ロシアNIS経済速報 2006年(平成18年)11月15日 No.1380 毎月5日・15日・25日発行(ただし1月5日、5月5日、8月15日は休刊) RUSSIA NIS ISSN 1881-4417 ロシアNIS経済速報 社団法人 ロシアNIS貿易会 2006年(平成18年)11月15日号 No.1380 目 次 ロシア食 品 機 械 見 本 市 を視 察 して .............................................. 服部 倫卓 1 キーパーソン ....................................................................................................................... 7 タジキスタンのラフモノフ大統領が3選/7 トピックス ............................................................................................................................. 7 横河電機がロシア石油化学大手と戦略的パートナーシップ協定を締結/7 エトセトラ ............................................................................................................................. 7 2006年世界「清潔度」ランキング/7 ロシアNIS貿易会関連の行事予定 ..................................................................................... 8 ロシア・NIS諸国通貨の為替レート ..................................................................................... 8 ロシア食 品 機 械 見 本 市 を視 察 して はじめに 筆者は最近、なるべく機会を見つけて、ロシアで開催される各種の産業見本市を視察す るように心がけている。2005年2月にモスクワで開催された食品産業の国際見本市 「Prodexpo-2005」を目の当たりにして、見本市というものの意義を再認識させられたから である。その時の模様については、本速報の2005年4月5日号(No.1325)において、「モ スクワ食品産業見本市視察報告」と題する文章を書いている。 そして、筆者は先日、出張でモスクワを訪れた際に、「Agroprodmash-2006」という見本 市を見る機会に恵まれた。これは、食品機械をテーマとした、かなり規模の大きな国際見 本市である。残念ながら、この分野において、日本企業のロシアへの進出可能性はあまり 大きなものではなく、その意味では読者の関心事とはなりにくいかもしれない。しかし、 たとえテーマが直接的な関心分野でないとしても、様々なヒントを提供してくれるのが見 本市というものである。そこで、今回の速報では、1年半前の食品産業見本市報告のいわ ば続編として、食品機械見本市についてのレポートをお届けする。 1 ロシアNIS経済速報 2006年(平成18年)11月15日 No.1380 Agroprodmash-2006の 会場の様子 Agroprodmash-2006の概要 食品産業向け設備・機械・材料の国際見本市「Agroprodmash」は毎年定期的に開催され ており、今回が第11回となる。もちろん、この分野では、ロシアで最大の見本市となって いる。 より具体的には、以下のような個別テーマが設定されている。①食品生産設備。②材料・ 添加物。③冷蔵設備。④測定・制御・計量機器。⑤包装設備・材料。⑥貯蔵・商業設備。 ⑦食品産業設備用の機械・部品・材料。⑧衛生関連、清掃設備、洗浄剤。⑨畜産・飼料機 械および関連サービス。⑩農業機械。⑪農工コンプレクスにおける環境的に安全な技術。 ⑫農工コンプレクスにおけるリース、融資、投資。⑬補完的・業際的な分野(マスコミや ソフト関連など) 。見本市の名称の先頭に「アグロ」が来るので、農業機械がメインと錯覚 しがちだが、実際にはその比重はごく小さく、一般的な食品産業機械を主体とした見本市 となっているわけだ。 本年のAgroprodmashは10月9日から13日にかけて、見本市会場「エクスポセンター」に おいて開催された。エクスポセンターの主催、農業省、産業・エネルギー省の協賛で、ロ シア連邦商工会議所およびモスクワ市が後援している。 エクスポセンターのウェブサイトによると、Agroprodmash-2006では、29カ国から、725 社に上る出展があった。全体の7割がロシア企業である。総展示面積は21,017m2、5日間 の来場者数は17,081人であった。 見本市と並行して、全ロシア技術フォーラム「食品産業の最新技術と設備」が開催され た。このフォーラムでの報告者には日本人も含まれていたという。