優秀賞 一歩ずつ 西尾市立鶴城中学校一年(愛知県) 加藤 彩乃 ますよ」 と、優しい口調で言われました。 私は、保育園の頃、母に言われた事を思い出しました。 「お兄ちゃんだって左利きを直せたから、彩乃もきっと直せるよ」 その言葉は、先生と一緒の事を言っていました。右手でお箸を持つ と、すべって落ちたりつまむ事が、出来ませんでした。いつも嫌に なってあきらめてしまって左手でご飯を食べていました。母に右利 きにするよう指導された事はあったけれど、結局直す事が出来ませ んでした。それから意識せずにずっと左利きの生活をしていきまし 「あーもう、また同じだよ。何回やっても、きっと出来ない」 心の中で、つぶやきました。 た。 初めてお菓子を食べるお稽古をした時の事でした。私が、左手で 菓子器の上のお箸を、取ろうとしたら、先生が 今は、左利きの事を後悔しています。色々な所で、苦労しないと いけないからです。それに小さい頃、一生懸命がんばって直してい 私は、左利きです。お箸も鉛筆ももちろん左手で持ちます。 中学校に入学し、茶道部に入部しました。 「茶道部では、お箸を左手で持ってはいけませんよ」 と、はっきりと言われました。 たら、変わっていたのかもしれません。 と、説明されました。 「そのお箸は、次の人も使うからですよ。次の人が、使い易い様に しましょうね」 私は、左利きが自分一人しかいないと思っていたので、それを聞 いた時は、少しほっとしました。先輩は、 出来ています。同じ左利きなのに、すごく上手に出来ています。 来なかったのに、今ではお茶を点てる事もお菓子を右手で取る事も 「どうしてですか?私は、左手じゃないと出来ません」 と、不思議に思い、聞きました。 茶道では、菓子器に何人分ものお菓子が、盛られていて、黒文字 というお箸で自分の懐紙に取っていただきます。この時の黒文字は、 先生は、茶道部に左利きの先輩がいる事を教えてくれました。そ の先輩は、一年生の時は私と同じでお箸も茶筅も右手では、全く出 右手用に横にして、菓子器に乗っています。私が左手で使えば、必 自分が、左利きで、たくさんお稽古はしないといけないけど、お 稽古してみんなと同じになれると思い、気合いが出てきました。 「右利き、左利きなんて関係ないよ。新しい事を始める今から、一 歩ずつがんばろうよ」と、言ってくれました。 ず左手用に置いて次に回してしまいます。自分の事だけ、考えてい てはだめなんだと思いました。先生は、 「今日からお稽古しましょうね。がんばれば、必ず出来る様になり それから、毎日家でお箸を使ってお稽古しました。右手でやると、 変な力が入ったり、手が震えたりして集中力が持ちませんでした。 でも今度は、諦めません。お茶を点てるお稽古も必要だと思い、母 に事情を話し道具セットを買ってもらい、家でもお稽古する事にし ました。 まだまだ努力する事は、沢山あるけれど、ちゃんと泡が点つよう にお稽古して、 「左利きでも、しっかりと点てられるんだよ」と言う事を証明した いです。そして、もし左利きの後輩が入部してきたら励ましてあげ られるような先輩になりたいです。 このようなお点前の稽古を通して、私は自分の目標を持って、努 力する大切さを知りました。これからも、小さな努力を重ね、一歩 ずつ進んでいきたいと思います。
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