山 本 恵 里 子 フ シ ョ ン デ ザ イ ナ ー

痛恨のミスから学んだ
仕事は効率よく丁寧に
﹁大人が着るカッコいい洋服を作りたい﹂
面 接の時に、こう 話して会 社に入 り まし
本恵里子さん。大人の女性のライフシーン
たと 語るのは、まもなく入 社三年目の山
をエレガント&カジュアルに演出するファッショ
由 区 ﹂のデザイナーは、チーフデザイナー、
ンブランド﹁自由区﹂のデザイナーだ。﹁自
彼女の先輩デザイナーが六人、そして山本
さん。まだ後輩もいない、一番経験が浅い
彼女の仕事内容は幅広い。
山本恵里子
たとえ、
三歩進んで、
三歩も四歩も下がっても
そこから学んで、
必ず前へ進んでいく。
ここは、
妥協しないモノづくりの現場。
降りかかる雑務も、
忘れられない失敗も
すべての経験を未来のデザインに活かして。
ファッションデザイナー
さん
Choice is yours
Eriko Yamamoto :
Fashion Designer
三歩も四歩も下がってしまうことがありま
●株式会社オンワード樫山 勤務
ドレスメーカー学院︵2013 年卒︶
洋服のデザインがあがると、パタンナーがパ
細かい部 分。 人 との 連 動 をしっかり 取る、
す。 仕 事で大 変さを 感じるのは、 作 業の
ま ず 大 き な 仕 事の一つが、〝 職 だ し 〟
といわれるサンプル発 注 作 業。 毎シーズン、
な、ボタンな どの 付 属 品や 生 地、 指 示 書
いか、5 年後、10 年後、20 年後と、イメー
ジすることも大切だと思っています。そのため
にどうすればいいか、さかのぼって考え、目標
を立てることができるからです」。
ぐ りを 広げようなどボディやモデルさんに
着せて行われる〝 補 正 〟。ほかには、カタ
ログ撮影のフィッティングの手伝い、デザイン
い失敗について話してくれた。
さんは一年目にしてしまった、 忘れられな
デザイナーとして入社したという
ト 業 務、 雑 務 な どで 忙しい毎日。 そこに、
が多い。デザイナーといっても、アシスタン
山 本さんはフットワーク軽く動けるよう
に、 会 社ではスニーカーを 履いているこ と
ワークなど。﹁恥ずかしい話しですが、ケア
入社して間もなく、一気にたくさんの職
だしを任されたことがあった。その時、白
﹁ 学 校の 先 生から、デザイナーとして 入
いのだろうか。
時間がなく、濃いグレーのステッチが入った
いグレー。 展 示 会 用のサンプルで作 り 直す
今の仕事は、分からないことばかりで大変
ないし、雑用が多いことは聞いていました。
社しても、すぐにデザインはさせてもらえ
レスミスをすることもあります﹂ と、山本
いコートのステッチの指示を間違えてしまい、
白いコートをそのまま展示。販売用の商品
和感のようなものは全くありません﹂。
だと 感じることはあ りますが、 不 満や違
もともと、山本さんがデザイナーを志す
よ うになったのは、 小 学 校三年 生の 職 場
﹁ 効 率 よ く、 そして 丁 寧に 仕 事 を する
て 丁 寧に 仕 事 をし ないと、三歩 進んでも、
に、こうしたらいい、これはダメだと、み
ことが大 切です。 人に分かりやすく伝え
体験から。女性が一人で経営する洋裁店を
その話しはどれもとても 興 味 深い。 会 議
んなの前で話しをする。山本さんにとって、
管理するMD︵マーチャンダイザー︶の男性
では、 商 品 企 画や 販 売 管 理 をトータルで
訪 れ、お客 様 と 相 談し ながら、一人ひと
まま、高校卒業後は、杉野学園ドレスメー
Dが言うと、チーフは、それでも女性は袖
二の腕が隠れるのでよいのではないかとM
﹁たとえば、ワンピースは 袖があるほうが