とくに注目を集めたセ ッションは、ロシアではまだ新しいコンビニエント・フードの生産技術だったようだ。 また、エクスポセンターと、情報機関「ナピートキ」(http://www.napitki.com)の主催に より、第2回国際会議「ナピートキ(飲料の意味)プロ」が開催され、飲料業界の様々な 2 ロシアNIS経済速報 2006年(平成18年)11月15日 No.1380 問題が討議された。 Agroprodmash-2006における 出展企業の国別内訳 出展企業の国 ロシア ドイツ イタリア スペイン オーストリア ポーランド ウクライナ フランス オランダ 英国 ベラルーシ フィンランド チェコ ベルギー デンマーク スイス 日本、韓国、トルコ、 リトアニア インド、ギリシャ、ア イスランド、カナダ、 ルーマニア、スロバキ ア 合 計 出展数 407 60 52 13 12 11 10 10 8 7 6 6 5 4 3 3 シェア 64.5% 9.5% 8.2% 2.1% 1.9% 1.7% 1.6% 1.6% 1.3% 1.1% 1.0% 1.0% 0.8% 0.6% 0.5% 0.5% 各2 各0.3% 各1 各0.2% 631 100.0% 国別の出展状況 Agroprodmashの公式カタログには、出展企業を国別にまとめた索引が掲載されているの で、それをもとに国別の内訳を示した表を作成してみた。ただ、ロシアの見本市の場合、 間際になって駆け込みで参加する現地企業が少なくないようで、実際の出展数が公式カタ ログに掲載されているよりも若干多いというケースがよくある。今回のAgroprodmashでも、 カタログ上の出品者は631社となっているが、既述のとおり、最終的には725社が参加し、 うち7割がロシア企業だったと発表されている。したがって、表は暫定的なものであり、 大まかな傾向を示したものとお考えいただきたい。 いずれにしても、傾向は明らかであろう。現在のロシアの食品機械分野では、地元ロシ アの企業の占める比重が大きく、外国勢ではドイツとイタリアの存在が突出しており、そ の他の欧州勢が大分引き離されつつこれに続くという形勢が見て取れる。この分野でドイ ツとイタリアが強い国際競争力を発揮していることはつとに知られるところであり、それ がそのまま表れた国別内訳となっている。 上述の全ロシア技術フォーラムの1日が「ドイツ技術の日」とされ、ドイツの企業・組 3 ロシアNIS経済速報 2006年(平成18年)11月15日 No.1380 織による30以上のプレゼンテーションがあったそうだ。筆者が見本市会場を見て回っただ けでも、ドイツ勢のプレゼンスの大きさは充分に見て取れ、やはり食文化が似通っている うえに地の利もある国は強いなと感じさせられた。BANSSというドイツ企業は、まるで精 密な工作機械のように三次元に自由自在に動く食肉解体処理機械を実演展示しており(肉 はなかったが)、ロシア人の来場者たちが目を丸くして見入っていた。 日本の食品関連機械も、技術力では引けをとらないはずだが、ロシアとは食文化が異な るうえに、高価格や営業資源不足などのネックがあり、ロシア市場への売り込みが簡単で ないことは察しがつく。それでも、公式カタログによれば、Agroprodmash-2006には日本企 業2社の出品があったようだ。一つはすでにモスクワに事務所を開設している前川製作所 (http://www.mycomj.co.jp)で、冷蔵設備用のユニットを展示していたようである。もう一 つはフジキカイ(http://www.fuji-machinery.com)で、こちらは包装用機械の展示であった。 独BANSS社のロボット然と した食肉解体機械 主催者が語るAgroprodmashの意義 T.ピスカリョワというエクスポセンターの幹部が現地業界誌のインタビューに応じ、 Agroprodmashの意義について語っているので、その発言要旨を簡単に紹介しよう。(『ノー ヴォエ・ミャスノエ・ジェーラ』誌、2006.No.5) • Agroprodmashの課題は、ロシア食品産業分野の設備更新を促し、もってロシアの食糧安全 保障を確保する点にある。 • ロシア国民の間では、輸入食品よりも国産食品の方が需要が高い。所得の上昇につれて、 食品の値段だけでなく、品質こそが国民の大きな関心事となっている。それに応えるため には、最新の機械設備の導入が避けて通れない。近くWTOに加盟し、輸入品との競争に 直面するだけに、なおさらである。 • ロシアでは本年、国家プログラム「農工コンプレクスの発展」が施行されており、これが 4 ロシアNIS経済速報 2006年(平成18年)11月15日 No.1380 見本市の活況にもつながっている。設備更新には長期の資金が必要であるが、現在ロシア 政府が同プログラムにもとづいてそれを提供しているからである。したがって、昨年の来 場者数も記録的であったが、今年はさらに増えると予測している。 • 外国企業はまさにAgroprodmashを足がかりにロシアの当該市場に参入する。この見本市を 通じて、ロシア市場のポテンシャルを探り、市場を見出し、最初のコンタクトを行い、場 合によっては供給契約まで結ぶのである。