質点からなる剛体振り子 F1, F2 を剛体に保つ力とすると、てこの原 理が成立する。 r1F1 + r2F2 = 0 2 質点の運動方向の運動方程式は m1 d2(r1θ) dt2 d2(r2θ) m2 dt2 θ = −m1g sin θ + F1 = −m2g sin θ + F2 d2 θ dt2 F1 r2 m1 g m2 g てこの原理を使うと (r12m1+r22m2) r1 = −(r1m1+r2m2)g sin θ F2 ■ 剛体の運動方程式: オイラー方程式 • I = r12m1 + r22m2 • M = m1 + m2 1 r1 +m2 r2 • R = mm +m 1 2 を回転軸周りの慣性能率という。 を全質量という。 を重心の位置という。 これらを使うと運動方程式は I d2 θ dt2 = −RM g sin θ 回転軸からの距離 R に 外力 F = −M g の回転方向の成分 F sin θ を かけたもの, つまり, N = RF sin θ をトルクという。 回転運動の運動方程式は I d2θ dt2 =N
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