1 Copyright©2015 信州読書会. All Rights Reserved. 2015.9.12 夏目

2015.9.12
夏目漱石の『こころ』を精読する レジュメ
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なぜ、学生は先生を、
「先生」と慕ったのか?
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なぜ、先生は、下宿に K を呼んだのか?
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なぜ、先生は、K に抜け駆けして、お嬢さんを妻にしたのか?
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なぜ、K は自殺したのか?
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お嬢さんは、K のことを好きだったのか?
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なぜ、先生は、妻となったお嬢さんに、真実を告白しなかったのか?
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なぜ、先生は、殉死という言葉に惹かれたのか?
柄谷行人『言葉と悲劇』 講談社学芸文庫 「漱石の多様性 『こころ』をめぐって」
ヘーゲル(哲学者)
欲望とは、他人の欲望。つまり、欲望とは他人の承認を得たいという欲望である。
作田啓一(社会学者)
『K を連れてきた理由は、苦学生の彼の生活を少しでも楽にしてやろうという友情からだ、
と「先生」はその遺書で語っています。しかし、その説明だけでは何かよくわからないと
ころが残ります。私の解釈では、「先生」はたとえ策略のいけにえになったとしても、お嬢
さんが結婚に値する女性であることを、尊敬する K に保証してもらいたかったのです。そ
してまた同時に、このような女性を妻とすることを K に誇りたかったのです。』
『K は「先生」にとって判断を仰ぐ手本(モデル)でした。K がこの娘を好ましく思うこ
とで、先生の選択対象がはじめて正当化されるのですから。しかしまた K は「先生」のラ
イヴァルともなりうるでしょう。K がお嬢さんを好ましく思うことになれば、
「先生」と彼
女を争うことになるのですから。』
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キルケゴール『死に至る病』
岩波文庫より
「永遠なるものについての絶望ないしは自分自身に関する絶望。
」
ところで最後に、自分の中に閉じ籠もっている人間―――彼は閉鎖性の中で足踏みしてい
る―――の内部をもう一度少しばかりのぞいてみることにしよう。この閉鎖性が絶対的に
保たれている場合には、あらゆる点において絶対的に安全に保たれている場合には、彼に
最も近く迫っている危険は自殺である。自己自身に閉じ籠もっている人の内面に何が秘め
られてありうるかということについて、大抵の人達は無論なんの予感ももっていない、
―――もし彼等がそれを知ることがあったら、きっと驚愕するであろう。それに反しもし
そういう状態にある人が誰かに、たった一人にでも、ことをうちあけるとしたら、彼はき
っとそのために緊張がぐっと弛(ゆる)むかぐったりと深く気落ちするかしてもはや自殺
というような行為を遂行する力がなくなるであろう。
絶対の秘密に比較すれば、一人でもそれを一緒に知ってくれる人のある秘密というものは
一音階だけ調子が柔らかくなっている。そこでおそらく彼は自殺をまぬかれることでもあ
ろう。けれどもその場合絶望者は自分がほかの人に秘密をうちあけたというちょうどその
ことに絶望することがありうるのである。
もし彼がずっと沈黙を守りつづけていたとしたら、きっとその方が、いま一人のそれを与
り知っている人をえたよりも遥かに限りなく良かったのではないか?
自分の中に閉じ籠っていた人が、自分の秘密を与り知っている人をえたというちょうどそ
のことのために絶望にもたらされたといういくつかの実例がある。そこでまた結局帰する
ところは自殺ということになる。
詩人はこのような破局(詩の主人公はたとえば国王とか皇帝である)を主人公が自分の秘
密を与り知った人を殺させるといったふうに描き出すこともできよう。このようにして
我々は自分の苦悩を誰かにうちあけたいという衝動を感じている悪魔的な暴君を思い浮か
べることができる、かれは次から次へと一群の人間を殺すことになる、―――というのは
彼の秘密を知るに至るものは必ず死ななければならないのである、―――暴君が誰かに自
分の秘密をうちあけるやいなやすぐにその人間は殺されてしまうのである。
このような結末に終る悪魔的な人間の苦悩に満ちた自己矛盾―――自分の秘密を知ってい
る人を持たないでいることももっていることもどちらにも耐えきれないというような
―――を描写することはけだし詩人に課せられた一つの仕事であろう。(ex ハムレット)
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