追悼 佐藤方哉先生 白倉 憲二 (帝京大学文学部心理学科長) 2010 年の夏は猛暑が続いておりましたものの、先生の訃報の第 1 報には信じられないもの がありました。ニュース番組で、先生の写真を拝見し、ご逝去されたことが動かぬ事実として 受け入れざるを得なくなったとき、あまりの出来事に天を仰ぐ境地に陥りました。在りし日の 先生のお姿が、走馬燈のように駆けめぐりました。 先生は、2003 年 4 月から 2008 年 3 月まで 5 年間心理学科長をつとめられ、学科をリードし てくれました。学科会議では、いつも定刻の 10 分前頃には着席されて、先生方が集まるのを お一人で待っている姿が印象的です。ご自身はあまり発言せず、先生方が議論を尽くすのを楽 しんでおられる様子でした。大学院博士課程後期課程の創設など学科の発展に尽くされました ことに、感謝を申し上げます。 2008 年 2 月 18 日には、社会心理学の古畑和孝先生と共にお別れ講演をしてくれました。 「帝 京大学の退職に当たり研究生活を振り返る─言語行動研究を中心に─」という演題でした。 「私 の個人史」と言語行動研究史とをお話くださいましたが、力点は、過去の研究内容よりもこれ からやりたいことに置かれていました。ライフワークとして「行動分析学体系のリファインメ ント」 、「「体系心理学─行動分析学的アプローチ」の執筆」 、「言語行動の研究」等に取り組み たいと熱く語りかけ、衰えない情熱にこころ打たれました。 私の手元に、2008 年 1 月 28 日、先生からいただいた、直筆のサイン入り挨拶状、間歇詩集、 のんせんす句集「河馬の馬鹿」 、CD「深く愛したら」があります。先生は、ご厚誼への感謝の 印にと教職員全員にこれを贈呈してくれました。 挨拶文にも「ライフワークとよべるものに取り組みたい」という決意が記されています。ま た、「75 歳になり、心理学以外でもしてきたことを残しておきたいという気持ちになり、最 近、CD1 枚と本 2 冊を出しました。CD の曲はみな昭和 40 年代に作ったもので、 「間歇詩集」 は二十歳の頃から最近までに間歇的に書いた詩を集めたもので、第 5 部は帝京大学時代の作で す。「のんせんす句集 河馬の馬鹿」はこの 2、3 年に作ったものばかりです。 」と記されてい ます。これを読むと無念さとともに先生の魅力的なお人柄が偲ばれます。 先生は、心理学科に 1999 年から 2008 年までの 9 年間在籍され、若人の教育に尽くされまし た。心理学科は、1学年 200 人を超えていますので、少なくとも 1,800 人以上の若人が先生の 行動分析学や心理学史を学習して社会で活躍しております。また、多数の優れた研究者をお育 てになっております。たくさんの方々が、先生のライフワークを引き継いでくださると思いま す。 安らかにお眠りください。 合掌
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