知識、女性の体の特徴など、基礎の基礎
のないようなワンピースも 素 敵に感じるも
とチーフが意見を交わす場面もある。
から徹底的に習得。基礎をしっかり固めて
のだと言い切る。さらに意見がぶつかり合
カー学院に入学。学校では服づくりを一か
という。 先 生 方からは、 仕 事の流れやデ
けれどそこには、ブランドをよくしたいと
いう共通意識があるんです。みんながブラ
い、会議中にバトルになることもあります。
ションを行うのではなく、お客様目線で考
敵だし、たいへん勉強になります﹂。
ンドのこと を 熱 く 考える 現 場は とても 素
上では、自分の好きなものだけのクリエー
えて、 売れる服を 作ら なければ なら ない
読んだ り、 市 場 調 査 をした り、いつか自
分も 説 得 力のある意 見が言えるようにな
自分はまだまだ未熟だけれど、生地や
配 色のことを 勉 強したり、 本をたくさん
りたいと 山 本さんは 語る。 将 来は、 多く
本さんは、主にスカートを担当。初めてデ
彼女は今でもはっきり覚えていた。
ザインを任されたスーツのスカートのことを、
ランドを 任せてもらえるデザイナーになる
ことが目標だ。
の経験を積んで、今のチーフのように、ブ
られない感じでしたね。とても嬉しかった
﹁自分は着たくないけど売れそうな洋服
﹁一年目の冬に、 自 分が初めてデザインし
です。今は、スーツだけでなくカジュアルな
着たい服には共通する何かがあるように感
というのは、結局は売れないし、みんなが
気もした。
でに始まっているのかもしれない、そんな
奥では、私たちがまだ見ぬブランドが、す
同時に、もしかすると、彼女の瞳のずっと
のこれからが、本当に楽しみで仕方がない。
洋 服 を 熱 く 語 る 山 本 さ ん の 表 情 は、
ファッションデザイナーそのもの。﹁自由区﹂
美的感覚というか感性のようなものです﹂。
ういう もの すべて を 越 えていいと 感 じる、
じます。 色や柄、 着る人の年 代とか、そ
ものなど、さまざまなスカートのデザイン
フデザイナーが、ブランドをよ くするため
うこと。たくさんの経験を積んできたチー
協し ないモノづくりの現 場にいられるとい
た 別のところにあるよ う だ。 それは、 妥
さんにとって、仕事の本当の面白さは、ま
店 頭で自 分が手がけたものを目にする
ことは、大きな喜びの一つ。けれど、山本
会議中のバトルは
ブランドへの熱い想いから
に携わっています﹂。
たスカートを店頭に見に行きました。信じ
現 在、 雑 務が多いのは 確かだが、 も ち
ろん、デザインワークも 仕 事の一つだ。 山
ことも教わった。
ザインの 発 想の 仕 方 も 学び、 また、 仕 事
いるため、仕事上での矛盾は起こりにくい
ら学んだ。直線縫い、ボタン付け、生地の
に憧れるようになった。その想いを抱いた
りに合う美しい服をつくり出すデザイナー
を生産するときに修正した。
藤はな
白いステッチのはずが、あがってきたのは濃
初めてデザインした商品を
店頭で見たときの喜び
言われたことはすぐメモを取るなど、いつ
レートギャツビー』、最近読んだ本は『社長、
そのデザインでは売れません!』。「どうなりた
も心がけるようにしています﹂。
を読んだり、美術館に行ったり、知識と感性
を磨くことを心がけている。好きな映画は『グ
をセットして工 場に引き 渡す。あがってき
上で、どんな服がいいかを考えるのだと語る
山本さん。仕事以外では、映画を見たり、本
たサンプルの裾をあと一センチ上げよう、襟
ターンを 作 成し、サンプルを 作る際に必 要
デザイナーは、デザインするだけが仕事では
なく、あらゆることを考慮に入れ、理解した