駐在員便り シカゴ 2 月に入り、シカゴの気温はますます下がる一方です。昨年は 40 年に一度の寒さと言わ れておりましたが、雪が少ない点を除けば今年も昨年同様に厳しい寒さです。雲一つ見え ない日はオフィスの窓からの様子は爽やかですが、外に出ると突き刺すような寒さに襲わ れます。足早に歩いても体が温まるどころか冷え切ってしまいます。また、一番辛いのは パークアンドライド(駅に隣接した駐車場)に停めてある自家用車の冷え切ったシートに 座る瞬間です。勿論、エンジンを始動させ 3~5 分暖気すれば多少は温まりますが、なんと も気持ちが沈んでしまいます。春が本当に待ち遠しく思います。 さて、今月はエネルギー関連カンファレンスに参加するため、同僚とともにワシントン DC に出張しました。その帰り、シカゴ行きのフライトまで多少時間に余裕があったため、 少し足を延ばしてスミソニアンまで行ってきました。ロナルドレーガン空港から地下鉄で およそ 20 分の距離です。この地は周知の通り国政の中心でもあり、ホワイトハウスや国会 議事堂等、官公庁の建物が集中しております。また、博物館や美術館、公園といった公的 施設の多くが無料なことも特徴の一つです。今回はあまり時間もなかったので、米国財務 省製版印刷局(Bureau of Engraving and Printing: BEP)の見学ツアー(無料)に参加し てみました。ちなみに、オフシーズンは予約不要ですが、繁忙期にはウェブでの予約が必 要とのことです。 BEP の案内によれば、米国での紙幣の印刷は 1861 年に始まり、現在はここワシントン DC とテキサス州フォートワース(1991 年~)の 2 か所で実施しており、印刷する紙幣量 はおよそ半々で、合計で毎日 5~6 億ドル相当を刷っているそうです。ツアーはおよそ 30 分で、十数名の参加者に 1 名の案内役がつきます。見学コースもきちんと整備されており、 上から見下ろす形で各工程を巡ることになります。建物自体も非常に狭く、最初はあまり 期待していなかったのですが、実際に印刷している様子はなかなか見応えがあります。工 程は、印刷、検査、裁断・梱包と分かれており、本当に少人数(多くても 5~6 名)で運転 されておりました。ドイツ製の印刷装置もなかなか年季が入っているようです。なかでも 驚きだったのは、最終の梱包プロセスの従業員がスナックを片手に陽気に働いていること です。これも日米の文化の違いなのでしょうか。 見学後に、BEP スタッフに印刷装置の性能について尋ねたところ「性能はいい。ただ、 メンテナンス含めたサービス面も加味すれば日本企業の方が勝るのではないか」とのこと。 また、「検査装置の性能が格段に向上したため、以前に比べ大幅に従業員は減っているが、 それでも、最終検査や大量の印刷紙を装置にセットする工程など、自動化出来ない部分が あり、そういった技能継承をどうしていくかが課題だ」と発言していたことも印象的でし た。 ― 113 ― ツアーの最後にはギフトショップがあり、裁断前の米ドル紙幣や記念硬貨セットなどこ こでしか手に入らないものもあり、私も先生に引率された小学校低学年の集団に混じって 物色しておりました。最後に一点付け加えると、この印刷所は本省製版印刷局の中には無 く、道を挟んで反対側の小さな建物の中にあります。私も含め多く人々が間違えていたよ うです。ちなみに、本省製版印刷局の建物に入って「印刷所はどこか?」と尋ねると警備 員に「またか」という顔をされるため、お気を付け下さい。 左:紙幣・貨幣の製造コスト表。高額紙幣は偽造防止リボン等を施しているため割高です。 右:ギフトショップで販売されていた裁断前の米ドル紙幣。額面通りだったと思います。 ジェトロ・シカゴ事務所 産業機械部 ― 114 ― 川内 拓行
© Copyright 2024 ExpyDoc