Agroprodmashへの参加こそが、ロシア市場で活 動していることの証左とされている。 • 今回の見本市でとくに脚光を浴びるのが衛生分野。ロシアの食品関連企業は、これに対応 しないと、WTO加盟後に市場から淘汰されてしまうので。 • ドイツの「IFWexpo Heidelberg GmbH」(http://www.ifw-expo.com)が我々エクスポセンタ ーと提携しており、ドイツ企業をはじめとする欧州企業のロシア見本市出展をサポートし ている。 氾濫する業界雑誌 筆者が最近、ロシアの見本市に足繁く通っているのは、それが情報の宝庫だからである。 見本市では、専門的な業界雑誌のブースが数多く設けられており、たいていの場合は、最 近の号をサンプルとして無料でもらうことができる。ブースがなくても、会場のあちこち に、多種多様な雑誌がタダで置かれている。したがって、見本市に行けば、ロシアのお目 当ての分野でどんな雑誌が出ているかを知り、見本号を簡単に入手できるのである。そし て、一般に売られているような雑誌と違って、こうした会場に置かれている雑誌は専門家 向けの内容だから、市場動向に関するレポートが掲載されていたりして、非常に有益なの である。もちろん、実際に商売をやっている会社であれば、こうした雑誌への広告の掲載 ということも検討する価値があろう。 とにかく、見本市に足を運ぶようになって痛感しているのは、ロシアでは実に多種多様 な業界雑誌、専門雑誌が出ていて、新陳代謝もかなり激しそうだということである。ネッ ト時代に逆行するようだが、見本市会場に出かけて雑誌をかき集めることが、ロシアの業 界事情を知る一番手っ取り早い方法ではないかと、最近思えてきたのだ。 食品産業を例にとってみよう。筆者は、2005年2月に食品産業見本市「Prodexpo-2005」 を視察して、『Russian Food & Drinks Market Magazine』という雑誌があることを知り (http://www.rus-fdm.com)、早速当会で定期購読を始めた。様々な食品・飲料製品の市場動 向に関して、ロシア語・英語のバイリンガルで分析レポートを掲載している優れもので、 ロシアの食品市場に関する情報はこれ一つで事足れりと考えていた。 ところが、今回Agroprodmash-2006を視察してみて、ロシアの食品産業・市場にかかわる 雑誌は、枚挙に暇がないほど多種多様なものが出ていることを思い知らされた。会場を一 5 ロシアNIS経済速報 2006年(平成18年)11月15日 No.1380 回りして見本誌を集めたら、リュックが担げなくなりそうなほど、ずっしりと重くなった。 おそらく、食品産業に限らず、ロシアのあらゆる産業分野で、同じような雑誌媒体の増殖 が起きているのではないだろうか。せっかくなので、Agroprodmash-2006で入手した食品関 係の雑誌のうち、注目すべきものをいくつか紹介してみることにする。 『FOOD』 『プロドインドゥストリヤ』 『ノーヴォエ・ミャスノエ・ジェーラ』 まず、重要なものとして、その名も『FOOD/Продовольствие』という月刊誌を挙げてお きたい(http://www.foodmedia.ru)。前掲の『Russian Food & Drinks Market Magazine』と同様 の市場分析を主体とした雑誌である。他方、『プロドインドゥストリヤ』という雑誌 (http://www.prodindustry.ru)は、生産と販売に関するより実践的な問題を取り扱っている。 食品産業専門の出版社も誕生しているようである。 「Пищевая промышленность(ピシチ ェヴァヤ・プロムィシレンナスチ;食品産業)」社(http://www.foodprom.ru)は、『食品産 業』『ビールと飲料』『漁業』『油脂産業』『食品原料』『菓子生産』『スピリット・リキュー ル製品の生産』 『ブドウとワイン』 『ロシアの製パン』 『農産物の保存と加工』といった専門 雑誌を発行している。同社の出版物は、市場分析、マーケティングなどよりは、生産にか かわる理論や技術面を中心としているようである。 もう一つ、注目すべき食品分野専門の出版社に、「СФЕРА(スフェーラ)」社がある (http://www.sferamagazine.ru)。同社は、『スフェーラ:食肉・食肉加工』『スフェーラ:牛 乳・バター・アイスクリーム』 『スフェーラ:菓子・パン』という3種類の雑誌を発行して いる。内容的には読みやすく、バランスのとれた誌面となっている。 ロシアの食文化を反映して、スフェーラ社のものだけでなく、食肉については実に様々 な雑誌が出ている。前出の『ノーヴォエ・ミャスノエ・ジェーラ』誌(http://www.nmd-idh.ru) は、実はドイツの食肉業界誌のロシア版であり、ここでもドイツがしっかりと存在感を示 している。その他にも、Agroprodmash-2006では、 『ミャーサ.com』 (http://www.myasocom.ru)、 『食肉技術』 (http://www.meatbranch.com)、『パートナー:食肉加工』などが目に付いた。 (ロシアNIS経済研究所 調査役 服部 倫卓) 6 ロシアNIS経済速報 2006年(平成18年)11月15日 No.1380 キーパーソン ◇タジキスタンのラフモノフ大統領が3選 11月6日、タジキスタンで大統領選挙の投票が実 施された。現職のラフモノフ大統領が79.3%を得票し、1994年、1999年に続く3度目の当選 を決めた。任期は7年で、同大統領の長期政権がさらに続くことになった。 ラフモノフ・タジキスタン大統領(RAKHMONOV, Emomali Sharifovich):1952年10月5日クリャ ブ州生まれ。タジク人。1982年タジク国立大学卒業(経済学専攻) 。1992年11月第12回タジ キスタン共和国最高会議第6会期で最高会議議長に選出される。1994年11月の大統領選挙 でアブドラジャノフ前首相をやぶり、タジキスタン共和国大統領に就任。1999年11月再選。 2004年12月人民民主主義党議長に再任される。2006年11月大統領に再選。 トピックス ◇横河電機がロシア石油化学大手と戦略的パートナーシップ協定を締結 横河電機株式会社は 11 月8日、ロシア最大の石油化学・化学グループであるシブールの 持ち株会社、シブールホールディング(本社:サンクトペテルブルグ)と戦略的パートナ ーシップ協定を結んだと発表した。これにより、今後シブールグループの 24 工場が導入す る制御システムとして、横河電機の「CENTUM CS 3000」やフィールド機器が優先的に採 用される。計装分野で戦略的パートナーシップ契約を結ぶメーカーは横河電機が初めて。 シブールホールディングは、ロシアで30社以上の石油化学・化学企業を統括する持ち株 会社。ガス精製からタイヤ生産まで幅広く手がけ、従業員は9万人以上。ロシア国営ガス プロムが株式を100%保有している。 エトセトラ ◇2006年世界「清潔度」ランキング 11月6日、汚職監視団体のトランスペアレンシー・イン ターナショナル(本部:ベルリン)が、世界163カ国・地域の汚職指数を発表しました。最 も汚職度が低く「清潔度」が高かったのはフィンランド、アイスランド、ニュージーラン ドの3カ国で、最下位はハイチ、日本は17位でした。ロシア・NIS諸国は下記の通りいずれ も低い評価で、昨年からほとんど改善がみられませんでした。 79 位 93 位 99 位 111 位 121 位 モルドバ アルメニア グルジア ウクライナ カザフスタン ロシア 130 位 142 位 151 位 アゼルバイジャン キルギス タジキスタン トルクメニスタン ベラルーシ ウズベキスタン 詳しくは→http://www.transparency.org/news_room/in_focus/cpi_2006 7 ロシアNIS経済速報 2006年(平成18年)11月15日 No.1380 ロシアNIS貿易会関連の行事予定 ◇11月16日:ロシアビジネスセミナー(於:大手町ファーストスクエアタワー西館) →http://www.rotobo.or.jp/activities/kpmgsemi.pdf ◇11月17日:サハ共和国石油開発セミナー(於:東京証券会館) →http://www.rotobo.or.jp/activities/sakhaoil.pdf ◇11月21~23日:第4回日本アゼルバイジャン経済合同会議(於:バクー) →http://www.rotobo.or.jp/activities/jpaz4.pdf ロシア・NIS諸国通貨の為替レート (2006年11月14日現在) 国・通貨単位 $1= €1= ¥100= ロシア・ルーブル 26.62 34.23 22.69 ウクライナ・グリブナ 5.050 6.479 4.283 ベラルーシ・ルーブル 2,141 2,753 1,823 モルドバ・レイ 13.20 16.94 11.20 カザフスタン・テンゲ 127.9 164.4 108.9 キルギス・ソム 39.00 50.20 33.20 ウズベキスタン・スム 1,233 1,566 1,044 トルクメニスタン・マナト 5,200 6,649 4,432 タジキスタン・ソモニ 3.394 4.367 2.893 アゼルバイジャン・マナト 0.873 1.123 0.743 アルメニア・ドラム 378.2 486.6 321.6 グルジア・ラリ 1.733 2.227 1.475 モンゴル・トゥグリク 1,164 1,496 991.0 発行所 社団法人 ロシアNIS貿易会 http://www.rotobo.or.jp 〒104-0033 東京都中央区新川1-2-12 金山ビル Tel(03)3551-6215 編集担当部署 ロシアNIS経済研究所 Tel(03)3551-6218 Fax(03)3555-1052 * * * * * 年間購読料 eメール配信 18,000円 ハードコピーの郵送 23,000円 購読のお問い合わせ・お申し込みは ロシアNIS経済研究所 Tel(03)3551-6218 [email 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