木造住宅の耐震診断について 平成27年5月25日 1 木造住宅の耐震診断 ご存知のように、建築基準法が定める耐震基準では建物の耐用年数の間に数度遭遇する 可能性のある中地震動では、建物が損傷を受けず継続して利用できること。更に、耐用年 数の間に一度程度遭遇するかもしれない大地震動では倒壊・崩壊を生じないで居住する 人が安全に避難できることが求められています。 (一財)日本建築防災協会で定めている一般診断法で算定される上部構造評点は、この建築 基準法の考え方に準拠し、大地震動での倒壊の可能性度合いを示しています。 札幌市(中央区)における1968年以降47年間の地震回数は震度3以上が16回、震度4 が4回記録されています。(平成26年度調べ:気象庁の資料による) 震度5強以上の地震経験が無いこともあって、地震への恐怖感や地震時の安全性確保の 要望が少ない地域かも知れませんが、地震時の人命確保や災害に強いまちづくりの観点 から、木造住宅の耐震診断を行い、安全性が疑問視される木造住宅については耐震補強 工事を進める必要があります。この講習会を機会に耐震診断に関する知識と技術を習得 され、実務に生かして戴ければ幸いです。 一般診断法による耐震診断(2004年版)は、手計算でもある程度対応できますが、 若干の慣れを必要とします。現在は、2012年版が主流となりつつあり、また、計算 過程が幾分複雑になったこともあり、ソフトを利用するケースが多くなってきています。 (一財)日本建築防災協会では、この一般診断法のパソコンソフトを用意しています。 税込9,720円(2012年改訂版対応:Ver1.2.0)で購入できます。 札幌市木造住宅耐震診断補助事業では、今年度から原則として、2012年改訂版での 受付となります。ご協力をお願いします。 このソフトを利用した耐震診断及び補強設計についてこの後、担当者から説明があり ます。実務に役立つツールとして用意されることを期待しています。耐震診断の結果を 基に、住宅の耐震性能をどのように確保するか検討することになりますが、耐震設計及 び補強工事においても助成制度がありますのでご活用いただきたいと思います。 2 耐震診断技術と木構造基準について 住宅の所有者から耐震性能のレベルや耐震診断に関する相談を受けるに当たり、建築 に携わる技術者はまずは木造住宅の耐震診断および耐震補強設計の方法を習熟していな ければなりません。(告示184:建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための 基本的な方針 (別添)建築物の耐震診断及び耐震改修の実施について技術上の指針と なるべき事項 第一 建築物の耐震診断の指針) 木造住宅の耐震診断を行う場合、特に診断士としての資格は定められていませんが人 の財産に関する評価を行うことになりますので、総合的な判断能力が要求されます。 従って、建築士(1級、2級、木造)として、一定の経験が必要と考えられます。 耐震診断・耐震補強設計、耐震補強工事を行うにはその裏付けの技術基準として、 建築基準法、同施行令および告示に示されている木造建築の性能に関する知識・技術を 習得する必要があります。その習得により、耐震診断・耐震補強の具体的な意味合いを 理解出来、自己の技術として確立されていくと考えています。 《木造住宅に関連する主な構造事項》 *耐久性規定他を確認する ・ 施行令 37条-構造部材の耐久 ・ 施行令 38条-基礎 ・ 施行令 41条-木材 ・ 施行令 49条-外壁内部等の防腐措置等 ・ 施行令 70条-柱の防火被覆 *木造の構造仕様規定を確認する ・ 施行令 39条-屋根葺き材の緊結 ・告示109号に定める屋根葺き材他の構造方法 ・ 施行令 42条-土台及び基礎 ・ 施行令 43条-柱の小径 ・ 施行令 44条-はり等の横架材 ・ 施行令 45条-筋かい ・ 施行令 46条-構造耐力上必要な軸組等 ・ 施行令 47条-構造耐力上主要な部分である継ぎ手又は仕口 *構造計算の方法は建築基準法、同施行令、関連告示に従う ・ 施行令 36条-構造方法に関する技術的基準 ・ 施行令 81条-適用:許容応力度・保有水平耐力・限界耐力計算を行う ・ 施行令 82条-適用:許容応力度・保有水平耐力・限界耐力計算の指針 ・告示1100号に定める軸組に係る倍率 ・告示1347号に定める基礎の構造方法と計算 ・告示1349号に定める柱の座屈許容応力度 ・告示1351号に定める物置等面積加算 ・告示1352号に定める壁配置 ・告示1460号規定の接合方法 ・告示1792号規定の各階の形状特性係数 ・告示1793号規定の地域係数、振動特性係数、高さ方向の外力分布等 ・告示1899号に定める構造計算の基準 ・告示1899号に定める許容応力度設計
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